土地活用の手法の一つに「等価交換」があります。
等価交換
土地所有者が土地を出資し、開発事業者(デベロッパー)がその土地の上に建てる建物の建築費を出資し、完成した建物と土地を出資比率に応じて分割して所有する形態の事業。
等価交換では、建物を建築する主体が土地活用のプロのデベロッパーであることが多いため、安心して事業を任せることができるというメリットがあります。
一方で、建物完成後、建物の床をどれだけ所有できるかは専門的な知識を必要とするため、任せきりにしてしまうと土地所有者が損をしてしまうこともあります。
デベロッパーに対し、正当な主張をして、多くの賃貸可能な床面積を確保するには土地所有者にも最低限の理論武装が必要です。
そこで、この記事では土地所有者向けに等価交換について解説します。
等価交換とは何かという基礎的な内容から、土地所有者にとって重要となる還元床の計算方法に至るまで、一通りの知識をご紹介します。
等価交換とは?
等価交換のやり方は?
等価交換のメリットは?
等価交換のデメリットは?
等価交換には3つのデメリットが挙げられます。
- 還元床の決定にかなりの労力を要する
- 権利が複雑化する
- 土地を手放さなければならない
見逃してはいけないデメリットは「等価交換の3つのデメリット」でご確認ください。
等価交換に向いている人は?
等価交換での土地活用に向いているのは以下のような方です。
- 集客力のある所有地があるが自己資金を持ち出したくない
- 土地活用に詳しくないが土地はある
- 相続後を視野に入れた対策をしたい
事例も交えて「【判断基準】等価交換での土地活用に向いている人」で紹介しています。
等価交換が本当に最適?
詳しい解説は以下
目次
1.等価交換とは
立場別に見る等価交換
土地所有者 |
---|
<すること>
<どうなる?>
|
デベロッパー |
---|
<すること>
<どうなる?>
|
等価交換とは、土地所有者が土地を提供し、デベロッパーがその土地の上に建物を建て、同じ建物と土地を提供した土地の価値の割合で分けて所有する形態の事業です。
土地所有者は、形式的に土地の一部を売却して、これと等価の建物の一部を取得することになります。
等価交換は、立地の良い場所に大きな土地を有している人が行うことがほとんどです。
建物そのものには用途制限はありませんが、オフィスビルやマンションなどの大型建物を建築できるような土地で活用されています。
ほとんどの等価交換のきっかけは、資本力のある大手デベロッパーからの提案であることが現状です。
等価交換による土地活用では以下のような方法がとられます。
- オフィスビル経営
- 分譲マンション売却
オフィスビルの場合、竣工後は、土地と建物を元々の土地所有者とディベロッパーで共同所有することになります。
共有とするか、区分所有とするかは、協議によって自由に決めることが可能です。
一方で、マンションの場合、竣工後はディベロッパーの所有部分は分譲マンションとして売却し、土地所有者の所有部分は賃貸マンションとして賃貸するケースが多いです。
マンションの場合は、分譲や賃貸で利用を明確に分けるため、竣工後は部屋ごとの区分所有で所有するケースがほとんどになります。
コラム ~等価交換と税務上の交換との違い~
等価交換では「交換」という言葉が使われます。等価交換で使われる交換は、一般用語であり、税法上で使う交換とは異なります。
税法上の交換は、「土地と土地」、「建物と建物」といった同種の不動産を交換することを交換と呼んでいます。
土地と土地等の同種の建物の交換に関しては、「固定資産の交換の特例」という税法上の特例が使えます。
それに対し、等価交換では土地と建物という異種の不動産を等価で交換します。そのため、「交換の特例」は使えません。等価交換で使う特例は「買換えの特例」です。
等価交換では、土地を売却して、売却収入で建物を取得するという解釈がなされます。
そのため、等価交換は税法上では不動産の買換えに該当します。
交換の特例も買い換えの特例も、「課税の繰り延べ」を行うための特例です。
課税の繰り延べとは、売却のアクションで税金をかけることはせず、その物件が、将来、本当に第三者に普通に売却するときに課税を行うことを指します。
2.等価交換の仕組み
