
「耐用年数」とは、アパート等の建物の減価償却費を計上できる期間のことです。
「法定耐用年数」という言い方もあります。
アパートオーナーの方や、これからアパート経営を始めようと検討中の方の中には、「耐用年数を過ぎたらどうなるのか?」と気になっている方もいらっしゃると思います。
アパートは実際には築40年くらいまで稼ぎ続けることができますので、耐用年数を超えても収入を得ることが可能です。
しかしながら、耐用年数を超えてしまうと、その経営の中身が大きく異なってきます。
そこでこの記事では、「アパートの耐用年数」について解説していきます。
この記事を読むことで、アパートの構造別耐用年数や耐用年数の意味、耐用年数が過ぎたらどうなるか、耐用年数を過ぎてもアパートで稼ぐ方法について、知識を得ることができます。
この記事の情報を活かして、長期安定収入のアパート経営を実現させてください。
Contents
1.法定耐用年数の意味
この章では、まず「法定耐用年数の意味」について解説します。
1-1.実際の建物寿命とは異なる
一般用語としての耐用年数には、「建物等の固定資産が使用に耐えうる期間」という意味があります。
すなわち、単に耐用年数というと、建物の寿命期間のような意味も含みます。
しかしながら、耐用年数の中でも、「法定耐用年数」は実際の建物寿命とは異なる年数です。
「法定耐用年数」とは、会計上の減価償却計算を行う法律で定められた期間を指します。
本記事で解説する「耐用年数」は、この「法定耐用年数」のことを指します。
減価償却とは、建物や備品、車両等の固定資産の価値を減少させていく手続きのことです。
法定耐用年数は昔の建築技術を前提に定められた年数ですので、設定された当時は建物寿命と近いイメージの年数でした。
ただし、現代の建築技術は100年建築といった言葉も登場してきており、実際に建物が使える年数は長寿命化しています。
実際の建物寿命は、もはや法定耐用年数以上に長いことが一般的です。
そのため、ほとんどのアパートは耐用年数を超えても全く使えますし、使っても問題ありません。
現代の法定耐用年数は、使用に耐えうる期間ではなく、単なる会計上の減価償却を計算する期間に過ぎないのです。
1-2.減価償却費を計上できる期間
法定耐用年数とは、「減価償却費を計上できる期間のこと」と先ほどお伝えしました。
減価償却費は、建物の資産価値を耐用年数内で少しずつ減らすために生じる会計上の費用となります。
例えば、木造アパートを4,400万円で建てた場合を考えます。
木造アパートの耐用年数は22年です。
減価償却では、ざっくり言うと4,400万円を22年間にわたり毎年200万円ずつ費用とするような会計上の手続きを行います。
減価償却費は費用という名前が付いていますが、実際に毎年支出されるお金ではありません。
建築の初期投資で発生した支出を耐用年数内で費用として配分したものが減価償却費になります。
ただし、支出は無いものの、会計上の費用ではあるため、利益を小さくする効果があります。
税金は利益に対してかかるため、利益が小さくなると税金も少なくなります。
したがって、減価償却費は現金の支出がないにもかかわらず、節税効果はある大変ありがたい存在の費用になるのです。
このような減価償却の計算は、耐用年数内だけ行われることになります。
2.アパートの構造別耐用年数
アパートの法定耐用年数は、建物の構造によって決まります。
構造別の耐用年数は以下の通りです。
構造 | 耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
木造モルタル | 20年 |
鉄骨造(3mm以下) | 19年 |
鉄骨造(3mm超4mm以下) | 27年 |
鉄骨造(4mm超) | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 47年 |
耐用年数は建物の構造が堅牢なものほど長くなる傾向があります。
一般的に、アパートの構造は「木造」または「軽量鉄骨造」が多いです。
木造であれば耐用年数は22年となります。
一方で、軽量鉄骨とはあいまいな表現であり明確な定義はありません。
一般的には鉄骨の厚さが6mm未満のものを軽量鉄骨とすることが多いですが、鉄骨の厚さが4mm未満のものを軽量鉄骨と呼ぶこともあります。
軽量鉄骨よりも厚い鉄骨造のことを重量鉄骨と呼びます。
耐用年数は、アパートローンが組めるローン期間にも関係します。
多くの銀行は、アパートローンの融資期間を耐用年数以内としていることが通常です。
例えば、木造アパートであればローンが組める期間は22年までとしています。
銀行で組めるローンの期間にも影響してきますので、特に軽量鉄骨や重量鉄骨でアパートを建てる際は、ハウスメーカーに鉄骨の厚さを必ず確認するようにしてください。
