賃貸マンションのオーナーにとって、大きなコストがかかる修繕費の一つに外壁塗装があります。
この記事では「マンションの外壁塗装」について解説します。
マンション外壁塗装の効果や相場、周期・期間、工程、注意点、経費処理について紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
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1.外壁塗装の必要性と周期(時期)
外壁塗装は、経年とともに塗装面が劣化するため、やらずに放置しておくと将来的に下地補修工事まで生じてしまうというリスクがあります。
下地補修工事まで発生すれば倍額近い修繕費が発生するため、大損失を防ぐために定期的な外壁塗装を実施することが必要です。
外壁塗装の周期・期間は「12~18年」で、一般的には15年前後で行うことが多いです。
また、他の共用部分の大規模修繕の周期を示すと下表のようになります。
部位・工事項目 | 修繕周期 |
---|---|
外壁塗装工事 | 12~18年 |
屋根防水改修工事 | 露出12年~、押さえ18年~ |
バルコニー等防水改修工事 | 12~18年 |
シーリング改修工事 | 8~16年 |
金部改修・塗装工事 | 4~6年 |
金物類改修工事 | 使用頻度・損耗による |
アルミ部改修工事 | 24~36年 |
舗装改修工事 | 24~36年 |
外構工作物補修・取替え工事 | 24~36年 |
屋外排水設備取替え工事 | 24~36年 |
2.マンション外壁塗装の効果
この章では外壁塗装の効果について解説します。
2-1.空室対策効果が生まれる
外壁塗装には、空室対策効果が生まれるというメリットがあります。
外壁塗装を行うと、まずインターネットの広告サイト上の写真映りが良くなります。
パッと見たときの第一印象が向上しますので、物件への問い合わせ件数が増えます。
次に現地に案内したときに、入居希望者に対して物件が新しい印象を与えることができます。
「写真と違ってがっかりされる」ということもないため、現地案内後の成約率が向上します。
そのため塗装工事完了後は、忘れずに写真を撮り直し、インターネットの物件写真を必ず新しい写真に差し替えるようにしましょう。
また、空室で悩まれている方は、空室対策の為に外壁塗装含め、何をすべきかまずは専門家に相談してみる事をお勧めします。
2-2.建物外装を保護できる
外壁塗装の最大の目的は、建物外装を保護できるという点にあります。
外壁の塗装面は、建物を紫外線や酸性雨・排気ガス等から守る役割を果たしています。
塗装面は年数が経つと劣化し、竣工時からの価値が時間とともに下落します。
外壁塗装は、劣化した塗装面を竣工時の価値に近づける修繕になります。
【図 経年劣化による建物外装の価値の変化】
また、建物は竣工時には最先端の仕様やデザインであっても、年数が経つと古臭く感じてしまうことがあります。
例えば灰色のモノトーンの外壁も、ベランダや廊下を紺系のアクセントカラーで配色した方が今どきのスタイリッシュなマンションに見えます。
時代とともに社会的要求性能が変化すると、修繕で竣工時の価値に近づけただけでは足らないことから、単なる塗替えではなく、デザインを変えるなどのバリューアップ工事が必要となってきます。
3.マンション外壁塗装の相場単価
マンションの外壁塗装の価格相場は、床面積の平米あたり「0.6万円~1万円」程度です。
国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック(事例編)」より、以下の条件の賃貸マンションの外壁塗装費用の事例を示します。
【物件概要】
構造:鉄筋コンクリート8階建て
外壁:磁気質タイル、モルタル吹付
延床面積:1,593㎡
総戸数:33戸
住戸タイプ:1LDK~3LDK
部位 | 工事内容 | 金額 |
---|---|---|
外壁 | 補修 塗装(全面補修・コーキング・塗装) |
934万円 |
屋上 | 部分補修 トップコート 全面防水 クラック補修 |
265万円 |
足場仮設 | 養生費・飛散防止ネット・高圧洗浄含む | 313万円 |
廊下・階段・バルコニー | 各防水工事 | 463万円 |
鉄部 | 玄関・扉・受水槽等塗装 | 163万円 |
出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック(事例編)」
上記事例では、外壁塗装費用は934万円ですので、「戸あたり約28万円」、「延床面積当たり約0.6万円」となります。
尚、外壁塗装は「ベランダ、階段、廊下の塗装」や「排水管の高圧洗浄」等と同時に行うこともよくあります。
国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」によれば、築年数別のマンションの大規模修繕費の目安は下表の通りです。
築年数 | 工事内容 | 戸あたり | 総額 |
---|---|---|---|
