
土地活用をお考えの方の中には、土地活用と社会貢献を両立できる介護施設での土地活用経営をお考えの方もおられるでしょう。しかし、
「所有している土地に介護施設を建てたいと考えているけれど、どのような施設があるのだろうか」
「超高齢社会で介護施設は不足していると聞いているが、本当に需要はあるのか?」
「テナントとなる介護事業所はどのように見つければよいのか」
など、わからないことばかりでお困りではないでしょうか。
この記事では介護施設による土地活用を検討中の土地オーナーに向けて、介護施設の種類やメリット・デメリット、施設の建築にかかる費用や大まかな収入など、介護事業の知識がない方にもわかりやすく説明していきます。介護施設の建築を検討する上での判断材料としてください。
Contents
1.土地活用で介護施設を経営するメリット
土地活用の手段として介護施設を建設してオーナーとなることには、ほかの活用法とは異なるさまざまなメリットがあります。なぜアパートやマンションではなく、介護施設なのでしょうか。介護施設建設で土地活用をするメリットについてお伝えします。
1-1.メリット1.需要が大きい
日本の65歳以上人口は、2019年(令和元年)9月15日時点の推計で総人口の28.4%となり、2042年にピークを迎えるまで、高齢者の増加傾向は続くといわれています。介護施設の需要はさらに拡大し、長期的な安定経営が見込めるでしょう。
1-2.メリット2.社会貢献度が高い
社会的なニーズを満たすという意味で、介護施設の経営は地域貢献度が非常に高く、オーナーの社会的信用にもつながります。
また、社会貢献度が高い施設であることから建築費用の補助金制度などが利用できることもメリットです。
1-3.メリット3.立地を選ばない
アパートやマンションの経営が難しい郊外の土地を活用できるのも、介護施設経営の魅力の1つです。介護施設の立地は、閑静な環境が好まれる傾向があります。
また、通常の住宅の建築許可が下りにくい市街化調整区域などでも許可が下りやすいということもメリットです。
2.土地活用で介護施設を経営するデメリット
介護施設での土地活用を選択肢のひとつとして検討を始めるなら、介護施設経営のデメリットも把握しておかなければなりません。デメリットが及ぼす影響がどの程度あるか、土地の状況との照らし合わせが必要です。ここではデメリットを確認します。
2-1.転用性が低い
テナントである介護事業所が万が一撤退してしまったら、次の借り手を見つけるのは非常に困難です。特殊な施設だけにほかの用途への転用も困難ですから、テナント契約はできるだけ長期で結ぶ必要があります。
また、オーナー側に「土地をほかの用途に使いたい」「土地を売却したい」という事情ができたとしても、地域に根付いた施設だけに解約は難しいでしょう。介護施設経営は、長期的に取り組む覚悟が必要です。
2-2.初期費用が高額になる
介護施設は、国が定めたさまざまな要件を満たす建物にしなければなりません。そのため、住宅用賃貸物件に比べて坪単価も高くなりがちです。
初期費用の負担軽減には、リースバックや補助金などの制度を最大限に活用してください。くわしくは土地活用のプロから提案を受けることをおすすめします。
介護施設で土地活用のメリット・デメリットをもっと知りたい方はこちら
3.介護施設の種類とそれぞれの特徴

介護施設といっても公的な施設から民間施設までさまざまで、種類や提供するサービスの内容も多岐にわたります。
どのような介護施設があるのか、住居系と居宅サービス系に分けて、施設ごとの特徴とメリット・デメリットについて説明していきます。
3-1.住居系の介護施設
まずは、老人ホームや高齢者向け住宅など、住居系の介護施設を紹介します。
施設名称 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | 主に要介護3以上の在宅での生活が困難な高齢者に対し、生活援助や介護サービスを提供 | ・利用サービスの多くで医療費控除が受けられるため費用が安い ・長期入所が可能 |
待機人数が多く、入所できるまでに数年を要する場合が多い |
