地震に負けない対策をして、競合に差をつけましょう!アパート大家さん必読!耐震診断を受けるかどうかの判断基準・診断の流れ・耐震補強工事をするか建て替えるかの検討ポイントについて、わかりやすくご紹介します。

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更新日
2023.07.20
カテゴリ
アパート経営, 記事

【徹底解説】築古アパートの耐震診断と、補強工事と建て替えの選択基準について解説

【徹底解説】築古アパートの耐震診断と、補強工事と建て替えの選択基準について解説

「南海トラフ地震」をはじめとして、今後30年以内に大きな地震が発生する確率が非常に高いことも予想されています。

震災が原因で居住者が亡くなってしまい、損害賠償問題に発展した古いアパートもあります。
瑕疵(欠陥)のせいでアパートが簡単に倒壊したと見られ、所有者であるオーナーが責任を問われることになりました。

そろそろ建て替えたほうがいいかも?耐震補強工事でなんとかなる?判断のために耐震診断をきちんと受けたほうがいい?
築古アパートを所有されている方の多くが、一度は考えたことがあるでしょう。

いつ次の地震が起こるかはわかりません。まずは今すぐ、ご自分でもできる耐震確認を実施されることをオススメします。

本記事では、「耐震診断を受けるべきかを判断する方法」、「耐震診断の依頼方法や費用と流れ」、「耐震工事と建て替えそれぞれのメリット・デメリット」をご紹介していきます。

最後までお読みいただき、ぜひご自身のアパートで耐震診断を受けるべきかどうか、そして、地震に負けないアパートにするための今後の対応策をご検討ください。

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1. まずは自分で確認!アパートの耐震性がわかる3つの項目

まずは、ご自身で今すぐできる確認項目をご紹介いたします。

確認すべきことは、大きく分けて3つあります。

  • 建築確認の日付(新・旧耐震基準)
  • 建物の構造(法定耐用年数)
  • 見た目でわかる部分(建物の形状・建材)

それぞれ詳しくご説明いたします。

1-1. 建築年が1981年以前かどうか(新・旧耐震基準)

ご自身のアパートの、建築確認の日付をまずは確認ください。

「1981年6月1日以後」であれば、ご安心ください。新耐震基準をクリアしています。
「1981年5月31日以前」であれば、旧耐震基準なので、必要に応じて耐震診断を受けたほうがよいアパートに該当します。

耐震基準は、建物を建てる際に、地震に耐えられる設計・施工を義務付ける法的基準のことで、建築基準法によって定められています。

昔から地震の被害が多い日本ですが、1900年代に入ってから建築のルールが少しずつ制定され、時代とともに耐震設計や耐震性能についての研究が進み、建築に関する法律の制定や改正(基準が上がったり、義務範囲の変更など)が行われてきました。

新耐震基準は、1981年(昭和56年)6月1日に建築基準法の改正により定められました。
震度6〜7程度の地震で損傷しないことが基準とされています。

それ以前の旧耐震基準では、震度5までの地震で倒壊しないことが基準となっていました。
さらに、2000年6月施行の建築基準法改正「2000年基準」で、木造住宅に関してはさらに基準が追加されました。

確認時に注意すべきは、建築確認の日付です。竣工年ではないので、見誤らないようにしてください。
建築確認とは、建てる前に行政から「施工の許可」をもらう公的手続きのことです。「建築確認申請」とも呼ばれています。
建築確認では、ハウスメーカーがつくった設計書類が法律と適合しているかどうかを、自治体や指定検査機関が細かくチェックします。

建築確認の了承を得た日付が「1981年6月1日」以降であれば、その建物は「新耐震基準に則って施工された建物」と見分けることができます。

1-2. 建物の構造から法定耐用年数をみる

「法定耐用年数」を過ぎているかどうかも、耐震性の一つの目安となります。
法定耐用年数とは、国税庁が定めた税制上の耐用年数です。建物の構造ごとに年数は異なります。

【構造別の耐用年数一覧】
構造 耐用年数
木造 22年
鉄骨造(骨格材の厚み3ミリ以下) 19年
鉄骨造(骨格材の厚み3〜4ミリ以下) 27年
鉄骨造(骨格材の厚み4ミリ以上) 34年
鉄筋コンクリート造 47年

