表面利回りって何?利回りの高さは信じていいの?賃貸住宅経営が初めての方でも「表面利回り」のすべてがわかるよう、やさしく解説します。

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更新日
2020.02.18
カテゴリ
記事, 大家さん向け, これから始める人向け, 収益改善

計算方法から相場の見方までわかる「表面利回り」の全知識

計算方法から相場の見方までわかる「表面利回り」の全知識

アパートを建てるときや投資物件を購入する際に建築・不動産会社から渡される物件資料には、「利回り△%」と記載されていることがほとんどです。

利回りは、そのアパートの「稼ぐ力」を数値化した指標です。そして物件資料に書かれた利回りは、ほとんどが「表面利回り」です。

アパート経営を行うからには、当然どの大家さんも利回りを気にします。

一方、表面利回りは、賃貸経営の初心者にとっては、どう捉えたらよいかわかりにくい指標でもあります。

数値の見方がわからないと、

「その利回りは信じていいのか」
「その利回りは相場と比べて高いのか」
「利回りの見方に落とし穴はないか」

を自分で見極めることができません。

表面利回りが「アパートの収益性を表す指標」であることを踏まえれば、慎重にこの数字をとらえるべきことが容易にわかるでしょう。

本記事では、初心者の方はもちろん、アパートなどの賃貸住宅経営者すべての方々が知っておくべき「表面利回りの全基礎知識」を網羅しました。
表面利回りを見たときにどう行動すればよいかも、わかるようになっています。

特に、これからアパートを建てて賃貸住宅経営をスタートされる方は、「利回り」だけで誤った判断をして失敗しないよう、本記事を最後までお読みいただき、ぜひ正しい知識を身に着けていただければと思います。

1. 表面利回りとは

まずは、「表面利回り」の基礎知識をお伝えします。

表面利回りの定義、実質利回りとの違い、そして計算方法を正確に理解することが、表面利回りをマスターするための一歩です。

それぞれ説明いたします。

1-1. 表面利回りの意味

表面利回りの意味を、冒頭では「アパートの稼ぐ力を表す指標」と書きました。少し専門的な言い方をすると、「収益性」と言い換えることができます。

いまアパートを経営している大家さんは、ときには数億円かかる建築費を、銀行とローン契約を交わすことでまかない、アパートを手に入れています。アパートから毎月入る家賃収入からローンを少しずつ返済していきます。

アパートをフルローンで建てた大家さんであれば、なるべく早くローンを返済したいと考えることでしょう。フルローンでない大家さんでも、投下した金額をなるべく早く取り返したいという方が大半です。

フルローンにしろ自己資金にしろ「投下した金額をどれくらい早く回収できるか」、これを表す指標が「表面利回り」です。

1-2. 実質利回りとの違い

「表面利回り」というワードをインターネットで検索すると、表面利回りと一緒に「実質利回り(noi利回り)」という用語が一緒についてきます。

2つの違いは明確です。意味は読んで字のごとくです。表面利回りは「表面的な利回り」。実質利回りは「実質的な収益性がわかる利回り」です。

表面利回りは、年間の家賃収入の総額を物件価格で割り算して算出します。それに対して実質利回りは、表面利回りの計算式に、管理費や固定資産税といった諸経費を織り込んで計算します。

実際、アパート経営を始めれば、管理費や固定資産税、諸々の経費が毎年かかります。それを踏まえると、実質利回りのほうが、収益性を図る指標としては実態に即していることになります。

使い分け方としては、まずは表面利回りを見て大体の収益性を感じ取ります。良いと思えば実質利回りの試算を行い、実態に則した収益性を把握するのが、一般的な順序と言われています。

