「【基礎から解説】建て替え・リノベの基礎知識と判断基準」内の、「築40年の実家アパートの、相続に伴う建て替え」ケースを想定した事例集です。築40年のアパートを相続する際一般的に検討されるであろう問題や課題を、建て替えを通じてどのように解決可能かを想定事例を通じて分かり易く理解していただけます。ケース毎に「建て替え前後の家賃や入居率等の比較表」「建て替える事で発生するメリットやデメリット」等も掲載し、建て替え検討時に知りたい情報を取得し易く工夫しています。

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更新日
2024.08.13
カテゴリ
賃貸住宅の建て替え

【想定事例集】築40年アパートの相続・建て替え5例

【想定事例集】築40年アパートの相続・建て替え5例

築40年を超えたアパートをお持ちで相続する予定、もしくは相続した方の建て替えをめぐる想定事例集です。

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「相続したアパートはいくらで建て替えられるの?」「建て替えと修繕の将来的な収益の差を知りたい」という方はご活用ください。

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STEP1
STEP2

1.築40年アパートを将来子供に相続するため建て替えたい

解決したい課題(被相続人)

アパート経営を子供に引き継ぎたいが現状では古いアパートであるため入居率も低く収入も得にくい。
相続税の負担も少なくしておきたい。

想定解決策

相続前に間取りを流行りのものに変え、戸数はそのままの新しいアパートに建て替え空室率を下げることで相続税対策とする。

Before
before
After
after

<想定設定>
被相続人:70代
相続人:40代
残債:なし
立地:東京都武蔵野市三鷹駅から徒歩7分圏内
築年数:43年

【表 建て替え前後アパート比較】
建て替え前 建て替え後
構造 木造 木造
延べ床面積 40坪 40坪
階数 2階建て(2K 4戸) 2階建て(1DK 4戸)
家賃 7.3万円 9万円
入居率 25% 100%
年間家賃収入(実質) 87.6万円 432万円

<想定費用>
立ち退き費用:約40万円
解体費用:約120万円
建築費用:約2,000万円
諸経費:約100万円
合計:2,260万円

立ち退き費用についてはこちら:【基礎から解説】アパート立ち退き交渉の基礎知識。流れ・立ち退き料相場・交渉術を解説

建て替えるメリット

  • 相続税対策になる
  • 耐震性能を上げられる
  • 所得税の負担を減らすことができる

建て替えるデメリット

  • 解体・建築費用がかかってしまう
  • 立ち退きをお願いする手間・費用がかかってしまう

建て替えるとどうなる?

周辺の物件が築浅なものが多いと、古いアパートはどうしても空室率が高くなってしまいます。
ここでは、建物を新しいものにし流行りの間取りにするだけで集客が見込まれる立地である前提で想定しました。

また、入居率が高いと立ち退き料が高額になってしまいますが、入居率が25%と低いので立ち退きにかかる手間や費用を考えても建て替えに適していると考えられます。
建物を新しくして入居率を上げておくと、相続税対策にもなります。

アパートの建築年月日が1981年より前のものであると、新耐震基準を満たしていない物件となる可能性があるので耐震性能をアップさせるという目的からも建て替えた方が安心です。
さらには新しくアパートを建築すると減価償却費を計上できるようになるので所得税を考えた時にもメリットになります。

2.相続した築40年のアパートを建て替えとリフォームで悩み比較した結果、建て替えをするケース

解決したい課題(相続人)

入居率が低く収益にならない上に修繕費もかさむので、アパートの収益を安定して得られるようにしたい。老後の収入源にしていきたい。

想定解決策

今後も長期的にアパート経営をしていくために鉄骨造に建て替える。

Before
before
After
after

<想定設定>
相続人:50代
残債:なし
立地:愛知県名古屋市黒川駅から徒歩10分圏内
構造:木造40年

【表 建て替え前後アパート比較】
建て替え前 建て替え後
構造 木造 鉄骨造
延べ床面積 60坪 60坪
階数 2階建て(1K 8戸) 2階建て(1DK 6戸)
家賃 3.2万円 7万円
入居率 37.5% 100%
年間家賃収入(実質) 115.2万円 504万円

<想定費用>

リフォームする場合
リフォーム費用:約1,000万円
見込める家賃収入アップ:0.8万円(年額76.8万円アップ、10年で768万円アップ)

建て替える場合
解体費用:約240万円
建築費用:約3,600万円
諸経費:約180万円
合計:4,020万円

建て替えるメリット

  • 税金対策ができる
  • 建物の作りを大幅に変えることができる

建て替えるデメリット

  • 解体、建築費用で初期投資費用がかかる

建て替えるとどうなる?

木造アパートの法定耐用年数の22年は過ぎてしまっていますが、新築のアパートに建て替えることで法定耐用年数がリセットされ、減価償却費が計上できるようになり節税対策になります。
厚さ4mm以上の骨格材肉厚にすれば、耐用年数は34年です。
さらにリフォームでは間取りを大幅に変えることは難しいことも多いですが、建て替えれば自由に間取りを変えることも可能です。

どちらが良いか考えてみると、所々に古さがの残るようなテイストをいかした作りにしたい場合はリフォーム、古くささを排除したい場合は建て替えてしまう方がよいと思われます。

この想定事例では、リフォームにかかる費用が家賃収入アップ分で10年以内に回収できません。
10年もたてば基礎が傷んでくることもあり、その際追加の費用が発生する事もありうるので、今時点で建て替えを決断することが賢明かもしれません。

さらに、アパートローンを組むことができれば頭金が少なくてもアパートを建てることができます。

3.築40年の賃貸併用住宅を相続前に建て替えたい

解決したい課題(被相続人)

