
相続は準備をしていても突然やってきます。
アパートを相続するような資産家は、相続税が発生することも多いため、相続後はかなりタイトなスケジュールで手続きを進めていかなければなりません。
少なくとも、相続税の納税と申告までの期間は、何をどうすべきかイメージしておくことが必要です。
この記事では「アパートの相続」について解説します。
アパートを相続するときの流れや、相続税の計算方法、売却または賃貸するときの注意点等について紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
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この記事を書いた専門家
(株)グロープロフィット 竹内 英二不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
Contents
1.アパートを相続するときの流れ
アパートを相続するときの主な流れは以下の6点です。
(1)遺言書を確認する
(2)資産と債務を確認する
(3)相続放棄や引き継ぎ方法を決める
(4)準確定申告を行う
(5)名義変更を行う
(6)相続税の納税と申告を行う
それではひとつずつ見ていきましょう。
相続後の基本的な流れを示すと下図の通りです。

1-1.遺言書を確認する
相続が発生したら、最初に行うのが遺言書の確認です。
遺言書とは被相続人(他界した人)の生前の意思で遺産の分割方法を指定することができる書面のことを指します。
遺言書があれば、原則として遺言書に従って遺産を分割します。
遺言書の中にアパートを引き継ぐ人が指定されていれば、その指定された人がアパートを相続します。
遺言書は、主に公正証書遺言と自筆遺言の2種類があります。
公正証書遺言は公証役場に保管されています。
自筆遺言は、貸金庫や書斎、もしくは被相続人が生前付き合いのあった弁護士や税理士等が保管しているケースが多いです。
1-2.資産と債務を確認する
相続税を計算するために、全ての資産と債務を確認します。
特に、アパートを相続するような方は、相続税を節税するために被相続人(他界した人)がわざとローンを残していることが多いです。
物件が複数ある場合には、どのローンがどの物件に紐づいているのかを確認する必要があります。
1-3.相続放棄や引き継ぎ方法を決める
相続が発生したら、早めに相続放棄や引き継ぎ方法を決めることがポイントです。
特に相続放棄に関しては、相続開始があったことを知った日から3ヶ月以内という期限がありますので、早めに決定する必要があります。
相続放棄とは、相続の権利を全て放棄することです。
相続放棄は、被相続人(他界した人)の遺産がプラスの資産よりもマイナスの債務の方が大きい場合に利用します。
ただし、相続人の特定の誰かに遺産を集約するために相続放棄を利用されることも多いです。
例えば、商売をやっている家系において、姉が遠方に嫁いでおり、弟が実家で商売を引き継いでいるケースでは、弟に全財産を集約させるために姉が相続放棄をするようなこともあります。
相続放棄を駆使して資産を集約させると、遺産分割協議書を作成する手間やコストが省ける点がメリットです。
このように相続放棄は資産を集約するような引継ぎ方にも利用されますので、引き継ぎ方法は早めに決定するようにします。
遺言書がない場合、引き継ぎ方法と同時に誰がアパートを引き継ぐのかを決めておくこともポイントです。
1-4.準確定申告を行う
アパートを相続すると、準確定申告を行う必要があります。
準確定申告とは、被相続人が他界した年の1月1日から他界日までの所得に関する確定申告のことです。
アパート経営者は確定申告を行っていることが通常ですので、アパートを相続する場合は準確定申告を行わなければならないことが一般的となっています。
準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。
1-5.名義変更を行う
アパートを引き継ぐには名義変更が必要です。
名義変更の方法には、主に「法定相続」と「遺言による分割」、「遺産分割協議による分割」の3種類があります。
法定相続とは、法定相続割合で共有のまま名義変更することです。
アパートを売却し、相続人間で現金で遺産を公平に分けたい場合は法定相続を選択します。
遺言による分割は、遺言書がある場合に行います。
遺産分割協議とは、相続後に相続人間で遺産の分割方法を決める話し合いのことです。
「遺言書がなく法定相続以外の方法で分割したい場合」や「遺言書があっても遺言書とは異なる方法で分割したい場合」に遺産分割協議を行います。
遺産分割協議には特に期限はありませんが、早めに行うことが望ましいです。
それぞれの分割方法において名義変更で必要となる書類は下表のようになります。
名義変更方法 | 必要書類 |
---|---|
法定相続 |
|
遺言による分割 |
|
遺産分割協議による分割 |
|
遺言書が自筆遺言の場合には、法務局に自筆遺言を提出する前に、家庭裁判所による検認が必要となります。
検認とは、家庭裁判所による遺言書の存在および内容の確認のことです。
名義変更が終わったら、新所有者として銀行と管理会社に連絡を行います。
銀行に対しては、アパートに紐づいているローンを引き継ぐ手続が必要です。
また、家賃の振込先も変わるため、管理会社に家賃の振込先を連絡するようにします。
尚、アパートを誰が引き継ぐか決まるまでの間の家賃は相続人全員の共有物になるという点がポイントです。
また、固定資産税等の費用に関しても法定相続割合に応じて共有者全員で応分負担します。
1-6.相続税の納税と申告を行う
相続税の納税義務のある人は、相続税の納税と申告を行います。
相続税の納税と申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
