新築アパートの経営において、投資額に対する利益の割合を表す「利回り」の相場は必ず押さえたい指標です。
その相場から、利回りを上げる方法を知ることが、アパート経営を失敗させないためには重要です。
本記事では「土地活用でアパートを新築すべきか迷っている方」に向けて、
- 新築アパートの利回りの相場
- 新築アパートの利回りを上げる方法
について解説します。収益性の高いアパート経営を実現するため、ぜひお役立てください。
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「いくら儲かるか知りたい」「うちの土地にはどんなアパートが建つの?」という方は、ご活用ください。
- 「実質利回り」の相場は一般的に2%〜5%ほど
詳しくは1.新築アパートの利回り相場にて解説しています。
- 新築アパートの全国平均利回りはワンルーム8.1%、2DK6.4%、3LDK4.5%程度
詳しくは2.【土地持ちの人】新築アパートの表面利回りにて解説しています。
- 最低ラインは「実質利回りで3%」
- 理想的ラインは「実質利回りで5%〜」
詳しくは3.経費や家賃によって利回りも変動するにて解説しています。
- 中古アパートを購入する
- 建売の新築アパートを購入する
- 土地を購入し新築アパートを建築する
- 土地の取得方法で利回りは変わるため、一律の利回り相場を見通すのは困難
- ローン返済額
- 退去時の原状回復費用
- 管理委託手数料
- 火災保険料や地震保険料
- 共用部の修繕費用
- 固定資産税や都市計画税
- 絶対不可欠!複数のハウスメーカーを比較する
- ワンルームを主体とする
- 建築費の減額提案を受ける
- 収益性の高い管理方式を選択する
- 企画段階で1階の空室対策を取り入れる
- 付加価値を付けて賃料をアップする
- 店舗を誘導できないか検討する
詳しくは4.新築アパートの利回りを上げる方法にて解説しています。
1.新築アパートの利回り相場
アパート経営の利回りとは、投資した資金に対して得られる利益を数値化したものです。この利回りが高いほど、収益力のあるアパートといえます。
新築アパートの「実質利回り」の相場は、一般的に2%〜5%ほどです。
実質利回りとは、家賃収入から固定資産税や保険料、修繕費などの支出を差し引き、投資額で割った利回りです。アパート経営に伴う支出を考慮するため、物件の収益力の実態を知ることができます。
2.【土地持ちの人】新築アパートの表面利回り
ここでは「土地持ちの人が新築アパートを建てて経営する場合」の、「表面利回り」の相場を解説します。表面利回りは、年間の家賃収入を投資額で割って算出します。
表面利回り=年間家賃収入 ÷ 建物投資額※
※アパート経営を行う方は、すでに土地をお持ちの場合が多いため、ここでは建物のみの投資額としています。
表面利回りは、計算が簡単ですぐにわかる点がメリットです。
一方実質利回りのように、アパート経営に伴う支出を考慮しません。このため、地域における利回りの相場を知るには適していますが、個別のアパートの収益力がわかりにくいという注意点があります。
実際にアパート経営を検討する際は、必ず実質利回りも計算し参考にしましょう。
都道府県別の、表面利回りの相場は下表のとおりです。
都道府県 | ワンルーム | 2DK | 3LDK | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
月額平均家賃(円) | 年額賃料単価(円/坪・年) | 利回り(%) | 月額平均家賃(円) | 年額賃料単価(円/坪・年) | 利回り(%) | 月額平均家賃(円) | 年額賃料単価(円/坪・年) | 利回り(%) | |
北海道 | 43,730 | 69,390 | 6.9% | 53,121 | 52,682 | 5.9% | 65,101 | 39,731 | 4.4% |
青森県 | 44,310 | 70,310 | 7.0% | 49,445 | 49,036 | 5.4% | 55,744 | 34,020 | 3.8% |
秋田県 | 41,078 | 65,182 | 6.5% | 49,682 | 49,271 | 5.5% | 61,974 | 37,823 | 4.2% |
岩手県 | 47,812 | 75,867 | 7.6% | 52,070 | 51,640 | 5.7% | 57,055 | 34,821 | 3.9% |
山形県 | 40,541 | 64,330 | 6.4% | 53,551 | 53,108 | 5.9% | 59,123 | 36,083 | 4.0% |
