円満相続税理士橘慶太先生に不動産を購入すると相続税が減るメカニズムと注意点について解説していただきました。HOME4Uオーナーズ専門家コラム

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更新日
2020.10.14
カテゴリ
専門家コラム, 相続・税金(専門家コラム), 税金・相続
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橘 慶太

不動産を購入すると相続税が減るのは何故?

橘 慶太

この記事を書いた専門家

代表税理士橘 慶太

現在6名の相続専門税理士が在籍する円満相続税理士法人の代表を務める。 週刊ポストや日本経済新聞、幻冬舎、女性自身など、様々メディアから取材を受けている。
また、自身で運営しているYouTubeのチャンネル登録者は4万人を超えており、相続分野では日本一のチャンネルに成長している。

不動産を購入すると相続税が減るのは何故?

「相続税対策のためにアパートを建てた」誰しもが一度は聞いたことがある話だと思います。アパートに限らず不動産を購入すると相続税が減るというのは本当かというと…、本当です!

しかも、物件の大きさにもよりますが、減る相続税の金額は非常に大きいです。

今回の記事では、不動産を購入すると相続税が減るメカニズムと注意点について解説していきます。

2020年現在、新型コロナの影響で路線価が変わる可能性もあるため、このメカニズムを理解しておくことはとても大切です。

1.土地と建物の相続税評価額の計算方法

不動産を購入すると相続税が減るメカニズムですが、一言で言うと、不動産の時価と評価額に大きな差が生じているからなのです。
「??」と思われた方も多いと思いますので、ゆっくり説明していきます。

まず、そもそも相続税という税金は、亡くなってしまった方が残した遺産の相続発生時の時価を集計して、その金額を基に税額計算します。遺産が預金や投資信託だけであれば時価の集計は簡単です。相続発生時の残高や評価額を集計すればいいだけですので。

しかし、不動産についてはそう簡単な話ではありません。
例えば、皆さんがお住まいの住宅を客観的に明確な時価で把握することはできますでしょうか?
恐らくできませんよね。実際に売りに出しているわけじゃないですから。

不動産鑑定士に依頼をすれば時価を算出してくれるかもしれませんが、お金も時間もエネルギーもかかる話になります。相続税を計算するためだけに、わざわざそのようなことを納税者に強いるのはあまりにも酷です。

そこで、国としては誰でも簡単に不動産の時価を把握できるような仕組みを開発し、それを取り入れたのです。その仕組みこそが路線価方式です。

※路線価方式とは
国が日本中の道路一本一本に値段(路線価)を振り、その道路に接している土地の面積(1㎡)×路線価をすれば、土地の時価を計算できるという評価方法です。この方式で計算された土地の価格のことを相続税評価額といいます。

2.時価と相続税評価額の差とは?

誰でも簡単に不動産の時価を把握できるようにという趣旨で創られた相続税評価額ですが、実は、この相続税評価額は実際の売買価格よりも低くなるように設定されています。実際に売買される価格を10とすると、相続税評価額は8くらいになります。

相続税は遺産の時価に対して課税するという決まりになっているにも関わらず、何故、20%も低く評価されることを国が許しているのでしょうか?

その第一の理由は、簡便的に評価額を求めることができる反面、正確性は落ちてしまうので、実際の時価よりも高く算出されてしまうようなことは防がなければいけないためです。路線価は年に1回しか公表されませんが、不動産の時価は1年間でも大きく変動する可能性があります。

実際の時価よりも高い評価額で相続税を課税したなら、国は多くの納税者から訴訟を起こされます。そのような事態を避けるためにも、実際の価格よりも低めに路線価を設定しているのですね。

なお、2020年のコロナショックにより地価が路線価を大きく下回った場合には、路線価を減額修正することを認める動きを国税庁がしているそうです(2020年7月時点)。
しかし、そもそも路線価は急激な地価の変動を織り込んで8割評価としていることから、実勢価格ベースで2割を超える減額のある地域以外には、このような取り扱いは適用されないことになると思います。

このように、不動産の時価と相続税評価額には差が生じているのです。そして、この性質を利用すると、相続税を大きく減らすことができるのです。

例えば、1億円の定期預金を持っているAさんがいました。Aさんが今の状態で亡くなってしまった場合には、1億円に対して相続税が課税されることになりますが、もしAさんが生前中に土地を買っていたなら、時価1億円の土地の相続税評価額は8,000万円になるため、その8,000万円に対して相続税が課税されることになります。

さらに、自分で自宅として使う土地ではなく、上にアパート等の賃貸用建物を建築した場合には、土地の評価額はさらに約20%ほど割り引いて評価することができます。先ほどの土地であれば6,400万で評価されることになりますね。

