この記事では中古マンションの減価償却費の計算方法について解説しています。そのほか「中古マンションの減価償却をする際に知っておきたい基礎知識」「建物の価額が分からない場合の減価償却費は?」「大規模な修繕や設備交換を行った場合の減価償却費は?」を紹介しています。ぜひ参考にしてください。

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更新日
2024.05.09
カテゴリ
マンション経営

【簡単解説】中古マンションの減価償却費の計算方法

【簡単解説】中古マンションの減価償却費の計算方法

この記事では中古マンションの減価償却費の計算方法について解説しています。
ぜひ参考にしてください。

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この記事のポイント まとめ
中古マンションの減価償却をする際に知っておきたい基礎知識

減価償却とは土地以外の建物や備品、車両などを購入した際にその代金を1回で経費として計上するのではなく、毎年分割して経費に計上する手続きのことです。

1.中古マンションの減価償却をする際に知っておきたい基礎知識」では、減価償却の基礎知識について分かりやすくまとめています。

中古マンションにおける減価償却費の計算方法について

減価償却の計算方法には建物の購入価格に、建物の耐用年数に応じて決まる償却率を乗じて減価償却費を計算する「定額法」で行います。

  • 中古マンションを購入した際には、まず耐用年数を何年とするかを決め、償却率を求めることが必要
  • 計算方法は、「居住用」か「事業用」かによって異なる

など、減価償却費の計算方法の基本を「2.中古マンションにおける減価償却費の計算方法」で説明しています。

建物の価額が分からない場合の減価償却費は?

建物の価格が分からない場合でも、以下の2つの方法で減価償却を求めることが可能です。

  • 建築費から計算する
  • 消費税率から計算する
大規模な修繕や設備交換を行った場合の減価償却費は?

リノベーション・設備交換費用 × 定額法の償却率で算出できます。

1.中古マンションの減価償却をする際に知っておきたい基礎知識

減価償却とは「資産は年月とともに価値が減っていく」という考え方に基づいて、土地以外の建物や備品、車両などを購入した際、その代金を1度で経費とせずに毎年分割して経費に計上する手続きのことです

価値の減少分を一定のルールをもとに計算したものが「減価償却費」です。

<図 減価償却のイメージ>

たとえば、2,000万円の中古マンションを購入した場合、「今年はマンションの購入金額が2,000万円かかりました」と購入金額の全てを一度に経費計上するのではなく、「今年は200万、翌年に200万、翌々年に200万円…」というように、2,000万円を何年かに分けて少しずつ経費計上するのが減価償却です。

減価償却に関する知っておくべき主なキーワードを、表にまとめました。
後ほどの説明の中にも出てくるので大まかな内容だけでも把握しておきましょう。

【減価償却に関する主なキーワードと内容】
キーワード 内容
減価償却費 1年間における資産価値の減少額を示したもの
減価償却資産 事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などで、一般的に時の経過などによって価値が減っていくとされる資産のこと。
建物購入価額 マンションなどの建築・取得に要した費用のこと。
法定耐用年数 マンションなどの資産を使用できる期間のこと。この期間中に減価償却が適用できる。
償却率 減価償却資産の耐用年数に応じて変化する値。
減価償却累計額 毎年減少していく資産価値の様子を数字で表したもの。資産の減額分を決算の度に減価償却累計額として積み上げていく。
未償却残高 マンションなどの購入金額のうち、まだ減価償却されていない部分のこと。いわば現時点での固定資産の価格ともいえる。

2.中古マンションの減価償却費の計算方法について

ここでは中古マンションの減価償却の計算方法について解説します。
減価償却の方法には「定額法」と「定率法」の2種類があります。

【定額法と定率法の違い】
定額法 定率法
主な特徴 毎年同じ額を経費として計上できる 取得経過年数と反比例して償却額が減る
適用対象 建物・建物付属設備・構造物・ソフトウェア 左記以外のもの(ただし、左記のものも含め、所轄の税務署長に定率法の選定届出をする場合は定率法が適用)

税制によって「平成10年4月1日以後に取得した建物の償却方法は、旧定額法または定額法のみ」と定められているため、マンションの減価償却は原則「定額法」で行う必要があります。

定額法とは、以下のように建物の購入価格に、建物の耐用年数に応じて決まる償却率を乗じて減価償却費を計算する方法です

【減価償却費を定額法で計算する式】
減価償却費=取得価額(取得費用)×償却率

参考:国税庁|「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)

重量鉄骨造または鉄筋コンクリート造マンションの場合に定められている、法定耐用年数と償却率は以下の通りです。
※事業用は異なります。

【鉄筋コンクリートまたは鉄骨鉄筋コンクリート造の耐用年数と定額法償却率】
用途 耐用年数 定額法償却率
重量鉄骨造 34年 0.030%
鉄筋コンクリート造 47年 0.022%

2-1.中古マンションの耐用年数を調べたいとき

中古マンションの減価償却の計算にも償却率を用いますが、償却率は耐用年数によって決まります。
中古マンションを購入した際には、まず耐用年数を何年とするかを決めることが必要です