宮城県 | 48,876 | 77,555 | 7.8% | 56,754 | 56,285 | 6.3% | 66,796 | 40,766 | 4.5% |
福島県 | 44,958 | 71,338 | 7.1% | 52,294 | 51,862 | 5.8% | 58,069 | 35,439 | 3.9% |
群馬県 | 41,758 | 66,261 | 6.6% | 48,592 | 48,190 | 5.4% | 55,044 | 33,593 | 3.7% |
栃木県 | 40,327 | 63,990 | 6.4% | 48,191 | 47,793 | 5.3% | 57,117 | 34,858 | 3.9% |
埼玉県 | 53,272 | 84,531 | 8.5% | 62,744 | 62,225 | 6.9% | 73,510 | 44,863 | 5.0% |
茨城県 | 42,537 | 67,497 | 6.7% | 47,343 | 46,952 | 5.2% | 55,119 | 33,639 | 3.7% |
千葉県 | 52,868 | 83,890 | 8.4% | 60,189 | 59,692 | 6.6% | 71,672 | 43,741 | 4.9% |
東京都 | 69,228 | 109,849 | 11.0% | 84,712 | 84,012 | 9.3% | 91,940 | 56,111 | 6.2% |
神奈川県 | 59,626 | 94,613 | 9.5% | 76,033 | 75,405 | 8.4% | 85,359 | 52,094 | 5.8% |
山梨県 | 40,418 | 64,134 | 6.4% | 53,170 | 52,731 | 5.9% | 58,843 | 35,912 | 4.0% |
長野県 | 42,785 | 67,890 | 6.8% | 51,614 | 51,187 | 5.7% | 57,753 | 35,247 | 3.9% |
新潟県 | 47,773 | 75,805 | 7.6% | 54,310 | 53,861 | 6.0% | 59,633 | 36,394 | 4.0% |
富山県 | 43,661 | 69,280 | 6.9% | 50,136 | 49,722 | 5.5% | 59,939 | 36,581 | 4.1% |
石川県 | 44,079 | 69,944 | 7.0% | 49,362 | 48,954 | 5.4% | 63,888 | 38,991 | 4.3% |
福井県 | 42,161 | 66,900 | 6.7% | 56,006 | 55,543 | 6.2% | 60,993 | 37,224 | 4.1% |
静岡県 | 49,234 | 78,123 | 7.8% | 59,047 | 58,559 | 6.5% | 66,656 | 40,680 | 4.5% |
愛知県 | 50,472 | 80,088 | 8.0% | 56,804 | 56,335 | 6.3% | 61,681 | 37,644 | 4.2% |
岐阜県 | 44,113 | 69,997 | 7.0% | 48,357 | 47,957 | 5.3% | 57,053 | 34,819 | 3.9% |
三重県 | 44,430 | 70,500 | 7.1% | 52,967 | 52,529 | 5.8% | 59,180 | 36,117 | 4.0% |
滋賀県 | 48,592 | 77,105 | 7.7% | 57,650 | 57,174 | 6.4% | 72,833 | 44,450 | 4.9% |
奈良県 | 45,329 | 71,927 | 7.2% | 59,523 | 59,031 | 6.6% | 61,565 | 37,573 | 4.2% |
和歌山 | 41,162 | 65,315 | 6.5% | 50,494 | 50,077 | 5.6% | 54,330 | 33,158 | 3.7% |
京都府 | 53,022 | 84,134 | 8.4% | 70,711 | 70,127 | 7.8% | 77,533 | 47,318 | 5.3% |
大阪府 | 56,778 | 90,094 | 9.0% | 66,561 | 66,011 | 7.3% | 77,179 | 47,102 | 5.2% |
兵庫県 | 51,259 | 81,337 | 8.1% | 59,806 | 59,312 | 6.6% | 67,066 | 40,930 | 4.5% |