3.耐用年数が過ぎたらどうなるか
この章では、耐用年数が過ぎたらどうなるかについて解説します。
3-1.税金が高くなる
耐用年数を過ぎると減価償却費が計上されなくなるため、税金が高くなるという性質があります。
個人が行うアパート経営では、税金は不動産所得に対してかかります。
不動産所得とは、利益のようなものであり、その求め方は以下の通りです。
不動産所得の計算式
不動産所得 = 収入金額 - 必要経費
収入金額とは家を貸した時に入ってくる家賃です。
礼金や更新料を徴収している場合には、それらも収入金額に含まれます。
必要経費は、固定資産税や建物の保険料、修繕費、管理費の他、減価償却費も含みます。
ここで、固定資産税や建物の保険料、修繕費、管理費等の実際に支出される費用を「その他の費用」と称し、税金と利益の概念図を以下に示します。
上段は減価償却費がある場合の税金、下段は減価償却費がない場合の税金の関係です。
減価償却費がなくなると、不動産所得(利益)が大きくなるため、税金が大きくなってしまいます。
木造アパートであれば、築22年目と23年目では大きく税金が異なるということです。
一方で、収入に関しては築22年目と23年目ではほとんど変わらないのが一般的です。
そのため、耐用年数の満了前後では、収入は変わらないのに税金だけが途端に増えるという現象が生じます。
耐用年数が過ぎても外見上の見た目は変わりませんが、会計上の中身は大きく変化することになります。
3-2.キャッシュフローが悪化する
耐用年数を過ぎるとキャッシュフローが悪化するという性質があります。
キャッシュフローとは最終的な手残りのことです。
アパート経営では、通常、利益とキャッシュフローが異なります。
その理由はアパート経営には、通常、借入金の元本返済額があるからです。
借入金返済額(元本のみ)は、支出を伴いますが、利益を小さくしてくれる費用にはなりません。
借入金返済額が費用にならないのは、お金の貸し借りは会計上の損益ではないためです。
お金を借りた際、借りたお金が売上として課税されないことと同じです。
借りたときに課税しなかったのだから、返したときも節税できないというのが理屈となります。
キャッシュフローを式で表すと以下の通りです。
キャッシュフロー = 総収入 - その他の費用 - 税金 - 借入金返済額
ここで、耐用年数が満了した後にも借入金の返済が残っている場合の利益とキャッシュフローの変化の違いを下図に示します。
耐用年数満了後は、税金が増えるため、この時点に借入金の返済額が残ってしまっていると、大きくキャッシュフローが悪化することが分かります。
キャッシュフローの悪化を最小限に抑えるには、借入金を耐用年数以内で完済することがポイントです。
4.耐用年数を過ぎてもアパートで稼ぐ方法
この章では、耐用年数を過ぎてもアパートで稼ぐ方法について解説します。
4-1.質の高い建物を建てる
耐用年数を過ぎてもアパートで稼ぐには、施工の質の高い建物を建てることがコツです。
アパート経営では、耐用年数を過ぎると何もしなくてもキャッシュフローが悪化してしまいます。
キャッシュフローの悪化は会計の仕組みの現象なので、ある意味、アパート経営とはそういうものだと割り切るしかありません。
一方で、アパート経営では築年数が増えることで、耐用年数以外の別の問題も生じます。
別の問題とは、収入の下落と費用の増加という2つの問題です。
収入に関しては、築年数の経過により空室が増加し、また賃料も下がることで収入が減少していきます。
費用の増加に関しては、築年数の経過により修繕費が増えることで費用が増加します。
アパート経営では、耐用年数満了によるキャッシュフローの悪化よりも、実は築年数の経過による収入減少と費用増加の方が大きな問題です。
例えば、耐用年数満了の直前に空室がたくさん発生している状況であれば、耐用年数満了によるキャッシュフローの悪化が一層大きな打撃となってしまいます。
しかしながら、耐用年数満了の直前でも満室であれば、耐用年数満了によるキャッシュフローの悪化の影響は最小限に留めることができます。
そのため、築年数の経過による収入減少と費用増加を最小限に留めておけば、耐用年数が満了してもアパートでしっかりと稼ぎ続けることができるのです。
築年数が古くなっても収入減少や費用増加を抑えるには、施工の質の高いアパートを建てることが何よりも大切なことになります。
アパート建築の段階では、投資額を安く抑えようと考えがちですが、同時に40年以上稼ぐ優良資産を築こうとする発想も重要です。
安かろう、悪かろうのアパートを建ててしまうと、結局は稼げなくなってしまいますので、適正価格で良いアパートを建てるようにしてください。
では、どうすれば適正価格で質の良いアパートが建てられるでしょうか?
