
不動産投資における利回りとは、投資物件に投じた費用に対するリターンを表しています。また物件個々のリスクを表しているのも利回りです。
利回りのことをきっちりと理解すると、不動産投資に対する適切な判断ができるようになります。不動産投資では、物件にお金を投じる最初の判断が一番重要です。
そこでこの記事では、不動産投資の利回りについて解説いたします。利回りとはどのようなものなのか、各種利回りの計算方法、利回りの相場についてもわかる内容です。利回りを上げる方法についてもご紹介します。
目次
1. 不動産投資の利回りとは
利回りとは、1年間で得られる収益を投資額で割った数値のことを指します。この章では、利回りがもたらす意味合いについて解説します。
1-1.リターンの指標となる
利回りは、投資に対するリターンを表しています。別の言い方をすると、投資の収益性や効率性を表すものとも言えます。
例えば、同じ100万円という投資をしたときに、利回りが5%の物件なら年間5万円、利回りが10%の物件なら1年で10万円のリターンを得ることができます。5万円と10万円を比べたら、収益性は当然、10%の物件の方が良いと言えます。
また、100万円の投資に対して回収期間を考えると、利回りが5%の物件なら20年間、利回りが10%の物件なら10年間となります。投資の回収期間である20年間と10年間を比べると、効率性も明らかに10%の物件の方が良いと言えます。
高い利回りの物件は、投資に対するリターンが大きいため、収益性と効率性が向上します。そのため、一見すると高い利回りの方が良いという判断ができます。但し、このような判断をするには、リスクが同じであるという条件が加わります。
投資にはリスクが伴います。あくまでもリスクが同じ物件であれば、利回りは高い方が良いというのが適切な判断となります。
1-2. リスクの指標となる
利回りはリターンの指標であると同時に、リスクの指標でもあります。利回りがリスクを表しているという点は、利回りを理解する上でとても重要なポイントです。
利回りとは、1年間で得られる収益を投資額で割ったものです。投資額とは、物件の購入額と言い換えることもできます。
例えば、年間で100万円の収益を稼ぐ物件Aと物件Bを考えます。物件Aは、郊外の片田舎にあり、築30年を超えるアパートです。それに対し、物件Bは都心部にある新築の区分ワンルームマンションだとします。
物件Aは、周辺環境は過疎化が進んでおり、空室率が6割を超える物件で、毎年のように修繕費も多く発生するような物件です。入居者を募集してもなかなか決まらず、今の入居者が退去してしまえば、次の入居者が埋まるかどうか、怪しい物件というような物件だとします。
一方で、物件Bは、若者に人気の街の中にあり、賃貸需要はとても高く、新築なので修繕費はほとんどかかりません。仮に退去が発生しても、次の入居者はすぐに埋まるような物件です。
物件Aの方が、物件Bよりも空室リスクや賃料下落リスク、修繕リスク等のリスクが明らかに高いです。このような物件Aと物件Bがあった場合、同じ年間100万円を稼ぐ物件だとしても、物件Aよりも物件Bの方が買いたいと思う購入希望者が多くなります。
物件Aは、あまり人気がなく、1,000万円でしか売却できないとなると、その利回りは10%となります。それに対し、物件Bは、購入希望者が殺到し、2,000万円で売却できたとなると、利回りは5%ということになります。
結果的に、物件Aの方が価格は安くなり、利回りも高くなります。物件Aの利回りは10%で、物件Bの利回りは5%ですが、これは物件Aの方がリスクは高いということを意味しています。