鳥取県 | 38,050 | 60,377 | 6.0% | 45,357 | 44,982 | 5.0% | 58,775 | 35,870 | 4.0% |
岡山県 | 44,379 | 70,420 | 7.0% | 55,612 | 55,152 | 6.1% | 64,378 | 39,290 | 4.4% |
島根県 | 43,876 | 69,621 | 7.0% | 55,317 | 54,860 | 6.1% | 58,897 | 35,945 | 4.0% |
広島県 | 48,165 | 76,427 | 7.6% | 59,919 | 59,424 | 6.6% | 67,327 | 41,090 | 4.6% |
山口県 | 39,833 | 63,206 | 6.3% | 50,353 | 49,937 | 5.5% | 57,904 | 35,339 | 3.9% |
徳島県 | 41,664 | 66,111 | 6.6% | 48,607 | 48,205 | 5.4% | 67,722 | 41,331 | 4.6% |
香川県 | 41,635 | 66,065 | 6.6% | 50,007 | 49,594 | 5.5% | 56,548 | 34,511 | 3.8% |
愛媛県 | 39,202 | 62,205 | 6.2% | 50,043 | 49,629 | 5.5% | 51,401 | 31,370 | 3.5% |
高知県 | 42,625 | 67,636 | 6.8% | 52,182 | 51,751 | 5.8% | 60,977 | 37,214 | 4.1% |
福岡県 | 47,761 | 75,786 | 7.6% | 60,505 | 60,005 | 6.7% | 68,378 | 41,731 | 4.6% |
佐賀県 | 43,309 | 68,722 | 6.9% | 48,709 | 48,306 | 5.4% | 55,332 | 33,769 | 3.8% |
長崎県 | 48,632 | 77,168 | 7.7% | 58,396 | 57,913 | 6.4% | 64,915 | 39,618 | 4.4% |
大分県 | 40,760 | 64,677 | 6.5% | 50,406 | 49,989 | 5.6% | 56,559 | 34,518 | 3.8% |
熊本県 | 45,081 | 71,533 | 7.2% | 55,793 | 55,332 | 6.1% | 57,882 | 35,325 | 3.9% |
宮城県 | 44,007 | 69,829 | 7.0% | 50,776 | 50,356 | 5.6% | 53,557 | 32,686 | 3.6% |
鹿児島県 | 45,681 | 72,486 | 7.2% | 55,612 | 55,152 | 6.1% | 59,598 | 36,373 | 4.0% |
沖縄県 | 44,579 | 70,373 | 7.1% | 55,187 | 54,731 | 6.1% | 64,456 | 39,337 | 4.4% |
全国 | 51,011 | 80,943 | 8.1% | 58,260 | 57,779 | 6.4% | 66,540 | 40,609 | 4.5% |
変更なし:
出典:全国賃貸管理ビジネス協会「全国家賃動向」2024年3月調査
利回りの条件と計算方法は以下のとおりです。
部屋の種類 | ワンルーム | 2DK | 3LDK |
広さの想定 | 25平米 | 40平米 | 65平米 |
建築費の想定 | 坪100万円 | 坪90万円 | 坪90万円 |
ワンルーム
新築アパートの利回り=年額賃料坪単価 ÷ 建築費相場(坪100万円)
2DK・3LDK
新築アパートの利回り=年額賃料坪単価 ÷ 建築費相場(坪90万円)
新築アパートの全国平均利回りは、ワンルームは8.1%、2DKは6.4%、3LDKは4.5%程度です。
2-1.利回りの最低ラインは「実質利回りで3%」
アパート経営で確保すべき利回りの最低ラインは、立地条件や投資額などで異なりますが、一般的に「実質利回りで3%」とされています。
2-2.利回りの理想的ラインは「実質利回りで5%〜」
アパートローンの金利は、2%〜4.5%が相場です。そのため、実質利回りが5%に達すれば、借入金の返済を進めながら手元にキャッシュを積み上げられます。
詳しくは、以下の記事でも解説しています。
2-3.土地なしでアパート経営を始めることはできる?