このように木造→鉄骨造→鉄筋コンクリート造と構造が頑丈になるにつれて、法定耐用年数も長くなります。

ただし、上記の数字は、建物の「使用期間」を意味する数字ではないので注意してください。あくまで税制上(減価償却上)の耐用年数です。

耐震性の有無を確認できる指標とは限りませんので、目安として捉えるようにしてください。

1-3. 建物の形状・建材から把握する

新耐震基準で建てられていたり、法定耐用年数内だからといって、耐震性に優れているというわけではありません。
同じ耐震基準の建物でも、建物の形状・建材によって耐震性が違ってきます。

見るべきポイントは、形状、柱・壁の多さ、目に見える老朽化です。

(1) 形状が「正方形・長方形」かどうか

正方形・長方形の建物は、そうでない形状より耐震性が優れていると考えられます。
正方形・長方形でない建物とは、コの字型・L字型など凹凸のある形状のことです。
地震のときに、接合部分に負担がかかりやすくなり、損壊の危険性が高まります。

(2) 柱・壁が多いかどうか

柱と壁が多い構造のほうが、耐震性が良いと考えられます。ご自身のアパートの柱・壁の多さをチェックしてみてください。

柱が少ない建物とは、例えば1階にガレージや倉庫など空洞の多い建物です。
1階が空洞だと、柱が少ない分、建物全体を支える力が他の部位と比べて弱くなると考えられます。

壁が多いかどうかもポイントです。ひとつの目安が「ラーメン構造」か「壁式構造」かで確認できます。

「ラーメン構造」とは、柱と梁を組み合わせて室内に極力壁がない空間をつくる工法です。
一方「壁式構造」は、壁と床を組み合わせて建築します。

柱と梁でつくる「ラーメン構造」より、壁と床でつくる「壁式構造」のほうが、地震の揺れを受け止める面積が大きいため耐震性が高いとされています。

(3) 老朽化しているかどうか

建物が老朽化すれば、耐震性は低下します。以下の事が見えたら、老朽化の黄色信号と考えられます。

  • 外壁にヒビが入っている
  • 扉の開け閉めがしにくくなっている
  • 床がたわんでいる

などです。

外壁などの外から見える部分だけでなく、室内に影響が出ている場合も少なくありません。

2. アパートの耐震診断は義務?アパートが被災した場合の責任範囲は?

一部の条件を除いて耐震診断は義務ではありませんが、被災したことによって建物が損壊し入居者・近隣者に危害が及んだ場合、大家さんに責任が生じる可能性があります。

参考:国土交通省「建築物の耐震改修の促進に関する法律等の改正概要

ちなみに耐震診断が義務付けられている一部条件とは、以下の2つを満たしている場合です。(「耐震改修促進法」の改正による)

  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に着工したもの
  • 3階建て以上かつ1000平米以上の賃貸住宅

いずれにしても、被災した内容によっては、大家さんに修繕義務・賠償責任が生じるケースが少なくありません。

どんな内容でしょうか。以下、詳細を説明します。

2-1. 修繕義務の範囲

被災して建物が一部損壊すると、大家さんに修繕責任が生じる場合があります。
それは大家さんが建物の所有者であり、利益を得る立場にあるからです。
借主である入居者の立場では、手に負えない部分がたくさんあります。

電球の交換程度の軽微な修繕とは違い、たとえば「家具の転倒で、フローリングに傷がついた」「屋根材がはがれた、柱が傾いた」など入居者では手の施せない部分は幅広いです。

そのため、大家さんには、民法第696条「賃貸人(オーナー)は、賃貸物(アパート)の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」に基づき、修繕義務が発生するのです。

2-2. 瑕疵(欠陥)が見つかると賠償責任も

恐いのは、建物の倒壊で入居者や近隣住民が怪我をしたり亡くなってしまうケースです。

しかも、同じ「倒壊」でも、もともと耐震性に不備(欠陥)が残る工法が原因で倒壊した場合、所有者として賠償責任を負う可能性が高くなります。

この賠償責任は、民法第717条「土地の工作物等の占有者及び所有者責任」に基づいています。

例えば、1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災では、地震によって3階建賃貸集合住宅が倒壊し、亡くなった1階の入居者4名の遺族がオーナーと仲介不動産会社に3億334万円の連帯支払いを求めた事案があります。

結果、その5割をオーナーが支払うことになりました。(平成11年 9月20日 神戸地裁判決)

