これからアパートメント経営を始めようとしているあなた、既にアパートメント経営をしているあなた、市場環境リサーチを行うことで、新しい(ポストコロナ)時代の賃貸経営が見えてくるはずだ。
この新しい時代に入り、生活様式が変化し、アパートメントに対するニーズも変化しつつある。コロナが悪いのは重々承知しているが、だからといって失敗するわけにはいかないので、新しいニーズに合わせたアパートメント経営が必要となる。
その為には、「あなただけの土地」「あなただけのアパートメント」を理解している事が重要だ。
今回のコラムでは、市場環境リサーチにおける、統計情報サマリーと、ハザード関連サマリーについて、語る事にしよう。
統計情報サマリー
統計情報のリサーチを読み取る事で、あなたの土地のこれらの事が分かるようになる。
- 年齢別統計からどこの層の入居者が望めるか
- 男女別統計からペルソナ(ターゲット)を絞り込む
- 相場家賃を把握する事により、差別化となる創造家賃の設定
- 建物は低層の木造アパートメントが良いのか、中層の4階以上のRCマンションが良いのか
- 生活のしやすさ、平坦な生活しやすい道なのか、坂道等あってアップダウンが大変な道なのか
つまり、この場所でアパートメントを経営するためのペルソナ(ターゲット)や創造家賃の根拠となる、絞り込む事が重要である。
その鍵となる5枚のカードは、以下の通りだ。
11.年齢別人口統計
調査対象範囲近辺の年齢別・男女別人口統計、周辺エリアの人口分布である。
出典:FIVES・リングアンドリンク
*人口分布
人口の密度または人口密度とは、人口とその住む面積との関係を示す指数である。
最も単純な密度指数は、全人口を領域の面積で割って得られ、通常、1エーカー、1平方キロメートル、または1平方マイル当たりの人口数として示している。
(1エーカー:4046.86平方メートル ・ 1平方マイル:2.59平方キロメートル)
人口分布は定住のタイプ、すなわち、集合して定住しているか、分散して定住しているかによって異なる。
研究者によっては、物理学で重心を見いだすのに使う数学的方法を用いて一定地域の人口中心(人口重心)の計算をしている。その場合、人口の一人一人に対して均等の重みがつけられる。
12.乗降客数
調査対象範囲近辺の乗降客数、調査物件の周辺エリアにある駅の乗降客数/日をレポートする。
駅の乗降者数は街の活力を計る最も重要な指標のひとつだ。また路線別に比較することで、路線毎の特徴がつかめる。時系列化することでさらに、詳細な地域分析が可能となる。
出典:FIVES・リングアンドリンク
13.人口集中地区
調査対象物件が所在する市区町村の境域内で、人口密度の高い地域として設定された人工集中地区の情報をレポートする。
出典:FIVES・リングアンドリンク
*人口集中地区(DID)とは何か
国勢調査の結果は、主として都道府県及び市区町村という行政地域を単位として集計されているが、都市的地域(特に人口密度の高い地域で、広い意味での市街地を指す。)の特質を明らかにする新しい統計上の地域単位として、昭和35年国勢調査から設定されたのが、人口集中地区である。
この人口集中地区は、統計データに基づいて一定の基準により設定され、平成12年国勢調査では、国勢調査基本単位区等を基礎単位として、
1.「原則として人口密度が1平方キロメートル当たり4,000人以上の基本単位区等が市区町村の境域内で互いに隣接」
2.「それらの隣接した地域の人口が国勢調査時に5,000人以上を有する地域」
とされた。
(DID=Densely Inhabited Districts)
14.土地利用状況
調査対象エリアの土地利用状況をレポートする。
高層建物・低層建物等、そのエリアに合った建物が判断できる。
出典:FIVES・リングアンドリンク
15.傾斜度
調査対象エリアの地表平均傾斜度をレポートする。
出典:FIVES・リングアンドリンク
統計情報リサーチ5枚のカードから読み取るもの
この土地でアパートメント企画をしたときに、前回リサーチした周辺情報リサーチから見えてきたペルソナ(ターゲット)がこの調査対象範囲のエリアに存在するかを再チェックする。
また、土地利用状況の再確認と生活するのに厳しい坂道等はないかどうかも確認して創造家賃(近隣の相場家賃の1.1~1.2倍)が取れるか最終確認をする。
ハザード関連サマリー
ハザード関連のリサーチを読み取る事で、あなたの土地のこれらの事が分かるようになる。
- 活断層が通っていないか
- 地震時に揺れやすいのか・揺れにくいのか
- 液状化や近くの川などから浸水など過去になかったか
- 災害の時の避難施設はそばにあるのか
- この調査対象範囲エリアで安全に暮らせるのか
つまり、日々暮らすこの場所は安全なところなのかが理解できる。
5枚のカードは、以下の通りだ。
16.活断層
調査対象範囲近辺の活断層。
活断層診断では、独立行政法人防災科学技術研究所による活断層データベースをもとに、調査対象物件の所在地及び、周辺エリアの活断層の有無を診断する。
出典:FIVES・リングアンドリンク
17.地震時の揺れやすさ
調査物件所在地での地震時の揺れやすさをレポートする。
出典:FIVES・リングアンドリンク
*備考
地震時の揺れやすさは、その土地の地形により判断される。
揺れは震源地に近いほど大きくなり、また、地盤が柔らかいほど大きくなる。
地震の揺れが増幅しやすい場所か、もしくは増幅しにくい場所かという基準で揺れやすさを評価する。
18.液状化の可能性
調査物件所在地での液状化の可能性をレポートする。
出典:FIVES・リングアンドリンク
*液状化現象