土地の相続税評価額

また、建物でも同じ現象が起こります。建物の相続税評価額は、毎年の固定資産税の紙に記載されている固定資産税評価額というものをそのまま使います。この固定資産税評価額は建築価格(時価)の約7割になるように設定されています。

そのため、仮に1億円かけて建物を建築したなら固定資産税評価額は7,000万円ほどになります。
さらに、その建物を自分で使うのではなく人に貸す(つまりアパートや貸家)場合には、固定資産税評価額をさらに3割引きした金額をもって、建物の相続税評価額とされます。7,000万円の3割引きだと4,900万円です。
つまり、1億円の定期預金をアパートにすれば4,900万円の相続税評価額で相続税が計算されることになります。この差は大きいですよね。

建物の固定資産税

教科書的には、固定資産税評価額は時価の7割とされていますが、実際には建築価格の5割以下になることもざらにあります。特に木造物件だと時価と評価額の差が大きくなる傾向がありますね。

いずれにしても、不動産は時価と評価額に大きな差がありますので、預金という資産を不動産に変えれば、大きな相続税対策になることは間違いありません。

3.『借金をすれば相続税対策になる』は嘘

ここでよく、「借金をすれば相続税対策になる」や、「ローンを組めば相続税対策になる」という話について考察してみましょう。

もうここまでお読みなった方ならわかると思いますが、実は、借金やローンは相続税対策には直接効果を与えているわけではないのです。不動産を購入するから相続税対策になるのであって、手許に十分な預金がある人であれば、手許の預金で不動産を買っても、借金をして不動産を買ったとしても、減る相続税の金額は同じです。そのため、資金に余裕のある人は無理にローンを組む必要はないのですね。

ただ、資金もあるけど規模の大きめな不動産を買いたいというような方は、レバレッジを効かせるという意味でもローンを組んで不動産を買うのもありだと思います。相続税を払うためのローンの金利は高いですが、不動産を買うためのローンの金利は安かったりします。そういった意味でも、あえてローンを組んで余剰資金を確保しておくのも一つの手ですね。

4.相続開始の直前に購入し、税務署から評価額を否認された事例

以上が不動産購入による相続税の節税方法になりますが、私自身は、この手法による相続税の節税をあまり強くはお勧めしていません。リスクが存在するからです。まず最も大きいリスクとして、節税額を上回るほどの資産価値の低下を招いたら元も子もないからです。

例えば、1億円の不動産を買ったことによって1,000万円の相続税を節税できたとしても、将来その不動産を売却した時に8,000万円でしか売れなかった場合には、結果として1,000万円損したことになります。

つまり、何もやらない方がよかったということになるのです。
もう一つのリスクとして税務調査での否認リスクがあります。

過去にも、相続開始直前に不動産を購入し、相続開始直後に相続人がその不動産を売却したという一連の行いについて、国税局から相続税の節税目的だけで購入した不動産の評価について、路線価方式等で評価することは適当でないとして、不動産鑑定士の評価で相続税を再計算させられた事例がありました。

この件については現在(2020年7月時点)、裁判が進行中なので国が勝つか納税者が勝つかはまだわかりませんが、あまりに露骨な相続税対策になってしまうと税務署からも目を付けられてしまいます。その点も注意が必要ですね。

まとめ

不動産を相続する際には様々なメリットとデメリットが存在します。
様々な角度から情報を収集して検討する姿勢が大事ですね。
相続税の節税効果は確かに存在しますが、争族に発展してしまう恐れもあるので、争族に強い税理士監修のもとで進めていただくことをお勧めします。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

この記事を書いた専門家

この記事を書いた専門家

橘 慶太

所属 円満相続税理士法人
職業 代表税理士

中学・高校とバンド活動に明け暮れる。大学受験の失敗から一念発起し税理士を志す。大学在学中に税理士試験に4科目合格(法人税法の公開模試では全国1位)し、大学卒業前から国内最大手の税理士法人に正社員として入社する。

勤務税理士時代は相続専門の部署で6年間、相続税に専念。これまで手掛けた相続税申告は、上場企業の創業家や芸能人を含め、通算400件以上。また、銀行や証券会社を中心に、年間130回以上の相続税セミナーの講師を務め、27歳という若さで管理職に抜擢される。

2017年1月に独立開業し、現在6名の相続専門税理士が在籍する円満相続税理士法人の代表を務める。週刊ポストや日本経済新聞、幻冬舎、女性自身など、様々メディアから取材を受けている。また、自身で運営しているYouTubeのチャンネル登録者は4万人を超えており、相続分野では日本一のチャンネルに成長している。

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