現時点で土地を所有していない方でも、以下の方法でアパート経営は始められます。
- 中古アパートを購入する
- 建売の新築アパートを購入する
- 土地を購入し新築アパートを建築する
この中では「土地を購入し新築アパートを建築する」方法が、最も多くの購入資金を必要とします。
2-4.土地なしの人が新築アパートを建築する場合の利回り
「土地なし」の方がアパート経営をする際の利回りは、「土地あり」の場合と大きく異なります。しかも、どのような方法で土地を取得するかでも利回りは変わるため、一律に土地なしの利回り相場を見通すのは困難です。
そのため、個別のアパート経営プランごとに、より現実的な収益性が図れる実質利回りを試算し、経営計画を検討することが重要になります。
詳しくは、以下の記事でも解説しています。
3.経費や家賃によって利回りも変動する
アパート経営の利回りは、経費や家賃の影響を受けて変動することもあります。長期的な視点で利回りの変動リスクを把握し、対策を講じるようにしましょう。
3-1.経費による変動
利回りに影響を与える経費には、以下のようなものがあります。
- ローン返済額
- 退去時の原状回復費用
- 管理委託手数料
- 火災保険料や地震保険料
- 共用部の修繕費用
- 固定資産税や都市計画税
これらの経費の将来的な金額を想定しておくことは、利回り低下を防ぐうえで非常に重要です。
ローン返済額
アパートの建築資金を借りるローンの金利タイプに、「変動金利」や「固定期間選択型金利」を選択すると、将来金利が変わり返済額が増える可能性があります。
変動金利は多くの金融機関で半年ごとに、固定期間選択型はローンの申込者が選択した期間が経過したあとに、金利が見直されます。定期的に金融機関のサイトなどで、金利動向を確認しておくことをおすすめします。
退去時の原状回復費用
入居者の退去時にかかる原状回復費用は、過去の実績から見込み金額を想定できます。各部屋において、2〜4年ごとに2〜5万円の原状回復費用が発生することを想定しておくと、現実的な収支をシミュレーションできるはずです。
管理委託手数料
アパート管理を管理会社に委託する管理委託手数料は、経営収支のシミュレーションに組み込み、将来の利回りをより正確に予測できるようにしましょう。
もし、現在の管理会社に不満があり見直しを考えているなら、よりリーズナブルなところに変更することで利回りを向上させることも可能です。
火災保険料や地震保険料
アパートの火災保険や地震保険に加入している場合、更新の際に保険料が値上がりする可能性があります。アパートの規模や保険金額によっては保険料が高額なケースもあり、値上げが利回りに影響することも考えられます。
特に、近年は自然災害の増加などを背景に、保険料が上昇する傾向にあります。将来の火災保険料の増加を考慮した収支計画を立てておくとよいでしょう。
共用部の修繕費用
アパートの共用部の修繕費用はオーナーが負担します。アパート経営を始める際は、管理会社に長期的な修繕計画を作成してもらい、将来の費用をシミュレーションしておくと安心です。
修繕計画や料金は管理会社によって異なります。そのため、すでに他の物件で依頼している管理会社があっても、新たな建物を建築する際は他の管理会社と比較検討をしてみましょう。
同じ修繕内容でも費用を抑えられる可能性があり、利回りの向上につながるかもしれません。
詳しくは、以下の記事でも解説しています。
実際の経費は、アパートの規模や建物費用によって額が異なり、相場を把握するのは難しい場合があります。具体的な経費の額を知るには、ハウスメーカーに相談しアドバイスを受けるのがおすすめです。
「HOME4U(ホームフォーユー) オーナーズ」なら、複数のハウスメーカーから一括で、経費を含めた建築プランの提案を受けられます。しかも、複数社を比較することで、収益性が高く利回りの良いプランを見つけやすくもなります。
