
この記事では「木造アパートの建築費相場やメリット・デメリットを知って、アパート経営の参考にしたい」という土地オーナーのために、木造アパートの特徴と建築にかかる費用をくわしくお伝えしていきます。
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1.木造アパートのメリットとは
アパートといえば、一昔前は木造が一般的でした。
しかし、昨今では木造アパートは減少傾向にあります。国土交通省の「住宅・土地統計調査」によると1993年から2013年にかけての20年間で、木造以外の共同住宅が約13%増加しています。
調査年 | 借家総数(戸) | 非木造化率(%) | |
---|---|---|---|
うち民営借家(戸) | |||
1993年 | 10,916 | 4,895 | 23.8 |
1998年 | 13,359 | 6,473 | 26.6 |
2003年 | 15,703 | 7,473 | 29.1 |
2008年 | 17,940 | 8,768 | 31.1 |
2013年 | 19,324 | 9,946 | 37.1 |
出典:国土交通省「令和4年度 住宅経済関連データ」より作成
住宅ストックの推進により、住まいに耐震や断熱などの性能が求められるようになったことも木造アパートが減少している理由のひとつと考えられます。
しかし、木造だからといって必要な性能を満たしていないわけではなく、木造には木造ならではのよさがあります。
そんな木造アパートのメリットについてお伝えしていきます。
1-1.初期費用が割安
国土交通省の共同住宅着工統計をみると、木造アパートの1平米あたりの工事費予定額(平米単価)は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造のアパートに比べて3割ほど低くなっています。
1平米あたり工事費予定額(万円) | |
---|---|
木造 | 17 |
鉄筋コンクリート造 | 24 |
鉄骨造 | 23 |
出典:国土交通省「建築着工統計調査 / 住宅着工統計(2019年調査)」より作成
ただし、デザインに凝りすぎたり内外装や設備を手当たり次第にグレードアップしたりすると、木造でも鉄骨や鉄筋コンクリートなみに工事費が上がってしまうこともあります。費用対効果を考えて計画しましょう。
1-2.維持管理がしやすい
どのような建物でも、外壁の塗装やコーキング(目地)の補修といった定期的なメンテナンスは必須です。年数がたてば、内装や設備のリフォームも必要になります。
ただし、構造や施工方法によっては壁の移動や配管位置の変更が難しく、そのような場合は自由にリフォームができません。
その点、木造であれば壁の移動も水まわりの移動も比較的容易なので、流行の間取りに合わせて自由にリフォームすることができます。
ただし、木造でもツーバイフォー(枠組壁工法)などのパネル工法は、在来工法(木造軸組工法)に比べて自由度は下がります。
長期的にみると、かかる修繕費用においては木造でも他の工法でも大きな違いはありません。
建て替えの際の解体費用に関しては木造がもっとも安くなります。
参考:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」
1-3.節税効果が高い
木造住宅は、ほかの構造に比べて耐用年数が短く設定されています。
構造 | 法定耐用年数 | |
---|---|---|
鉄筋コンクリート造 | 47年 | |
鉄骨造(金属造) | 骨格材の肉厚4ミリ超 | 34年 |
骨格材の肉厚が3ミリ超4ミリ以下 | 27年 | |
骨格材の肉厚が3ミリ以下 | 19年 | |
木造 | 22年 |
出典:減価償却資産の耐用年数等に関する省令(別表第一)より作成
木造と鉄骨造の減価償却費を比較してみましょう。
平成10年(1998年)4月1日以降に取得した建物(本体)は定額法で償却することが所得税法によって定められていますので、以下の計算式になります。
定額法による減価償却費(1期分)=取得価額×定額法の償却率
取得価額8,000万円の建物本体を償却します。
「木造アパート」
- 償却期間22年
- 償却率0.046
8,000万円×0.046=368万円
「鉄骨アパート」
- 償却期間34年
- 償却率0.030
8,000万円×0.030=240万円
木造アパートは368万円、鉄骨造アパートは240万円を毎年経費として計上できます。
木造の方が毎年の課税所得が小さくなるだけでなく、所得税は所得金額が大きいほど税率が高くなる累進課税なので、大きな金額を短い期間で償却する木造の方がトータルで納める税額も少なくなります。
2.木造アパートのデメリットとは
次に、木造アパートのデメリットについて説明していきます。
2-1.法定耐用年数が短い
法定耐用年数が短いということは、別の見方をするとデメリットにもなり得ます。
法定耐用年数を超えたアパートは減価償却ができません。それによって減価償却費を経費として計上できなくなり、税負担が一気に増えます。
大規模修繕の時期とも重なるため、このタイミングで売却を考えるオーナーも出てきますが、法定耐用年数を超えると銀行の融資が下りないため買い手がつきにくいのも難点です。
