『空き家問題』、自分とは無縁だとお考えですか?
実は、空き家問題と相続は、密接に関係しています。
そして、相続はどなたにも起こり得るものです。
相続関係をきちんと整理しておかないと、読者の方にもある日突然、空き家問題が降って湧いてくるかもしれません。
もしかしたら、あなたが亡くなって、その子どもたちに降りかかるかもしれません。
この記事では、なぜ相続で空き家問題が発生するのかを解き明かし、空き家問題で子どもたちに迷惑をかけないためにどう対策していくのかについて、解説していきます。
1.現実に起こった空き家問題の相続事件
今年9月、興味深いニュースが報道されました。
「姫路の空き家、相続人が93人 知らぬ間に所有権」神戸新聞NEXT 2020年9月13日
兵庫県姫路市内の空き家について、同市が調査をしたところ、相続人が93人もいることが分かったというものです。
この空き家は、建物の一部が倒壊しており、周辺住民に危険を及ぼすおそれがあったため、空き家特措法上の「特定空き家」として取り扱われていました。
同市がその対応を進める過程で、相続人を調査して発覚しました。
≪POINT 特定空き家とは?≫
管理のできていない空き家は、建物倒壊や火災といった危険や、景観悪化などで、地域社会に深刻な悪影響を及ぼしています。こういった問題を解決するため、政府は空き家問題対策の一環として、「空き家特措法(空家等対策の推進に関する特別措置法)」を制定しました。この法律には、管理のできていない空き家を「特定空き家」として取り扱い、所有者(相続人)に不利益な処分(最悪の場合、行政代執行による強制排除と、その費用請求)ができることとなりました。
同市から連絡を受けた93人の相続人の方々は、突然のことでさぞ驚き、困惑したのではないでしょうか。
このように空き家問題は、相続によって、ある日突然降りかかってくることがあるのです。
2.空き家問題と相続の関係性・その対策
空き家問題と相続がなぜ密接に関係するのか、そしてそこから分かる対策方法を解説していきます。
2-1.空き家を取得する理由-半分以上が相続
2014年に国土交通省が実施した空き家調査によると、空き家を取得した原因の50%超が、相続によるものとなっています。
空き家問題と相続との関係は根強く、切り離せない関係と言えるでしょう。
相続の難しい点に、自分たちで時期をコントロールできないということがあります。このため、事前の対策がとても重要なのです。
2-2.【原因】なぜ相続人が増えていくのか-法定相続の連鎖
どうして相続人が何十人にもなったのか、不思議に思われた方も多いでしょう。これは、法定相続が積み重なったためです。
ある人が亡くなったとき、相続人の方々が相続放棄や遺産分割協議などの対応をしなければ、法律で決まった分配分を、自動的に(言わば、勝手に)相続した状態になります。これを法定相続と言います(民法900条など)。その法定相続をした人が亡くなれば、さらにその子どもたちなどの相続人が、法定相続していくことになります。
法定相続は、どこかで、誰かが対応をしなければ、連鎖するのです。
例えば、
- 誰かが亡くなったとき、すぐ分かる範囲でしか相続財産を把握しない
- 亡くなった両親が不動産を持っていたけど、自分はいらないからと放っておく
というのは、危険です。
何もしなければ、法定相続により、知らなくても勝手に相続したことになってしまうのです。
世代を重ねるごとに、把握はさらに困難になっていくでしょう。
2-3.【対策】子どもたちに迷惑をかけないために今やるべきこと
上記のような危険をなくすためには、『知らないまま相続してしまっていた』をなくすことが重要です。
ご両親が亡くなったときには、すぐ分かる範囲の財産だけでなく、きちんと相続財産の調査をしましょう。怪しいと思えば、ご両親の兄弟姉妹などの親戚にも話を聞いてみた方が良いかもしれません。
また、あなたの兄弟姉妹が亡くなったとき、その兄弟姉妹に子どもがおらず、両親・祖父母も亡くなっていれば、あなたが相続人となります。兄弟姉妹の相続は、自分とは関係がないと思うのは誤りです。
次に、あなたが亡くなったときに備えての話です。
子どもたちが相続財産の調査に困らないように、自身の財産のリストを作成しておきましょう。例えば、生前は子どもに秘密にしているセカンドハウスなどがある場合、あなたが亡くなったときに、子どもたちに存在がきちんと伝えられるようにしておきましょう。
3.空き家問題の抜本的解決
それでは、今まさに空き家を所有・相続している場合には、子どもたちに迷惑をかけないためにどのように対応すれば良いのでしょうか。
3-1.売却による抜本的解決
言うまでもないことではありますが、抜本的解決は売却してきれいさっぱりすることです。しかし、この売却が実は難しいのです。
相続した空き家であれば、他の相続人がいるかもしれませんね。あなたは早期に売却したくても、あなたの兄弟姉妹は、思い入れのある実家だからまだ処分をしたくないと言い出すかもしれません。
そのお気持ちはよく分かりますが、家屋は時間とともにどんどん価値が下がっていきます。また、しばらく放置している間に他の相続人が亡くなれば、その子どもたちがさらなる相続人となって、より事態が複雑になっていきます。
さらに、後述する優遇税制度を、期限切れで利用できなくなるかもしれません。
自分たちで話がまとまらない場合は、不動産会社や弁護士などの専門家に依頼するのも良いかもしれませんね。
3-2.賃貸により収益化
思い入れのある実家なので、いつかは自分たちで住みたいと考えている場合はどうすれば良いでしょうか。
誰も住んでいない状態が続くと家屋は傷みやすくなりますし、管理会社に管理を頼めば当然管理費もかかってしまいます。
賃貸に出すことができれば、解決できるでしょう。さらには家賃収入で老後の資金の足しにできるかもしれません。
ただし、いずれ自分たちで住む予定なのであれば期間などの契約条件をきちんとする必要がありますし、家屋の状態によってはリフォームが必要になるかもしれません。
まずは不動産会社に相談をしてみましょう。
4.利用しよう!空き家売却の優遇税制-空き家の3,000万円特別控除
不動産を売却して、売却益(売却価格から取得費・経費などを差し引いて、それでもプラスになった部分)が出ると、税金(所得税等や住民税)がかかります。
これは空き家の売却であっても同様です。せっかく相続した空き家の売却を考えているのに、税金がネックになって二の足を踏んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
そこで政府は、空き家問題対策の一環として、相続した空き家の売却につき、3,000万円の特別控除制度を設けました。この制度の最大の特徴(メリット)は、この特例が適用されると、空き家の売却によって出た利益(譲渡所得)から最大で3,000万円が控除されること、もっと言えば、売却益が3,000万円以内であれば税金が免除となることにあります。
利用には条件があり、また期限もあります。例えば、この制度は2023年12月末までの時限立法でありますし、相続があった日から3年が経過した年の年末までに売却する必要があります。
詳しくは国税庁ホームページをご確認いただくか、不動産会社や、弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。
まとめ
いかがだったでしょうか。空き家と相続の問題、またその対策方法についてご理解いただけましたか?
国土交通省の統計では、2018年時点で846万戸もの空き家が存在しており、少子高齢化に歯止めがかかっていないことを考えると、その数は年々増え続けていくと推測されます。
冒頭でご紹介したニュースのように、ある日突然、空き家問題の当事者になってしまうかもしれません。
空き家問題で子どもたちに迷惑をかけないためには、ご自分の代で積極的な解決を図ることが重要です。
放置するほど事態が悪化していくのが、空き家問題のとても怖いところです。
あなたの子どもに『負』動産を残さないように、ぜひ、積極的な対応を。
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