また、新築アパート以上に収益性の高い土地活用方法を提案してもらえる可能性もありますので、ぜひご利用ください。
3-2.収入による変動
家賃収入における利回り変動のリスクが「空室」と「家賃下落」です。空室が発生すると、家賃収入は当然ゼロになってしまいます。
また、築年数が経過して建物が劣化すると、入居者を集めるために家賃を下げることになるかもしれません。いずれもアパート経営の利回りを悪化させる、大きなリスクになります。
空室も家賃下落も予測は困難ですが、地域における入居率や家賃相場の推移から、ある程度予測できます。管理会社や賃貸を仲介する不動産会社に相談し、早めに対策を講じましょう。
詳しくは、以下の記事でも解説しています。
4.新築アパートの利回りを上げる方法
せっかくアパートを建てるなら、できるだけ利回りを上げたいと思う方は多いでしょう。ここでは「新築アパートの利回りをアップする7つの手順」を解説します。
- 絶対不可欠!複数のハウスメーカーを比較する
- ワンルームを主体とする
- 建築費の減額提案を受ける
- 収益性の高い管理方式を選択する
- 企画段階で1階の空室対策を取り入れる
- 付加価値を付けて賃料をアップする
- 店舗を誘導できないか検討する
4-1.絶対不可欠!複数のハウスメーカーを比較する
現在、アパートの建築コストは、工務店よりもハウスメーカーの方が抑えられる傾向にあります。
ハウスメーカーは建物を規格化することで、工場での大量生産を可能にし、材料の一括購入を行うことでコストを抑えているためです。
また、工場で部材を事前に加工する工業化も進んでいるため、現場での作業が減少し、人件費も削減されています。こうした取り組みにより、ハウスメーカーはコストパフォーマンスの高いアパートを提供しています。
詳しくは、以下の記事でも解説しています。
しかし、建築コストが適正かどうかを判断するには、複数のハウスメーカーから見積りを取り、比較することが不可欠です。1社だけの見積りでは、品質を維持しながらコストダウンを図った建物か判断が難しいためです。
とはいえ、複数のハウスメーカーへ個別に見積りを依頼するのは、手間と時間がかかります。
そこでおすすめなのが、NTTデータグループが運営する「HOME4U(ホームフォーユー) オーナーズ」です。簡単な土地の情報を入力するだけで、最大10社からアパートの建築プラン提案を受けられます。
建物の品質とコストのバランスが取れているか、プランを比較しながら検討できるため、初期投資を抑えながら高品質のアパートを建築できます。利回り向上も期待できますので、ぜひご活用ください。
4-2.ワンルームを主体とする
利回りを上げるには、アパートの間取りを、ファミリータイプではなくワンルームを主体にするのが基本です。
ワンルームは部屋が狭いため、賃料単価を上げても入居者が払う家賃はそれほど増えません。しかも、ワンルームを借りる単身者は賃貸需要が強いため、高い賃料単価の設定が可能になり、高い利回りにつながります。
これは建物面積あたりの賃料単価、利回りともにワンルームの方が高いことからも明らかです。
一方、ファミリータイプを借りる家族世帯は、持ち家志向があるため賃貸需要はそれほど強くありません。さらに、ファミリータイプは面積が広いため、家賃が上がらないように賃料単価は抑えめになります。
こうしたことから、利回りを上げるためには、ファミリータイプよりワンルームの方が有利といえます。
建築費に関しては、ワンルームの方がファミリータイプより割高です。ワンルームは部屋が狭いため、建物内に取れる戸数が多く、バス、トイレ、キッチンなどの設備コストが増えるからです。
例えば、75平米のファミリータイプでは設備は1セットで済みますが、その75平米の中に25平米のワンルームを3部屋作れば、設備も3セット必要になり建築費が増えます。
