ご所有の土地が、郊外にある、駅歩のある場所にあるなどで、アパート等の賃貸経営にはあまり適しておらず、活用方法にお困りのオーナーの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような場合、賃貸経営の一つとして「サ高住」の経営を選択する方もいらっしゃいます。
サ高住とは、「サービス付き高齢者向け住宅」の略で、介護サービスのある賃貸住宅のことです。
サ高住はどちらかというと郊外や駅から離れた場所にある、静かで広めの場所が適しています。
今回は、サ高住について次のようにまとめています。
- サ高住とは
- 土地活用でサ高住を選ぶべき4つの理由
- 土地活用でサ高住経営をする6つのメリット
- 土地活用でサ高住経営をする5つのデメリット
- 土地活用でサ高住経営をスタートする全10フロー
- サ高住経営をするときに注意しておくべき5ポイント
また、サ高住に限らず、介護施設の土地活用の種類を幅広く知りたい、という方は、「介護施設で土地活用」の記事をご覧ください。
サ高住の建築をお考えの方は、以下のボタンから、サ高住の建築に実績のある大手建築会社から建築費や施設イメージなどが含まれた「建築プラン」を取り寄せることができます。
ぜひご活用ください。
サ高住が土地活用の中でも有利に働く点は?
数ある土地活用の中でもサ高住には以下のような有利に働く特徴があります。
- 建築費への手厚いサポートがある
- 貸付金利が固定または低金利な傾向にある
- 融資が受けやすい傾向にある
- 国策と時流に乗った土地活用であること
詳しくは「土地活用でサ高住を選ぶべき5つの理由」をご一読ください。
サ高住のメリット・デメリットは?
サ高住経営のメリットには以下のようなものがあります。
- 立地が問われない
- 運営は運営会社に丸投げできる
- 地域貢献ができる
- 経年しても価値が下がりにくい
- 瑕疵が起きにくい
- 建物や室内が汚れにくい
メリットについては「土地活用でサ高住経営をする6つのメリット」で解説しています。
一方デメリットになるリスクは以下の4つが挙げられ、注意すべき点も加えて5つがデメリットとなり得ます。
- 自然災害リスク
- 運営会社による過失や事故のリスク
- 運営会社の撤退のリスク
- 投資リスク
- ある程度の土地の広さが必要
詳しくは「土地活用でサ高住経営をする5つのデメリット」をご一読ください。
サ高住を始めるの流れは?
サ高住経営以下のような手順で始めます。
- ハウスメーカーや不動産会社を選定し、事業計画を作る
- サ高住の運営会社を選定する
- 融資引き受け先を探して融資申請をする
- 設計をしてもらう
- サ高住登録をする
- 補助金申請をする
- ハウスメーカーとの契約締結
- 工事着工
- 竣工
- サ高住オープン
詳しい流れについては「土地活用でサ高住経営をスタートする全10フロー」をご確認ください。
目次
1.サ高住とは
サ高住とは、サービス付き高齢者向け住宅の略称です。主に民間事業者などによって運営される、都道府県単位で許認可・登録された高齢者向けのバリアフリー構造の賃貸住宅のことです。
入居者は主に高齢者が対象ですが、サ高住は施設ではなく、自立または軽度の介護が必要な方を対象とした「賃貸住宅」の扱いになります。
サ高住は、少子高齢化が進んだ日本で国策として進められている「地域包括ケアシステム」をサポートする施策のひとつです。
地域包括ケアシステムとは、介護やサポートが必要になった高齢者が、住み慣れた地域で、安心して暮らし続けることができるサービスを、必要な時に必要なだけ提供できる環境を作りのことです。
そのため、サ高住の建物の中には、介護福祉士や看護師などのケアの専門家が日中または常駐し、入居している高齢者が必要とする対応をしてくれます。サービス付き高齢者向け住宅の「サービス」として、必ず付帯しなければならないのは、以下のふたつです。
- 1)安否確認サービス
-
担当スタッフが、一日のうち決まった時間に居室へ訪問する、または、室内センサーなどを利用して、入居者の見守りをします。ケアスタッフが常駐しない建物では、近隣の提携医院への夜間緊急通報システムが設置されています。
- 2)生活相談サービス
-
常駐するケア相談員が、入居者の生活に関した要望に応えるサービスです。例えば次のような、普段の生活の中で起きる、高齢者ならではのお困りごとに対応します。
- 椅子に乗らないと届かない場所の電球を変えて欲しい
- タンスの位置を移動させたいので手伝って欲しい
- 何となく体調が悪いが、病院に行くほどではないので、血圧などを計ってほしい
- 転んで捻挫をしたので、歩けるようになるまで補助をしてほしい
上記のように、高齢者の生活全般に関した「ちょっとした手助け」が必要なシーンで、家族のように気兼ねなく頼めるスタッフが建物内に必ずいることで、高齢者の生活の質を向上させるサービスです。
サ高住のサービス範囲は、運営する事業者によって違いがあり、中にはレクリエーションやサークル作りのサポートまでするところもあります。
サ高住には、一般の賃貸タイプと、寮のように居室だけが独立し、リビング・ダイニング・キッチン部分などが共有となっているタイプがありますが、土地活用での賃貸経営は、一般住宅型のサ高住のことになります。
土地活用としてサ高住を経営するためには、サ高住の建物を建てることと、運営を担ってくれる事業者を探すことの両方がオーナーの仕事として含まれます。
【参照:厚生労働省 地域包括ケアシステム】