介護老人保健施設(老健) | 要介護者であり、在宅復帰を目指す高齢者に対して、リハビリや医療・介護サービスを提供 | ほかの介護施設に比べて機能訓練の設備が充実しており、医療ケアが手厚い | 自宅生活が可能と判断されると退所になるため、その後の介護方針を話し合っておく必要がある |
軽費老人ホーム(ケアハウス) | 可能な限り自立した日常を送れるよう、生活援助や介護などのサービスを提供 | 比較的費用が安く、個室または少人数居室なのでプライバシーを守りやすい | 「自立型」は介護度が上がると退所を求められ、「介護型」は待機期間が長い |
有料老人ホーム | 生活援助のある高齢者向け住居施設で「介護付き」なら介護サービスも受けることが可能 | 比較的自由に生活しつつ、介護度に合わせてきめ細かな援助を受けることも可能 | 公共型の施設に比べると費用は割高になり、入居一時金の負担が大きい |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 認知症の診断を受けた要介護者が、日常生活において機能訓練を行いながら共同で生活 | 少人数制なので落ち着いた生活ができ、日常生活や訓練を通して、認知症の進行を緩和できる | 症状が進行すると退所しなければならないことがあり、待機期間が長い |
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 見守りや生活相談などのサービスを提供する、自立した生活が可能な高齢者向け住宅 | 施設ではなく住宅なので、共同生活の負担がなくマイペースに生活できる | 生活援助や介護サービスは義務付けられていないので、外部の介護事業所と契約する必要がある |
3-2.居宅サービス系の介護施設
次に、高齢者が在宅で自立した生活を送ることができることを目的とした、居宅サービス系の介護施設の紹介です。
施設名称 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
訪問介護事業所(ホームヘルプ) | 介護員が自宅を訪問して生活援助・介護などのサービスを提供するほか、訪問看護、訪問入浴などもある | 住み慣れた自宅で介護サービスを受けることができ、介護員がちょっとした話し相手にもなる | 介護員が訪問している間にしか支援を受けることができず、訪問が負担になることもある |
通所介護事業所(デイサービス) 通所リハビリステーション事業所(デイケア) |
日帰りで施設を訪れる高齢者に対し、生活援助や機能訓練などのサービスを提供するほか、デイケアでは運動機能向上のためのリハビリメニューもある | 外部との交流により、高齢者の孤立感が解消される | 外出したくない高齢者にとっては、かえってストレスになることがある |
短期入所生活介護事業所(ショートステイ) | 要支援、要介護認定者が対象となり、短期間介護施設に入所することで、その間の生活援助サービスを提供 | 施設に慣れておくことで、介護度が上がって長期入所することになっても、抵抗感が低い | 一時的な環境の変化に高齢者がストレスを感じることがある |
小規模多機能型居宅介護 | 通所を中心に、短期入所や訪問介護などのメニューを組み合わせた生活援助・介護サービスを提供 | すべてのサービスが同じ施設、スタッフにより提供されるので、安心感がある | よい関係を築いていたケアマネージャーがいても、こちらの契約と同時に変更しなければならない |
4.介護施設経営にかかる費用と収入
介護施設の建築にかかる費用と賃料収入がどれくらいになるのか、土地活用に適した施設を例に挙げて見ていきましょう。
賃料はテナント(介護事業所)との協議により決定しますが、一般的な賃貸のように周辺相場を参考にすることは難しいため、ここでは期待利回りを10%として賃料設定します。
【グループホーム】
施設の規模:土地200坪/建物150坪
建物の建築費:約1億5,000万円
土地の評価額:約8,000万円
〈賃料〉
(1億5,000万円+8,000万円)×10%=2,300万円/年
2,300万円/12カ月=約190万円/月
【有料老人ホーム】
施設の規模:土地500坪/建物600坪
建物の建築費:約5億円
土地の評価額:約2億円
〈賃料〉
(5億円+2億円)×10%=7,000万円/年