購入する側からみると、物件Aは1,000万円で価格は安いですが入居者に人気がなく、物件Bは2,000万円ではありますが、物件Aより人気が高いためリスクが小さいわけです。
つまり、利回りはリターンの指標であると同時に、リスクの指標でもあるということになります。利回りの高い物件はハイリスクハイリターンであり、利回りの低い物件はローリスクローリターンということです。
利回りの高い物件は、他の投資家がリスクを感じているため購入希望者が少ない物件です。そのため、結果的に価格が安くなり利回りが高くなっているだけということになります。
高利回りの物件だからと言って、投資を行うのは、危険な判断であるということを理解しておきましょう。
1-3. 適正価格の判断指標となる
利回りは適正価格の判断指標にもなり得ます。利回りが1年間の収益を投資額で割った数値であることから、逆に適正利回りを知っていると逆算して適正価格が分かるようになります。
実際に、機関投資家と呼ばれるプロの不動産投資家は、利回りを適正価格の判断指標として使っています。
プロの不動産投資家は、ある程度の利回り感を持っているため、利回りを見ただけで「この物件は高過ぎる、安過ぎる」という判断ができます。
利回り感というのは、「この物件なら何%くらいが妥当だろう」と判断できるセンスです。例えば、都内の一棟マンションなら4%くらいが妥当だろう、郊外の築古アパートなら10%くらいが妥当だろうという、ぼんやりとした感覚です。
このような利回り感を持っている人であれば、利回りが3%の都内の一棟マンションの物件を見た場合、「この物件価格は高過ぎるから投資すべきではない」と判断することができます。
尚、利回り感は、何十年も修練しないと身につかないものではありません。利回りに慣れれば、個人投資家であっても物件検討を数ヶ月こなしていくうちに、利回り感は自然と身に着けることが可能です。
ぼんやりでも良いので、必ず利回り感を身に着けてから購入するようにしたほうがよいでしょう。
1-4. 分母が何を指すかに注意する
利回りは1年間の収益を投資額で割った数値になりますが、この分母である投資額には土地価格を含むというのが基本です。
たまに、複数の土地を持つ地主さんの中には、都市部で土地活用をした方が利回りは高くなると理解している人がいます。元々、土地を持っている人であれば、このような理解も間違いではありません。
建物に対する価格評価の仕方は全国どこでも同じです。また賃料は都市部の方が高くなります。よって、持っている土地の中で都市部の土地を活用した方が利回りは高くなります。
但し、一般的に投資家の間で話題となる利回りは、分母に土地価格を含むため、都市部で土地活用した方が利回りは低くなります。
2. 不動産投資の利回りの種類
利回りには、「表面利回り」、「NOI利回り」、「キャッシュフロー利回り」の3種類があります。
2-1. 表面利回り
表面利回りとは、1年間の賃料収入を投資額で割った数値になります。別名、「粗利回り」と表現されることもあります。
表面利回り = 収入 ÷ 投資額
分子は、収入のみであり、固定資産税や修繕費等の経費を考慮していません。表面利回りは、費用の実態を反映していないため、それだけでは本当に儲かる物件なのか正確には判断できない利回りになります。
ただ、数値としては一番高くなり、見栄えが良いためチラシには良く登場します。しかしながら、表面利回りは実態がよく分からないため、投資の判断指標として用いるのは不適切です。
表面利回りは、あくまでも参考程度に留めるようにして下さい。
2-2. NOI利回り