1-3. 計算方法

それでは実際に表面利回りの計算方法を説明します。

表面利回りの計算で使う数字は次の2つ、

です。

計算式は、

表面利回り=年間家賃収入÷物件価格×100

となります。

計算すると、大方「利回り5%」「利回り12%」などと10%前後の数字が算出されます。

次の項目で、事例に基づいてシミュレーションいたします。

1-4. 収支シミュレーション例

それでは、実際に表面利回りを計算します。次のアパート情報があるとします。

表面利回りの計算式は、

年間家賃収入÷物件価格×100=表面利回り

なので、上の事例を計算式に当てはめますと、

600万円÷6000万円×100=10%

となります。

「表面利回り10%」ということは「投下した建築価格の10%が、毎年の家賃収入で回収できる」と捉えることができます。

1年で10%回収できるということは、単純計算ですが、10年で100%返せる算段になります。

ですが表面利回りは、あくまで表面的な数字なので鵜呑みにしたくないものです。
表面利回りは、運用経費を一切加味していません。加えて、家賃も初期の価格設定のまま、そして満室が常時続くことを想定しています。

実際にアパート経営を始めると、修繕費や入居広告費で多くの経費がかかり、さらに老朽化が進むほど家賃も低下していきます。
入居者の入れ替わりなどで空室もたびたび発生するでしょう。

そうなれば、実際の利回りはさらに低下することになります。こうした諸経費を加味して計算するのが、先に説明した「実質利回り」の役目です。
表面利回りはあくまで参考程度にとどめておくといいでしょう。

2. 表面利回りの理想の目安

表面利回りの計算方法を学んだ後は、その表面利回りが「良い数字かどうか」を見極めることが大切です。

その利回りが「良い数字かどうか」は、そのアパートの、

を熟知し、自分の建てようとしている(もしくは建てた)アパートと比べることで、ある程度判断できます。

その理由、調べ方を説明いたします。

2-1. 新築の利回りは高めで算出される

表面利回りは、一時的に高く算出された利回りです。

これからアパートを新築するときに、必ず知っておきたいことが、新築の表面利回りは高めで算出されやすいということです。

高めで算出されやすいということは、表面利回りの計算式に使う「年間家賃収入」が高くなるか、「物件建築価格」が低くなっているかのどちらかです。

傾向としては、「年間家賃収入」が割高に計算されていることのほうが多いと言われています。

なぜならば、新築アパートは中古アパートに比べて、部屋を探す学生や社会人から人気が高いです。
設備や間取り、駅からの距離が同じでも、新築は家賃を多少高めにしても、部屋が埋まりやすくなります。

そのためアパート建築時は、中古よりも家賃を高めに見積もって設計されるのです。

新築アパートの表面利回りにはこのような事情があるわけですが、裏を返せば、「一度入居者が退去して空室が発生すれば、次からは中古アパートとして入居者を募集する」という状況が必然的にやってきます。

築年数が古くなるほど家賃が低くなるということは、新築時に建築会社から提示された「表面利回り」は、永続的に続くものでないということです。

2-2. 新築木造と中古木造の目安

新築と中古物件では、同じ条件でも家賃が違う(=表面利回りが違う)ということを説明しました。それでは、それぞれの利回りの目安は、どう捉えればいいのでしょうか。

それは、インターネットで家賃相場を調べることで、ある程度の目安を把握できます。

念のためおさらいしますと、表面利回りの構成要素は「年間家賃収入」と「物件建築(購入)価格」です。
家賃が高いほど物件価格も高くなる傾向が強いので、家賃相場を利回りの目安にするのは、非常に便利でやりやすい調べ方です。

家賃相場は、大手不動産情報サイトで検索可能です。

例えば次の条件で検索をかけたとします。

【新築の場合】
立地:埼玉県・浦和駅
種別:アパート
専有面積:15〜20平米
駅徒歩数:5〜10分

すると、二つの結果が出てきました。

ワンルームの家賃相場
→5万700円

1Kの家賃相場
→5万6800円

となります。同じ条件で新築アパートを建てるとき、想定賃料が上の家賃相場と著しく乖離していないか見ておくことをおすすめします。

一方、同じ条件で「中古」の場合、家賃相場はどうなるのでしょうか。

【築5年〜10年の場合】
※条件は上と同様

ワンルームの家賃相場
→4万7600円

1Kの家賃相場
→5万3600円

新築と比較すると、築5〜10年の家賃相場は数千円低いことがわかります。これから建築するアパートの家賃設定と見比べることをおすすめします。

2-3. 表面利回りの最低ラインを見極めるヒント

表面利回りの相場感がなんとなくわかったところで、次に知りたいのは「表面利回りの最低ライン」でしょう。

表面利回りの最低ラインを見極めるコツは、自分の建てようとしている(もしくは建てた)アパートと極力同条件のアパートを探し、そこが「実際に満室稼働しているかどうか」を調べることです。