【参照:厚生労働省 高齢者向け住まいについて】
2.土地活用でサ高住を選ぶべき5つの理由
本章では、土地活用としてサ高住を選ぶべき理由を5つにまとめています。
- 時流に乗った土地活用であること
- 建築費への手厚いサポートがある
- 貸付金利が固定または低金利な傾向にある
- 融資を受けやすい傾向にある
- 税金の優遇措置がある
2-1.時流に乗った土地活用であること
前述のとおり、サ高住は、日本の少子高齢化対策として、高齢になっても慣れ親しんだ土地で安心して暮らせる「地域包括ケアシステム」をサポートする施策のひとつです。
地域包括ケアシステムの目安は、高齢者に限らず介護やサポートが必要な人に、必要なケアを要請から30分以内で届けることを目的としています。
自分の家でも、賃貸住宅でも、介護施設でも、同じように必要なサポートを必要なだけ受けられることがゴールですが、現時点では、これから増える高齢者の数と比較すると、まったく人手も部屋数も足りていないのが現状です。
2025年からは、日本で最も層が厚いと言われる、団塊世代が75歳を超えた後期高齢者となるため、今後は、介護やサポートを必要とする人口が急激に増え続けることが懸念されており、サ高住の必要性は急速に高まっています。
【参照:一般社団法人高齢者住宅協会 サービス付き高齢者向け住宅登録状況】
2-2.建築費への手厚いサポートがある
サ高住の建設は、「地域包括ケアシステム」の一環ですので、国家予算枠がある事業のひとつです。
2022年現在、高齢者が安全に暮らせる環境は十分とは言えない状態ですので、国としてはサ高住を積極的に増やしたいという意向があります。
そのため、サ高住経営をする方には、建設資金を住宅金融支援機構(元の住宅金融公庫)から最長35年の長期融資を受けられる用意があり、さらに、サ高住の基準をクリアした建物であれば、国が補助金として建設費の1割を負担します。
【参照:住宅金融支援機構 サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資】
2-3.貸付金利が固定または低金利な傾向にある
住宅金融支援機で設定されている金利は、35年固定金利タイプと、15年固定金利タイプの2種類になり、どちらも最長35年間までのローンが組めます。2022年(令和4年)8月度の参考金利は、以下の通りです。
35年固定金利 | 15年固定金利 | |
---|---|---|
一般住宅タイプ | 1.65% | 1.35% |
施設共用タイプ | 2.39% | 2.09% |
【参照:サービス付き高齢者向け賃貸住宅の経営をお考えのお客さま 参考金利】
※表は、繰り上げ返済制度を利用する場合の金利です。
民間の金融機関で、アパートのような収益物件の事業用ローンを組むと、返済期間は15~20年くらいまでの短期になることが多く、固定金利には期間の設定があるか、または変動金利を選択するケースが多い傾向にあります。
住宅金融支援機構などが用意するサ高住のためのローンは、はじめから金利は低めで、さらに、全期間固定金利であるため、借入から完済までの期間、安定した経営を続ければ、無理のない返済ができるように配慮がされています。
2-4.融資を受けやすい傾向にある
住宅金融支援機構の用意するサ高住のためのローンは、普通のアパートローンと比較すると、融資を受けやすい傾向にあります。
土地活用でのサ高住経営は、完成したサ高住を運営の専門会社に1棟貸しするのが一般的です。そのため、サ高住のための融資申込方法には個人と法人がありますが、法人はサ高住運営も兼ねた方の申請方法であるため、土地活用の方の多くは個人で申し込むことになります。
例えば、機構ホームページにある、個人の申込者の要件をまとめると、以下のようなものになります。
【サ高住ローンに個人で申し込みの場合】
- サ高住を健全経営し、なおかつローンを完済できること
- 申込人に給与所得がある、または安定した収入がある
- 申込人が事業を経営している場合は赤字経営となっていない
- 税金などを含め、あらゆる支払いに延滞がない
- 一般住宅型のサ高住の場合は、融資予定額を上回る担保がある
- 土地がご自身名義ものである
- 申込者が65歳以上の場合は、満65歳未満の後継者と連名で申し込みをする
申込要件を見る限り、申込者が一般的な社会人、またはある程度の資産のある方で、ご所有の土地を担保に入れられるのであれば、他に大きなハードルとなる条件は見当たりません。また、一般のアパート経営のときのような、自己資金額に関しても、特別な指定もありません。
※すべての融資は住宅金融支援機構の設けた基準で審査されます。
これは、本来のサ高住の目的が、地域包括ケアシステムをサポートする福祉性の高い事業であり、これから爆発的に増えていく高齢者の受け皿として、サ高住の安定供給が急務となっているためです。
このような背景があることから、サ高住経営は、活用できる土地をお持ちの方が、有効活用する方法のひとつとして、とても適した方法であると言えます。
2-5.税金の優遇措置がある
サ高住経営をすると、各種税金の優遇措置をうけられます。
- 固定資産税
-
開業から5年間は、建物にかかる固定資産税が1/2~5/6まで減額されます。地域によって減額度合いが違いますが、最低でも半額まで優遇されます。
- 不動産取得税の優遇
-
不動産取得税とは、新規に不動産を取得したときに支払う税金です。サ高住の建物の床面積が、共用部分を含めて30~180平米の広さがあり、合計で10室以上あるなどの要件をクリアしていれば、一つの建物の課税額から1,200万円が控除されます。
