アパートを相続・贈与などで譲り受けたり、土地活用や不動産投資で賃貸アパートオーナーとなった方の中には、さまざまなご事情で賃貸経営を続けるかどうか、悩んでいらっしゃる方も少なくないでしょう。
また、さらなる不動産投資のため、既存の所有物件を売却して資金を作ることを検討されている方もいらっしゃるかもしれません。
「アパートをできるだけ高く売却するには、どうすればいい?」
「売却は実際どのような流れで進むの?」
「一般的な戸建てやマンションの売却と違って、アパートの売却で気を付けなければいけないことは?」
など、さまざまな疑問が浮かぶことでしょう。
本記事は、アパート売却をトラブルなくスムーズに進めたいと願う方のために、アパート売却のタイミングや実際の手順、売却にかかる費用を中心にについて解説します。
また、起こりうるトラブルについてもご紹介し、万全な備えができるよう、ポイントをおさえてまとめています。
万が一、思ったように買い手がつかず、アパートがなかなか売却できない場合にも、オーナーにできる対策があります。
ぜひ参考にしていただき、ベストなタイミングで、スムーズにアパート売却を進められるよう行動をおこしていただければと思います。
1. アパートを売却するなら不動産価値が下がる前に!
アパートを売却するのかしないのかといった判断は、アパートの不動産価値が下がる前に決めたいところです。
周辺の相場や環境、アパートの築年数など、アパート売却のタイミングを見極めるためのポイントをご紹介します。
1-1. 売却価格の相場をチェック
まずは、周辺相場のデータを参考にします。アパートがどのくらいの価格で売却できるか、見当をつけることができるでしょう。
近隣の物件がどのくらいの価格で売買されてきたのかを、チェックすることができる国土交通省の「土地総合情報システム」を活用します。
サイトの使い方を簡単にご紹介いたします。
<国土交通省「土地総合情報システム」の使い方>
URL:https://www.land.mlit.go.jp/webland/
1.「不動産取引価格情報検索」をクリックする
2.調査したい取引時期、物件の種類、地域を選び、「この条件で検索」をクリックする
3.取引価格情報が表示される
表示結果から、売却を希望しているアパートに近い用途(共同住宅)・築年数・構造・面積などがあてはまるものを探します。
直近の時期を選択した場合、データの数が少ないこともありますが、過去の情報(2年分)も参考にしてみるとよいでしょう。
1-2. 周辺環境の変化にも注目する
アパートそのものの価値だけでなく、周辺環境の変化が売却価格に影響することもあります。
例えば、鉄道の新駅が開業する予定や、大規模なショッピングモールの開店予定がある場合、物件の価格は上がることがあります。
逆に、人口流出が激しく、周辺施設の閉鎖・閉店が続いているエリアなら、物件の価値も下がる可能性があります。物件の価値が下がりそうなら、できるだけ早めに売却するほうが安心でしょう。
1-3. 収支予測の結果、支出が上回る場合
もし、オーナーがアパート経営を続けた場合、アパートの法定耐用年数が来るまで(ローン完済まで)に、どのくらいの収入が得られそうでしょうか?修繕費や保険料、管理費などのコストは、どのくらいかかりそうでしょうか?
空室率なども加味して、大まかに計算してみましょう。
予想される収入より、支出のほうが上回るようなら、思い切って早めの売却を検討するほうがよいかもしれません。
1-4. 築年数20年が一つの目安
アパートは建築された時点から、すでに劣化が始まっています。時間がたてばたつほど劣化が進み、老朽化していきます。
また、室内に取り入れている設備も時代遅れのものになったり、外壁の傷みが進み修繕費がかかるようになったりします。
収益物件としての出口戦略で売却を検討される場合は、築年数がおおむね20年を過ぎないタイミングで売却するというのがひとつの目安です。
築年数20年までは、アパートの価値は速いペースで下がりますが、それ以降は価値の下落は緩やかになります。例えば築年数35年、40年となると、売却に多少の時間がかかっても、価値の下落はそう大きくありません。
将来のアパート経営に不安を感じている方の場合も、できるだけ空室が少ない時点での早期売却が得策かもしれません。
一方で、築年数がたちすぎているアパートでも入居率が高く、収支に問題がない場合、売り急ぐよりも、納得の行く取引ができる相手を探すことのほうが大事です。
2. アパート売却の具体的な流れ
アパートの築年数や周辺環境の予測、収支予測などをもとに「アパートを売却する」と決めたら、売却活動のパートナーとなる不動産会社を選び、パートナーシップを築くことが大切です。
この章では、不動産会社とともに、アパート売却を進める6つの流れとポイントを紹介します。
2-1. 不動産売却を依頼する
まずは信頼できる不動産会社や担当者と出会うことが、アパート売却の第一歩です。
不動産会社に「アパート売却を考えています」と相談することから始めるわけですが、1社だけではなく複数の不動産会社の担当者と話してみることが大切です。
会社の知名度や広告宣伝の派手さを基にパートナーを選ぶのではなく
- 物件の周辺事情に精通している不動産会社かどうか?