NOI利回りとは、1年間のNOIを投資額で割った数値になります。NOIとはNet Operating Incomeの頭文字をとった略称であり、「実質的な運用益」ということになります。
NOI利回り = NOI(収入 - 必要経費) ÷ 投資額
NOIは営業利益とも訳されることがありますが、費用の中に減価償却費を含まずに計算されるため、正確には会計上の営業利益と異なります。
NOIは、賃料収入から不動産の固定資産税、都市計画税、建物保険料、維持修繕費、管理委託料等の必要経費を控除したものです。
不動産投資家が投資の判断指標として用いる利回りは、このNOI利回りであるため、NOI利回りが一番大切な利回りとなります。
2-3. キャッシュフロー利回り
キャッシュフロー利回りとは、1年間のキャッシュフロー(手残り)を投資額で割った数値になります。借入金の返済も含めた実質的なキャッシュフローに対する利回りを表します。
キャッシュフロー利回り = キャッシュフロー(NOI - 税金減価償却費 - 借入金元本返済額) ÷ 投資額
不動産投資は、人によっては自己資金100%で行う人もいれば、借入金を70%利用する人もいます。そのため、同じNOI利回りの物件を購入したとしても、自己資金と借入金の割合によって、投資家の得る最終的なキャッシュフローは異なります。
キャッシュフロー利回りは判断の指標ではありませんが、あくまでも最終結果です。投資家にとっては、最終的なもうけを表す指標となります。
土地活用の種類別利回りを知りたい方はこちら
3. 不動産投資家調査による利回りの目安
不動産投資を行う上では利回り感を養うことが重要です。そこでこの章では利回りの目安についてご紹介します。
3-1. 賃貸住宅の期待利回り
利回りの目安を知る上で、一番参考となるのは、一般財団法人日本不動産研究所が示す不動産投資家調査です。
不動産投資家調査は、半年に一度、機関投資家に期待利回りの調査を行い、その結果を公表しています。期待利回りは「各投資家が期待する採算性に基づく利回り」です。これくらいの利回りがあったら良いなと期待している利回りになります。
例えば、2021年5月に公表された第44回不動産投資家調査における一棟ワンルームマンションの期待利回りは以下のようになっています。
地区 | ワンルーム期待利回り |
---|---|
札幌 | 5.5% |
仙台 | 5.5% |
さいたま | 5.1% |
東京(城南地区) | 4.2% |
東京(城東地区) | 4.5% |
千葉 | 5.1% |
横浜 | 4.8% |
名古屋 | 5.0% |
京都 | 5.2% |
大阪 | 4.8% |
神戸 | 5.1% |
広島 | 5.7% |
福岡 | 5.0% |
上表で想定されている一棟ワンルームマンションとは、以下のようなイメージのワンルームマンションのことを指しています。
交通アクセス | 最寄り駅から徒歩10分以内 |
築年数 | 5年未満 |
平均専用面積 | 25~30㎡ |
総戸数 | 50戸程度 |
3-2. 投資家利回りの利用の仕方
投資家調査の期待利回りを知ることで、他の投資家はこれくらいの利回りを期待しているということを知ることができます。
例えば東京で一棟ワンルームマンションの物件を検討しようとしたときに、3.5%の利回りの物件があったとしたら、その物件は他の投資家も「高い」と感じていることが分かるようになります。
投資家の期待利回りを知ることで、プロの投資家と同じ感覚で物件が高いか安いかを見極めることができます。投資家調査の結果を利用して、まずは利回り感を養い、高い物件を購入しないように判断の指針に役立てるようにして下さい。
4. 不動産投資の利回り最低ラインは?