ただし、10ヶ月以内というのは必ずしも十分な時間ではないことから、法定申告期限から5年以内であれば後から申告内容を修正できる「更正の請求期限」というのが定められています。
2.アパートを相続したときの相続税
アパートを相続したときの相続税について解説点は以下の3点です。
(1)相続税の計算方法
(2)アパートの相続税評価額
(3)およその相続税額
それではひとつずつ見ていきましょう。
2-1.相続税の計算方法
相続税はアパート単体で計算されるものではなく、被相続人(他界した人)の全ての資産が計算の対象となります。
現金や貴金属、有価証券、その他の不動産等の金銭的な価値のあるものや、マイナスの財産である負債も含めた全ての資産が「課税価格」です。
相続税は、課税価格から基礎控除を控除したものが「課税対象の遺産総額」として計算されます。
課税対象の遺産総額の計算式は以下の通りです。
基礎控除額は、法定相続人の数で決まります。
基礎控除額の計算式は以下の通りです。
例えば、相続人が配偶者と子供2人の場合は、基礎控除額は4,800万円と計算されます。
2-2.アパートの相続税評価額
アパートのような収益物件の相続税評価額は以下の計算式で求められます。
(建物)
建物の評価額 = 建物の固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)
(土地)
土地の評価額 = 自用地としての価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
建物の相続税評価額でベースとなるのは「建物の固定資産税評価額」です。
建物の固定資産税評価額は固定資産税納税通知書に記載されている価格を用います。
借家権割合は全国一律で「30%」です。
賃貸割合は、相続時の入居率のこと指します。
満室状態であれば賃貸割合は100%となるため、相続時は満室となっているアパートが最も相続評価額が低くなり、節税効果も最も高くなる状態になります。
土地の相続税評価額でベースとなるのは、「相続税路線価」です。
自用地としての価額は国税庁の示す相続税路線価を用いて計算します。
借地権割合は、それぞれの路線に割合が指定されています。
借地権割合は、A~Gまでの記号で表現されており、記号と借地権割合との関係は以下のように決まっています。
記号 | A | B | C | D | E | F | G |
---|---|---|---|---|---|---|---|
借地権割合 | 90% | 80% | 70% | 60% | 50% | 40% | 30% |
相続税路線価は、平米あたりの千円単価を示します。
例えば路線価が「70D」と指定されていたら、土地の単価が「70,000円/平米」ということです。
また、借地権割合はDの60%を用いることになります。
土地の計算で用いる借家権割合と賃貸割合は、建物で使用する数値と同じものを用います。
借家権割合は30%で、満室であれば賃貸割合は100%です。
2-3.およその相続税額
相続税は、早見表を用いることでおよその相続税額を把握することが可能です。
以下に課税価格に対する相続税額を示します。
課税価格 | 配偶者と子供1人 | 配偶者と子供2人 | ||
---|---|---|---|---|
相続税額 | 1人あたり納税額 | 相続税額 | 1人あたり納税額 | |
6000万円 | 180 | 90 | 120 | 30 |
7000万円 | 320 | 160 | 225 | 56 |
8000万円 | 470 | 235 | 350 | 88 |
9000万円 | 620 | 310 | 480 | 120 |
1億円 | 770 | 385 | 630 | 158 |
1億5000万円 | 1840 | 920 | 1495 | 374 |
2億円 | 3340 | 1670 | 2700 | 675 |
2億5000万円 | 4920 | 2460 | 3970 | 993 |
3億円 | 6920 | 3460 | 5720 | 1430 |
3億5000万円 | 8920 | 4460 | 7470 | 1866 |
4億円 | 1億920 | 5460 | 9220 | 2305 |
4億5000万円 | 1億2920 | 6480 | 1億985 | 2746 |
5億円 | 1億5210 | 7605 | 1億3110 | 3278 |
5億5000万円 | 1億7460 | 8730 | 1億5235 | 3809 |
6億円 | 1億9710 | 9855 | 1億7360 | 4340 |
6億5000万円 | 2億2000 | 1億1000 | 1億9490 | 4873 |
7億円 | 2億4500 | 1億2250 | 2億1740 | 5435 |
正確な税額を把握する場合には、最終的に税理士に確認するようにしてください。
~相続直前で気軽にできる相続対策~
まだ相続前の方は、今からでも気軽にできる相続対策があります。
それは、アパートを満室とし、賃貸割合を100%とすることです。
国税庁は、空室部分について一時的な空室であれば、相続時に賃貸されていたものとして計算しても構わないとしています。
国税庁が示す一時的な空室とは、以下のような状況を指します。
【一時的な空室】
- 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること。
- 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていないこと。
- 空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること。