【参照:国土交通省 サービス付き高齢者向け住宅の登録制度の概要】※2023年(令和5年)3月31日までに取得した場合に適用。
これらの優遇制度は、サ高住の供給状態によって適宜変更・追加されますので、関連サイトを確認してください。
3.土地活用でサ高住経営をする6つのメリット
本章では、土地活用でサ高住経営をした場合に、土地オーナーが得られるメリットを6つにまとめています。
- 立地が問われない
- 運営は運営会社に委任できる
- 地域貢献ができる
- 経年しても価値が下がりにくい
- 瑕疵が起きにくい
- 建物や室内が汚れにくい
3-1.立地が問われない
一般的なアパート経営の場合、都心の駅近の土地など、かなり立地条件が良く無いと、なかなか部屋が埋まらず、経営が難しい傾向にあります。しかし、サ高住経営の場合は、立地条件はそこまで重要ではありません。
サ高住は高齢者向けのサービスが付いた賃貸住宅ですので、入居者の傾向として、都心や駅近くの便利な暮らしよりも、静かで落ち着いた暮らしを求めています。
そのため、一般的なアパート経営には適さないようなエリア、例えば、駅歩がある・郊外にあるような土地でも、サ高住であれば賃貸経営が可能です。
3-2.運営を運営会社に委任できる
サ高住の経営方法は複数ありますが、土地オーナーがサ高住運営にも参加するタイプの経営方法は、オーナーご自身が介護事業者である場合に採用される法人の経営方法ですので、個人が土地活用として行うサ高住の賃貸経営では採用されません。
サ高住の土地活用でオーナーがする仕事は、ご所有の土地を担保にして融資を受け、サ高住を建築するところまでが主な仕事になり、サ高住の運営自体は、運営会社がするのが一般的です。
土地オーナーの収入は、完成したサ高住の建物を運営会社に一棟丸ごと貸し出し、サ高住の家賃収入の中から、あらかじめ契約で決めた割合を、運営会社が毎月オーナーに支払うサブリース方式が主流です。
運営会社は、建物を建てる地域の地域包括支援センターなどを通じて、あっせんをしてもらうことができます。また、サ高住の建築プランを大手ハウスメーカーに依頼すると、グループ企業にある運営会社の紹介など、サ高住経営に必要な一連のサポートがあります。一社で建築プランから施工、請負、運営までをまとめて任せられ、何かあった場合の連携も万全です。
土地活用プランをご希望の方は、NTTデータグループが運営する「HOME4U オーナーズ」の一括プラン請求をご利用ください。
いくつかの簡単な質問に答えていくだけで、ご所有の土地があるエリアで、サ高住経営に信頼と実績のある企業を最大10社にまで絞ってご案内いたします。
プラン請求の際には、備考欄に「サ高住の建設と、運営会社も探しています」ということを記載していただければ、建築プランと一緒に、複数の運営プラン、収支プランの提案があります。
その際、かならず、複数の企業にチェックを入れ、いくつかのプランを同時に比較検討していくことで、サ高住建築と運営の両方の具体的なイメージがつかめるようになります。
3-3.地域貢献ができる
サ高住は地域の高齢者やサポートが必要な方に対して、必要なケアを必要なだけできる社会にするための、公共性・福祉性の高い事業です。
サ高住を建てると、ご所有の土地の周辺エリアにお住まいの高齢者とその家族の方々の役に立つ、有意義な使われ方をすることになりますので、自然と、地域への社会貢献ができます。
例えば、相続で受け継いだ土地の場合には、サ高住経営をすることで、親の代からご縁のある場所で、地域への奉仕・貢献という形で恩返しをすることができます。
サ高住は、地域の方にとって価値のある使われ方をされ、その対価として、家賃収入が発生するタイプの土地活用であり、単に収入が増えるだけではなく、精神的な満足感の高い土地活用方法でもあります。
3-4.経年しても価値が下がりにくい
一般的なアパートのような収益物件は、都心・駅近などのかなり好条件な立地でもない限り、築年数の経過とともに建物の価値が下がり、それにともなって家賃も下がるのが一般的です。
しかし、サ高住の建物と居室は、経年しても不動産としての価値が下がりにくいという点が、普通のアパート経営と違います。
もちろん、実際には経年により、建物と居室は傷み、設備も古くなりますので、それなりの劣化をします。しかし、サ高住は賃貸住宅ではありますが、どちらかというと、その建物が提供するサービスに価値があるため、経年していることが、サ高住経営の収支に大きな影響を与えにくいという傾向があります。
むしろ、「経年している=長く経営できている」ということは、高齢者向けの賃貸住宅として、安定した健全な経営ができていると評価されます。その結果、賃貸物件としての価値が下がりにくくなるため、長期間家賃を下げないでも、入居者を確保することができ、長期安定収入が約束されます。
3-5.瑕疵が起きにくい
普通の賃貸物件では、入居者が部屋で亡くなると瑕疵物件扱いになることがあります。一般のアパート経営に瑕疵物件ができると、次の入居者がなかなか見つからないことがあります。
こうなると、空室リスクを回避するために、室内をリフォームして印象を変える、または家賃を下げて対応することになります。
しかし、サ高住の場合は、もともと高齢者向けの施設であるため、入居者が部屋で亡くなる、長期で入院するなどの、一般的に言えばマイナスなイメージの出来事が起きることが、はじめから視野に入っています。