5~10年目 | ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 排水管(高圧洗浄) |
約9万円 | 約170万円 |
11~15年目 | 屋根・外壁(塗装) ベランダ・階段・廊下(塗装・防水) 給湯器(修理・交換) 排水管(高圧洗浄) |
約55万円 | 約1,090万円 |
16~20年目 | ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 給排水管(高圧洗浄等・交換) 外構等(修繕) |
約23万円 | 約460万円 |
21~25年目 | 屋根・外壁(塗装・葺替) ベランダ・階段・廊下(塗装・防水) 浴室設備等(修理・交換) 排水管(高圧洗浄) |
約116万円 | 約2,320万円 |
26~30年目 | ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 給排水管(高圧洗浄等・交換) 外構等(修繕) |
約23万円 | 約460万円 |
築年数 | 工事内容 | 戸あたり | 総額 |
---|---|---|---|
5~10年目 | ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 排水管(高圧洗浄) |
約7万円 | 約70万円 |
11~15年目 | 屋根・外壁(塗装) ベランダ・階段・廊下(塗装・防水) 給湯器(修理・交換) 排水管(高圧洗浄) |
約46万円 | 約460万円 |
16~20年目 | ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 給排水管(高圧洗浄等・交換) 外構等(修繕) |
約18万円 | 約180万円 |
21~25年目 | 屋根・外壁(塗装・葺替) ベランダ・階段・廊下(塗装・防水) 浴室設備等(修理・交換) 排水管(高圧洗浄) |
約90万円 | 約900万円 |
26~30年目 | ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 給排水管(高圧洗浄等・交換) 外構等(修繕) |
約18万円 | 約180万円 |
出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」
4.マンション外壁塗装の工程
マンション外壁塗装の工程は下図の通りです。
【図 マンションの外壁塗装の工程】
●見積依頼
マンション外壁塗装では、最初に見積もり依頼から始めます。
●建物調査・見積書提出
見積もりを依頼すると、各施工会社が現地調査を行い、見積書を提出してきます。
●請負工事契約
納得のいく金額の施工会社が見つかったら請負工事契約を締結します。
●工事内容説明
着工前には、施工会社から居住者に対して工事内容の説明が行われます。
具体的には掲示板に工事期間や内容、安全対策、注意事項、施工会社の連絡先等を掲示して案内をします。
●着工・足場組立
着工すると足場組立工事から着手します。
●下地補修工事・仕上げ工事
下地補修工事を行った後に、塗装の仕上げ工事を行います。
●完了調査
工事が終了したら、発注者(賃貸オーナー)が立ち合いによって完了検査を行い、指摘事項があれば補修します。
●足場解体・清掃、引渡
補修が終われば足場を解体し、清掃と片付けを行って引渡で終了です。
工期に関しては、50戸未満の小規模なもので1~2ヶ月、50戸を超える中規模以上となると3ヶ月以上が目安となります。
5.外壁塗装工事を行うための注意点
この章では、外壁塗装工事を行うための注意点について解説します。
5-1.修繕の必要性を認識する
外壁塗装を行うには、まずは賃貸オーナーが修繕の必要性を認識することが必要です。
外壁塗装のような大規模修繕は、点検や保守により前兆を捉え、故障する前に適切な処置を施す「予防保全」と呼ばれるものに分類されます。
予防保全の対義語としては、事故や不具合が生じてから行う応急処置的な修繕の「事後保全」があります。
応急措置の積み重ねは根本的な修繕を先送りする結果となるため、長期的には事後保全は決して経済的とはいえません。
そのため、一見無駄に思える予防保全は、実はトータルの修繕費を抑えるためにも必要となるのです。
5-2.資金を準備しておく
外壁塗装を行うには、賃貸オーナーは計画的に資金を準備しておくことが必要です。
頭では修繕の必要性は分かっていても、資金不足によって外壁塗装が実施できないことはよくあります。
資金を準備するには、毎月の家賃収入の中から一部を修繕積立金として計画的に積み立てていくことがポイントです。
間取り別の1戸あたりの修繕積立金の目安は、下表の通りとなります。
間取り | 月額・一戸あたり |
---|---|
1K~1DK | 4,400円~5,500円 |
1LDK~2DK | 5,500円~6,600円 |
2LDK~3DK | 7,700円~8,800円 |
尚、計画的な積み立てが難しい場合は、ある程度まとまった金額を最初から定期預金として組んでおくことをおススメします。
