土地活用に「戸建賃貸経営」をしてみようと検討している方にとって、気になるのは建築費です。
戸建て賃貸は、需要に対して圧倒的に供給数が少ないため、成功しやすい土地活用方法と言われ、近年注目を集めています。
しかし、建てる家屋は、一般的なマイホームとほぼ同じようなもので良いのか、いくらで建てられるのか、どのくらいの賃料設定にすればよいかなど、調べてもわからないことが多いかと思います。
そこで今回は、構造坪単価をもとにした、戸建賃貸の建築費の計算方法や、相場のシミュレーション方法などをまとめています。また、普通のアパート経営と比較して、戸建賃貸で気をつける点や、メリットデメリットなどもまとめています。
戸建賃貸の土地活用とは
戸建賃貸とは、一軒屋を建築して貸し出し、入居者から賃料を得るタイプの賃貸経営です。
戸建の賃貸は、需要と比較すると供給量が少なく、比較的長期で安定収入が期待できます。また、最終的に売却できることも多く、経営戦略の立てやすい土地活用方法と言えます。
アパート経営などが難しいような、駅から遠い、不整形地である、広さが足りないなどの土地条件でも、戸建賃貸であれば賃貸経営をすることができます。詳しくは「戸建賃貸の土地活用とは」をご確認ください。
戸建賃貸の建築費相場と計算方法
戸建賃貸の建築費として必要なお金には、以下の2種類があります。
- 建築費の計算方法
- その他の費用
建築費の計算方法は「坪単価×坪数(延床面積)」になります。
その他の費用はローン手数料や測量費などを指し、総建築費の5%程度が必要となります。
それぞれ、ご所有の土地の情報から概算しておくことで最適なプランを探す際に役立つでしょう。詳しくは「戸建賃貸の建築費相場と計算方法」をご確認ください。
戸建賃貸に向いている土地5タイプ
所有している土地が戸建賃貸に向いているか迷った際は、以下のポイントを確認してみましょう。戸建賃貸に向いている土地の5タイプは以下のとおりです。
- 狭い土地
- 広すぎる土地
- 駅から遠い土地
- 住宅街にある土地
それぞれの条件がなぜ戸建賃貸に向いているのか、詳しくは「戸建賃貸に向いている土地5タイプ」をご確認ください。
土地活用で戸建賃貸経営を成功させる8つのポイント
土地活用で戸建賃貸の経営を成功させるために大切なポイントは、以下の8つです。
- 面積は80平米台(3LDK)に抑える
- リビングは南向きにする
- シンプルな間取りにする
- 戸建ならではのカスタマイズをする
- スタンダードな設備を入れる
- 定期メンテナンスを入れる
- 収益性を考慮したプランを選ぶ
- 戸建ノウハウのある会社に依頼する
詳しくは「土地活用で戸建賃貸経営を成功させる8つのポイント」をご確認ください。
土地活用における戸建賃貸経営4つの注意点
戸建賃貸では、経営にあたって押さえておくべき特徴もあります。以下の4点は基本的な注意点として押さえておきましょう。
- 空室になると収入がなくなる
- 家賃が高くなるのでターゲットが限定される
- リフォームやメンテナンスの費用がかかる
- 複数の建築プランを比較してから決める
詳しくは「土地活用における戸建賃貸経営4つの注意点」をご確認ください。
「HOME4U オーナーズ」なら、パソコンやスマートフォンから1分程度の簡単な入力をするだけで、最大10社からその土地に合った戸建賃貸建築の提案を受けることができます。
1.戸建賃貸の土地活用とは
土地活用における戸建賃貸とは、人に貸し出す目的で一軒屋を建築し、入居者から賃料を得るタイプの賃貸経営です。一軒屋を建てるためのお金は、一般的なマイホームでかかる金額と同じような額が必要になりますが、ほとんどの方が金融機関からの融資を受けて土地活用をスタートします。
金融機関で借りたお金は、入居者からの賃料で支払いますので、返済計画によっては、土地活用がスタートしてすぐに、オーナーに副収入を発生させることも可能です。
戸建の賃貸は、世間の需要と比較すると、供給量が少ないため、一旦入居者が決まると、長期間住み続けてくれる傾向があり、長期安定収入が期待できます。また、土地活用をしたのちに、土地付き一軒家として売却することもできますので、経営戦略の立てやすい土地活用方法と言えます。
さらに、ご所有の土地の広さ、形状などに合わせた家を建てればよいので、アパート経営などの集合住宅の土地活用をするには、駅から遠い、不整形地である、広さが足りないなどの土地条件でも、戸建賃貸であれば賃貸経営をすることができます。