法定耐用年数が短いということは、このタイミングが早い時期に訪れるということです。できるだけキャッシュを残せるよう、長期的な視点で資金計画を立てるようにしてください。
2-2.建物性能が低い
木造の建物は、鉄骨や鉄筋コンクリートの建物に比べて強度や耐久性が低いといわれています。
実際は現行の耐震基準で建てたアパートであれば耐震性には問題がなく、木造アパートの平均寿命は50年近いというデータもあります。適切なメンテナンスを行えば、耐久性はさらに延びるでしょう。
しかし、木造の建物はメンテナンスを怠ると、雨漏りやシロアリによる蟻害、木部の腐食といった劣化が進行しやすいのも事実です。耐火構造ではない木造アパートの場合、耐火性にも不安が残ります。
また、木造は通気性がよく湿気がたまりにくい反面、気密性が低いので冷暖房効率が悪くなる、防音性に欠けるという点もデメリットです。
2-3.古アパートのイメージが強い
資源の活用と環境への配慮として木材の利用が推進されるなど、昨今では木造のよさが見直されつつあります。
それにもかかわらず木造アパートが敬遠される理由として、築古アパートの多くが木造であることから、木造アパート自体に「古アパート」「安パート」というイメージが定着してしまっていることが考えられます。
そのようなイメージが根強い限り、木造アパートは今後も入居者獲得において苦戦を強いられるでしょう。
築年数が古くなるほど、鉄骨造や鉄筋コンクリート造のアパートとの人気の差は顕著になるので、適切な管理と定期的なメンテナンスで美観を保つ努力が必要です。
3.木造アパートの建築にかかる費用
木造アパートの建築には、以下の費用がかかります。
- 設計料
- 建築工事費
- 諸費用
これから土地を購入する場合は、土地代もプラスされます。

3-1.設計料について
設計施工一貫方式のハウスメーカーでは、設計料は工事費に加算されていることが多いです。金額としては工事費の1~3%程度です。
設計施工分離方式の場合は、設計事務所の報酬として設計監理料が工事費と別に発生します。
建築費5,000万円程度のアパートであれば、工事費に対して10%前後です。
工事費が高額になるほど設計料率は低くなります。工事費1億円を超えるアパートであれば6~7%程度と考えておいてください。
設計料とは別に、確認申請料や構造計算料が別途発生することもあります。
3-2.建築工事費について
建築工事費は「本体工事費」と「付帯工事費」に分けることができます。
本体工事は木工事や内外装の仕上げ工事、設備工事など実際に建物をつくるための工事で、付帯工事は解体工事や地盤改良工事、電気・ガス・水道の引き込み工事など、本体に付随する工事を指します。
材料費や工賃のほか、人件費そのほかの経費も管理費として計上されています。
それでは、木造アパートの建築費はどれくらいになるのが見ていきましょう。
3-2-1.木造アパートの坪単価
国土交通省の住宅着工統計(2019年調査)によると、共同住宅の工事費予定額は以下のとおりです。
木造 | 鉄筋コンクリート造 | 鉄骨造 | |
---|---|---|---|
工事費予定額(万円) | 3,095 | 10,434 | 8,058 | 1戸あたり工事費予定額(万円) | 592 | 1,096 | 1,129 | 1平米あたり工事費予定額(万円) | 17 | 24 | 23 |
出典:国土交通省「建築着工統計調査 / 住宅着工統計(2019年調査)」より作成
1平米あたりの工事費に0.3025を掛けると、坪単価に換算できます。
木造1坪あたりの工事費予定額は「17万円÷0.3025」で約56万円。同じように計算すると、鉄筋コンクリート造は約79万円、鉄骨造は約76万円です。
ただし、これはあくまでも予定額です。実際には、仕様変更などでもう少し金額はアップします。
下の表は「HOME4U(ホームフォーユー)土地活用」の実績坪単価です。この坪単価を目安としてください。
木造 | 鉄筋コンクリート造 | 鉄骨造 | |
---|---|---|---|
坪単価 | 77~97万円 | 84~104万円 | 92~120万円 |
3-2-2.木造アパートの工事費例
それでは、前述した実際の坪単価から木造アパートの工事費を算定してみましょう。
建物全体の床面積(坪数)に坪単価を掛けると工事費が出ます。
■ファミリー向け
- 坪単価:87万円
- 2LDK×8戸(1戸18坪)
18坪×8戸=144坪
144坪×87万円=1億2,528万円
■単身者向け
- 坪単価:87万円
- 1K×10戸(1戸9坪)
9坪×10戸=90坪90坪×87万円=7,830万円
このように、木造の場合は構造上あまり大きなアパートになりませんので、だいたい1億円前後の工事費で建築できることがわかります。
3-3.諸費用について
建物を新築、または取得することで発生する費用が「諸費用」です。諸費用は、土地の状況やオーナーの事情によって金額が上下します。
例えば、敷地の測量には測量費がかかりますが、境界画定が必要な場合は土地家屋調査士への報酬も発生します。土地の形状や隣接地との関係性が複雑なほど、境界画定の費用は高額になります。