- 売却の具体的な流れや方針について担当者がきちんと説明してくれるか?
- 想定すべき売却価格について、納得の行く説明をしてくれるか?
- 売却にかかる費用のことも、分かりやすく説明してくれるか?
ということも判断基準として、不動産会社を選ぶことが大切です
- 1分ほどの簡単な入力で個別に複数の不動産会社に売却の相談ができ、個別に出向く必要がありません
- 大手から地域密着型まで1300社もの不動産会社が参画していて全国対応。所在エリア内の適切かつ信頼できる不動産会社と出会えます
- NTTデータグループが運営しているので個人情報のセキュリティーも安心です
19年の実績がある「不動産売却 HOME4U」は、できるだけ高く早くアパート売却をしたいみなさまのニーズにお応えします。
2-2. 媒介契約を結ぶ
売却を依頼する不動産会社が決まったら「媒介契約」を結びます。媒介契約には3つの種類があります。
まずは、下記の表をご覧ください。
専属専任媒介 | 専任媒介 | 一般媒介 | |
---|---|---|---|
2社以上の不動産会社と契約できるか | × できない | × できない | ○ できる |
自分で買主を探して直接取引できるか | × できない | ○ できる | ○ できる |
不動産会社から受ける活動報告の頻度 | 1週間に一回以上 | 2週間に一回以上 | 法令上の定めなし |
不動産会社のレインズ※への登録義務 | 媒介契約から5日以内 | 媒介契約から7日以内 | 法令上の定めなし |
契約期間 | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 | 法令上の定めはないが、行政指導では3ヶ月以内 |
※不動産会社は、媒介契約をすると「レインズ(指定流通機構)」というサービスに物件情報を登録します。いわば業者間ネットワークであり、不動産会社はこのレインズを通して物件情報を共有します。レインズに登録して物件情報が広く行き渡った方が、早く売れる可能性が高まります。
それぞれ詳しくご説明いたします。
2-2-1. 専属専任媒介契約
不動産会社にとってはもっとも拘束力の強い契約です。
1社とのみとの契約になり、他の不動産会社に売却を依頼することができません。また、オーナーが自分で買い手を見つけても、直接取引を行うことはできず、その場合も仲介手数料を支払う必要があります。
不動産会社は、売主への状況報告を1週間に1回以上行う義務があります。
2-2-2. 専任媒介契約
専属専任媒介と同様に、1社とのみとの契約になり、他の不動産会社に売却を依頼することはできません。
ただし、オーナーが自分で買い手を見つけた場合は、オーナー自身が交渉して直接売買契約を結ぶことができます。
家族や親族から買い手が現れる可能性が少しでもある場合には、専任媒介契約を選択しておくと安心です。
不動産会社は、売主への状況報告を2週間に1回以上行う義務があります。
2-2-3. 一般媒介契約
他の不動産会社にも売却を依頼することができます。
もちろん、オーナー自身が買い手を見つけて交渉、直接契約をすることも可能です。不動産会社から売主への状況報告義務はありません。
不動産会社としては、専属専任媒介契約や専任媒介契約、つまりその不動産会社以外に売却活動が任されていない場合、売却が決まれば確実に仲介手数料が入るというメリットがあります。
さらに、買主を見つけることができれば、買主からも仲介手数料がもらえます。そのため、一般媒介契約を結んだ場合に比べて、売却活動にも力を入れてもらえる傾向にあります。
とはいえ、専属専任媒介契約はかなり制約が厳しい契約方法でもあります。オーナー自身がどのような売却活動をしたいか検討し、契約の種類を選ぶことが重要です。
媒介契約は、専属専任媒介契約および専任媒介契約の場合、最長3か月有効と定められています。
一般媒介の場合も、多くが3か月の契約とする傾向があります。
契約期間満了時に更新も可能ですが、3か月内に売却が進まない場合は、不動産会社の変更も検討しておくとよいでしょう。
2-3. 不動産会社の売却活動
媒介契約を結んだら、不動産会社は物件を売却するため、広告などの活動を行います。
不動産会社は、もしもアパートの購入を検討している人がいるなら、その人に購入の打診をします。
その段階で買い手がつかなければ、物件の情報を公開し、チラシやインターネットで広告します。
自社サイトに物件を掲載したり、物件ポータルサイトに情報を登録したりと、徐々に広告する範囲を広げていきます。
不動産会社からの状況報告を受けて、売却が進まないならその理由を考え、解決していきましょう。
物件情報を広く公開しているのに、1カ月ほどたっても問い合わせや内見の希望すらない場合は、広告掲載内容(おもに写真)の再検討に加え、売却予定価格を下げることも検討できるかもしれません。
