初めてアパート建築を検討する方の中には、「木造」や「鉄骨造」のどちらで建てるべきか迷っている方もいらっしゃるでしょう。
昨今は、木造の建築技術も進んできているため、以前よりも木造と鉄骨造との差が解消されつつあり、性能上の違いはますます把握しにくくなってきています。
一方で、建築技術は進んでも構造別に法律で定められた耐用年数(法定耐用年数)は従来の規定のままであり、アパートローンや減価償却といったお金に関わる部分の差は残ったままです。
木造や鉄骨造を選択するにあたっては、性能上の違いだけでなく、収益性に与える影響も把握した上で選択することがポイントとなります。
そこでこの記事では、木造か鉄骨造かで悩んでいる方に向けて、
- 材料の種類と特徴
- 建物性能や収益性の違い
- 自分には木造と鉄骨造のどちらが良いのかを見極める方法
- 木造と鉄骨造で違いが出ないもの
などを解説していきます。
ぜひ最後までおつきあいいただき、収益を最大化できるアパート建築をするための一助としてください。
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1.アパートの材料の種類と特徴
まずは基礎知識として、「アパートの材料の種類と特徴」を押さえていきましょう。
まとめると下表の通りです。
項目 | 木造 | 軽量鉄骨造 (6mm未満) |
重量鉄骨造 (6mm以上) |
鉄筋コンクリート造 |
---|---|---|---|---|
建築費相場 | 坪70万円~100万円 | 坪80万円~100万円 | 坪90万円~120万円 | 坪90万円~120万円 |
地震時の揺れ | 大きい | やや大きい | 小さい | 小さい |
耐火性 | 低い | 中程度 | 中程度 | 高い |
自重 | 軽い | 軽い | やや重い | 重い |
適切な階数 | 2階以下 | 2~3階 | 3~5階 | 3~5階 |
法定耐用年数 | 22年 | 3mm以下なら19年 3mm超4mm以下なら27年 4mm超なら34年 |
34年 | 47年 |
アパートの建築材料は、「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」に大別されます。
さらに鉄骨造は、「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」に分かれます。
正確な定義はありませんが、一般的には鉄骨の厚さが6mm未満のものを軽量鉄骨造、6mm以上のものを重量鉄骨造と呼ぶことが多いです。
軽量鉄骨造と重量鉄骨造との違いは、軽量鉄骨造は主に2階建て以下のアパートで採用されるのに対し、重量鉄骨造は主に3階建て以上のアパートで採用されることが多いという点になります。
アパートは2階建て以下のものが多いため、鉄骨造というと暗黙的に軽量鉄骨造のことを指すことが一般的です。
よって、本記事では「軽量鉄骨造」を「鉄骨造」と置き換えて解説します。
木造と鉄骨造で明確に異なるのは、法定耐用年数です。
法定耐用年数とは、会計上、減価償却費を計上できる期間のことを指します。
減価償却費とは、建物の取得原価を毎年、費用として配分することで生じる計算上の費用のことです。
法定耐用年数は、建物の構造によって定められており、木造なら22年、4mm超の鉄骨造なら34年となっています。
2.立地や階数で木造を選択できないこともある
木造に関しては、立地や階数によって現実的に選択できないこともある点がポイントです。
防火地域または準防火地域と呼ばれる地域においては、一定規模以上の建物に関しては、耐火建築物または準耐火建築物にしなければならないといった規定があります。
防火地域や準防火地域は、主に都市部のターミナル駅周辺等の繁華性の高い商業エリアに指定されている地域です。
繁華性の高い商業エリアは、隣地の建物同士が近接しており、火災時に火が周辺に燃え広がらないようにするために耐火建築物または準耐火建築物にしなければならないことになっています。
木造も不燃処理を行うことで耐火建築物等にすることはできますが、コストが非常に割高となってしまうため、防火地域等では木造を採用しないことが通常です。
また、木造のアパートで3階建て以上となると、法律上の求められる基準が厳しくなってしまうため、3階建て以上も木造は採用されないことが一般的となっています。
よって、立地や階数によっては木造が必然的に選択肢から外れてしまうことがあり、鉄骨造を採用せざるを得ないケースもあります。
3.建物性能の違い
本章では「建物性能の違い」について、以下の2点を解説します。
- 地震時の揺れの大きさ
- 耐火性
それではひとつずつ見ていきましょう。
3-1.地震時の揺れの大きさ
地震時の揺れの大きさに関しては、一般的に鉄骨造よりも木造の方が揺れは大きくなります。
