太田垣章子の賃貸トラブル110番 #1こんな物件はトラブルの温床

私は司法書士として、賃貸トラブルを専門に20年以上やってきました。その全てが、100%家主側の訴訟代理人としてでした。特に家賃滞納や、騒音トラブルなど生活マナーの悪い方々の明渡し訴訟に加え、建替えの立ち退き交渉もしてきました。

トータルの件数は3000件ほどですが、私が自慢できるのは、トラブルのある物件を実際にこの目で見てきたことです。

一般的に弁護士・司法書士は事件を受任しても、受任者が現地を見ることはほとんどありません。でもやっぱり『事件は現場で起きている』のです。だからこそ私は可能な限り、トラブルのある物件を見てきました。自分で行けない場合には、スタッフが撮ってきた写真でも確認してきました。

そうやって非効率的に仕事してきた代わりに、私の中にはたくさんのデータがあります。

特に「どのような物件にトラブルが多いのか」という点では蓄積があります。物件は、家主さまにとって子どもと同じです。目を離せば、子どもはグレるのと同じ! 賃貸経営は、物件を所有したところからスタート。ちゃんと愛情かけて育ててあげないとダメだということですね。

実際にそのような観点でトラブルある物件を見ていくと、面白いことに共通点が見つかりました。今回はそれを皆さんに、お伝えしていきたいと思います。

1.ダメな物件ってどんな物件?

物件の価値は、建物だけではありません。入居者も含めた価値ということです。

どれほど良い物件であっても、素行の悪い入居者ばかりになると物件全体が荒れて価値は下がります。費用をかけたから良い物件になる、ではありません。この点を勘違いされている家主さん、結構多いのでご注意くださいね。

そして人も物件も『類友』です。人は、自分の心地良い場所や人と集まります。

つまりダメな物件に、ダメな人たちが集まってくるということ。では、ダメな物件ってどういうものでしょうか。築年数が古い物件でしょうか?私が見た限りでは、『古さ』より『汚さ』が目立つ物件が、トラブルの温床になっていました。

特にエントランス。ここが汚いと、まず良い入居者は確保できません。その上でダントツに気を付けないといけないのが、集合ポストです。

※写真はイメージです

皆さんは、空室のポストはどうされていますか?今は1週間も放っておくと、ポストはチラシ等でパンパンになってしまいます。定期的に取り除いていますか? それとも放置? それとも投入されないようにガムテープ等で塞いでいますか?

いちばんダメなのが、ガムテープ等で塞いでしまうことです!

ガムテープが貼られているということは、一目で空室が何部屋か、ということが分かります。さらに誰かが随時ポストの中のチラシ等を取り除きに来ない、とすぐに分かります。

見た目が悪さより、ズボラな方を選んだということでしょう。加えて汚い物件でも、他の入居者は文句も言っていないということ。これらの情報は、『素行の悪い入居者』にとっては好都合です。

このような物件は、振り込め詐欺等のアジトに借りられていることが多々ありました。

2.管理が行き届いている物件は避けたい

まず彼らは、管理の行き届いた物件には近寄りません。なぜなら自分たちが悪目立ちしてしまうからです。他の住民の人たちに、白い目で見られるのも困ります。だからきちんとした人たちが住む物件は、できたら避けたいと考えます。そして可能な限り、顔を見られたくありません。

管理が行き届いていると、掃除の人や管理会社の方と顔を合わせます。それは避けたいので、そのような良い物件は避けます。

そのためエントランスが汚い → 誰も掃除に来ない →自分たちも顔を合わすことが少ない → 自分たちにとって良い物件、このような思考回路になります。

悪さをしようとする人たちにとって、生活する間取りとか、陽当たりとかは、さして重要ではありません。それよりもいかに顔を合わさないか、自分たちが住民たちの中で浮いた存在にならないか、これしかありません。

※写真はイメージです

だからこそ行き届いた管理が必要なのです。まずは徹底的に物件の掃除をする。エントランスは特にきれいにして、照明も明るくする。防犯カメラ等があれば、さらに効果的ですね。

駐輪場に退去者の自転車が残って埃まみれになっていたら、適法に撤去しましょう(勝手にはダメですよ)。ゴミステーションも、使いやすいように整理整頓します。

こうしてとにかく物件をピカピカにしておくことで、良い入居者が自然と集まり、トラブルも軽減できるはずです。

3.物件は我が子と一緒

毎朝、物件の掃除をする家主さんがいました。「家主さん自らが掃除ですか?」と私が聞くと「自分の家と同じだから」とおっしゃっていました。

出勤時の頃に掃除をしていると、入居者の方々と挨拶もできます。そして自分で掃除するからこそ、物件の傷みにいち早く気が付くことができると教えてくれました。

全ての方が、同じことができる環境とは思いません。でも直接でなくても、愛情はかけられます。物件は我が子と一緒。しっかり育てていきましょうね。

この記事の執筆者

この記事の執筆者

太田垣章子

職業 司法書士・賃貸不動産経営管理士

家主側の訴訟代理人として、延べ3000件近くの悪質賃借人明け渡しの訴訟手続きを受託してきた、賃貸トラブル解決のパイオニア的存在。
住まいのトラブル解決だけでなく、終活・相続サポートにも従事。実務だけでなく、講演や執筆等で積極的に発信もしている。
通称:あやちゃん先生

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