7,000万円/12カ月=約580万円/月
【サ高住】
※30戸程度、デイサービス併設
施設の規模:土地400坪/建物400坪
建物の建築費:約3億5,000万円
土地の評価額:約1億6,000万円
〈賃料〉
(3億5,000万円+1億6,000万円)×10%=5,100万円/年
5,100万円/12カ月=約425万円/月
【通所介護事業所】
施設の規模:土地200坪/建物90坪
建物の建築費:約8,000万円
土地の評価額:約8,000万円
〈賃料〉
(8,000万円+8,000万円)×10%=1,600万円/年
1,600万円/12カ月=約130万円/月
上記の賃料に、必要諸経費分を加えた額とすることができます。
ただし、実際には介護事業所の収支計画に照らし合わせて設定するため、利回りは10%より下がる場合もあると考えておいてください。
また、リースバック方式の場合はここから建設協力金を相殺します。
5.介護施設経営は事業者への委託がおすすめ
土地活用の一環として介護施設を建築するのであれば、経営は介護事業者に委託することを検討するとよいでしょう。
未経験で介護施設を経営することは、決して簡単なことではありません。
経営者自身は無資格でも構いませんが、施設の種類によっては保有資格による人員配置が細かく定められています。人材不足の介護業界において、何のつてもなくそれだけの有資格者と介護員を集めて雇用することは、かなりの困難を要します。
当然ながら、介護保険制度や事業所経営に関する専門知識も必要です。また、高齢者の人生の最後の時期を大切にお預かりするという使命や、医療的なリスクを背負うことからも、未経験での安易な介護施設経営参入は慎重になるべきといえるでしょう。
そのため、土地と建物を提供し、介護事業経営者へテナントとして貸出して賃料を得る方法がおすすめです。
5-1.介護事業者を探す方法
介護事業を委託する事業者を探すには、以下のような方法があります。
・都市部の場合:介護施設の土地活用をサポートするハウスメーカーやゼネコン、不動産会社、コンサルティング会社に仲介を依頼します。
・地方の場合:情報が少ないため、手広く事業展開している地元の介護事業所に直接コンタクトをとってみるのも1つの方法です。
・その他:自治体の福祉関連課へ直接出向き、相談する方法があります(介護施設経営を行う事業者は、ケアマネージャー(介護支援専門員)や自治体との連携が必要です)。
5-2.介護施設経営の土地活用2つの方法
介護施設の土地活用には、以下の2つの方法があります。
・土地だけ貸す
事業用定期借地権を利用して、介護事業者に土地を貸す方法です。
事業用定期借地権の借地期間は10年以上50年未満で、期間が満了になると借地人(介護事業者)は土地を更地にしてオーナーに返還しなければなりません。
初期費用がかからないため、低リスクで土地を活用できます。
・建て貸しする
オーナーが所有地に建てた介護施設を、介護事業者が一括で借り上げる方法です。
テナント(介護事業所)から建設協力金を預かるリースバック方式を利用すれば、初期投資の負担を抑えることもできます。
預かった建設協力金は毎月の賃料から相殺されますが、土地と建物分の賃料でより大きな収益が見込めます。
6.介護施設が建築可能な土地かどうかの調べ方
建築物を建てる際は、建築基準法で定められた用途地域の制限に従って、建築可能な建物であるかどうかを判断します。
介護施設は種類ごとに用途が異なります。
・特養(特別養護老人ホーム)や軽費老人ホームなどは「老人福祉施設」に該当し、工業専用地域以外どこにでも建築することができます。
・訪問介護事業所はもともと事務所に区分されていましたが、2015年(平成27年)建築基準法において「老人福祉センターその他これに類するもの」として取り扱えることが明確化されました。これによって、訪問介護事業所は住居系地域を含むすべての地域に建築可能となりました。
・サ高住については、建物ごとの仕様や利用状況を踏まえて「共同住宅」「老人ホーム」「寄宿舎」のいずれかに分類されます。
最終的には特定行政庁の判断となるため、自己判断せずに所有地のある自治体へ確認してください。
建築可能な土地か調べるために必要な「用途地域」についての解説はこちら