事業用マンションを取得した場合の耐用年数の求め方には、以下の2通りがあります。

【事業用マンションを取得した場合の耐用年数 求め方】
  • 耐用年数の全てを経過しているケース
  • 耐用年数の一部を経過しているケース

たとえば、重量鉄骨造マンションの耐用年数は34年です。

築35年の重量鉄骨造マンションを購入した場合は「耐用年数の全てを経過しているケース」となります。
その場合の計算式は以下の通りです。

法定耐用年数の全てを経過しているケース
中古マンションの耐用年数=法定耐用年数×0.2

これに対し、築10年の重量鉄骨造マンションを購入した場合は「法定耐用年数の一部を経過しているケース」です。
その場合の計算式は以下のものになります。

法定耐用年数の一部を経過しているケース
中古マンションの耐用年数=
(法定耐用年数-経過年数)+ 経過年数×0.2

法定耐用年数の一部を経過している築10年の重量鉄骨造マンション(耐用年数は34年)を購入した場合の耐用年数は、(34年-10年)+10年×0.2=26年となります。

またその場合、下記の新定額法の償却率一覧より、耐用年数26年の0.039が償却率になります。

【耐用年数ごとの償却率 一覧】
耐用年数 償却率 耐用年数 償却率 耐用年数 償却率 耐用年数 償却率
 - 16 0.063 31 0.033 46 0.022
2 0.500 17 0.059 32 0.032 47 0.022
3 0.334 18 0.056 33 0.031 48 0.021
4 0.250 19 0.053 34 0.030 49 0.021
5 0.200 20 0.050 35 0.029 50 0.020
6 0.167 21 0.048 36 0.028 51 0.020
7 0.143 22 0.046 37 0.028 52 0.020
8 0.125 23 0.044 38 0.027 53 0.019
9 0.112 24 0.042 39 0.026 54 0.019
10 0.100 25 0.040 40 0.025 55 0.019
11 0.091 26 0.039 41 0.025 56 0.018
12 0.084 27 0.038 42 0.024 57 0.018
13 0.077 28 0.036 43 0.024 58 0.018
14 0.072 29 0.035 44 0.023 59 0.017
15 0.067 30 0.034 45 0.023 60 0.017

2-2.中古マンションの減価償却費を算出したいとき

中古マンションにおける減価償却は、上記で求めた償却率を用いて下記の計算方法で求めます。居住用か事業用によって異なります。

【居住用中古マンションの減価償却 計算方法】
減価償却費=
建物購入価額×0.9×償却率×経過年数

また、取得した時期が平成19年3月31日以前と以後では計算方法が変わります。

【事業用中古マンションの減価償却計算方法】
取得した時期が
平成19年3月31日以前のマンション
減価償却費=
(建物購入価額-残存価額)×償却率×業務に供された月数÷12
取得した時期が
平成19年3月31日以後のマンション
減価償却費=
建物購入価額×償却率×業務に供された月数÷12

ただし、平成19年3月31日以前に取得した事業用の中古マンションの場合、法定耐用年数が満了しているかどうかによって、残存価格の計算方法が変わります。

残存価格の計算方法は、以下の通りです。

【中古マンション事業用の残存価額】
経過年数の状況 計算方法
法定耐用年数を満了している 法定耐用年数×0.2
法定耐用年数を満了していない 法定耐用年数-経過年数+経過年数×0.2

残存価額によって減価償却費は大きく変わるため、計算時は注意してください。

3.建物の価額が分からない場合の減価償却費は?

建物の価格が分からない場合でも、以下の2つの方法で減価償却を求めることが可能です。

  • 建築費から計算する
  • 消費税率から計算する

3-1.建築費から減価償却費を求める方法

消費税制度が始まる1989年以前に購入したマンションや、個人から購入した中古マンションの場合、以下のように建築費から減価償却の計算を行います。

まず国税庁が開示している「建物の標準的な建築価額表」をもとに新築当初の建物の建築費を求め、建物価格を算出する必要があります。

【1989年以前に購入したマンションや、個人から購入した中古マンションの「減価償却費」 計算手順】
  1. 新築時の建物価格=
    建物の標準的な建築価額による建築単価×建物面積
  2. 減価償却費=
    新築時の建物価格×0.9×償却率×経過年数

3-2.消費税率から計算する方法

不動産では消費税は建物価格にのみ影響することから、消費税額と消費税率から以下のように減価償却費を計算することが可能です。

【消費税率から減価償却費を算出する計算手順】
  1. 建物価格=
    消費税÷購入当時の消費税率
  2. 減価償却費=
    建物価格×0.9×償却率×経過年数

ただし、マンション購入時期によって消費税率が異なる点に注意してください。

4.大規模な修繕や設備交換を行った場合の減価償却費は?

大規模なリノベーションや設備交換を行った際の減価償却は次のように計算します。

【大規模なリノベーションや設備交換をした際の減価償却金額 計算式】
リノベーション・設備交換の減価償却費 =
リノベーション・設備交換費用 × 定額法の耐用年数に応じた償却率

たとえば

  • 耐用年数が47年
  • 定額法の償却率0.022

の鉄筋コンクリート造マンションの修繕工事を200万円で実施した場合に減価償却費は

200万円×0.022=4万4,000円

となります。

建物だけでなく、電気・照明設備や給排水設備といった建物に付帯する設備の交換などの際にも、上記の計算式から減価償却費を算出できるため、どのくらいの金額が支出として発生するのか経費になるのかを計算して知っておくとよいでしょう。

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