一方で、問い合わせや内見の希望があるのに、購入者がいない場合は、物件の清掃が行き届いているか、周辺の環境が悪化していないかなど、物件そのものの持つ条件をチェックすると良いかもしれません。
2-4. 買い手が見つかれば売買契約締結
買い手が見つかったら売買契約を締結します。
売買契約の場面では、難しい法律用語や手続きもありますが、不動産会社が多くのことを代行してくれますので、心配はいりません。
ただし、事前にある程度の流れと必要書類については把握しておく必要があります。
<売買契約を結ぶまでの流れ>
- 購入希望者が現れると、仲介業者を通して「購入申込書」あるいは「買い付け依頼書」が届く
- 売買の条件について調整を行う
物件の価格、支払い方法、引き渡し希望日その他の条件を買主から聞きとる。売主は物件の瑕疵(かし)がある場合は必ず伝え、価格などの希望を明らかにした上で、合意できれば売買契約を結ぶ日時場所を決定する。 - 売買契約を結ぶ
約束の日に売買契約書や重要事項証明書をはじめ必要書類を持ち寄り、売買契約を結ぶ - 手付金を受け取る
- 仲介手数料の金額や支払方法を不動産会社に確認し、期日までに支払う
不動産会社から指示された必要書類は、必ず期限までに用意し、不動産会社や買い手に迷惑をかけないようにしてください。
<不動産売却に必要な書類の例>
- 売買契約書、重要事項説明書 …… 不動産会社が用意してくれる
- 売主の身分証明書、実印、印鑑証明書、銀行口座の通帳
- 売主の住民票 …… 登記上の住所と売主の現住所が異なる場合
- 物件の登記済権利書または登記識別情報
- 固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書
- 土地測量図・境界確認書など
- 建築確認済証および検査済証、建築設計図書・工事記録書等
- アパートの使用規約、維持管理費が分かる書類
- 耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書などがあれば
- 地盤調査報告書・住宅性能評価書・既存住宅性能評価書などがあれば
- ローン残高証明書 …… 売主がアパートローンを返済中の場合
2-5. アパートの引き渡し
売買契約を締結したら、いよいよ物件の引き渡しです。
引き渡しとは、不動産の事実上の支配を、売り手(売主)から買い手(買主)に移し、買い手が物件を自由に使えるようにすることです。
不動産会社の指示に従い、必要な書類や現金、鍵などを用意してください。
<売買契約締結から物件引き渡しまでの流れ>
- 司法書士に抵当権の抹消登記や所有権の移転登記などを依頼する
不動産会社が司法書士を紹介してくれることも多いです。 - アパートローンの残債がある場合、繰上返済の手続きを金融機関に相談する
引き渡し日に受け取った売却代金で、アパートローンを全額繰上返済した後、抵当権抹消手続きを行う流れとなるので、その旨を金融機関に事前相談しなければなりません。
引き渡し日当日に行われる手続きは次のようなものです。
- 売主と買主の間で税金などの精算をする
- 売主から買主へ領収証を発行する
- 不動産会社への仲介手数料の支払い
- 司法書士への報酬支払い
- 売主のアパートローンを繰上返済する
- 抵当権の抹消登記完了
- 鍵や重要事項説明書などの引き渡しをする
2-6. 確定申告
アパートの売却で得た所得は「譲渡所得」として計算され、譲渡益(利益)があった場合のみ、所得税や住民税が課税されます。
譲渡損失(譲渡所得がマイナス)※ があった場合は、確定申告は、一般的には必要ありません。
※同年中に売却したその他の不動産の譲渡益と損益通算することは可能。
アパートオーナーが売却により得た所得は分離課税のため、その他の所得(給与所得、事業所得、一時所得、雑所得など)にかかる所得税および復興特別所得税の税額計算とは別途計算し、確定申告します。
税率は、所有期間(短期譲渡所得:5年以下、長期譲渡所得:5年超※)で異なります。
※譲渡した年の1月1日現在
不動産を売却した場合は、売却した年の翌年2月から3月にかけての確定申告期間に、確定申告書に記入し、税務署に提出することになります。
なお、税額についての難しい計算を自力で行わなくても、確定申告時期になると国税庁が開設する「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、スマートフォンやパソコンで簡単に確定申告書を作成することができます。必要な数値を入力すると、納付すべき税額は自動的に計算されます。
3. 不動産売却にかかる費用と期間
不動産売却で収入が得られる一方で、売却には費用もかかります。
測量が必要な場合や、買い手がつくまでに時間がかかる場合もあります。売却で得られる金額と、費用や労力とのバランスを考えて、売却を決めることも大切です。
売却のためにかかる費用の例を紹介します。
- 測量費用
- 印紙税、登録免許税
- 不動産会社への仲介手数料
- 住宅ローン完済に関する費用