なぜ「家賃相場」でなく「稼働率」を軸にしたほうがいいのかというと、大手不動産情報サイトで調べられる家賃相場は、入居募集中の物件賃料、つまり「空室中の賃料」をデータベースに算出しているからです。

空室が続いているということは、サイトに表示された募集賃料が、必ずしも入居者ニーズに即した賃料とは限りません。
そのため自分の建てようとしている(もしくは建てた)アパートが周りと同条件で「家賃も相場並み」だからといって、その家賃で満室が叶うとはどうしても言い切れないのです。

なぜならば、表面利回りの相場や最低ラインは、物件の立地によって異なります。立地によって家賃相場や建てられる面積が違えば、必然的に表面利回りも変わってきます。

自分の建てようとしている(もしくは建てた)アパートとほぼ同条件のアパートが空室続きだったら、その家賃設定を鵜呑みにするのは危険です。
一方、満室が続いていたら、ひとまず最低ラインを担保できているという捉え方ができます。

とはいえ、実際の稼働状況を初心者が一人で調べるのは限界があります。その地域のアパート経営に詳しい不動産会社などに相談することをおすすめします。

何件か回れば、現実的な家賃設定、ひいては表面利回りの最低ラインを教えてくれる会社に巡りあえるはずです。

3. 表面利回りの改善方法

それではすでに建っているアパートの表面利回りをあげる方法はあるのでしょうか。方法は大きく2パターンあります。

3-1. 表面利回りの改善方法は大きく2つ

表面利回りをあげる方法は、「家賃を上げる」か「退去を減らす」かの2通りです。

おさらいになりますが、表面利回りの計算式は、

表面利回り=年間家賃収入÷建築価格×100

です。一度支払った建築価格は下げることはできません。
必然的に家賃収入を増やすか、なるべく減らさない戦略を練ることになります。

それでは具体的な方法を見ていきます。

3-2. リフォームで家賃アップ

建築済みのアパートの場合、すでに設定された家賃を引き上げるには、物件そのものの価値を引き上げてあげることが重要です。

その代表的な方法が、リフォームで家賃を上げる方法です。

リフォームと聞くと、老朽化した部屋を一新する施工イメージが強いですが、それだけではありません。

価値を引き上げるということは、希少性を高めるということです。例えば周辺の競合アパートをネットで検索して、設備条件に着目してみます。

競合アパートの設備を一通り眺めると「水回り設備が“3点ユニット”の物件がほとんどだけど、バス・トイレが別々の物件はまだまだ少ない」といった傾向に気がつくときがきます。

もし自分のアパートが、バス・トイレ・洗面台が一体になった3点ユニットのままならば、バス・トイレを別々にして、バスの隣に独立洗面台を設置してあげることで周辺との差別化が可能になるはずです。

どの設備が人気かは、不動産情報サイトで調べられます。

ただしリフォームをすれば、当然工事代がかかります。工事代は、引き上げた家賃収入で回収します。
リフォームしても家賃が引き上げられなかったり、空室が埋まる見込みがない場合は、そのリフォームはあまりオススメできるとは言えません

追加投資として妥当かどうかは、そのエリアに詳しい不動産管理会社に聞いて見るのが手っ取り早いです。

3-3. 入居期間を長くして退去を減らす

もうひとつが、居住者の入居期間を長くする方法です。

入居期間が長くなるほど、何十年と長くアパートを経営する上で、退去数が少なくなります。
一度退去が出ると、次の入居者が決まるまでに1カ月、2カ月と大きなタイムラグが生じることが少なくありません。

