更新日
2025.03.10
カテゴリ
専門家コラム
タグ
高齢入居者 滞納 太田垣章子

【太田垣章子の賃貸トラブル110番】#7 超高齢社会に備えて大家さんができること

日本は未曾有の高齢社会です。世界中でも、残念ながらこの部分でトップです。そのため「高齢者に貸したくないな」と思っていても、貸さざるを得なくなります。日本には高齢者か外国人が、ここからさらに多くなってくるからです。

高齢入居者で確認すべき5ポイント

前回の「#6 家賃滞納に気づいた時には…。83歳のタクシー運転手」でお伝えしましたが、大家さんはまず入居者の情報をアップデートしましょう。50代、60代で入居した人たちも、この先おそらく転居することなく住み続ける可能性は大です。そうなると確実に、近い将来高齢賃借人となります。

まず確認すべきは、次の点です。

⒈入居者の年齢
⒉入居者の職業(現在・過去)
⒊頼れる身寄りがいるか
⒋生活保護受給者かどうか
⒌介護事業者と繋がっているかどうか

具体的に見ていきましょう。

⒈は正確に把握することが大切です。以前「70代の夫婦が滞納で」とご依頼あったケースでは、住民票を取得してみたら実は93歳と89歳。それだけ大家側の認識と、現実にズレがありました。

⒉が分かれば、国民年金なのか厚生年金なのか、おおよその年金額の予想もできます。将来的に亡くなるまで、その年金額で今の家賃を払い続けられるでしょうか?

また年金だけでは足らず、アルバイトをしているアクティブシニアもたくさんいます。でもいつまでもアルバイトできる訳ではありません。生きがいのための働きなら良いのですが、足りない生活費のためならいずれ限界が来ます。働けなくなっても支払えるかどうかが重要なのです。

もし「厳しい」と感じるなら、早めに転居するのが得策。

70歳を超えると一気に借りることが難しくなるので、リミットは現役世代か60代です。賃借人側にしても、生涯的に払える家賃帯への転居はとても有益なはずです。

本来は賃借人が考えて行動すべきなのですが、当の本人は目の前の生活に追われているので将来的なことまで考えられません。人生の後半戦を楽しく生きるためにも、早めに転居する必要性を教えてあげましょう。

また仮に物件の家賃が住宅扶助の額の範囲内であれば、払えなくなった場合に支給してもらえる可能性もあります。逆に超えていれば救済措置もないので、払えなくなると法的に追い出されてしまいます。

高齢者になればなるほど新たな収入を確保するのが難しくなるので、家賃が住宅扶助の範囲内かどうかが重要になってきます。支払いに不安を抱える賃借人には、万が一の時に支給してもらいやすい金額の物件へ転居してもらいましょう。

⒊の頼れる身内がいれば、その人に全て対応してもらえるよう大家さんは関係性を築いておきましょう。

⒋もケースワーカーが色々と対応してくれるので、ある部分ではとても安心です。

⒌のすでに介護事業者と繋がっている場合も同様に、ケアマネジャーが入居者の認知度や介護度に合わせて対応してくれるので一安心です。
入居者がお元気な間から、お身内の方や⒋⒌の担当者と交流をとるようにしておきましょう。

死後事務委任契約の重要性


いちばんのポイントは、亡くなった時に賃貸借契約が相続されてしまうということです。

人は必ず亡くなります。その時誰が (1)契約の解約手続きをしてくれるのか、(2)室内の物を撤去して明け渡してくれるのか、そこが問題なのです。

家族を頼れない高齢者の場合には、相続人を探し当てたとしても相続放棄されてしまいがちなので、国土交通省が推奨している『死後事務委任契約』を利用しましょう。これは元気なうちに自分が亡くなった後の(1)と(2)を、誰かに依頼しておくというものです。管理会社が受任者になるのも良いでしょう。

この契約があれば亡くなっても、すぐ次の人に貸すことができます。荷物の片付け費用を、毎月賃借人から数千円徴収して積み立てている大家さんもいます。

入居者だって亡くなった後、戸籍を追って親族に連絡が行くくらいなら、自分で終わらせたいと思っているのではないでしょうか。

まとめ

大家さんと入居者がより良い関係性を築いていく、これからのトラブルを避けるいちばんのポイントになります。

「生活の場」を提供している大家さんだからこそ、社会が高齢者を支える環境を担えるのです。人は誰しも必ず年をとります。皆でしっかり知識を学び、誰もが住みやすい社会を作っていきましょう。

この記事の執筆者

この記事の執筆者

太田垣章子

職業 司法書士・賃貸不動産経営管理士

家主側の訴訟代理人として、延べ3000件近くの悪質賃借人明け渡しの訴訟手続きを受託してきた、賃貸トラブル解決のパイオニア的存在。
住まいのトラブル解決だけでなく、終活・相続サポートにも従事。実務だけでなく、講演や執筆等で積極的に発信もしている。
通称:あやちゃん先生

執筆している記事一覧

無料会員登録で、もっと充実!

HOME4Uオーナーズ特典

  • 大家さんのお悩みQ&A
    有識者への相談無料

  • 不動産有識者へ無料相談

  • あなたの知りたい最新情報を
    メールでお届け

  • トップページを知りたい情報に
    カスタマイズ