アパートを賢く建てるなら、まずは「HOME4U(ホームフォーユー)土地活用」を使って、複数のハウスメーカーを比較することをおススメします。
「HOME4U 土地活用」は、国内の大手ハウスメーカーの中から最大7社の提案を受けることが可能です。
各社、建築費や収益計画を盛り込んだ建築プランを無料で提案してくれます。
構造や間取りもじっくり比較して、その中から最も良いプランを選ぶことができます。
大手ハウスメーカーは施工の質が高く、築年数が経過しても修繕費が多発するようなことはありません。
竣工後のサポート体制も充実しており、資産を長期間に渡って優良な状態に維持することができます。
また、大手ハウスメーカーのアパートは居室内に最新の設備が取り入れられるため、入居者の満足度が非常に高いです。
長く満室経営が可能な建物を建てることができますので、アパート建築プランは大手の提案の中から選ぶことをおススメします。
しかも、大手は建てている物件数が多いことから、コスト競争力も高く、実は建築費も安いです。
「HOME4U 土地活用」を使えば、適正な価格で高品質のアパートを建てることができます。
耐用年数満了後のことも考慮し、ぜひ「HOME4U 土地活用」をご利用ください。
4-2.借入金の返済期間を耐用年数以内とする
耐用年数を過ぎても稼ぐには、借入金の返済期間を耐用年数以内とすることが重要です。
アパートローンを組む際は、以下の2つを意識する必要があります。
- 毎年の返済額を「減価償却費以内」とする
- 借入期間を「耐用年数以内」とする
減価償却費と借入金返済額は相反する性質を有します。
減価償却費は支出を伴わないにもかかわらず費用となるため、節税効果のあるお金です。
それに対して、借入金返済額は支出を伴うにもかかわらず費用とはならないため、節税効果のないお金になります。
よって、減価償却費と借入金返済額を同額にすると税引き後の利益とキャッシュフローが同額になるという性質があります。
キャッシュフローを、少なくとも税引き後の利益以上に得たい場合には毎年の返済額を「減価償却費以内」とすることが必要です。
また、耐用年数が過ぎても借入金の返済額が残っていると、キャッシュフローが急激に悪化します。
耐用年数満了後における急激なキャッシュフローの悪化を防ぐには、借入期間を「耐用年数以内」とすることも必要です。
一般的に、多くの銀行がアパートローンは耐用年数以内でしか組めないことになっています。
ただし、一部の金融機関では耐用年数以上の年数でアパートローンを組める銀行もあります。
アパートローンは長期で組むほど毎月の返済額を小さくすることができますので、年間のキャッシュフローを増やせるメリットがあります。
アパートローンを組む方の中には、耐用年数以上で組める銀行を探して長期ローンを組んでしまう人もいます。
しかしながら、耐用年数を超えた期間でアパートローンを組んでしまうことは、耐用年数満了後のアパート経営を苦しくさせる原因となってしまうのです。
耐用年数を過ぎた段階で、急激に稼げなくなってしまいますので、アパートローンは耐用年数以内で組むことが基本となります。
まとめ
いかがでしたか。
アパートの耐用年数について解説してきました。
法定耐用年数は減価償却を計上できる期間を定めたものです。
実際に建物を使用できる期間とは異なります。
耐用年数が過ぎると、「税金が高くなる」、「キャッシュフローが悪化する」といった2つの現象が生じることを覚えておいてください。
耐用年数を過ぎてもアパートで稼ぐには、質の高い建物を建て、借入金の返済期間は耐用年数以内とします。
これからアパート建築を検討されている方には、「HOME4U 土地活用」を使って、優良施工の大手ハウスメーカーをじっくりと比較して、良質なアパートを適正価格で建築することをおススメします。
耐用年数の意味をしっかりと理解して、長期に亘って稼ぎ続けるアパート経営を実現させてください。
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