また、入居をする方も、ほとんどがサポートの必要な高齢者ですので、入居者ご自身も、いろいろなことを織り込み済みで契約をします。そのため、万が一、運営中に居室で亡くなられた方がいても、その部屋は瑕疵物件とはならず、そのこと自体が賃貸経営にも影響を与えません。
3-6.建物や室内が汚れにくい
サ高住の建物の共有部分は、一般の賃貸物件と同様に、定期的な清掃が入ります。各居室内の清掃などは入居者に任せることになりますが、入居者全員が高齢者であるサ高住は、若い方と比べると活動量も少ないため、室内が汚される・破損するなどの可能性は低いと言えます。
また、常駐する相談員のケアサービスなどにより、定期的に室内状況を見守ることができますので、極度にゴミが溜まっている・掃除がされていない場合には、本人や家族からの要請があれば、必要な手助けやサポートをしてもらえます。そのため、ゴミ屋敷のままで放置されて、室内がひどく汚れるようなことにはなりません。
このように室内・共有部分ともに一般のアパートよりも管理の手が行き届きやすいため、建物の劣化速度も遅くなり、耐用年数よりも建物が長持ちする傾向があります。
4.土地活用でサ高住経営をする5つのデメリット
本章では、土地活用でサ高住経営をする場合の、デメリットを5つにまとめています。
- 自然災害
- ある程度の土地の広さが必要
- 投資額が大きい
- 運営会社による過失や事故の可能性
- 運営会社の撤退の可能性
4-1.自然災害
サ高住も不動産であるため、自然災害と火事に弱いという欠点があります。
サ高住の場合、入居者の多くが何らかのサポートが必要な高齢者であるため、建物に不具合が出ても、すぐに別の場所には移動できない可能性があり、配慮が必要です。特に、自然災害の中では、大きな地震に注意が必要です。
<対策>
土地オーナーは、土地と建物への責任がありますので、まずは建物への保険をしっかりかける必要があります。火事の場合は焼失度合いに応じた保険金が下りますが、地震の場合は建物の半額分までしか保険金をかけることができません。
そのため、万が一、地震によって建物が倒壊した場合には、再建のための費用は半分までしか保険でまかなえないことを前提に、予算の範囲内で、できるだけ地震に強い建物を建てるようにします。
ただし、大規模な地震災害が起きた場合には、災害から復興するための災害復興住宅融資など、適宜なサポートが出ますので、土地オーナーの知識として、何も起きていない状態でも、定期的に一通りの資料に目を通しておくようにしてください。
サ高住運営をしている会社は、1棟建物の賃貸人として加入する火災保険・損害保険と、サ高住で行われるサービスに関しての賠償保険に加入※できます。これ以外に、入居者は室内のご自分の家財に対する損害保険に加入します。
【※参考:三井住友海上 福祉事業者総合賠償責任補償制度】
4-2.ある程度の土地の広さが必要
サ高住建設のための融資を行う住宅金融支援機構では、融資する住宅(サ高住)の要件として、土地建物の大きさに、以下の基準を設けています。
A)賃貸住宅部分の延べ面積:200平米(約60坪)以上
B)敷地面積・165平米(約50坪)以上
C)戸数:制限なし
【参照:住宅金融支援機構 サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資ご利用条件】
サ高住の居室は、1人あたりの専有面積が25平米以上という決まりがありますので、A)建物の延床面積が最低200平米ということは、最も小さい建物でも8戸(200平米÷25平米)の居室が必要になります。また、B)の敷地面積は165平米が必要ですので、ご所有の土地は50坪以上である必要があります。
つまり、上記の規模以下では、サ高住を建てることができません。戸数の制限はありませんが、土地条件(建ぺい率・容積率)などにより、建てられる規模・高さもある程度決まってきます。
<対策>
サ高住は、上記のような要件を満たす代わりに、建築費の一部を補助金でカバーでき、税制優遇がありますが、一般のアパート経営のように、ご所有の土地から利益を最大化するタイプの経営には不向きと言えます。
サ高住側の要件自体を変えることはできませんので、土地活用として福祉事業をご希望であれば、サ高住以外の経営、例えば、有料老人ホーム経営などの施設経営であれば、効率の高い土地活用が可能です。
また、単に駅から遠い程度など、土地条件がそこまで悪くない場合には、同じ福祉事業として、グループホームなどの、地域密着型のケアサポートをする賃貸住宅を経営するという方法もあります。
どの方法も、建築プランと収支プランを複数取り寄せ、内容をよく比較検討してから決定するようにしてください。
4-3.投資額が大きい
サ高住には1人あたりの専有面積が25平米以上という決まりがあり、この要件はそのまま、サ高住建設のための融資条件となっています。一般住宅タイプのサ高住の場合、この25平米の中には、キッチン・トイレ・収納・洗面と浴室を備え付ける必要があります。
また、バリアフリー構造・省エネルギー性設備などの、高齢者用住宅としての安全性を確保する必要があるため、居室・共用部分とも一般のアパートやマンションには使わない資材も多用することになります。
そのため、総工費から割り出す一室当たりの建築費は、普通のアパートやマンションの建物と比較すると、かなり割高になります。一般的には、サ高住を1棟建てるのには、億単位の資金が必要となります。
<対策>