子供とともに古くなってしまった賃貸併用住宅に住んでいるが入居率は下がる一方。
修繕費も膨大なのでなんとかしたい。相続税対策や、子供がアパート経営を続けていけるようにもしたい。

想定解決策

鉄骨造の賃貸併用住宅にし、間取りを1Kから1LDKに変えて戸数を減らし、入居率を上げ相続税対策。親と子の部屋を分けて将来の収益もアップさせる。

Before
before
After
after

<想定設定>
被相続人:80代
相続人:50代
残債:なし
立地:大阪府千里中央駅から徒歩15分圏内
築年数:44年

【表 建て替え前後アパート比較】
建て替え前 建て替え後
構造 木造 鉄骨造
延べ床面積 45坪 65坪
階数 2階建て(1K 8戸) 3階建て(1LDK 5戸)
家賃 3.8万円 9万円
入居率 37.5% 100%
年間家賃収入(実質) 136.8万円 540万円

<想定費用>
立ち退き費用:約68万円
解体費用:約135万円
建築費用:約4,200万円
諸経費:約210万円
合計:4,613万円

建て替えるメリット

  • 耐震性を上げられる
  • 修繕費を抑えられる
  • 将来の収益を上げられる
  • 相続税対策になる

建て替えるデメリット

  • 解体費用や建築費用がかかる
  • 工事中住むところがなくなる

建て替えるとどうなる?

このアパートは、築44年ということで1981年より前に建築されているので、新耐震基準を満たしていない建物であると考えて良いでしょう。
従って、建て替えによって耐震性能を上げることができるので建て替えには良いタイミングです。
加えて、建物が古くなるとどうしてもかかってくる修繕費の心配も当面しなくてよくなります。

ここで想定している立地は、元々人気があって間取りを流行りのものにすれば自然に入居者が集まるという想定で、従って建て替えをすればそれだけで入居率アップが望め、入居率を上げるとは相続税対策にもなります。
さらに、親と子の部屋を分けて、将来親の部屋を賃貸利用できるようにすることでより収益が見込めます。

一方デメリットとして考えられるのは、建て替え工事中に住む家を確保しなくてはいけないという点が挙げられます。

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4.相続した築40年越えの親の実家をアパートに建て替えるケース

解決したい課題(相続人)

親が住んでいた実家を相続したが遠方であるため自分では利用できない上に、維持管理の手間やコストもかかってしまう。
庭も余っているので有効活用したい。

想定解決策

木造アパートに建て替え、サブリースを利用して管理を任せる。

Before
before
After
after

<想定設定>
相続人:40代
残債:なし
立地:福岡県福岡市天神駅から徒歩13分圏内
築年数:40年

【表 建て替え前後アパート比較】
建て替え前 建て替え後
構造 木造 木造
延べ床面積 30坪 38坪
階数 2階建て 2階建て(1K 6戸)
家賃 5万円
入居率 100%
年間家賃収入(実質) 360万円

<想定費用>
解体費用:約90万円
建築費用:約1,900万円
諸経費:約95万円
合計:2,085万円

建て替えるメリット

  • 家賃収入を得られるようになる
  • 維持管理を不動産会社に任せられる

建て替えるデメリット

  • 入居率が下がるリスクがある
  • 家賃が下がるリスクがある

建て替えるとどうなる?

相続したまま実家をそのままにして住むことがなくても、固定資産税は払わなくてはいけません。
その点アパート経営をすれば、固定資産税を抑えることができます。
アパートを建てることにより、賃料収入が安定して入ってくることになり、収入源になります。

アパートローンを組むことができれば、自己資金が少なくてもアパート経営を始めることができるので自己資金が少ない人でも選択肢になるでしょう。
さらに、サブリースを利用すれば管理を全てまかせることができるので、遠方でも安心してアパート経営ができるようになります。

懸念点は、将来的に入居率などで収入が減少する可能性があるということです。
きちんと計画をたてるとよいでしょう。

5.築40年越えのアパートを建て替えと売却で悩んで売却するケース

解決したい課題(相続人)

相続したアパートが老朽化しているため修繕費がかかる。
建て替えるか売却してしまうか、メリットのある方にしたい。

想定解決策

更地にして売却する。

<想定設定>
相続人:70代
残債:なし
立地:長野県長野市駅からバスで20分圏内
築年数:45年

【表 アパート詳細】
アパートの詳細
構造 木造
延べ床面積 25坪
階数 2階建て
家賃 2万円(1K 4戸)
入居率 50%
年間家賃収入(実質) 48万円

<想定費用>

売却する場合
立ち退き費用:約24万円
解体費用:約75万円
合計:99万円

建て替える場合
立ち退き費用:約24万円
解体費用:約75万円
建築費用:約1,200万円(同じ坪数の木造である場合)
諸経費:60万円
合計:1,299万円

建て替えるメリット

  • 当面は修繕費の心配がない
  • 税金対策ができる

建て替えるデメリット

  • 解体費、建築費がかかる
  • 入居者が集まらないリスクがある

建て替えるとどうなる?

都市部から離れている等、入居者をすぐに集めるのが難しい立地である場合、建て替えには十分な注意が必要です。
新築にすれば満室になるかどうか、厳密なシミュレーションをした方がいいでしょう。

場合によっては建て替えだけでなく、売却も視野にいれることをおすすめします。

売却する場合、築40年越えのアパートはなかなかそのままの状態では買い手が見つかりにくいものですが、ファミリー層が多い場所であれば戸建てとしての需要も考えられるので、更地にして売却するのも一つの手です。
その際は入居者の立ち退き費用と解体費用が必要となります。

どうしても土地を残したい、将来的に収益となればよいと考えているのなら、建て替えてアパート経営を続ける事ももちろん検討すべきですが、売却も視野にいれるべきです。

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