口座を別に分けておき、普段は使えないお金をしておくと簡単には引き出せないので修繕費用を確保することができます。
5-3.管理会社に定期点検をしてもらう
外壁塗装などの大規模修繕費用を抑えるためには、管理会社に定期点検をしてもらうことが重要です。
建物の点検には以下の4種類があります。
点検名 | 内容 |
---|---|
定期点検 | 定期清掃時の簡易点検および年1回程度の定期点検等、管理会社が行う自主的な点検 |
専門会社点検 | 不具合発生時または経年時に修繕計画策定を目的に行う専門会社による精密な点検 |
臨時点検 | 台風の後等に破損個所の有無などを確認する点検 |
法定点検 | 法律で義務付けられた範囲において資格を持つ専門会社が行って諸官庁への報告が義務付けられている点検 |
定期点検によって不具合箇所が早期に発見されれば、修繕費用も最小限に抑えることができます。
また、定期点検で発見される外壁劣化現象の代表例は以下です。
症状 | 発生個所 |
---|---|
剥落・欠損 | 外壁近辺におけるタイルの落下の有無 |
ひび割れ | 建物出隅部、コンクリート打継ぎ部、パレペット部 |
白華現象※ | タイル表面、目地部などの白色付着物の有無 |
錆汚れの付着 | 換気口周辺、水槽架台付近 |
水漏れ痕跡 | シール部、コンクリート打継ぎ部 |
ポップアウト※ | 塗装膜の小さな破壊 |
チョーキング※ | 表面塗装膜などの劣化 |
※白華現象:セメントの石灰等が水に溶けてコンクリート表面に白くしみ出したもの。
※ポップアウト:コンクリート内部の部分的な膨張圧によって表面が円錐形のくぼみ状に破壊された現象。
※チョーキング:表面が粉上になる現象。白亜化ともいう。
1年に1度で構わないので、定期点検によって上記のような劣化現象の発生の有無について報告を受けることがポイントです。
5-4.管理会社に長期修繕計画案を出してもらう
外壁塗装などの大規模修繕費用を行っていくには、管理会社に長期修繕計画案を出してもらうことが必要です。
長期修繕計画とは、「どこを、いつ、どのように、いくらで」修繕するのかをまとめた計画表のことを指します。
【図 長期修繕計画表の例】
長期修繕計画には具体的な金額が明記されていますので、いつまでにいくらの修繕費を貯めておかなければならないかの検討を付けることができます。
5-5.施工会社の決定は相見積もりを取る
外壁塗装のコストを抑える方法は、相見積もりを取ることが最大のポイントです。
外壁塗装工事は利幅の大きい工事となっており、ほとんどが人件費であることから施工会社によって見積もり金額にかなり差が出ます。
通常、管理会社は複数の施工会社と付き合いがあるため、管理会社に依頼すると2~3社の見積もりを取ってくれます。
管理会社は施工会社の実績を知っていますので、管理会社に信頼できる施工会社を紹介してもらうと間違いがありません。
6.外壁塗装の経費処理
外壁塗装は、例外的に発生した年に一括経費処理できる費用です。
マンション経営を行っていると、毎年、不動産所得の確定申告を行います。
不動産所得の計算式は以下の通りです。
通常、必要経費に関しては金額が20万円以上となる修繕費はその期に全額を必要経費とすることができません。
20万円以上の修繕費は、一旦資産計上され、減価償却の対象となります。
一旦資産計上される支出のことを「資本的支出」と呼びます。
しかしながら、外壁塗装に関しては、20万円以上であっても全額その期に必要経費とすることが可能です。
そのため、外壁塗装を行った年は所得税を大幅に節税することができます。
ただし、外壁塗装工事でも、資産の価値の増加や耐用年数の延長があるような塗装工事を行う場合には、現在の仕様を超える部分については資本的支出となります。
よって、現在の仕様を超えるような外壁塗装を行う場合には、一度税理士に相談し、費用計上できる範囲を明確にして確定申告を行うようにしてください。
まとめ
いかがでしたか。
マンションの外壁塗装について解説してきました。
マンション外壁塗装の周期・期間は、概ね「12年~18年」程度です。
外壁塗装には、「空室対策効果が生まれる」、「建物外装を保護できる」といった効果があります。
マンション外壁塗装の相場は床面積の平米あたり「0.6万円~1万円」程度です。
外壁塗装工事を行うためには、「資金を準備しておく」、「施工会社の決定は相見積もりを取る」等が注意点でした。
特に適正なコストで依頼するには相見積もりが重要です。
外壁塗装は大切な資産を守る行為ですので、計画的に実施していくようにしてください。
また、まずは専門家に相談してみると具体的な修繕計画のイメージをつかめ、何をするべきか相談する事ができます。修繕に関する専門家へのご相談についてはこちらをご覧ください。
この記事を書いた専門家
(株)グロープロフィット 竹内 英二不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
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