この記事の執筆者
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太田垣章子
職業 司法書士・賃貸不動産経営管理士
家主側の訴訟代理人として、延べ3000件近くの悪質賃借人明け渡しの訴訟手続きを受託してきた、賃貸トラブル解決のパイオニア的存在。
住まいのトラブル解決だけでなく、終活・相続サポートにも従事。実務だけでなく、講演や執筆等で積極的に発信もしている。
通称:あやちゃん先生
「借りたものは綺麗に使う」
大家さんからすると当たり前のことですが、最近はゴミ屋敷が増えてきました。
私が受けるゴミ屋敷に関するご相談は、10年前は年間で1、2件程度だったものが、今は20件以上あります。ほぼ1割です。
加えて家賃滞納者の大半はゴミ屋敷です。要は受託案件でゴミ屋敷でなかったら「あら珍しい」と思うほどです。
この原因として、大きくは次の3点が挙げられます。
(1)ゴミが出やすい環境
(2)ゴミの分別
(3)生活時間の多様化
具体的にみていきましょう。
加えて賃借人が、心を病んでいるケースです。
特にコロナの時期は漠然とした不安や、対人でのコミュニケーションを極力避けたためか、鬱傾向になりゴミ屋敷になってしまったケースが多くみられました。
考えてみれば心身ともに健康であれば、ゴミ屋敷の中で生活するのは苦痛でしょう。そこに至るまでには、掃除をするはずです。当然かもしれませんが、心と整理整頓はリンクしているのだなと感じたものです。
これは、実際にあったケースです。
テレビ局に勤めている賃借人は、毎月9万円の家賃をきちんと支払っていました。ところがある日、支払いが滞ったのです。
電話をしても呼び出し音は鳴るものの、出てもらえません。
折り返しもありません。連帯保証人はおらず、緊急連絡先は弟さんです。ただ初めて滞納があったとはいえ、まだ数日。この段階で弟さんに連絡するのも、早すぎる感がありました。
そこで管理会社側は「室内で倒れているのかも」と心配し、警察に安否確認をお願いしました。
立ち会いで入室してびっくり。食べたり飲んだりした後のゴミが散乱し、足の踏み場もないほどです。そんな中に賃借人が倒れている様子もないことから、安否確認は終了。さてどうしたものか……と思案している間に、家賃が振り込まれました。
管理会社がすかさず賃借人の携帯に連絡したものの、やはり電話には出てはもらえません。
1週間ほど経ったところで「仕事が忙しく、これからは遅れずに家賃を払います」とメッセージが届き、それ以降もほとんど連絡が取れない状態が続きました。
約束通り、その後の家賃は振り込まれます。管理会社としてもゴミ屋敷を見てしまったものの、毎月家賃が支払われることからそのままになってしまいました。
それから10年ほどが経ったでしょうか。また滞納が始まりました。
督促の連絡をすると「あれからあの部屋に住んでいなかったので、鍵も無くしました」とショートメッセージが入ったのです。
あれから住んでいないって、どういうこと?
住んでいないのに、延々と家賃だけ払ってきたってこと?
管理会社側も担当者が退職して、過去のゴミ屋敷のことは誰も記憶していません。
なんとかやりとりした中から、ようやく全貌が見えてきました。
賃借人は不規則なテレビ局の仕事柄、限定的な回収日にゴミ捨てができず、部屋がゴミ屋敷になってしまった。
あまりの忙しさに、当時は心が病んでいたかもしれない。
部屋に戻ると気が滅入るため、彼女宅で生活していた。
ゴミ屋敷を片付けたら、解約する予定だった。
この間に転勤もあり、仕事に忙殺されていた。
気がついたら10年という期間が経ち、もう払い続けられないと思った、ということでした。
住んでもいないのに、ゴミ屋敷を片付けられずに、なんと1000万円以上も家賃を払ってきた計算になります。真面目な性格だったからこそ、自分で「片付けないと」と思ったのでしょう。
自分で片付けられる人は、基本的にゴミ屋敷にはなりません。もしご自身の物件でゴミ屋敷が発生した場合には、荷物撤去の業者に依頼しましょう。
「見られるのは恥ずかしい」と思う賃借人も多いのですが、「業者は慣れているから大丈夫ですよ」と声をかけ、プロの手を借りることを促しましょう。
もし拒否されたら
(1)2~3週間の期限を区切り、自分で掃除してもらう
(2)期限内に片付かなければ、信頼関係破綻を理由に退去してもらう
ここまで毅然とした態度で対応しいと、大家さんの大切な財産である建物が、ゴミの水分でダメージを受けてしまいます。
私が関与した中でいちばん酷かったのは、1階のゴミ屋敷で床が腐り、土台も腐り、最終的にアパートを取り壊した案件がありました。
ゴミの水分は侮れません。ゴミ屋敷は大概、バルコニー、玄関側にも溢れます。部屋の外が乱れているケースは、要注意と思えておきましょう。
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太田垣章子
職業 司法書士・賃貸不動産経営管理士
家主側の訴訟代理人として、延べ3000件近くの悪質賃借人明け渡しの訴訟手続きを受託してきた、賃貸トラブル解決のパイオニア的存在。
住まいのトラブル解決だけでなく、終活・相続サポートにも従事。実務だけでなく、講演や執筆等で積極的に発信もしている。
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