- 所得税(売却により利益が出た場合)
3-1. 測量費用
測量にもいくつかの種類がありますが、土地の売却にあたっては、隣接する土地との境界を明確にし、土地の面積を明らかにするための「境界確定測量」が行われることが少なくありません。
特に地価が高い地域では、面積が数平米異なるだけで物件の売却価格が大きく変わってしまうので、まずは測量によって土地の面積を確定させ、トラブルを防ぐことが重要なのです。
測量の費用は、土地の広さや必要な調査、下準備、スタッフの数などによって異なります。
土地の広さが100坪(約330平米)以下で、官民立ち合いで確定測量が行われる場合、費用は60~80万円と言われています。
土地の売却活動にあたり、やはり確定測量図があったほうが、買い手がつきやすいものです。
そして、測量の依頼から境界画定までに3~4カ月かかることも珍しくありません。
売却活動に入る前に、測量を依頼することが望ましいでしょう。
また、測量士の手配などは、オーナー自身が行うこともできますが、不動産会社に依頼できる場合がほとんどです。
3-2. 印紙税、登録免許税
売買契約書に記載される売買金額の多寡に応じて、必要な印紙税の金額も決まります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え 1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
※2020年(令和2年)3月31日までに作成されるものは表の右側の軽減税率が適用されます
参考:国税庁「印紙税額」
売主がアパートローンを利用していた場合は、抵当権の抹消手続きが必要となります。
その際「登録免許税」を負担しなければなりません。
その金額は不動産1つ(土地は1筆)あたり、1,000円と決められています。土地(1筆)とアパートの建物(1個)※の抵当権を抹消する場合は、合計2,000円がかかります。
※土地が複数の筆に分かれている場合もあります。
3-3. 不動産会社への仲介手数料
アパートの売買を仲介する不動産会社の収入となるのが仲介手数料です。
不動産会社に仲介手数料の請求権が生じるのは下記3つすべての要件を満たした場合です。
媒介報酬請求権の3要件
1. 不動産会社と依頼者との間で媒介契約が成立していること
2. その契約に基づき不動産会社が行う媒介行為が存在すること
3. その媒介行為により売買契約等が有効に成立すること
ただし、仲介手数料の支払い時期は、「売買契約時に50%、引渡時に50%」が一般的です。
仲介手数料の上限は宅地建物取引業法により定められています。
仲介手数料の上限額は、即算式と呼ばれる以下の式で求めるのが便利です。
取引額(※) | 仲介手数料(別途消費税) |
---|---|
200万円以下 | 取引額の5% |
200万円超から400万円以下 | 取引額の4%+2万円 |
400万円超 | 取引額の3%+6万円 |
※取引額=売却額(税抜)
3-4. アパートローン完済に関する費用
アパートローンの残債がある場合は、そもそも売却が可能かどうかを融資元の金融機関と相談する必要があります。
売却が可能な場合は、アパートを売却した代金でアパートローンを完済することになります。
固定金利の場合、繰上返済に違約金(もしくは繰上返済手数料など)を設定している金融機関もあります。
違約金の金額は金融機関によって違いますが、残債の2~5%程度を見込んでおきましょう。
また、抵当権を抹消する手続きも必要です。司法書士に報酬を払って依頼することもでき、不動産会社に司法書士を紹介してもらうことも可能です。
3-5. 所得税(売却により利益が出た場合)
アパート売却によって得た利益が、アパートの取得費用や譲渡にかかった費用などの合計額を超えている場合は、所得税の支払いをしなければなりません。
譲渡所得 = 譲渡価額※1-取得費※2-譲渡費用※3
※1 譲渡価額とは売却額です。
※2 取得費とは、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額になります。
※3 譲渡費用は、仲介手数料や印紙税、測量費など、売却に要した費用のことを指します。(ただし、譲渡費用の中には抵当権抹消関連費用は含まれません。)
課税譲渡所得金額に、アパートの所有期間に応じて、次の税率を乗算して求めた金額が所得税額となります。
不動産の所有期間が譲渡の年の1月1日で5年超の場合:長期譲渡所得
課税長期譲渡所得金額×15%=所得税額
不動産の所有期間が譲渡の年の1月1日で5年以下の場合:短期譲渡所得
課税短期譲渡所得金額×30%=所得税額
参考:国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
復興特別所得税に関しては、所有期間に関わらず所得税に2.1%の税率がかかります。
このほか、住民税も支払うことになります。
4. 売却が進まないアパートはどうするか?