判決の分かれ目は、建物に瑕疵(欠陥)があったことでした。
建築当時(昭和39年)の建築基準法例の技術的基準に適合せず、安全性を有していなかったと推測されました。

3. アパートの耐震診断の進め方と注意点

耐震診断を受けると、「現行の耐震性を満たすにあたり、何が足りないか」がわかります。

1章でも耐震診断を受けるかどうかの判断ポイントをご紹介しましたが、診断を受けるべきアパートは、

  • 旧耐震基準で建てられた建物
  • 新耐震基準ではあるが、明らかに古びて劣化している建物

の2つです。
しかし無防備に耐震診断を打診するのは危険です。
まっとうな費用で正確な診断を受けるために、オーナーも事前準備や情報収集が不可欠です。

詳細を紹介します。

3-1. 耐震診断会社の探し方と注意点

では、耐震診断会社はどのように探せばいいのでしょうか。
一から会社を探す場合、目安が3つあります。

  • 自治体に事業者登録している会社
  • 耐震診断、耐震改修技術者としての資格を持っている会社
  • 耐震診断の実績が豊富な会社

上の3つを満たす会社を探すことをおすすめします。耐震診断の世界でも詐欺が少なくないためです。

詐欺会社は耐震性の不安を煽り、相場より高額な診断・改修費用を請求してきます。

例えば「点検商法」といい、「工事をしないと危険」と煽ってリフォームサービスを契約させる被害数は、国民生活センターに寄せられた相談件数だけでも2018年度内で5669件※あります。
※耐震補強工事以外も含む
参考:独立行政法人 国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法

訪問してきた会社の言葉を鵜呑みにするのは危険です。一度冷静になって、先の3つを満たしているかを調べてみてください。

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3-2. 費用相場は?補助金は使える?

耐震診断は安くても数十万円以上かかりますが、自治体の補助金や優遇税制を活用して、なるべく安く実施することをおすすめします。

費用相場は建物構造により異なります。

建物の条件(例) 費用相場
木造で延べ床面積が120平米の在来軸組工法の建物 約20万〜50万円
鉄骨造で延べ床面積が1000〜3000平米の建物 1平米あたり約1000〜3000円
鉄筋コンクリート造で延べ床面積が1000〜3000平米の建物 1平米あたり約1000〜2500円

では、補助金はどのくらい使えるのでしょうか。条件は自治体や建物規模により違いますが、数万円から数百万円の補助を受けることができます。全国のほとんどの自治体で補助事業を実施しています。

また優遇税制も見逃せません。旧耐震基準のアパートを新耐震基準に適合させる耐震改修を実施した場合に限るものの、申請すれば耐震診断を含む一連の改修費用の10%(上限250万円)が、その年分の所得税額から控除されます。

参考:国土交通省「耐震改修に関する特例措置 所得税の特例措置について

3-3. 耐震診断の前に用意するもの

耐震診断にあたり、下記2つの参考資料は極力ご用意ください。

  • 設計図書
  • 検査済み証

これら2種類の書類があると、より精度の高い診断が可能になります。もし手元にない場合は、所管の自治体や建築したハウスメーカーに相談してみてください。

設計図書とは、設計にかかわるすべての情報が凝縮された複数種の書類の束だと思ってください。一般図、構造図、構造計算書、仕様書などがあります。着工前にハウスメーカー(もしくは設計事務所)が作成し、自治体に提出する書類です。

設計図書を受け取った自治体は、法律との照合性を確認し、問題なければ「検査済み証」を発行します。
これがあれば、設計図書の作成日や申請日、許可が下りた日付を確認できます。

この2つがあれば、耐震診断会社も、正確な情報に基づき見積もりをつくることができるのです。

3-4. どんな診断をするの?

耐震診断は大きく3段階あります。

  • 予備調査(書類調査)
  • 現地調査(1次~3次などに分かれる)
  • 耐震診断数値計算

まずは建物の設計図書を診断会社に提出し、書類だけの予備調査を実施、耐震性レベルが判断されます。
レベルに応じて必要箇所の調査を行います。このときに概算見積もりが提出されます。

予備調査を終えると、次は現地調査です。直接現地に赴き、書類だけではわからない現況を調査します。

現地調査での診断内容は、おおむね次の4つ

  • 目視による劣化調査(外観、コンクリートなど)
  • 図面との照合(柱・梁・壁などの断面寸法など)
  • 敷地内と周辺状況(地盤種別、がけ、敷地の傾斜など)
  • はつり調査(構造図面がない場合に、各部材の本数やサイズを調査)

などです。

どの箇所をどこまで詳しく調査するかは、建物の診断レベルに応じて変わってきます。

最終的に耐震性の有無に必要な計算が行われ、総合的な評価および必要に応じて耐震工事の提案をしてもらいます。

4. 耐震工事と建て替え、どちらを選択すべき?