投資額は大きいものの、サ高住としての登録基準をクリアすると、補助金の利用や税制優遇制度など、サ高住建設をサポートするさまざまな制度の利用ができるようになります。
まず、国からの補助金で必ず、建設費の1割が支給されます。またメリットの欄で紹介した、金利が固定で低い、固定資産税と不動産取得税の優遇措置があるなど、総費用が大きくなる分をカバーできる制度も数多く用意されています。
また、一般のアパート経営としては適していない駅から遠い土地や、郊外にある土地などでも賃貸経営が成立し、さらに賃料下落が起きにくいため、建物の経年劣化が起きても、新築時と同じ値段設定のままで経営を続けることができる、珍しいタイプの賃貸経営です。
長い目で見たときには、投資額の大きさを上回る、賃貸経営のプラスの面も享受できるようになることも考慮に入れて、総合的な判断が必要です。
【参照:住宅金融支援機構 サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資ご利用条件】
4-4.運営会社による過失や事故の可能性
サ高住の運営会社により、過失事故や死亡事故が起きる可能性があります。このような事故が起きたとき、サ高住経営でもっとも問題になるのは、建物への悪評が立つことです。
サ高住は賃貸住宅ですので、悪評によって不安になった入居者が解約を申し出ることもあり、その数が多ければ、空室リスクによる経営難に見舞われることになります。また、悪評が消えなければ、新規の入居者も付きづらくなりますので、最悪の場合は事業撤退につながります。
<対策>
過失が起きた時の最善策は、早急に別の事業者への切り替えをすることです。トラブルがあった事業者とは別の会社が来ることで、入居者不安は一掃することができ、退去にもつながりにくくなります。その結果、風評にも出にくくなります。
多くの運営会社は、真面目で誠実な仕事をしていますが、中には、人員不足解消のため、ケアスタッフとして不適切な行動をする人材を採用してしまう会社もあります。
土地オーナーは現場に出ませんので、サ高住経営の内情を把握するチャンスは少ないのですが、サ高住開始前の段階で、運営会社選びを慎重にすることで、トラブルを未然に防ぐことはできます。
4-5.運営会社の撤退
運営会社が事業の途中で撤退してしまう可能性があります。土地活用でのサ高住経営は、土地と建物を運営会社に1棟貸しをしていますので、経営途中で撤退されると、オーナーは大きなダメージを受けます。
まず、事業者が撤退をして入居者はそのままの場合は、サービスを必要とする入居者が丸ごと残されます。また、一括借り上げ契約(サブリース)による家賃支払い契約ですので、運営会社がいなくなると、入居者家賃の管理もすべてストップしますが、ローン返済は続ける必要があります。
<対策>
まずは、残された入居者への適切な対応ができる運営会社を、一時的でもよいので探し、適切なケアサポートを継続する必要があります。地域包括支援センターに相談をすると、臨時スタッフの派遣をしてもらえます。
支払いに関しては、運営会社が見つかるまでの期間だけでも、サブリース管理の専門会社を間に入れ、賃貸の振り込み管理だけをしてもらうようにすれば、営業自体は通常通りにできます。サブリース会社は、個人で探すよりも、建設をお願いしたハウスメーカーや建築会社からの紹介の方が、事情説明などの手間が省け、適切なことをしてもらえます。
このような事態を避けるには、運営スタート前の段階での、運営会社選びを慎重にする必要があります。運営会社の撤退理由はさまざまですが、多くの場合、運営会社側にサ高住ビジネスの経営ノウハウが足りていないことが要因である傾向にあります。
サ高住は福祉事業のひとつであり、経営の多くの部分を助成金や補助金に守られたビジネスモデルですので、健全経営で長期的に成功している運営会社は数多くあります。
しかし、福祉ビジネスが儲かるという言葉に乗せられて、新規に介護事業などを始めた会社の中には、福祉事業に対する見通しが甘い会社が混じっている可能性があります。
良質な運営会社は、責任を持って運営できる範囲でしか仕事を引き受けませんので、まずは、複数の会社探しをして、運営会社の質を見極める必要があります。
また、サ高住経営をスタートする前に、活用予定地の地域包括支援センターに通い、良質な事業者の経営するサ高住を見学させてもらうなど、何を持って「良い運営会社」とするのかを、体感を通して把握しておく必要があります。
5.土地活用でサ高住経営をスタートする全10フロー
本章では、土地活用でサ高住経営をスムーズにスタートさせるために、あらかじめ把握しておいたほうが良い、経営開始までの全体の流れを10のフローに分けて、やさしく説明します。
土地活用でサ高住はじめようと検討し始めてから、実際に、サ高住経営をスタートするまでの全体のイメージを以下のイラストにしました。
上記の図を見るとわかりますが、サ高住経営をはじめるためには、サ高住を建てるための融資先、サ高住運営をしてもらう会社探し、サ高住の許認可や補助金申請などが必要なため、一般的なアパート経営と比較すると、やることが多く見えます。
しかし、このイラストの中で、土地オーナーが行う作業は、1.のハウスメーカーや不動産会社からの建築プラン選びと、3.のサ高住の運営会社選びがメインであり、あとはハウスメーカーや建築会社の担当者などの専門家に任せることができるので、土地オーナーは書類に印鑑を押すことが主な仕事となります。
- 複数の会社から建築プランを取り寄せ
- 事業計画を作る
- サ高住の運営会社を選定する
- 融資機関へ事前相談+融資申請をする