2.戸建賃貸の建築費相場と計算方法
本章では、戸建賃貸の建築費の相場を知るための、かんたんな計算方法をまとめています。建築費の総額は、建築プラン内容と、選択したハウスメーカーによっても違いが出ますが、計算方法を知っていれば、建築プランの比較をしやすくなります。
また、ご自身で相場を把握できるようになっていれば、複数の建築プランをもとに、自己資金としてどのくらいの金額を準備しておくべきかなども、早い段階でわかるようになります。
建築費として必要なお金には、以下の2種類があります。
- 建築費の計算方法
- その他の費用
2-1.建築費の計算方法
基本的に建築費は、構造坪単価をもとにして計算をします。戸建賃貸の場合、一般的な住宅(マイホーム)と同じような建物になることが多いため、今回は、木造と鉄骨造でつくった場合を想定しています。
建築費の計算方法は「坪単価×坪数」になります。坪数とは、建坪のことではなく、家として使える延床面積のことですので、建てる家の階数が2階建てならば、1~2階分を合計した広さを、坪数に直して計算します。
例として、1フロアの坪数が30坪の一軒家を建てた場合で、シミュレーション計算をしてみます。坪単価は、HOME4Uの提携企業の請負工事金額から算出したものを使用します。
- 計算式 建築費相場=*構造坪単価×延べ床面積(坪計算)
- 1坪=3.3平米
- 1フロアの坪数 30坪=約99平米
構造 | *坪単価 | 家の高さと広さ | 構造坪単価による建築費相場の計算例 |
---|---|---|---|
木造 | 77~100万円 | 1~3階建て (99~297平米) |
|
鉄骨 | 80~120万円 | 1~3階建て (99~297平米) |
|
現在の木造建築は3階建てまでが主流ですので、木造で建てた家は、平屋で2,310~3,000万円、2階建てで4,320~6,000万円、3階建てにすると最高で9,000万円の建築費がかかることがわかります。
鉄骨の場合は、軽量鉄骨と重量鉄骨があり、重量鉄骨の方が坪単価は高くなりますが、代わりに、5階建て以上の建物も可能です。ただし、家を建てて人に貸すことを前提にすると、軽量鉄骨の4階建てまでの高さの家が現実的と言えます。
木造と鉄骨の違いは、鉄骨はより耐震性が高く、躯体の経年劣化を起こしにくい傾向があります。鉄ですので、木造建築に起きるシロアリ被害が無く、頑丈な枠で支えているため、大きな窓やベランダなどの広い開口部がある自由な間取り設計が可能ですが、総建築費は木造よりも割高になります。
2-2.その他の費用
その他の費用とは、建物を建築する際に、建築費以外で発生するコストのことです。土地の状態や、どのような建物プランかにもよりますが、どなたでも、以下の2つはその他の費用として発生します。
A 自己資金
金融機関でローンを組む場合、建築総額の2割程度を頭金として用意する必要があります。
B 初期費用
戸建賃貸を建てる際に、建築費以外で発生するさまざまな費用。建築総額の5%程度が必要です。
- 測量費用
-
土地の実測図がない場合、設計のために測量が必要になります。一回30万円前後がめやすです。
- ローン手数料
-
金融機関で融資を受けるときにかかる事務手数料です。5~10万円がめやすとなります。
- 火災保険料・地震保険料
-
建てた家に対してオーナーがかける火災保険と地震保険です。年額が建築費の0.05%がめやすです。
- 印紙代
-
契約書などに使う、収入印紙代のことです。契約書に記載する金額によって印紙代が違います。
- 登録免許税
-
新築した戸建賃貸を、法務局に不動産登記するときにかかる税金です。
- 司法書士報酬
-
不動産登記などをするときに、司法書士に依頼するときの報酬です。
- 不動産取得税
-
新規に不動産を取得したときに一回だけ支払う税金です。
自己資金は総建築費の2割、その他の費用は総建築費の5%程度の金額がめやすになりますので、全体の建築費がわからないと、その他費用もわからないことになります。
注意点としては、これらの費用は建物を建築するための費用には含まれないため、これらの費用をローンでまかなうことができません。そのため、現金で用意しておく必要があります。