等価交換は、最終的に土地と建物をデベロッパーと共同所有します。
共同所有するまでのプロセスには、「全部譲渡方式」と「部分譲渡方式」の2つの方式があります。
2-1.全部譲渡方式
全部譲渡方式では、土地所有者が等価交換事業で使う土地を、一旦全てデベロッパーへ売却します。その後、建物完成後に売却した土地価格に見合う部分の「土地と建物」を購入します。
一旦、全て土地を譲渡することから、全部譲渡方式と呼ばれています。
全部譲渡方式が選ばれるのは次のようなケースです。
- 土地活用を考えている土地の権利者が複数名存在する
土地の権利者が複数名存在すると、建物の竣工までに権利者の誰かが亡くなって相続となったり、破産したことで第三者へ売却されたり等の事象が発生する可能性があります。
事業の遂行に支障が生じ懸念がある場合には、全部譲渡方式が採用されることがあります。土地所有者が単独で、かつ与信の高い人であれば、全部譲渡方式はあまり採用されません。
全部譲渡方式は、土地所有者が一度全部土地を譲渡し、その後、土地と建物を買い戻します。
土地に関しては、再購入のときに不動産取得税および登録免許税が発生してしまう点がデメリットです。
2-2.部分譲渡方式
部分譲渡方式とは、土地所有者がデベロッパーから取得する建物代金に相当する一部の土地だけを売却する方法です。
最終的に土地所有者とデベロッパーで建物を4:6の割合で持つとしたら、60%の土地をデベロッパーに売却します。
土地の一部だけを売却することから、部分譲渡方式と呼ばれています。
通常、等価交換事業はこの部分譲渡方式が採用されることの方が多いです。
部分譲渡方式であれば、土地を再購入して不動産取得税等が課税されることがないため、土地所有者にメリットがあります。
等価交換事業は、デベロッパーからの提案がほとんどであるため、全部譲渡方式のように土地所有者に余計な負担がかかるような方式は使われないのが通常です。
ただし、部分譲渡方式では、一部売却のときまでに、竣工後の建物の所有比率をしっかり決めておく必要があります。
コラム ~建設協力金方式との違い~
土地所有者が何もせずに建物を建てて土地活用する手法として、建設協力金方式というものがあります。
建設協力金方式は、コンビニやロードサイド店舗等の商業系の建物で採用されることが多いです。
テナントに任せっきりで事業ができるため、雰囲気は等価交換事業と似ています。建設協力金方式はテナントが一度土地所有者に建物代金を貸し出し、土地所有者が建物発注者となり建物を建築する方式です。竣工後は、テナントの賃料からテナントに対して建物代金を返済していきます。
ざっくり言うと、建設協力金方式は、テナントからお金を借りて、完全所有の建物をテナントに建ててもらう事業です。
それに対して、等価交換方式は、土地の一部をディベロッパーに売って、ディベロッパーと共同所有の建物を得る事業になります。
3.等価交換の3つのメリット
等価交換のメリットとしては、主に以下の3点があります。
- 借入金が発生しない
- デベロッパーに全て委ねることができる
- 税金対策として利用できる
3-1.借入金が発生しない
等価交換では、土地を一部売却して建物を購入していることになります。
そのため、借入をせずに建物を購入して事業を始められるというメリットがあります。
ローンと金利リスクが切っても切れない関係です。
分譲マンションなどを建てる場合、借入金も膨大になるため、リスクも高まります。そうしたリスクを回避できる点がメリットと言えるでしょう。
バブル崩壊後の金利が高くデフレ基調の時期には、借入せずに事業ができる等価交換はかなり重宝される時代がありました。
借金はお金ですので、デフレ環境では借金をすると時間とともに借金の重みが増していきます。
借入をしなくても事業ができる等価交換は、デフレになるとブームになる傾向です。
3-2.デベロッパーに全て委ねることができる
等価交換はデベロッパーが主体となって事業を進めるため、土地所有者は、基本的に不動産経営に無頓着でも事業を始められるというメリットがあります。
ゼネコンとの建築費交渉や工事中の行政手続きの対応もデベロッパーへ委ねることができます。
等価交換は、特に立地が良く大きな敷地で行われることが多いです。立地が良く大きな敷地においては、相応の規模の建物を建てられます。