- 設計+設計検査
- サ高住登録
- 補助金申請
- ハウスメーカーと契約
- 工事着工
- 竣工・オープン
5-1.複数の会社から建築プランを取り寄せ
複数のハウスメーカーや建築会社からサ高住の建築プランを取り寄せます。多くの建築プランには、収支計画・経営計画などのカンタンなシミュレーションも添付されています。
いくつかの会社のプランを見比べることで、ご所有の土地にどのくらいの規模のサ高住ができ、どのくらいの収入が得られるのかなどがイメージできます。
サ高住の建築プランは、一回の入力で最大10社までの企業へプラン請求ができる、NTTデータグループが運営する「HOME4U オーナーズ」の一括プラン請求をご活用ください。
ご所有の土地のエリアと広さなどの、かんたんな質問に答えるだけで、サ高住の建築に実績のある、相性の良い企業を紹介します。資料を比較した後は、活用予定地に訪問査定に来てもらい、実際の土地と周辺エリアなどを確認してもらうことで、より具体的な建築プランと経営プランとなります。
また、実際に現地に来てもらうことで、サ高住以外にも適した土地活用がある場合は、併せて提案をしてもらえます。
5-2.事業計画を作る
建築をお願いしたいと思うハウスメーカーや建築会社を絞り込み、事業計画を作ります。この時点でまだ1社に絞れない場合は、2~3の会社に事業計画まで出してもらってから決めても問題ありません。
サ高住の建物は難しい建造物ではありませんので、過去にアパートやマンションなど集合住宅の建築経験があれば、どこの会社でも建てられます。
しかし、できれば、サ高住の建物を建てた経験のある会社の方が良いでしょう。
その大きな理由として、この事業計画は住宅金融機関など、サ高住の融資を受ける金融機関にも提出しますので、サ高住の融資基準を理解してくれているほうが、審査もスムーズになります。事業計画の内容には、建築で何にいくらかかるかなどを含めた収支計算を、事業計画書に反映させる必要があります。
ハウスメーカーや建築会社選びの際には、事業計画の段階からサ高住建築に関わったことがあるかも合わせて、比較検討しておく必要があります。経験に関しては、訪問査定の際に担当者に直接確認できます。
5-3.サ高住の運営会社を選定する
上記の事業計画書作りと同時進行で、サ高住の運営会社を探します。サ高住の運営会社には、事業計画の最終段階で、運営会社としての人員配置・給与配分・地域医療連携などの部分に参加してもらう必要がありますので、事業計画を作り始めたら、すぐに運営会社選びもスタートして下さい。
探し方は以下の4通りが一般的です。
- 1.地域包括支援センターで紹介してもらう
-
土地のあるエリアの地域包括支援センターに出向き、「サ高住を経営する予定なので、事業者をいくつか教えて欲しい」と相談します。地元で実績のある運営会社をいくつか紹介してもらえます。
- 2.建築プランを依頼した会社に関連企業を紹介してもらう
-
大手ハウスメーカーや建築会社の場合、自社の関連企業に福祉事業を持っていることがあります。このような場合は、建築プランに運営会社の資料も添付されていることがあります。
また、関連企業がなくても、その企業全体で外注をしている会社などを紹介してもらえます。
- 3.知人友人から紹介してもらう
-
知人友人やその親族などが入居している施設で、とても評判の良いところがあれば、その運営会社を紹介してもらい、直接「うちのサ高住の運営をお願いしたい」と持ち掛けてみます。
誠実な会社であれば、引き受け能力の範囲内で受け答えをしてくれます。また、交渉がうまくいかなかった場合でも、別の良質な会社を紹介してもらうことができます。
- 4.ネットで検索する
-
ネット検索で探す方法です。検索窓に「地域名+サ高住事業者」「地域名+福祉事業者」などと入れると、ズラッと検索結果が出てきます。いくつか気になる会社があれば、無料相談の申し込みをすれば、面談予約と資料などがもらえます。
ただし、ネットの場合は玉石混交であることを前提に、1~3までの運営会社探しと一緒に進めるようにしてください。
運営会社選びは、サ高住経営の成否を左右するほど大切な要素ですので、オーナーとして、慎重かつシビアに行うようにしてください。
サ高住の融資を行う融資機関では、サ高住の事業計画以外にも、運営会社の信頼性をかなり厳しくチェックしています。
融資機関に提出した事業計画の中で、サ高住運営会社が、どのような人員配置をするかなど、福祉事業としての経営方針を厳しくチェックし、ケースによっては、融資審査の際に、過去の決算書提出まで追加で要請されることもあります。
そのため、数ある運営会社の中から、大きな事故のない、評判の良い会社を選ぶようにしてください。
5-4.融資機関への事前相談+融資申請
事業計画と運営会社が決まったら、サ高住の融資機関に、融資の打診のための事前相談をします。サ高住の融資をする機関や機構はいくつかありますが、メインは住宅金融支援機構になります。
建築プランを依頼した会社が、申請先をいくつか提案してきますので、その中から選ぶこともできます。どの機関でも、融資申請前の事前相談が必要で、この段階で以下の内容を細かくチェックします。
【事前相談の内容】
- サ高住申請の要件をクリアしているかを確認
- 申請者・建築会社・運営会社の財務状況の確認
- 建設計画と収支計画
- 担保評価と保証人の内容
- 運営会社の実績確認
- 必要書類の不備の確認など
この事前相談は、事業計画の見直しや運営会社の再検討事項がある場合を含め、本審査に進むまで平均で2~6か月かかります。