空室のタイムラグが空けば空くほど家賃収入は少なくなり、一室あたりの入居期間が短くなるほど、退去のリスクが上がります。

入居期間を長くする秘訣は、居住者が住み続けたいと思える居住環境をつくってあげることです。

見直せる点は多々あります。例えば、

などなど挙げればキリがないほどです。ひとつひとつは小さな改善点でも、居住者からしたら小さな不満が溜まればいずれは大きなものとなり、いつの間に退去を決めるものです。

そして、どこをどう見直すかは、大家さんの工夫次第です。

ある大家さんは、月に一度はアパートを見回って共用部をチェックしています。別の大家さんは、居住者が退去するときは必ずアンケートをとり「不満に感じた点」を必ずヒアリングしています。

また一連の作業・報告を、馴染みの不動産管理会社のスタッフにお願いしている大家さんもいます。

アパートの改善点を見過ごさず、出来る範囲で対処してあげることが、入居期間を長くする何よりのコツです。

4. 表面利回りの注意点

ここまでは表面利回りの計算方法や相場の調べ方、利回りを引き上げる方法を説明してきました。ここからは、表面利回りの注意点を解説します。

4-1. 建築費の「適正さ」を見極める

表面利回りは、あくまでも建築会社が提示している見込みの利回りに過ぎません。見込みの利回りということは、同じアパートでも建築会社によって設定利回りに差が出るということです。

そのため、一社の表面利回りを鵜呑みにしてしまうのは注意が必要です。

同じアパートなのに建築会社によって表面利回りによって差が出てしまう一番の理由は、「建築費の違い」にあります。

元々所有している土地にアパートを建てる場合、土地から購入する不動産投資家と違い、土地オーナーには「土地の購入費用」がかかりません。
かかるのはアパートの建築費のみです。そのため表面利回りは建築費の高低に左右されることになります。

そのためアパート建築を決断した地主さんが見るべきは、「建築費が適正かどうか」の一点に集約されます。しかし、初心者の方が建築費の適正水準を見極めるのは簡単ではありません。

特に近年は職人不足からくる建築費の高騰で、表面利回りが低くなる傾向にあります。

建築費の推移を表す「建築工事デフレーター」によれば、2011年度を「100」とした場合の木造住宅建築費は右肩上がりに増え続けています。2017年度は「107.4」と6年間で0.7%上昇しました。50前後で推移していた1970年代の約2倍の水準です。

このように建築費が高まる中で、表面利回りをなるべく担保するためにも、適正な建築費で建ててくれる建築会社を探す重要性は一層高まっていると言えます。

複数の建築会社からアパート建築プランを取り寄せ、比較検討することをオススメします。

4-2. 必ず自分で家賃相場を確認する

アパートを建てるときに、建築費のほかに確認したいことがあります。それは、設定賃料と家賃相場のかい離です。

家賃相場は、不動産情報サイトなどで検索できます。同じ新築で間取り・設備も同じ条件なのに、設定賃料が相場より極端に高くなっていれば、建築後の入居募集がうまくいかない可能性が出てきます。

建築後に急いで賃料を下げて満室にしても、引き下げた分だけ家賃収入が目減りすることになります。
目減りすれば、当初想定していた表面利回りは「実態に即した数値でなかった」とわかりますが、後からわかっても一度建ててしまったものは取り返せません。

調べ方がわからない場合は、アパート経営に詳しい専門家に聞くことをおすすめします。
土地活用でアパート建築を成功させるためにも、家賃相場の事前収集を行うことは大変重要です。

まとめ

いかがでしたか?

表面利回りは、アパートの収益性の指標としては便利ですが、建築会社一社だけの表面利回りを鵜呑みにすることはリスクがあります。

建築費の適正さは複数のハウスメーカーや建築会社から建築プランの提案を受け比較した上で判断し、さらに設定家賃が相場と極端にかい離していないか確かめることをおすすめします。

これからアパートを建てて賃貸住宅経営をスタートされる方は、「利回り」だけで誤った判断をして失敗しないよう、ぜひ正しい知識をもとに行動していただければと思います。

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