不動産投資の利回りにおいて、地域別に期待利回りは存在するものの、投資の判断基準として最低ラインを知っておきたい方も多いのではないでしょうか。しかし、最低ラインは個別で設定するべきであり、目的や条件によってかなりの差が生まれるものです。
ここでは、不動産投資における利回りの最低ラインの考え方を解説します。
4-1. 物件の条件別に見る利回りの最低ライン
物件の状態や条件によって経営方針を変える必要があるように、利回りに対する許容範囲も変わるものです。
利回りを算出するために用いる数字には土地の価格が反映されます。東京など都市部においては土地の価格が高いため利回りは低くなる傾向にある一方、地方では購入価格が抑えられるため利回りは高くなりがちです。
そのため、都市部では5%程度が表面利回りの最低ラインと目されています。地方では10%程度の利回りを最低ラインと認識されている傾向です。
また、建物の投資の場合、中古物件か新築物件かでも最低ラインの設定は変わります。新築に比べ購入価格を低くできる中古では築20年を超すと7%程度を最低ラインとすることも多く考えられるでしょう。
4-2. 投資方針から考える利回りの最低ライン
利回りの最低ラインを意識しすぎて、物件の条件や状態を考慮に入れないと不動産投資失敗のリスクは高まります。利回りの最低ラインを正しく判断するには投資方針や投資計画との照らし合わせが何より大切です。投資方針には以下のようなものが挙げられます。
- 手元の資金を手堅く運用して家賃収入を得る
- 資金を増やすためにレバレッジ効果を活用する
- キャピタルゲイン目的で投資する
たとえば、レバレッジ効果を活用するためにはローンの金利よりも4、5%程度高い利回りの物件が理想です。逆にそう長く保有しないと考えているなら、利回りよりも売却相手の見つかりやすさを第一条件とすべきでしょう。
利回りの最低ラインは、状況や投資方針をしっかり把握したうえで、個々に設定するのが賢明です。
5. NOI利回りの計算方法
NOI利回りは投資家にとって最も重要な利回りです。ここではNOI利回りについて解説します。
5-1. 利回りの分子
NOI利回りの分子はNOI(実質的な運用益)を表します。NOIは以下の式で計算されます。
NOI = 収入 - 費用
5-1-1. 収入項目
収入項目としては、以下のものになります。
- 賃料収入
- 更新料収入
- 礼金収入(ある場合のみ)
- 共益費又は管理費収入(ある場合のみ)
- 駐車場使用料(ある場合のみ)
- 自動販売機設置料(ある場合のみ)
収入に関しては一定の空室率を見込んでおくことがポイントです。空室率は5%程度で設定しておくとよいでしょう。
5-1-2. 費用項目
費用項目としては、以下のものになります。
- 土地建物の固定資産税および都市計画税
- 建物の保険料
- 建物の修繕費
- 管理会社へ支払う管理委託料
- 清掃費や水道光熱費等の建物維持費
- 入居者入替に伴う仲介手数料
他にも費用があれば、実態に合わせて計上します。この費用の中には借入金の元本返済と減価償却費は含まないのがポイントです。
5-1-3. 費用に減価償却費を含まない理由
NOIを計算する上では、費用の中に減価償却費は含まないのが正解です。
減価償却費とは、建物取得原価を毎年、一定の計算方法により機械的に費用配分して計上される会計上の費用のことです。実際に支出されるお金ではありません。
減価償却費は、実際に支出されないお金であると同時に、税法の改正などにより取得時期によっても計算方法が異なります。
そのため、不動産の収益性の実態を見るためには、減価償却費は計上されていない方が分かりやすいというのが理由です。また海外の投資家も、減価償却費はNOIの費用として考慮しません。
減価償却しないことで、NOI利回りは物件の実質的な利益を表している利回りと言えます。
5-2. 利回りの分母
NOIを求めるための分母は土地と建物の投資額となります。
分母の投資額の中には、購入時に発生する不動産取得税や登録免許税等の費用は原則として含みません。純粋な土地建物価格が、分母の投資額となります。
5-3. NOI利回りの計算式
最終的にNOI利回りは以下の式で求めることになります。
NOI利回り = NOI ÷ 投資額
=(収入 - 費用)÷ 土地建物価格
参考までに表面利回りは以下のようになります。