- 課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと。
空室とみなさない期間は「課税時期の前後の例えば1か月程度」としており、例えば半年以上空室の部屋がある場合は空室とみなされてしまいます。
よって、相続前に半年以上空室があるアパートは、空室を埋めることが相続税対策となります。
お金をかけない空室対策としては、管理会社の切り替えがおススメです。
力のある管理会社に切り替えると、今まで埋まらなかった空室が埋まるようになります。
「賃貸経営 HOME4U(ホームフォーユー)」を利用すると、実績豊富な管理会社を見つけることができます。
即効性のある空室対策効果が望めますので、空室の多いアパートは相続前に管理会社の切り替えを是非検討してみてください。
3.売却するときの注意点

相続したアパートは、納税資金の確保のためや、公平に分割することを目的として共有のまま売却することもよくあります。
アパートを共有状態で売却するときの注意点は以下の2点です。
(1) 最低売却価格を決めておく
(2) 売却の期限を意識する
それではひとつずつ見ていきましょう。
3-1.最低売却価格を決めておく
共有物件の売却では、共有者全員で最低売却価格を決めておくことがポイントです。
最低売却価格とは、「いくら以上なら売る」という売却の最低ラインのことを指します。
最低売却価格を決めておく必要があるのは、共有物件の売却には共有者全員の同意が必要だからです。
アパートでは、実際に売りに出すと値引き要請等によって売り出し価格のままで売れないこともよくあります。
価格を下げなければならないようなとき、共有者で意見が分かれてしまうとスムーズに売却することができません。
最低売却価格を決めておけば、買主を逃さずにタイミングよく売却することができます。
最低売却価格を決めるには、複数の不動産会社に査定を依頼して、幅広く売却予想価格を知っておくことがコツです。
複数の不動産会社に査定を依頼するには、「不動産売却 HOME4U」がおススメです。
アパート売却の実績が豊富な複数の不動産会社へ査定を行い比較することで、あなたの不動産を高く売ってくれる会社が見つかります。
3-2.売却の期限を意識する
相続したアパートを売却する場合、売却の期限を意識することがとても重要です。
相続税の納税資金を確保するために売却するには、「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」に引渡を終え現金化しておく必要があります。
相続税の納税は、現金納付が原則です。
物納という手段もありますが、物納には現金で納付することが困難とする事由が必要であるため、容易に物納を選択することはできません。
よって、納税のためにアパートを売却する場合には相続後、すぐに売却活動に移行する必要があります。
4.保有するときの注意点
保有するときの注意点は以下の2点です。
(1)管理会社と十分にコミュニケーションを取る
(2)返還敷金および修繕費を確保しておく
それではひとつずつ見ていきましょう。
4-1.管理会社と十分にコミュニケーションを取る
アパート経営を引き継いだら、管理会社と十分にコミュニケーションを取ることがポイントです。
入居者の決りやすさや問題点等をしっかり引き継ぎ、アパート経営の全体像を知ることが必要となります。
いつも入居者が決まりにくい部屋があれば、リフォーム等の空室対策も必要となってきます。
尚、親が依頼していた管理会社にピンと来ない場合には、自分で新しい管理会社に切り替えることも適切な対応です。
「賃貸経営 HOME4U」を使うと、無料で複数の管理会社から今のマンションの実情に合った管理メニューの提案を受けることができます。
管理会社を切り替えるとアパート経営を大幅に改善することができますので、切り替えも併せて検討してみてください。
4-2.返還敷金および修繕費を確保しておく
アパートを引き継いだ人は、返還敷金および修繕費を確保しておくことが必要です。
相続で引き継いだアパートでは、今の入居者から敷金を預かっていることになります。
実際に預かっていたのは親ですが、相続人の代で退去したら相続人が敷金を返還しなければなりません。
相続後、借主がすぐに退去することもありますので、アパートを引き継いだ相続人は自分の貯金の中から返還敷金の原資を確保しておくことが必要です。
また、古いアパートの場合、相続した直後にすぐに修繕が発生することもあります。
タイミングによっては外壁塗装等の高額な修繕を行わなければならないこともありますので、当面は家賃収入を極力貯蓄していく対応が必要となってきます。
大規模修繕費に関しては、管理会社に「いつ、何が、いくらかかるのか」をヒアリングし、早めに計画を立てて少しずつ積立てていくことがポイントです。
まとめ
以上、アパートの相続について解説してきました。
相続後は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告と納付の期限があります。
アパートは、申告と納付までの期限の間に名義変更を行って売却または保有の継続を行うことがポイントです。
相続税を計算する上では、課税対象の遺産総額を把握する必要があります。
売却するときは、「最低売却価格を決めておく」、「売却の期限を意識する」が注意点です。
売却査定においては、全国規模の大手企業から、実績豊富な地域密着型の企業まで、全国約1,500社と提携している「不動産売却 HOME4U」をご利用ください。
一方で、賃貸するときは、「管理会社と十分にコミュニケーションを取る」、「返還敷金および修繕費を確保しておく」が注意点です。
管理会社を切り替える際は、「賃貸経営 HOME4U」をご利用ください。
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