ところが、個人にとっては、大きな建物を建てることは事業規模が大きくなり過ぎるため、不安も大きくなるでしょう。
経験豊富なプロのデベロッパーが事業に参画してくれることは、かなり大きな安心感につながります。
つまり、等価交換では、プロの知恵が詰まった建物になるため、労せずして資産性の高い建物を手に入れることが可能です。
3-3.税金対策として利用できる
等価交換では概念上で土地の売却が発生しますが、その時の譲渡所得税の納税を先送りできるメリットがあります。
節税効果はありませんが、現金かそれに代わるものでの納付が原則の所得税納税においては、納税のための現金を用意する必要がなくなります。
等価交換では、現金の授受は発生しません。よって、もし譲渡所得税を納めるとなったら納税のための現金を用意する必要があります。
しかし、買換えの特例が適用されれば納税を先送りでき、本当に売却となったときに備えておくことが可能です。
4.等価交換の3つのデメリット
等価交換のメリットとしては、主に以下の3点があります。
- 還元床の決定にかなりの労力を要する
- 権利が複雑化する
- 土地を手放さなければならない
4-1.還元床の決定にかなりの労力を要する
等価交換は建物の所有割合を決めるまでの協議が非常に労力を要するというデメリットがあります。
等価交換で収益を向上させるためには、いかに還元床を多くするかが鍵を握ります。建物の還元床が多いほど儲かるのはデベロッパーも同じです。お互い多くの還元床が欲しいため、なかなか話がまとまりません。
合意に至るまでは、何度も協議を繰り返すこともあり、他の土地活用方法より事業が始まるまで時間を要するのが一般的です。
還元床を求めるにあたっては、土地の評価額を決める必要があります。簡単に言うと、土地の評価額が高い方が還元床は多くなります。
すると、土地所有者側は高い土地の評価額を主張し、デベロッパー側は低い土地の評価額を主張しあうため、話がまとまらなくなります。
実際の等価交換の現場では、土地所有者とデベロッパーが何度も飲み会を開き、仲良くなって妥結に向かうということも多いです。
4-2.権利が複雑化する
2つ目のデメリットとしては、共同所有のビルとなるため、権利が複雑化するという点です。
オフィスビルの所有形態を共有とする場合、自由に売却できなくなるリスクがあります。
共有物件の売却は、共有者全員の同意が必要です。
将来、お金に困って物件を売却したいと思っても、デベロッパーの同意を得られず換金できないということもあり得ます。
一方で、マンションのように区分所有で物件を持つことになっても、権利は複雑化していることに変わりはありません。
区分所有となれば区分所有規約等が必要となってきます。
大規模修繕も勝手に行うことはできないため、建物の区分所有等に関する法律に従った対応をすることになります。
いずれにしろ、等価交換は、せっかくの土地をわざわざ複雑な権利にして建物を建てるということです。
等価交換は長きに渡る共同事業となりますので、慎重に検討した上で決断するようにして下さい。
4-3.土地を手放さなければならない
等価交換は土地の一部を失うことを前提として成り立つ仕組みで、将来的に見ると土地をもつオーナーとしては最大のデメリットとなり得ます。
土地の権利の一部を失うことで全体的な土地の利用についても独断で決めることができなくなります。
もし土地全体を所有し続けていたら可能であった土地活用も実現できません。
土地は大きな土地ほど収益性が高くなる傾向があります。特に等価交換の候補となりうる土地の場合はその傾向が顕著です。
等価交換で手放した土地を買い戻すことはほぼ不可能と言えるでしょう。土地を手放す前に他の可能性も十分に検討することが重要です。
資金が少なくてもできる土地活用方法はこちらで紹介しています。ぜひご一読ください。
5.【判断基準】等価交換での土地活用に向いている人
等価交換はまず、土地の売却手続きをしてから事業展開していくため、後戻りはできません。本当に等価交換が有用なのか、どのようなケースで選択されているのか、解説します。
紹介するのは以下の3つのケースです。
- 自己資金を持ち出したくない
- 土地活用に詳しくない
- 相続の対策をしておきたい