なかなか買い手がつかないアパートは、価格を下げて売却するという方法もありますが、それ以外にも、試してみるべき方法があります。
- 不動産会社に買取を依頼する
- 民泊などの経営形態に変える
- 更地にして売却する
上記3つの方法を紹介します。
4-1. 不動産会社に買取を依頼する
不動産会社にアパートの買い手を見つけてもらうのではなく、アパートを買い取ってもらうという方法もあります。
買取であっても、まずは一般的な売却と同じく収益還元法(年間家賃収入÷表面利回り)でベースの価格が算出されます。
建物の状態に加え、周辺環境や相場などから最終的な価格が決まります。
通常の売却に比べ、買取の相場は安くなる場合も少なくありませんが、オーナーに現金収入がもたらされるタイミングは早まります。
また、直接買取であれば、仲介手数料はかかりません。
買取を希望する場合も、できるだけ高く早く売るためには、複数の不動産会社に売却査定と並行して買取査定を依頼することが大切です。
4-2. 民泊などの経営形態に変える
民泊ニーズの高まりと旅館業法の規制緩和などを受け、民泊施設としてアパートを活用していく方法も選択肢の一つとして考えることが可能になりました。
この場合、住宅宿泊事業法(民泊新法)の規定や、地域の条例などにも注意し、民泊化が可能かを事前に十分検討することが必要です。
まず、民泊が可能な物件の条件は「台所、トイレ、浴室、洗面設備を備えた「住宅」であること」です。
そして、民泊新法における住宅の定義は次の通りとされています。
- 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
- 入居者の募集が行われている家屋
- 随時所有者等の居住の用に供されている家屋
1.から3.のいずれかに該当すれば、アパートでも民泊新法にもとづいて届け出を行うことができます。
なお、民泊を運営するには次の条件も満たさなければなりません。
- 民泊の民間営業日数が180日以内であること
- 管理業務を住宅宿泊管理業者に委託すること
ただし、民泊ホスト自身が住宅宿泊管理業者として管理業務を行う場合や、家主居住型民泊で不在になる時間が定められた時間内である場合には管理業務の委託は必要がありません。
国土交通省の民泊制度ポータルサイト「minpaku」にも分かりやすい情報があるので、所有するアパートが民泊に適しているかを確認してください。
営業日数が180日以内に制限されることから、
- アパート経営を続けて継続的に家賃収入を得た場合
- 民泊事業で短期間に絞って宿泊費収入を得た場合
の収支について試算を行い、民泊事業で宿泊費収入を得るほうが有利な場合に、民泊運営を考えるとよいでしょう。
例えば、スキーやスノーボード、マリンスポーツなどの施設が近くにあり、季節限定・一定期間ながら確実に宿泊希望者が増える条件がある場合は、民泊経営のメリットが大きいかもしれません。
4-3. 更地にして売却する
築年数が古く、入居者もあまりいない物件は、建物を解体し、更地として売却する方法もあります。
更地にするには解体費用がかかります。また、入居者に立ち退いてもらう場合は、立退交渉や立退料の負担などが必要になります。
更地にする場合も、売却できる可能性とかかる費用、物件を保有し続けた場合の将来や固定資産税などの負担について、よく検討した上で決断してください。
まとめ
アパート経営は、安定収入を得ながら経営を続ける方法のほかに、売却するという出口戦略もあります。
売却には現金収入が得られるメリットがありますが、費用や労力もかかります。
タイミングの見極め方や具体的な手順を知り、メリットと費用や労力のバランスを考えた上で、売却するかどうか判断してください。
売却を決めたら、信頼できる不動産会社とパートナーシップを築き、売却活動に取り組むことになります。
売却がスムーズに進まない場合は、価格を下げての売却や、不動産会社への買取依頼、民泊への転用、更地にしての売り出しなどの方法を検討するべき時期がきます。
売却活動やいろいろな手続きの流れを知り、不動産会社と協力して売却を進めていきましょう。
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