事前相談をクリアしたら、本審査に入ります。審査に必要な書類は全部で約20種くらいあり、一つでも不備があれば事前相談のやり直しになりますので注意してください。不安な方は、事前相談と申請を、ハウスメーカーや建築会社の担当者などの代理人にお願いすることもできます。
【参照:借入申込書類一覧表】
5-5.設計+設計検査
申請から2か月以内に、融資の可否または融資可能額の連絡が来ます。最終審査が通過すると、金融機関の担当者が、土地オーナーに直接面談に来て、形式的な質疑応答をします。
この質問票は事前に郵送されてきますので、内容は事前に把握することができますが、この質疑応答は代理人ではなく、土地オーナーが対応します。
面談が終わり、融資予約決定通知書が送られてきたら設計を開始します。建物の設計図を作るための必要書類などは、すべてハウスメーカーや建築会社側が用意します。会社によっては、設計のための手付金が必要になることがあります。
設計が完了したら、ハウスメーカーや建築会社から、サ高住の運営会社に、動線や設備の不備がないかなどの確認をしてもらい、設計が完了します。設計が終わったら、サ高住の適合証明検査機関によるチェックが入ります。
5-6.サ高住登録
設計検査に合格すると、県や市などの自治体にサ高住として登録ができます。
ハウスメーカーや建築会社がつくった、検査済の設計書を提出すると登録が完了し、サ高住としての許認可が下りて、次項の補助金の申請ができるようになります。
5-7.補助金申請
自治体からサ高住に登録されたという通知書が届いたら、次は、補助金申請です。補助金は、国の外郭団体であるサ高住整備事業事務局に申請をします。
こちらも、代理人申請ができますので、ハウスメーカーや建築会社の担当者などに代理で申請してもらうことができます。
5-8.ハウスメーカーと契約締結
融資が下りたら、ハウスメーカーや建築会社との契約をします。
最近は、工事着工までの準備期間を省略し、なるべく早く事業開始をするために、5-5.の設計契約をする段階で、この本契約も一緒にやる傾向があります。
契約を締結すると、代金の一部の支払いをすることになります。どのタイミングで契約をするのかは、融資の振り込みタイミングと合わせて担当者と相談することになります。
※一般的には、着工時に融資総額の30%、屋根工事完了時に30%、竣工時に30%が融資機関から振り込まれますが、建設スケジュールなどによっても違いがあります。詳しくは融資事前相談の際に、担当者に確認をしてください。
5-9.工事着工
工事がスタートします。ケースによっては、工事開始前に、近隣住民の方々への説明会を開催することがあります。説明会の必要の有無は、ハウスメーカーや建築会社の担当者、サ高住運営会社の担当者を交えて、よく話しあってください。
5-10.竣工・オープン
着工から引渡しまでの目安は6か月前後です。竣工を確認したら清算をし、建物の引渡しを行います。
引き渡し後は、サ高住の運営会社がオープン日までの期間で、業務に必要な什器や機材の導入・入居者向け内覧会・スタッフ採用と教育などを行います。契約者が入居次第、運営スタートとなります。
申請した補助金は、オープンから2~3ヶ月以内に振り込まれます。
6.サ高住経営をするときに注意しておくべき5ポイント
本章では、サ高住経営を土地活用として検討したときに、あらかじめ注意しておくポイントを5つにまとめています。
- 補助金を受けたら10年はやめられない
- サブリースの場合は10~15年で家賃見直しがある
- 運営会社との契約内容に注意をする
- 将来の売却も視野に入れて資産形成をしておく
- 良質なハウスメーカー選びが大切
6-1.補助金を受けたら10年はやめられない
サ高住経営をスタートさせるときに、国からの補助金を受けた場合は、最低10年はサ高住として営業をし続けなければならないというルールがあります。
これは2011年(平成23年)に制定された、高齢者住まい法の中で規定されている要件です。現在、サ高住の登録は5年ごとの更新なのですが、この更新を最低一回はすることが、補助金をもらってサ高住を建てるときのルールとなっています。
10年以下でサ高住の営業停止をした場合には、補助金の一部を返還しなければならないこともあります。
【参照:高齢者住まい法の改正について】
6-2.サブリースの場合は10~15年で家賃見直しがある
土地活用でのサ高住経営は、運営を専門会社にすべてお任せするサブリース契約をするのが一般的です。サブリース契約とは、運営会社がサ高住の建物を1棟丸ごと借り上げて運営し、あらかじめ契約で決めた割合を家賃収入としてオーナーに振り込むという方法です。
この賃料は、サ高住が満室でも、空室が続いていても、契約期間内は必ず決まった額が保証されますので、オーナーとしては経営状態にかかわらずに長期安定収入が約束されます。オーナーはこの家賃収入の中から、融資したローンの返済を行っていきます。
ただし、サブリース契約は最初に設定した10~15年の契約期間が終わると、必ず家賃の見直しがあります。一般的なアパート経営と違い、サ高住は経年したことが家賃に大きく影響しないため、大きな家賃下落はないと予想しますが、近隣に同スペック以上のサ高住などができた場合は、賃料に影響が出る可能性も考えられます。
前項で説明した通り、サ高住登録の有効期限は5年ごと、補助金を使った場合は最低10年の営業が義務付けられていますが、10年目以降もサ高住を続けるのかどうかも、ここで再検討できます。