5-1.集客力のある所有地があるが自己資金を持ち出したくない
- 活用できる大きな更地を持っているものの自己資金を用意できない
- ローン返済リスクを負いたくない
などという理由から土地活用に二の足を踏んでいる場合、等価交換は有用な選択肢となります。
土地活用では初期費用の一部をローンで工面することも少なくありません。特に等価交換が実現するような土地で土地活用する場合、初期費用の負担は大きいものです。
等価交換では、土地所有者は土地を提供するだけで自己資金の持ち出しはありません。
土地活用にかかる建築費などの初期費用は全てデベロッパー任せです。したがって、規模の大きな土地活用でもローン返済リスクゼロで始められます。
5-2.土地活用に詳しくないが土地はある
- どのような土地活用が所有地に合っているか分からない、決められない
- 本職が忙しく、土地活用を検討している時間があまりとれない
といった場合には、土地活用方法の決定からプロに任せられる等価交換が向いています。
土地活用には、アパート・マンション経営、テナント経営、オフィスビル経営などさまざまで、それぞれの経営手法は異なるものです。
大きなお金を動かす分リスクも負わなければならず、投資と共通する側面もあります。
等価交換では、土地活用のプロであるデベロッパーが中心となって事業を進めます。
十分な収益を安定的に上げられる土地活用の選択、ニーズに合った物件の建築など、デベロッパーのノウハウを生かした土地活用が自有の物件で実現でき、安心です。
5-3.相続後を視野に入れた対策をしたい
「所有している土地が1ヶ所だけで、相続となった場合には複数の相続人でもめる可能性がある」といった場合、等価交換で不動産の分割を容易にする方法も考えられます。
土地の分割相続は意外と難しいものです。相続人が多く、分割すると小さくなってしまう場合などは土地活用の可能性も狭めることになりかねません。
こうした場合に等価交換でデベロッパーの資本でマンションなどを建築し、複数戸を区分所有しておけば、分割相続しやすくなります。
また、更地のまま相続するより賃貸物件を建てておくほうが、土地の評価額が下がるため相続税節税効果を見込めます。
土地が絡む分割相続についてはこちらで詳しく解説しています。
6.等価交換事業の流れ
等価交換は、デベロッパーからの提案が持ち込まれることがほとんどです。
そこでデベロッパーからの提案に基づく等価交換事業の流れを以下に示します。
等価交換は希少性の高い良い土地で行われることが多く、デベロッパーからは購入の打診もあります。
土地所有者に売却の意向がない場合、別の選択肢として等価交換の提案もあるという流れが一般的です。
等価交換では、デベロッパーの提案を十分に検証することがとても大切です。特に、還元床がどの程度になるかというのが重要になります。還元床が多ければ、土地所有者の収入が増えます。
等価交換は長きに渡る共同事業となりますので、慎重に検討した上で決断するようにして下さい。
話をスムーズに進めるためには、第三者の不動産鑑定士をコンサルティングとして入れておくと無難です。
尚、等価交換事業は、協議が長期化してしまうと、その間に土地価格や建築費が変動するため、当初の計画がズレてしまうというデメリットがあります。
慎重に検討することは重要ですが、長引かせることにメリットはありません。もし、等価交換事業が一番良いという判断があれば、早めに基本合意まで話をまとめてしまうことも重要なポイントです。
基本合意が締結した後は、その後の手続きはほとんどデベロッパーが行ってくれます。
建築費が確定すると、出資額が確定しますので、還元床が何平米になるか決められます。建築費が確定した段階で、等価交換契約を締結します。
土地所有者は建物竣工まで、特に何もやることはありません。建物が竣工したら最後に権利の移転で土地と建物を交換し、等価交換事業の完了となります。
7. 収益にかかわる還元床面積の求め方
土地所有者が最終的に保有する賃貸可能な床面積を還元床と呼びます。
還元床面積は収益に直接影響するものです。ここでは交渉時のポイントとなる還元床面積の求め方を紹介します。
7-1.還元床面積とは
等価交換では、最終的に土地所有者も建物の一部を所有します。