耐震性に問題が見られた場合、診断のあと「耐震工事を受けるかどうか」の判断を迫られますが、悩ましいところです。

「耐震工事をしたいけど改修費が高い…」
「改修費が高額だからいっそのこと新築に建て替えたほうが…」

あらゆる事情が複雑に絡み合います。アパート経営を「事業」と見立てるなら、耐震改修をするか建て替えるかは、そう簡単には下せない判断です。どちらも高額な出費になるからです。

以下、それぞれのメリットとデメリットと判断方法をご紹介します。

4-1. 耐震補強工事のメリットとデメリット

耐震性を高めてくれる耐震補強工事を第一候補とする方が多いかもしれませんが、耐震工事を選択することが果たして正解かどうかはきちんと検討する必要があります。

改修費は、安くはありません。
さらに、今後起こりうる大地震による被害を100%抑えることはできないということも考慮すべきポイントです。

メリット・デメリットをそれぞれ考慮しつつ、所有されているアパートに耐震補強工事をすべきかどうか、それとも次節でご紹介する「建て替え」が良いのかをご判断ください。

メリット

  • 補助金と優遇税制を利用できる
  • 国が定める耐震基準を満たすことができる
  • 耐震性が高まった結果、被災による人命リスクを最小化できる
  • 耐震性向上により、今よりも入居率が上がる可能性がある
  • 将来的にアパートを売却したい場合、今よりも高い値段をつけられる可能性がある

デメリット

  • 震災による損害を完全に抑えることができない
  • 改修費が高額(数百万円かかる場合も)
  • 家賃収入が劇的に増えるわけではない
  • 改修規模によっては入居者に立ち退きを依頼しなければならないケースもある
  • 将来的に建て替える場合、費用回収が終わらず耐震工事費用の出費が無駄になってしまうこともある

どのくらいメリットを享受できるかは、資産状況や経営計画の内容に左右されます。バランスを見ながら判断するべきです。

・耐震工事の予算は利回りを低下させる

耐震工事の平均施工金額は約150万円※と言われています。

アパート経営はあくまで「経営」なので、採算を度外視して耐震工事をするのも考えものです。
一度立ち止まり、アパートの利回りや収支のバランスを見ながら、耐震工事を検討することをおすすめします。

耐震工事をするくらいなら、建て替えをして「耐震性」「入居率」も改善してしまおうと考える大家さんもいらっしゃいます。

※参考:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合「木造住宅耐震診断調査データ 記者発表のお知らせ

4-2. 耐震性の高い新築に建て替えるメリット・デメリット

アパート経営は、20年、30年の長期戦です。耐震性を高めて継続的に安定収入を得るなら、耐震性の高い新築に建て替える選択肢も検討したいところです。

耐震性の高い新築に建て替えるメリット・デメリットをご紹介します。

メリット

  • 最初から新耐震基準で建築できる
  • 基準より高い耐震性の高い設計が可能
  • 家賃が上がり安定収入を得られる
  • 修繕費の増加を抑えられる

デメリット

  • 耐震工事より費用が高い
  • 入居者がいる場合は立ち退き費用がかかる

ご自身で耐震性をチェックし、「築年数が古くなってきたし、そろそろ建て替えどきかも?」と感じた方は、例え迷っていたとしても、アパートの建て替えプランを複数のハウスメーカーや建築会社から提案してもらうと、建て替えの判断が正しいかどうかが明確になることでしょう。

まとめ

いかがでしたか?

耐震性がないと震災の損害責任はオーナーに生じます。人命にかかわれば賠償責任にまで発展するリスクもあるため、耐震診断を軽視するわけにはいきません。

行動の第一歩は、自分で耐震性を確認すること。建築時の書類で「建築確認の日付」を確認し、自分のアパートが旧耐震基準か新耐震基準かがわかれば、大筋の耐震性がわかります。

しかしそれだけでは安心できません。実際に耐震診断を受けてみると、新耐震基準でも、老朽化したアパートの場合、診断内容によっては“黄色信号”が灯される可能性もあるからです。

そして耐震工事を実施したからといって、被災の損害を100%抑えられるわけでもありません。

しかも耐震工事は高額です。それでも改修すべきか、それとも耐震性の高い新築に建て替えるべきか建て替えプランと一緒に比較検討しながら慎重にご判断されることをおすすめいたします。

本記事を参考にして、所有されているアパートにとってベストな決断をしていただき、地震に負けない対策を行ってください。

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