金融機関から借り入れをするのであれば、事務手数料や保証料、火災保険料などの費用が発生します。つなぎ融資を利用するのであれば、別途つなぎ融資の諸費用や金利が必要です。
そして、登記費用です。登記を司法書士へ依頼する場合は、司法書士報酬も必要となります。
建物を新築した場合には不動産取得税が課税され、翌年以降は固定資産税と都市計画税が毎年課税されます。
このほか、地盤調査にかかる費用、契約書に課税される印紙税、建築確認や検査の手数料、上下水道の使用に必要な給水装置引込費や下水道分担金、地鎮祭などの式典費用が諸費用に含まれます。
総予算の1割程度を諸費用分として予算取りしておくことをおすすめします。
3-4.木造アパートの建築費を抑えるには
建築費を抑えて木造アパートを建てるには、できるだけ凹凸のないシンプルな形状にすることです。
建築費がもっとも安いのは、長方形や正方形の建物です。
予算オーバーの多くは、床材や壁材などの内装材、外壁材、設備などのグレードアップが原因です。費用対効果を考えて、コストをかける部分と抑える部分を検討してください。
また、プランは必ず複数の会社に依頼してください。1社だけではプランの妥当性が判断できませんが、複数社からプランの提案を受けることで、適正な金額も見えてきます。
4.木造アパートを建てる際のポイントとは

ここでは、木造アパートを建ててアパート経営するためのポイントをいくつかご紹介します。
4-1.土地・立地・資金などの条件を考慮する
土地活用で木造アパートを選択する理由としては、土地があまり広くない(=大きな建物を建てられない)場合や、初期費用をできるだけ抑えたいという場合が考えられます。
しかし、先述したように性能面でのデメリットや先行するイメージにより、木造アパートは一部の層から敬遠される傾向にあります。
特に女性やファミリー層からの需要は多くないと考えられますので、ターゲット層を男性単身者に設定するなど、立地条件も含めて慎重に検討する必要があるでしょう。
4-2.条件によっては木造3階建ても可能
30坪以下の狭小地にアパートを建築する場合は、コンパクトな木造3階建てを視野に入れてもよいでしょう。
ただし、木造3階建ての建物は、高さに関する制限や消防活動のための代替進入口の設置、耐火構造に関する規定、確認申請時の構造計算書の添付など、2階建てでは必要のなかった基準(建築基準法)を満たす必要があります。
そのため、木造3階建てのアパートを建築するには、ある程度の経験とノウハウが求められます。建築会社選びに留意してください。
4-3.木造アパートのデメリットを解消する
入居者から選ばれるためには木造のデメリットを解消し、建物性能や外観・内装のデザインで印象をアップする必要があります。
4-3-1.性能向上に力を入れる
木造アパートは、在来工法(木造軸組工法)ではなくパネル工法(枠組壁工法)で建築することをおすすめします。
ツーバイフォーなどのパネル工法はオーナー目線では自由度が低くなるというデメリットにもなりますが、入居者に対して木造アパートでも性能面で見劣りしないという印象を与えることができます。
ただし、パネル工法は結露しやすいので換気などの対策は必要です。
予算的に可能であれば、防音対策も検討するとよいでしょう。
4-3-2.木のよさを生かしたデザインにする
木造アパートを建てるなら、鉄骨造や鉄筋コンクリート造のアパートとは一線を画した、木造らしいデザインにこだわってみるのも一案です。
無垢材や漆喰など自然素材を使ったナチュラルインテリアのほか、和風モダンな町家風やレトロな雰囲気のヴィンテージインテリアも、木造アパートのよさを最大限に引き出すことができます。
4-4.収益性の高いプランニングを心掛ける
コストの安さが、木造アパート最大のメリットです。計画の際にはメリハリのある予算配分で、建築費が高額になりすぎないよう注意してください。
築年数がたっても「築古」「老朽化」という印象を与えることのないよう、しっかりとした長期修繕計画を立てておくことも忘れてはいけません。
小まめなメンテナンスで、収益性の高い安定したアパート経営が可能になります。
5.アパートの収益性を最大限に高めるには
収益性の高い木造アパートを建築するためには、よりよいプランを提案できる建築会社を選ぶ必要があります。
アパート建築の経験が豊富な建築会社に相談すれば、土地の条件や予算から総合的に判断して適切なアドバイスをもらえるでしょう。もしかすると、木造以外の選択肢もあるかもしれません。
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まとめ

近年、減少傾向にある木造アパートですが、こうしてメリットとデメリットを比較していくと、決して悪い選択ではないことがわかります。
特に初期費用の安さは、初めて土地活用を検討するオーナーにとっては大きな安心材料となるでしょう。
土地の広さや総予算、立地条件などさまざまな角度から考えて、本当に木造アパートが適しているのかどうかを、まず判断します。そして、やはり木造がよいと思われるのであれば、木造の問題点を解消し、木のよさを生かして収益を最大化できるプランを見つけてください。
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