とはいえ、建築費がかかったとしても、ワンルームの賃料単価を上げられる効果の方が大きく、結果的にファミリータイプより利回りが高くなっています。
ハウスメーカーからファミリータイプの提案を受けた場合は、ワンルームの提案も依頼し、検討することをおすすめします。
4-3.建築費の減額提案を受ける
利回りを上げるには、建築費を減らすことが効果的です。しかし、見積りを細かくチェックし、高額な部分を削るには専門知識が必要で、現実的ではありません。
そこでおすすめなのが、ハウスメーカーから減額提案を受ける方法です。減額提案には「VE(バリュー・エンジニアリング)」と「CD(コスト・ダウン)」という手法があります。
VEは「質を落とさずに価格を下げる技術的な提案」、CDは「部材の削減などでコストを下げる提案」を指します。これらの減額提案を採用すれば、スムーズに建築費を削減できます。
また、減額提案は金額交渉ではなく、ハウスメーカーが自ら工事内容を調整して金額を下げるものであるため、駆け引きが苦手な方でも紳士的に建築費を抑えられます。
ただし、減額提案は、ハウスメーカーを決定する前に依頼するのがポイントです。依頼前のタイミングなら、各社が知恵を絞り、より効果の大きな減額提案を出してくれるはずです。
利回りを上げる重要なステップとして、ぜひ活用しましょう。
4-4.収益性の高い管理方式を選択する
利回りを上げるには、収益性の高い管理方式を選択することが重要です。アパートの管理方式には「管理委託方式」「パススルー型サブリース」「家賃保証型サブリース」の3種類があります。
収益性の面では、管理委託方式とパススルー型サブリースがほぼ同じで、いずれも家賃保証型サブリースより高い傾向にあります。
管理委託方式は、管理会社に管理を委託し、所有者が各入居者と直接賃貸借契約を結ぶ方式です。管理料の相場は家賃の約5%で、所有者が空室リスクを負います。
サブリース方式は、サブリース会社が一棟を借り上げ、各入居者に転貸する方式です。サブリース方式には「パススルー型」と「家賃保証型」の2つがあります。
パススルー型サブリースは、空室状況に応じて、サブリース会社から支払われる賃料が変動するタイプです。管理料は、家賃の5%程度が差し引かれます。
空室リスクをオーナーが負う点や管理料の割合は、管理委託方式と同様です。そのため、収益性も管理委託方式とほぼ同じになっています。
一方、家賃保証型サブリースは、空室状況に関係なく賃料が固定されるタイプで、満室想定の家賃から15%程度の管理料が差し引かれます。
この方式では、空室リスクを直接負うことはありませんが、管理料が高いため、収益性は他の方式より低くなります。
また、空室が増えた場合には、サブリース会社から賃料減額の要請があることが一般的で、間接的に空室リスクを負うことになります。
管理方式を選ぶ際には、それぞれの特性を理解し、収益性やリスク許容度に合った方法を選ぶことが大切です。
3つの管理方式の特徴を下表にまとめましたので、参考にしてください。
管理の種類 | 管理委託 | パススルー型サブリース | 家賃保証型サブリース |
収益性 | 高い | 低い | |
管理費の相場 | 5%程度 | 15%程度 | |
空室リスク | 直接負う | 間接的に負う | |
契約形態 | 委託契約 | 賃貸借契約 |
利回りを上げるには、収益性の高い「管理委託方式」や「パススルー型サブリース」を積極的に選ぶことがポイントになります。
詳しくは、以下の記事でも解説しています。ぜひ、ご覧ください。
4-5.企画段階で1階の空室対策を取り入れる
建物が竣工した後の、実質的な利回りを上げるには、アパートの企画段階で1階の空室対策を取ることが重要です。