鉄骨造の方が堅牢な建材であることから、地震時の揺れは鉄骨造の方が抑えられるからです。
インターネット上では「木造は耐震性に劣る」といった表現を見かけますが、耐震性に関しては木造であっても現行の耐震基準を満たすことになりますので、木造だからといって耐震性が劣るわけではありません。
ただし、借主の中には木造は地震に弱いというイメージを持っている人も一部に存在し、敬遠される傾向はあります。
また、木造は地震時の揺れが大きいことから、外壁面に石やタイルといった重い仕上材を貼ることができず、高級感を出せない点もデメリットです。
さらに、木造は地震時の揺れが大きいことで中高層建築物を建てるのには向かず、2階建て以下の建物で採用されることが一般的となっています。
3-2.耐火性
耐火性に関しては、鉄骨造よりも木造の方が劣ります。
木造は耐火性に劣ることから、防火地域や準防火地域において一定の制限を受けます。
ただし、防火地域や準防火地域は繁華性の高い商業地等の限られた地域にしか指定されていないことが通常です。
通常の住宅街であれば防火地域等に指定されていないため、木造アパートも普通に建てることができます。
~進化する木造アパート建築~
木造に関しては建築技術が日々進化しているため、建物性能に関しては鉄骨造と比較するとほとんど差がなくなりつつあります。
一部のハウスメーカーの中には、木質パネル構造と呼ばれる強い木造を実現している会社もあります。
木質パネル構造は地震時の揺れも小さく、外壁面にタイル等を貼ることができます。
また、遮音性も非常に高いため、従来のような「木造は遮音性が低い」といったイメージも払しょくしています。
このように建築技術は日々進化しているため、先入観を持って決めつけてしまうことは得策ではありません。
ぜひ一度、色々なハウスメーカーから最新技術の話を聞いてみてください。
4.収益性の違い
続いて本章では「収益性の違い」について、以下の6点を解説します。
- 建築費
- 賃料
- 修繕費
- 建物の固定資産税
- 所得税
- ローン
それではひとつずつ見ていきましょう。
4-1.建築費
建築費については、木造の方が鉄骨造よりも安い傾向にあります。
建築費の坪単価相場は、木造は「坪70万円~100万円程度」、鉄骨造(軽量鉄骨造)は「坪80万円~100万円程度」です。
アパートの建築費は、大きく分けて躯体40%、仕上40%、設備20%程度で構成されます。
さらに躯体は基礎、壁、屋根、柱、梁等で構成されており、木造か鉄骨造かで差がつく部分は全体工事費の中でほんの一部分です。
そのため、木造を選んだとしても、良い仕上材やハイスペックな設備を選定したら建築費は鉄骨造よりも高くなります。
構造別の単価はあくまでも目安に過ぎないため、建築費を抑えるのであれば仕上材や設備も含めてトータルで検討することが必要です。
4-2.賃料
賃料については、新築当初は木造も鉄骨造も差がないことが一般的です。
ただし、築年数が古くなると木造の方が外壁等の劣化が早く進むため、古いアパートは木造の方が賃料は安くなる傾向にあります。
4-3.修繕費
修繕費に関しては基本的に差がありませんが、木造はシロアリの定期防除が必要となることから、修繕費は木造の方がやや高い傾向があります。
その他、外壁塗装や給湯器の交換等に関しては、木造と鉄骨造では差が生じないことが一般的です。
4-4.建物の固定資産税
建物の固定資産税に関しては、鉄骨造の方が建物評価額は高くなることから、鉄骨造の方が高くなる傾向にあります。
建物の固定資産税評価額は、新築請負工事金額の50~60%程度です。
木造であっても請負工事金額が鉄骨造よりも高い場合は、建物評価額が高くなってしまい、固定資産税も高くなります。
そのため、木造の方が常に建物の固定資産税が安いというわけではなく、あくまでも一つの傾向に過ぎないということです。
4-5.所得税
アパート経営で生じる所得税については、耐用年数期間内であれば木造の方が安くなります。
木造と鉄骨造で同じ金額でアパートを建てた場合、木造の方が耐用年数は短いため、減価償却費が大きく計上されます。
例えば、建築費が5,940万円として、耐用年数が22年の木造と27年の鉄骨造(3mm超4mm以下)で1年間当たり計上される減価償却費を考えてみます。
減価償却費は、簡単にいうと建築費を耐用年数で割ったような金額が毎年計上されます。
建築費が5,940万円の場合、耐用年数が22年なら毎年約270万円、耐用年数が27年なら毎年約220万円が計上されるイメージです。
減価償却費は実際に毎年支出を伴う費用ではありませんが、会計上は費用であるため、減価償却費によって利益が小さくなり、その結果、税金も少なくなります。
よって、減価償却費が大きくなるほど、節税効果も高くなり、税金は少なくなるということです。
ただし、耐用年数が満了すれば減価償却費は計上されなくなるため、その後、税金が一気に上がります。