表面利回り = 収入 ÷ 土地建物価格
NOI利回りは、分子に費用を反映させているため、表面利回りよりも実態を表しています。投資の判断を行う際は、表面利回りで判断するのではなく、NOI利回りをもって判断するのが賢明です。
6. キャッシュフロー利回りの計算方法
投資家にとっては、最終的な手残りはNOIではなくキャッシュフローになります。そこでこの章ではキャッシュフロー利回りについて簡単に紹介します。
6-1. 税金の計算
不動産投資で利益が生じると税金が発生します。不動産投資を個人で行えば所得税および住民税が発生し、法人で行えば法人税が発生します。
所得税および住民税は、不動産所得以外の他の所得と合算の結果、税率が変わります。また法人の場合も他の事業との利益を合計した上で課税の有無が決まります。
そのため、不動産投資に単独で税金を考えることは、実態にあっていない側面もあります。
ただ、キャッシュフローを考える場合には、税金も考慮する必要があります。不動産投資で単独で税金を考えた場合、税金は以下のように計算されます。
税金 = 利益 × 税率
=(NOI - 減価償却費)× 税率
税金を計算する上での利益は、NOIではなく、減価償却費を控除した後の利益になるという点がポイントです。
6-2. 借入金元本返済額
不動産投資では借入金を用いている場合、借入金完本返済も発生します。
借入金元本返済額は会計上の費用とはなりません。借入金は借りたときに売上に計上されないのと同様に、返しても費用には計上されないというのが基本的な考えです。
つまり、借入金元本返済額は、会計上の利益を圧縮するわけではないので、節税効果はないことになります。
また、借入金元本返済額は、借入金が多いほど多くなります。同じNOI利回りの物件を購入しても、借入金が多いほど借入金元本返済額は増え、収益性が悪化します。
最終的な収益性は、NOI利回りだけでなく、借入金の多寡によっても決まるということを理解しておきましょう。
6-3. キャッシュフロー利回りの計算式
税金と借入金元本返済額を考慮すると、キャッシュフローは以下のようになります。
キャッシュフロー = NOI - 税金 - 借入金元本返済額
よって、キャッシュフロー利回りは以下のように表現されます。
キャッシュフロー利回り = キャッシュフロー ÷ 投資額
=(NOI - 税金 - 借入金元本返済額)÷ 土地建物価格
借入金が大き過ぎると、キャッシュフロー利回りが1~2%程度となっていることも珍しくありません。リスクを取っている割には、結果的に非常に低い利回りとなっていることも多いです。
7. レバレッジ効果から見る低過ぎる利回りのリスク
不動産投資の利回りはハイリスクハイリターン、ローリスクローリターンというのが基本ですが、低利回りの物件なら全て安全というわけではありません。
そこで、この章ではレバレッジ効果から見る低過ぎる利回りのリスクについて解説します。
7-1. レバレッジ効果とは
NOI利回りは自己資金100%で行った場合の利回りになります。但し、実際には多くの投資家が借入金を用います。
借入金も用いることで、自己資金に対する利回りを大きくすることができます。これをレバレッジ効果と呼びます。
レバレッジとは、「てこ」という意味です。てこの原理を利用して、少ない自己資金で、大きな利益を得ることから、レバレッジ効果という呼び名が付いています。
以下にレバレッジ効果の具体例を示します。

自己資金3,000万円と借入金7,000万円を使い、1憶円でNOI利回り5%の不動産に投資を行います。得られるNOIは年間で500万円(=1憶円 × 5%)となります。
ここで7,000万円は2.0%の固定金利で35年間借りるとします。元利均等返済(元本返済額と利息の合計が毎月一定額になる返済方法)で返済する場合、返済金額は年間約278万円となります。
年間NOIである500万円から年間返済額278万円を差し引くと、約222万円が残ります。約222万円は自己資金3,000万円に対しては約7.4%の利回りとなります。
上記の例で、仮に1億円を全て自己資金によって投資をした場合、自己資金に対しては5%の利回りしか得られませんが、借入金を用いたことで自己資金に対する利回りは約7.4%に上昇させることができました。
このようにレバレッジ効果とは、借入金を使って自己資金に対する利回りを上昇させることを言います。
