今回は、賃貸住宅を新築する際の差別化について私の経験をお伝えします。
巷に賃貸住宅があふれている昨今、自分の物件を選んで貰うためにみなさんはどんな差別化をされているでしょうか?
約10年前に駐車場だった土地に相続対策として、名古屋市に新築のRC構造の物件(9世帯)を企画したときの話です。
当時は、父の代から続く“部屋の空間の価値提供”を大切に、自分としても大家さんとして生き残っていくためにも“住環境”を価値提供していこうと決めたところでした。
ハード面の差別化は継続できない
今までは、お部屋を如何にリフォーム、リノベするか? とか、値下げ競争で違いを作るか? を考えていました。
リフォーム、リノベ費用はお金を掛ければ当然良い物はできます。また、上手にコストを掛けずに良く見せることも可能です。
しかし、建物の外観や内観といったハード面で差別化を図ろうとしても他の大家さんのほうが資金力があれば上回ってきますし、そうでなくとも低コストでのリフォームノウハウがあれば真似をすることは可能です。
つまり、継続して差別化できるとは言い切れません。
そこで、私はソフト面で差別化をしようと思いました。
ペルソナを設定→その人が長く住みたいと思うには何が足りない?
ソフト面で差別化を図るために最初にしたことはペルソナ(理想のお客様像)を設定することです。
一般的にファミリー物件においての継続入居期間はおおよそ5年と言われており、その期間より長く住んでもらえる可能性のある属性を考えました。
自宅を購入しない人は長く入居が見込める
⇒次の2択
(1)家を買えない属性
(2)家を買わない属性(経営者、転勤族)
私は(2)を選びました。理由は、(1)をペルソナとして設定している既存物件もあり、入居期間は長期を見込めますが賃料があまり伸びないため、より賃料が伸びる可能性を求めました。((1)向けの物件は築古になれば選択肢にいずれ入る事も要因の一つ)
幼児がいるファミリーで、幼稚園、保育園の年少さんから小学校卒業までの約9年間住んでくれるといいよね、と想像して「幼稚園・保育園、小学校に通っているお子さんがいるファミリーで、経営者or転勤族」をペルソナとしました。
この属性の困りごとは、パパやママが新天地の生活により早く馴染むことと考えました。早く馴染むには、パパ友やママ友が出来ることが必要な要素の一つです。
そこで、マンション内でパパ友やママ友が出来るような横の繋がりのあるコミュニティーがある住環境を価値として提供する事を決めました。
最終的なコンセプトは「住人同士がパパ友・ママ友」に決めました。
住人も満足、収益もアップ!
このコンセプトを実現するために、次のような施策を実施しました。
・入居者さんが気軽に使える、中庭(みんなのガーデン)を作る
・入退去が一番多い4月にみんなのガーデンで”顔合わせ会”を実施
・夏頃に“水遊び会”を実施
・秋冬に“焼き芋会”を実施

(ガーデンの様子)
このような取り組みやイベントを行っていると嬉しい声も聞こえてきます。
「中庭が便利です。子どもが夜ぐずったら中庭を散歩しています」
「入居者同士で、本当のパパ友、ママ友になれました。退去後も家族同士で遊んでいます」

(広々とした空間が大人気)
こんな声が聞こえてきたとき、コンセプトを実現できたと感じたし、大家さんとしての仕事のやりがいも感じました。
結果としては、新築の成約賃料は近隣相場より約30%アップに成功して、築10年目の現在では新築から年間家賃売上を約3.5%アップしてきています。
まとめ
競争が激しい賃貸住宅において、自分の物件が選ばれる理由づくりは我々大家さんにとって継続的な課題です。
建物設備や外観、お部屋の内装と言ったハード面ではなく、物件のコンセプトを作りソフトの面での差別化も一つの選択肢に入れてみては如何でしょうか?
この記事の執筆者
この記事の執筆者
永谷直也
所属 株式会社永⾕エステート代表取締役
職業 宅建士・賃貸不動産経営管理士
二代目大家。10年間異業種で働いたのち家業に携わる。住人同士が仲良く安心して子育てできることを目指した、子育て応援マンションをはじめ、資産50億を目指し、10棟約170戸(賃収約1.2億円)を運営中。
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