7.介護施設経営で成功するための重要ポイント3つ
いかに需要のある介護施設とはいえ、成功するために押さえておくべきポイントがあります。
介護施設の選び方、契約する介護事業所の見極め方など、重要なポイントを3つご紹介していきます。
7-1.土地の広さや立地に合わせて選択する
比較的立地を選ばない介護施設ですが、住居系施設か居宅サービス系の施設かによって、好ましい立地は異なります。
例えば、在宅での生活を基本とする自立した高齢者と、介護度の高い高齢者とでは行動範囲が大きく異なります。高齢者がひとりで出歩くことのない特養やグループホームとは異なり、サ高住などは基本的にアパートやマンションと同じ位置付けなので、ある程度の利便性も必要です。
土地の広さによっても建てられる施設、建てられない施設があるため、介護施設は土地の広さや立地条件などから、総合的に判断して選択してください。
7-2.介護事業所を選ぶ上で重要なのは「人材」
委託する介護事業所は、経営の安定した大手などであれば安心ですが、必ずしもオーナーの意向で選択できるとは限りません。
企業規模や経験・実績など多角的に判断する必要がありますが、地域密着型の小規模施設の中には、ほかの事業所で評判のよかった人が独立して介護事業所を立ち上げているケースも少なくありません。その場合、他社のケアマネージャーとの関係もできているため、必然的に利用者も増えていきます。
よい経営者のもとにはよいスタッフが集まります。介護事業所の運営は「人材」あってのことなので、同業他社にリサーチするなど慎重に検討する必要があるでしょう。
7-3.自治体や介護事業所との打ち合わせは綿密に
介護施設は種類もさまざまで、それぞれに必要な設備に関する基準があります。
その基準に該当するかどうか、建築確認に先だって自治体の関係部局への事前協議が必要となるため、計画は慎重に行ってください。
建て貸しの場合は、テナントとなる介護事業所との綿密な打ち合わせも必要です。
将来的にトラブルになることのないよう、賃貸借契約書は専門家に相談の上、双方にとって納得のいくものを作成してください。
介護施設など高齢者向け施設での土地活用について注意点はこちらでチェック
8.介護施設の土地活用はまず専門家に相談を
このように、介護施設のプランニングは定められた基準に従って行う必要があり、またテナントとなる介護事業所の選定などもあって、大変複雑です。
できるだけ早い段階で、介護施設の経験と実績が豊富な土地活用のプロに相談し、計画を進めていくとよいでしょう。
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まとめ

ここまで、介護施設の種類と特徴、介護施設で土地活用する際にかかる費用と収入の目安、介護施設経営のメリット・デメリットなどを順番に説明してきました。
長期的な需要が期待でき、アパートやマンションに適さない土地でも活用が可能な介護施設経営ですが、施設ごとの基準を守り、自治体や介護事業所との協議を行いながら、より慎重に進めていかなければなりません。
重要なポイントをしっかりと押さえ、プロの力を借りながら、介護施設経営に向けて計画をスタートしてください。
この記事のポイント まとめ
介護施設で土地活用をすることには以下のようなメリットがあります。
- 需要が大きい
- 社会貢献度が高い
- 立地を選ばない
介護施設で土地活用をするメリットについての詳しい解説は「1.土地活用で介護施設を経営するメリット」をご確認ください。
土地活用の手段として介護施設経営をするデメリットには以下のようなものが挙げられます。
- 転用性が低い
- 初期費用が高額になる
デメリットに関する解説は「2.土地活用で介護施設を経営するデメリット」の中で詳しく触れています。
介護施設で土地活用を成功させるためには以下のようなポイントに注意が必要です。
- 土地の広さや立地に合わせて施設種類を選択する
- 介護事業所を選ぶときは人材を見て決める
- 自治体や介護事業所との打ち合わせは綿密に行う
成功へのポイントは「7.介護施設経営で成功するための重要ポイント3つ」で詳しく解説しています。
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