7-2. 逆レバレッジ効果
では、レバレッジ効果は常に発生するのでしょうか。
実は、レバレッジ効果というのは、常に発生する訳ではないということに注意が必要です。レバレッジ効果の発生条件として、NOI利回りと金利との差が十分に確保されていることという条件があります。
NOI利回りと金利との差のことをイールドギャップと呼びます。イールドギャップが小さいと、投資すればするほどマイナスが発生する逆レバレッジ効果というものが発生します。
以下に、逆レバレッジ効果の具体例を示します。前節のレバレッジ効果の例と比較すると、NOI利回りを5%から2.5%に変更しただけの例となります。

自己資金3,000万円と借入金7,000万円を使い、1憶円でNOI利回り2.5%の不動産に投資を行います。得られるNOIは年間で250万円(=1憶円×2.5%)となります。
ここで7,000万円は2.0%の固定金利で35年間借りるとします。元利均等返済で返済する場合、返済金額は年間約278万円となります。
年間NOIである250万円から年間返済額278万円を差し引くと、マイナス28万円となります。マイナス28万円は自己資金3,000万円に対してはマイナス0.9%の利回りとなります。
上記の例では、なんと自己資金に対する利回りがマイナスとなってしまいました。利回りが増えるどころか減っています。本来、不動産投資はローリスクローリターンであることを考えると、NOI利回りが低い方が安全のはずです。
ところが、低過ぎる利回りの物件では逆レバレッジ効果が発生します。借入金を用いて不動産投資を行う場合、低過ぎる利回りの物件では逆レバレッジ効果を発生させるリスクがあるということを知っておく必要があります。
結論からすると、利回りは高過ぎても低過ぎても駄目であり、適正な利回りで購入することが重要であるということになります。低利回りの物件にも、低過ぎればリスクが潜んでいるということを十分に理解しておきましょう。
7-3. 利回りは金利と連動している
不動産の利回りは、金利と連動しています。
レバレッジ効果では、十分なイールドギャップを確保する必要があることから、利回りは常に金利よりも高い数値であることが必要です。そのため、金利が上昇すれば、投資家が確保しなければならない利回りも上昇します。
例えば、金利が上がれば、今までは都内のワンルームマンションの期待利回りが4.5%だったところが、5.0%に上昇するといったイメージになります。今まで4.5%でも物件を購入していた投資家が、5.0%でないと物件を購入しないとなると、物件価格が下がることになります。
つまり金利が上がると、投資家の期待利回りが上昇し、結果的に物件価格が下がります。一方で、金利が下がると、投資家の期待利回りも下落し、結果的に物件価格が上がることになります。
このように不動産の利回りはレバレッジ効果があるため、金利と深く連動しています。不動産の利回りは、金利が上がれば上昇し、金利が下がれば下落する関係にあります。

不動産投資ローンの中には、より有利な条件で借り換えができるものがあります。
審査や適用条件があり、すべての人が利用できるわけではありませんが、このようなローンに借り換えができるか、また借り換えができた場合、今のローンよりお得になるのか、検討してみることもおすすめします。
2019年6月末まで特別金利1.575%
・元本が1,000万円以上の方
・複数物件をお持ちの方
8. 優良物件で利回りを上げる方法
不動産投資では、結局のところ、ローリスクの物件をできるだけ安く購入し、高い利回りを確保することが一番良いということになります。
そこでこの章では優良物件を安く購入して利回りを上げる方法について解説します。
8-1. 相対取引で安く購入する
不動産を安く購入するというのは、とても難しいことです。ただ、不動産を安く購入する方法として、唯一セオリーとして確立されているのが、相対取引で購入する方法です。
相対取引とは、売主と買主が1人ずつで、直接価格交渉ができるような取引です。つまり、相対取引によって、買主同士で競争が発生しない状況で購入することが安く購入するコツになります。
例えば、売主Aさんが優良物件を売却するとします。この物件を、買主Bさんが5,000万円で購入したいと考えます。