- 還元床は、土地と建物を等価で交換した結果、還元される床
という意味です。還元床では、最終的に建物の権利の割合と土地の権利の割合を同じにします。
建物の権利の割合と土地の権利の割合を同じにしないと、一部、借地のような関係が発生し権利が複雑化するため、通常は建物と土地の権利の割合は同じです。
以下は土地所有者、デベロッパーともに50%ずつの保有の場合です。
建物を土地所有者が50%、デベロッパーが50%ずつ保有した場合、土地の所有権割合も50%、50%となります。
仮に、建物を土地所有者が10%、デベロッパーが90%持っているにもかかわらず、土地の所有権割合を50%、50%としてしまうと、デベロッパーが土地の40%部分を借地するということになります。
建物を所有する人は、必ず土地に対して所有権または借地権といった権利を有する必要があります。
建物の権利の割合と土地の権利の割合が異なると、一部に借地が発生しますので、土地と建物の権利割合は同じにするのが基本です。
還元床面積を決める方法としては、「出資比率による方法」と「売価還元による方法」の2つの方法があります。還元床は求める方法によって得られる床面積が異なってしまいます。
デベロッパーが提示してくる還元床が、デベロッパー側に有利となっている場合もありますので、土地所有者としては注意が必要です。
7-2.出資比率による方法
出資比率による方法とは、土地所有者とデベロッパーの出資額の比率で案分する方法です。
土地所有者の場合の出資は、お金を出す出資ではなく、土地を提供する「現物出資」のことを指します。つまり、土地所有者の出資額とは、「土地価格」のことになります。
以下のような具体例で、還元床を計算します。
<設定条件>
- 建物の総専有面積 = 3,000平米
- 土地所有者の出資額(土地全体の評価額) = 3億円
- デベロッパーの出資額(建築費総額) = 6億円
土地所有者の取得専有面積 | = 3,000平米×{3億÷(3億+6億)} = 3,000平米×(1/3) = 1,000平米 |
---|
ディベロッパーの取得専有面積 | = 3,000平米×{6億÷(3億+6億)} = 3,000平米×(2/3) = 2,000平米 |
---|
建物の還元床は、「専有面積」を基準とするのが注意点となります。専有面積とは、廊下やエレベーター、階段等の共用部分を除く、実際に賃貸や売却の対象となる面積のことです。
出資比率による方法でキモとなるのは、土地の評価額になります。
土地の評価額が高ければ、その分、得られる還元床も大きくなります。
双方で納得のいく土地評価額を求めるには、不動産鑑定士に共同発注で鑑定評価を依頼して、第三者の立場で価格を評価してもらう等の工夫が必要となります。
7-3.売価還元による方法
売価還元による方法とは、
- デベロッパーの必要な売上高を確保できる専有面積を計算に用いる
還元方法です。
デベロッパーが出資した建築費総額と適正利潤の回収に必要な売上高を算定し、デベロッパーがその売上高を確保できる専有面積を取得します。土地所有者はその残りの床面積をもらうという配分です。
この方法は、等価交換事業によってマンションを建てる場合に使われることがあります。
以下のような具体例で、還元床を計算します。
<設定条件>
- 建物の総専有面積 = 3,000平米
- デベロッパーの出資額(建築費総額) = 6億円
- デベロッパーの適正利潤 = 20%
- マンション平均分譲単価(平米) = 50万円
ディベロッパーの必要売上高 | = 6億円 ÷ (1 – 0.2) = 7.5億円 |
---|
ディベロッパーの必要床面積 | = 7.5億円 ÷ 50万円 = 1,500平米 |
---|
土地所有者の還元床面積 | = 3,000平米 – 1,500平米 = 1,500平米 |
---|
デベロッパーの適正利潤とは、マンションデベロッパーが分譲マンション事業で確保する利益率のことを言います。
マンション平均分譲単価とは、分譲マンションの販売価格の面積単価の平均価格です。
80平米のマンションでは平米単価50万円で4,000万円の新築マンションということになります。
売価還元による方法では、「デベロッパーの適正利潤」と「マンション平均分譲単価」の2つの設定がキモになります。