地震の際に、地下水位の高い砂地盤が振動により液体状になる現象。これにより比重の大きい構造物が埋もれ、倒れたり、地中の比重の小さい構造物(下水道管等)が浮き上がったりする。ゆるく堆積した砂質土層では、標準貫入試験で得られるN値が10程度以下と小さい場合が多い。
19.浸水想定区域
審査対象範囲近辺の浸水想定区域の確認。
浸水想定区域診断では、河川管理者(国土交通大臣・都道府県知事)から提供された浸水想定区域図について、調査対象物件の所在地及び周辺エリアの河川浸水時の危険を診断する。
出典:FIVES・リングアンドリンク
20.避難施設
調査物件の周辺エリアにある避難施設をレポートする。
出典:FIVES・リングアンドリンク
*避難施設
建物に災害,特に火災が発生したときに、それを使って建物の外へ避難するためにつくられた施設。
このリサーチ5枚のカードから読み取るもの
活断層や地層から、調査対象地及び周辺が地震・液状化・浸水などの災害の予測を知り、それに備えられるか、また、災害時には避難設備は充実しているかを読み取る。
以上が市場環境リサーチの4つのサマリー20枚のカードの内容だ。
- アパートメントを建て替える時
- 事業再生リノベーションをする時
- 売却をする時
市場環境リサーチの内容を知って商談するのと知らないで商談するのでは大きな差がつく。
駐車場を持つ次世代家主のペイン(痛み・問題点)
前回に引き続き、3回に分けて3人の若者たちをモデルに書くことにする。
- 古いアパートメントを持った次世代家主
- 駐車場を持つ次世代地主
- 農地を持つ次世代地主
今回は、2人目の駐車場を持った家族の話をしよう。
私は北区にコインパーキングを持つ地主の長男だ。
東京メトロ南北線が開通してから、このエリアも変わった。
分譲マンションがたくさん建ち始め、今でも建ち続けている。
昔、10坪貸家と言って300坪くらいの畑に平屋の貸家を7軒くらい爺ちゃんの時代に建てたようだ。
親父の代になって、世の中の流れが変わり、車社会になった。
古い建物を壊して砂利を引き、トラロープ(黒と黄色の工事現場にあるようなロープ)を貼った。
1台当たり7坪だから(駐車スペースと通路が必要)42台の車の駐車できる駐車場を創った。
そして5年前、ある会社からコインパーキングの提案があり、半分の21台を機械式のコインパーキングにして、運営を親父はその会社に任せた。
しばらくは、その方法でうまくいっていたのだが…
最近では、この地域の大きな会社が工場や事務所をインターの傍に移転し、また、若者たちの車離れなどでこの地域の駐車場事情に陰りが出てきた。
実際、ウチの駐車場はメイン道路から一本奥に入っているので、コインパーキング会社から3割減の家賃交渉が入った。
この金額だと公租公課(固定資産税・都市計画税)を払って何も残らないと親父は言う。
駐車場オーナーの次世代地主は大変だ。
今、このコラムで話している市場環境リサーチは、変わりゆく市場を多方面にわたりリサーチし、次の家主が、次の一手を打つ、海図と羅針盤の役をする。
駐車場を所有する家族は大きく2つのテーマを考えたい。
一つ目は、キャッシュフローの見直しだ。
駐車場は更地扱いなので、税金がMAXかかる。
今まではそれを上回る収益があったからコインパーキングなどが流行ってきた。
しかし、世の中は若者をはじめとする車離れが始まり、少し前までは、一家に2台車を所有する時代だったのだが、車のローン・保険・駐車場などの経費を考えると、車は一家に1台もしくは無くても十分となった。
そうなると必然的に古いアパートメントのように駐車場は空くし、駐車場代も下がる。
そして、道路付けが悪く止めにくい駐車場はスポイルされていく。
今まで空き地があればすぐコインパーキングになっていたのだが、最近ではそんな状況はない。
そこで、何かを考えるのが面倒だったので駐車場にしていた土地は、収益が下がることにより、キャッシュフローは悪化し、資産の組換えを余儀なくされる。
二つ目は、納税の圧迫だ。
住居系(自宅・アパートメント・貸家)などに活用すれば、公租公課(固定資産税・都市計画税)の税金的なお目こぼし(評価減)がある。
土地で言うと固定資産税は1/6 ・都市計画税は1/3となる。
出典:賃貸経営HOME4U
しかし、駐車場にしておくと更地扱いなのでお目こぼし(評価減)が何も無くまるまる課税対象になってしまう。
これは公租公課(固定資産税・都市計画税)だけでなく相続税でも同じ現象となる。
一時的に駐車場にしておけば良いと思っていた地主は次世代に渡す前に何らかの税金対策も含め、資産の組換えが必要となる。
そうなってくると、今回の駐車場の出口としては、大きく3つではないだろうか。
- いっそ売却する
- 相続対策としてアパートメントを建てる
- キャッシュフロー改善策としてその他の建物を建てる(店舗・オフィス等)
*相続税対策と固定資産税対策を考えるなら、住居系(アパートメント)がよい。
これを家族で話し合わなくてはいけない。
新しい時代は決して人から説得されるのではなくいろいろなものを自分なりに見て、聞いて、触れて信頼できるビジネスパートナーを探し、そこに委ねるものだと思う。
その情報源としてこの専門家コラムを読んで頂きたい。
まとめ
今回ご紹介した市場環境リサーチの1つのサマリーを見ても、あらゆる角度から分析をしなければ、「あなたの土地」を具体的に把握する事は難しい。
あなただけで行う事は非常に骨の折れる作業なのだ。
そんな時は信頼できるパートナーが必要だ。
複数社より提案を頂ける、「HOME4U(ホームフォーユー) オーナーズ」といったサービスもある。
こういったサービスも利用し、あなたの信頼できるパートナーを見つける事も一つの手だ。
「yosoro!」
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