次項で説明する出口戦略も含め、築10~15年の節目は、サ高住の登録更新・サブリース契約の更新・大規模修繕の必要性なども含め、一旦、経営見直しを検討すべき時期と言えます。
6-3.将来の売却も視野に入れて資産形成をしておく
サ高住も土地活用ですので、将来の出口はいくつか想定しておく必要があります。今後も代々所有し続けるのであれば、必要なメンテナンスを入れながら運営を続けることになります。
サ高住で補助金を使った場合は、開業から10年間は営業するという縛りがありますので、10年目を一つの節目として、別のビジネスに転向することも可能です。例えば、以下のようなものがあります。
- 有料老人ホームなどの施設へと業態変更
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サ高住はすでに高齢者向けのバリアフリー構造の建物ですので、レクリエーションなどの共用施設などを用意すれば、有料老人ホーム施設へと業態変更が可能です。
有料老人ホームには、サ高住のような運営内容に対する縛りが少ない分、入居金の設定や、居室の賃料設定なども自由にできます。
- グループホームなどの賃貸経営に業態変更
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グループホームとは、知的・精神の障がいがある方たちが、お互いに生活サポートをしあいながら、一つの場所に集まって暮らすための共同住宅です。
サ高住と比べると規模が小さくても運営可能であり、サ高住ほどのケアスタッフ人数が不要なため、経営規模を小さくしたい場合などに向いています。
こちらも地域包括ケアシステムの一環であるため、福祉性と社会貢献性の高い土地活用になります。地域でグループホームの数を管理していますので、地域包括支援センターへの事前相談が必要になります。
- サ高住のままで売却する
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サ高住は一般の賃貸経営とは違い、築10年以上経過しても家賃下落が起きにくい賃貸経営ビジネスです。そのため、買い手にとっては利回りの良い状態の賃貸物件を購入できるという、売り手優位の不動産になります。
サ高住の建物の構造により耐用年数が決まり、その残存年数と市場ニーズで売却額が決まります。サ高住の経営状態が良くても、建物の経年が法定耐用年数の半分くらいまで進んでしまうと、融資機関からのローンが下りない・または少なくなる可能性があるので、サ高住にとっての売り時は、築10~15年で満室経営のタイミングとなります。
ただし、サ高住にお住まいの、サポートを必要としている高齢者を守るという側面から考えても、売却先の第一優先順位は、現在、運営を依頼している会社となります。
どの方法を選択する場合でも、問題になるのは、土地オーナーの融資の残債になります。当初、サ高住経営で建てた返済計画が崩れないような経営計画であれば、どの方法をとっても問題はないと言えます。
業態変更を検討する場合は、一度、融資を受けた金融機関の窓口で無料相談をしてみることをおすすめします。
6-4.運営会社との契約内容に注意をする
サ高住の運営会社との契約内容には、注意が必要です。経営不振による事業撤退や、事故などが起きた時のペナルティは、必ず契約の中に盛り込み、万が一の場合でも、サ高住経営が途中でストップしないように、細心の注意が必要になります。
例えば、途中解約した場合の違約金の設定、事業撤退する場合の違約金と、次の事業者の紹介と引き継ぎ作業など、経営悪化に結びつく要素は可能な限り排除できるようにしておきます。また、契約書は、必ず弁護士を通じて作成するようにしてください。
運営会社選びでサ高住経営は大きく変わります。信頼と実績のある評判の良い運営会社探しをすることは、オーナーとしてとても大事な仕事になります。また、どれほど気をつけていても、事故やトラブルが起きるときは起きますので、オーナーとして常に良質な運営会社探しの情報収集を欠かさないようにしておき、必要な場合は、すぐに運営会社の変更ができるような対策も必要です。
6-5.良質なハウスメーカー選びが大切
土地活用をする土地オーナーの立場として、サ高住経営が成功するためにできる最善の行動は、良質なハウスメーカーや建築会社がつくる建築プラン選びと、運営会社選びになります。それ以外の部分は、不動産・建築・福祉事業のプロフェッショナルがすることになります。
一番大切なのは、複数の会社の中から、土地に最も適したサ高住の建築プランを選び出すことです。そのためには、いくつもの会社のプランを入手し、内容を比較検討する必要があります。
複数の会社選びの際には、NTTデータグループが運営する「HOME4U オーナーズ」の一括プラン請求をご活用ください。日本全国からサ高住の建設の実績がある企業を、最大10社にまで絞って紹介します。
複数の企業からの建築プランを比較したら、現地での訪問査定をして、より具体的なプランを作ってもらいます。また、大手ハウスメーカーでは、建築プランと一緒に、運営プランの提案もできます。
サ高住経営の成否は、運営会社の質にかかっていますので、大手ハウスメーカーであれば、グループ会社の中にある福祉事業の運営会社に委託することができます。
一つの会社で建築から運営管理までを一貫してお願いできるのは、大手企業ならではの安心感です。
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