木造の場合、築23年目に税金は上がりますが、鉄骨造(3mm超4mm以下)の場合には築28年目で税金が上がるということです。
よって、節税できる期間に関しては、鉄骨造の方が長くなります。
4-6.ローン
アパートローンは、多くの銀行が融資期間を耐用年数以内としています。
つまり、ローンの期間は木造なら22年、鉄骨造(3mm超4mm以下)なら27年ということです。
同じ金額を借りた場合、ローンの期間は長いほど毎月の返済額が小さくなります。
そのため、耐用年数期間中における毎年のキャッシュフロー(手残りのこと)は、鉄骨造の方が良くなる傾向にあります。
ただし、木造は22年ですので、鉄骨造(3mm超4mm以下)の27年よりも早く返済を終わらせることができるという点がメリットです。
耐用年数は、減価償却費とアパートローンの両方に影響を与えます。
ほとんどローンを組まない人は、耐用年数期間内に多くの節税ができる木造の方が有利とも考えらえます。
それに対して、高額なローンを組む人は、長期間のローンを組むことができる鉄骨造の方が有利とされることが一般的です。
~木造か?鉄骨造か?自分に適したアパートを建てるには~
建物の構造については、建築費だけでなく、竣工後の収益性も踏まえて総合的に判断することがポイントです。
特に木造は立地によっては選択できないこともありますし、自分の土地や予算で一番収益の出るアパートを建てるには、最初に複数のハウスメーカーを幅広く比較することが重要です。
NTTデータグループが運営する「HOME4U(ホームフォーユー) オーナーズ」なら、土地の所在地や広さなどを入力するだけで、様々な構造のアパート建築会社から、「建築費」「将来の収支計画」「ローンシミュレーション」「節税効果がいくらになるか」「大規模なメンテナンスがいつ発生するか」等をまとめた「アパート建築プラン」の提案を受けることができます。
構造別の建築費だけでなく、総合的な比較ができるため、「自分の土地や自己資金に一番適したアパートがどれなのか」を的確に判断することが可能です。
建築費や収益性はハウスメーカーによって異なりますので、最初からどの構造にするかを決めつけてしまうのではなく、幅広く比較検討した上で決定することをおすすめします。
5.木造と鉄骨造で違いが出ないもの
木造と鉄骨造で「違いが出ないもの」もあります。
この章では「違いが出ないもの」として、以下の6点を解説します。
- 間取りやリフォームの自由度
- 設備スペック
- 遮音性
- 敷金や礼金・更新料
- 管理費
- 土地の固定資産税
それではひとつずつ見ていきましょう。
5-1.間取りやリフォームの自由度
間取りやリフォームの自由度に関しては、木造も鉄骨造も基本的に同じです。
昨今は、ハウスメーカーは木造も鉄骨造も「柱」と「梁(横架材のこと)」、「壁」に3つで建物を支える構造を採用しています。
木造も鉄骨造も一部の「壁」が建物を支える構造体となっていることから、間取りには一定の制限があり、また建物内に壊せない壁が発生する点は同じです。
鉄筋コンクリート造と比較すると間取りやリフォームの自由度は劣りますが、木造と鉄骨造との比較であれば間取りやリフォームの自由度に大差はないといえます。
5-2.設備スペック
設備スペックは、木造や鉄骨造に関わらず、自由に選ぶことができますので、差はないといえます。
木造であっても鉄骨造のアパートよりもハイスペックな設備を設置することは可能です。
5-3.遮音性
遮音性については、木造と軽量鉄骨造との比較であれば、大きな差はないといえます。
一方で、鉄筋コンクリート造と比較すると、木造と軽量鉄骨造の遮音性は低いです。
鉄骨造でも隣住戸との壁の薄い物件も存在し、鉄骨造の遮音性は決して高くないといえます。
5-4.敷金や礼金・更新料
敷金や礼金・更新料については、地域の商習慣や相場によって決まります。
木造や鉄骨造での違いはありません。
5-5.管理費
管理費についても、木造や鉄骨造での違いはないです。
アパートの場合、管理費は家賃収入の3~5%程度となります。
5-6.土地の固定資産税
土地の固定資産税も、木造や鉄骨造によって差は生じないです。
土地の固定資産税は、土地上の建物用途が住宅であるかどうかで決まります。
木造でも鉄骨造でも、アパートであれば住宅ですので、同じ住宅用地の軽減が適用されます。
6.まとめ
いかがでしたか。
木造と鉄骨造について、知識を深めていただけたでしょうか?
どの構造でアパートを建てるかは、はじめから決め打ちするのではなく、「HOME4U オーナーズ」で複数のハウスメーカーの建築プランを比較してから決めるのが賢明です。
一番収益の出るアパート建築プランを見逃さないよう、様々なハウスメーカーを幅広く比較することから始めてみてくださいね!
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