アパートは、セキュリティの面から、2階より1階の部屋の方が空室が発生しやすい傾向にあります。しかし、1階の入居者の決まりにくさは数値化が難しいため、企画段階ではその対策がおろそかになりがちです。
そこで、以下のような1階の空室対策を、企画段階で盛り込むようにしてみましょう。竣工後の空室を減らし、実質的な利回りを向上しやすくなるはずです。
- ガーデニングやバーベキューができる専用の庭を設ける
- 1階の入居者が利用できる物置(トランクルーム)を設置する
- 泥棒の浸入に備えてホームセキュリティを導入する
- 植栽などを配置して歩行者からの視線を遮る
- 窓面は道路から少し高いところに設け、歩行者からの視線を外す
竣工(しゅんこう)してからでは、できないことも多いため、できる限り検討段階で盛り込むことをおすすめします。
詳しくは、以下の記事でも解説しています。ぜひ、ご覧ください。
4-6.付加価値を付けて賃料をアップする
利回りを上げるには、付加価値を付けて賃料をアップすることも効果的な方法です。付加価値の例としては以下のようなものがあります。
【賃料アップにつながる付加価値の例】
- 無料で高速インターネットを利用できるようにする
- オートロックを設置する
- バイク置き場を作る
- 1階に専用庭を作る
- ガスコンロの数を多めにする
- 床下収納やトランクルームを設置する
- 特定の外国人専用のアパートとする
- 単身高齢者も入居可とする
- ペット可能とする
企画段階では、設計者のアイデアを最大限に活用することも重要です。
特に、大手ハウスメーカーの設計者は、豊富な経験と優れたスキルを持つ人が多く、「新しい価値を持つ企画を取り入れたい」と依頼すれば、積極的にアイデアを提案してくれるでしょう。
詳しくは、以下の記事でも解説しています。ぜひ、ご覧ください。
4-7.店舗を誘導できないか検討する
利回りを上げるには、1階部分に店舗や事業系テナントを誘致できないか検討することがポイントです。
店舗は住宅より賃料単価が高いため、1階にコンビニなどを誘致したアパートでは、利回りの向上が期待できます。実際に、郊外では3階建てアパートの1階がコンビニという例も少なくありません。
また、店舗以外にも保育園を1階に入れるアパートもあります。地域によっては、保育園の賃料単価が住宅を上回るエリアもあり、1階に保育園を入れることで利回りを高めることが可能になります。
大手ハウスメーカーは、事業系テナントを誘致する力が強いため、立地条件が良い場合は1階部分の有効活用を相談してみるとよいでしょう。
また、事業系の土地活用は地域的な制限を受ける場合もあるため、専門家の意見を取り入れながら計画することをおすすめします。
詳しくは、以下の記事でも解説しています。ぜひ、ご覧ください。
5.他の土地活用方法についても検討しよう
新築アパートの表面利回りは、全国平均でワンルームが約8.1%、2DKが約6.4%です。また、アパート建築時には、建築費に対し約5%の初期費用が発生する点も押さえておきたいポイントです。
新築アパートで高い利回りを実現するためには「複数のハウスメーカーを比較する」ことが重要です。複数の提案を比較することで、収益性とリスクのバランスをじっくり検討したうえで、最適なプランを選べます。
また、新築アパートの経営以外にも、マンション経営や駐車場経営など、別の土地活用方法も検討することをおすすめします。
幅広く土地活用の方法を比較し、所有する土地に合った経営を選んだ方が、より多くの収益が期待できるでしょう。
「HOME4U(ホームフォーユー) オーナーズ」を活用すれば、複数のハウスメーカーを比較し、最適なパートナーを選べます。また、さまざまな土地活用を提案してもらえるため、さらに収益性の高い土地活用方法を見つけられます。ぜひご活用ください。
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