「デベロッパーの適正利潤」と「マンション平均分譲単価」の数値次第で、土地所有者の還元床面積が大きく変わってしまいます。
適正利潤は、土地所有者にとっては本当に適正なのか見えない部分ですので、納得しにくい数値です。
また新築マンション価格は年によって大きく変動するため、基本合意時に適正なマンション平均分譲単価を設定しにくいというデメリットがあります。
売価還元による方法は、基本的にはデベロッパー目線で還元床が計算されることになります。
尚、たまたまですが、上述の例では売価還元による方法を採用しても、売価還元による方法の方が、出資比率による方法よりも多くの還元床が取得できました。
そのため、本ケースの場合は、売価還元による方法を採用した方が土地所有者に有利な結果となっています。
7-4.マンションの還元床の注意点
還元床を決めたとしても、マンションの場合には場所や階数によって還元床の価値が異なるため、分け方には注意が必要となります。
例えば、建物の総専有面積が3,000平米のマンションを、土地所有者AとデベロッパーBで1,500平米ずつ分ける場合を考えます。
10階建てだった場合、例えば1~5階をAに、6~10階をBに分けてしまうようなことがあると、面積は同じであっても価値が異なるため、不平等な分け方となります。
マンションは、階数が高いほど高く売却できます。またバルコニーの向きも南側が一番高く、その次は東、西、北の順番で価格が下がります。
角部屋であれば中間部屋よりも価格が高いです。さらに4LDKと2DKでは、面積の小さい2DKの方が単価は高くなるというようなこともあります。
1,500平米ずつ分けるという話になれば、きちんと価値も等分になるような形でマンションを分けることが必要となります。
尚、マンションの総面積は3,000平米であっても、半分に部屋を分けようとしたら、1,520平米と1,480平米にしか分けられないということも当然にあり得ます。
このような場合には、実際にはどこか部屋を両者で売買することによって精算し、綺麗に分割した形で分けることになります。
そのため、還元床を求める方法で求めた理論上の還元床が、そのまま最終床になるとは限らないというケースは多くあります。
8.等価交換で迷ったら相談できる土地活用会社を選ぶポイント
等価交換は、デベロッパーが主体となり、デベロッパーと共同所有の土地建物を建築する土地活用です。
等価交換方式のメリットは、借入もなく、デベロッパーに全て委ねて事業を行うことができるという点です。デメリットは、還元床の決定までにかなりの労力をようすることと、権利が複雑化してしまうという点になります。
土地活用の知識がなくても不動産投資で収益を上げられるのが等価交換の良いところではあるものの、通常の土地活用でもリスクとしっかり向き合うプランを実現させることで長期安定収益が見込めます。このときに頼りにできるのが、実績豊富な土地活用会社です。
土地活用会社によってさまざまなプランが出てきます。そのプランを比較しつつ企業の姿勢を見極めることで、土地をすべて所有したままでも、最低限の知識でも土地活用を成功させることは可能です。パートナーとなる土地活用会社を選ぶポイントはずばり
- 提示される経営プランシミュレーションに実現性があるか
です。分からないことがあればしっかり質問し、不安に思うことは相談します。
きちんと土地の特性と向き合ったプランであれば、担当者もしっかり答えることができるものです。土地活用プランは複数比較してみることをおススメします。
プランの比較検討にぜひご活用いただきたいのが「HOME4U(ホームフォーユー) オーナーズ」です。「HOME4U オーナーズ」では厳選された専門企業から土地活用プランを一括で取り寄せることができます。
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複数の企業から土地活用の提案を受け、その中から、「収益性の高いものがいい」「手間がかからないものがいい」「初期投資が少ないものがいい」といったオーナーの希望に合うものを選べば失敗を回避できます。
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