ところが、買主Cさんが5,500万円で購入すると横やりを入れてきたら、Bさんは5,500万円以上の金額を出さないと購入できなくなってしまいます。つまり、買主側にCさんという競合が現れると、価格が上がること繋がります。
このような事態をさけるため、購入に関してはできるだけ相対取引で行うことが鉄則になります。
実際のところ、相対取引をどのように見つけるかについては、かなり難しい側面があります。プロの投資家であっても、物件を安く購入するために相対取引をあの手この手で発掘しています。
物件を安く購入する方法には、決定打がありません。但し、安く購入するには、買主同士での競合を避けるという発想がとても重要となります。
高い価格を提示する競合買主が現れたら、途中で買うのをスパッと諦めるという姿勢も、物件を安く購入するためには必要です。
8-2. 安い時期に購入する
不動産投資で利回りを上げるのであれば、安い時期に購入するというのが鉄則です。
不動産の「価格」は景気によって大きく変動します。一方で、「賃料」は景気にあまり敏感に反応しないため、不動産価格が安いときに購入すると、利回りは必然的に高くなります。
投資の格言に「人の行く裏に道あり花の山」という言葉があります。
皆が不動産投資に過熱している時期は、不動産価格が高いため、利回りは低くなります。逆に、皆が不動産投資に興味がなくなったような時期は、不動産価格が安いため、利回りが高くなります。
この格言は、皆と違う道を選択すれば、お宝物件に出会えますよという意味です。
実際、バブル崩壊後の失われた10年と呼ばれていたような時期では、都内の優良物件でも5%後半の利回りで物件の売買が行われていました。オリンピック前後の状況においては不動産価格が高騰しているため、同様の物件が3%台で取引されているような事象も一部に見られます。
このように、優良物件でも、購入のタイミングを見計らうことで、高い利回りを確保することができます。
購入のタイミングを見極めるには、金利の動きが大きなポイントとなります。現在は、超低金利のため、低い利回りでもイールドギャップが確保できることから利回りが総じて低くなってしまっています。
今後、金利が上がるような状況が生じた場合には、投資家の期待利回りが必ず高くなります。すると、物件が安く購入できるチャンスが訪れます。
物件を安く購入するには金利の動向に注視するようにして下さい。金利が上がれば、必ず物件価格が安くなりますので、その時点で購入するのが良いでしょう。
アパート経営の利回りについて知りたい方はこちら
まとめ
いかがでしたか?不動産投資における利回りについて解説してきました。
利回りは、収益性を表すリターンやリスクの指標となりますし、適正価格を判断する材料にもなります。
利回りには表面利回りやNOI利回り、キャッシュフロー利回りの3種類がありました。
投資家としては、NOI利回りによって物件の良否を判断する必要があります。まずは不動産投資家調査などを参考に、利回り感を養うことをおススメします。
キャッシュフロー利回りについては、同じNOI利回りの物件を購入しても、投資家の資金調達の状況によって利回りが変わります。
また、低過ぎる利回りは、逆レバレッジ効果を発生させるリスクがあります。高過ぎず、低過ぎず、適正な利回りで購入することが一番重要です。
最後に、不動産投資は優良物件を少しでも高い利回りで購入することがポイントとなります。安く購入する工夫をしながら、優良物件に投資を行うようにしましょう。
この記事のポイント まとめ
不動産投資の利回りとは、1年間で得られる収益を投資額で割った数値のことです。また、利回りは以下のような指標として活用されることもあります。
- リターンの指標
- リスクの指標
- 適正価格の判断指標
詳しくは。「1.不動産投資の利回りとは」でご確認ください。
不動産投資の利回りは期待利回りから見るに平均5%前後といったところです。
詳しい利回りの解説と地域別の期待利回りは「3.不動産投資家調査による利回りの目安」でご確認ください。
3種類の不動産投資利回りの計算式は以下のとおりです。
- 表面利回り = 収入 ÷ 投資額
- NOI利回り = NOI(収入 - 必要経費) ÷ 投資額
- キャッシュフロー利回り = キャッシュフロー(NOI - 税金 - 借入金元本返済額) ÷ 投資額
利回り計算に利用する項目や具体的な計算方法については「5.NOI利回りの計算方法」「6.キャッシュフロー利回りの計算方法」で詳しく解説しています。