ご所有の土地で戸建賃貸の土地活用をはじめる場合、建築費相場の出し方がわかっても、実際に、ご所有地で何坪くらいの建物が建てられるのかがわからないと、具体的なシミュレーション計算はしにくいです。
そのような場合は、複数の建築プランを取り寄せ、各社の提案する建築費から相場を求めましょう。その際には、NTTデータグループが運営する「HOME4U オーナーズ」の一括プラン請求をご利用ください。
ご所有地のエリアと広さなどのカンタンな質問に答えていくだけで、日本全国の戸建賃貸に信頼と実績のあるハウスメーカーや建築会社を、最大10社までに絞り込んで提案しています。
一回の請求で、数多くの会社が選べますので、たくさんの会社の建築プランを比較していく中で、所有地に建てられる建物の規模や建築費などが、だいたいつかめるようになります。気になるプランがあれば、現地調査に来てもらうことで、さらに具体的な金額がわかるようになります。
3.戸建賃貸に向いている土地5タイプ
本記事では、土地活用の候補として戸建賃貸を検討している方向けに、お持ちの土地が戸建賃貸に向いているかどうかの判断基準を5つにまとめています。
ただし、戸建賃貸は、アパートやマンションと同じ「住宅」の賃貸経営ですので、ご所有地には水道・ガス・電気などのインフラが整っていること、駅から遠くても、道路が整備されていて、車やバスがあれば買い物ができるなど、ある程度の生活便利性が整っていることが前提になります。
- 狭い土地
- 広すぎる土地
- 駅から遠い土地
- 住宅街にある土地
- 地型や方角の悪い土地
- アパートやマンションの供給が過剰なエリア
3-1.狭い土地
狭い土地が向いているというよりも、一軒家を建てて貸しますので、ご所有の土地が狭くても問題がないという意味です。狭小地と呼ばれる30坪以下の小さな土地や、アパートやマンションを建てるには、少し広さが足りない土地でも、戸建ならば問題なく建てられます。
土地条件と選択するハウスメーカーや建築会社によっては、狭小地でも上に延ばして延べ床面積を確保できる会社もありますので、狭いことがデメリットにならないのが、戸建賃貸の良いところです。
3-2.広すぎる土地
ご所有の土地が広すぎるため、アパートやマンションのような、小さな部屋を貸すには収支バランスが悪く、かといって店舗などを入れる施設経営は希望していない場合にも、戸建賃貸が適しています。
広い土地で戸建経営をする場合は、土地の一部を一般的な戸建ての坪数に区切ってから、そこに家を建てて賃貸することができます。残りの土地は、他の土地活用に使っても良いですし、そのままにしておいても問題がありません。
ハウスメーカーや建築会社の中には、広い土地に戸建て住宅を割り振り、その区間一体を小さな街のようにして、テーマ性のある賃貸住宅を建ててくれるところもあります。
一つの区切られたエリアの中に、各家につながる優雅なアプローチや広い裏庭のある家を、複数作ることにより、ご所有の土地が、強いブランド力のある戸建賃貸エリアとなります。
広い土地は駅歩があることが多いので、アパート経営の場合には空室リスクが気になりますが、戸建賃貸であれば車やバスの利用をすることが前提ですので、広すぎる土地でも、賃貸経営の強みになります。
3-3.駅から遠い土地
戸建賃貸に住みたいという方は、駅から近いにぎやかなエリアよりも、駅歩があっても静かな住宅街に住みたいという方も多いです。住宅街には、そのエリアに住んでいる方々しかおらず、車の往来も少ないので、お子さんや高齢のご家族にとって、安全なエリアです。
また、駅歩のある場所は、電車の移動よりも車での移動を好む方にも人気があります。少し走れば交通量の多い道路がある、高速道路に近いなどのエリアマーケティングは必要ですが、戸建賃貸であれば車庫付きであれば、駅から遠いことが賃貸経営のデメリットにはなりません。
3-4.住宅街にある土地
住宅街に土地をご所有の場合、戸建賃貸なら何の問題もなく土地活用ができます。
実は、ご所有の土地だからと言っても、どんな建物でも自由に建てられるわけではなく、土地の建築条件以外に、エリアの建築条件に沿った建物しか建てることができないのです。
まだご検討の段階の場合、ご所有地の周辺をパッと見渡して、周りには戸建てしかない、マンションがあっても低層階の建物が多い場合は、注意が必要です。
土地条件やエリアの建築条件は、ご所有の不動産の登記情報に記載がありますが、見てもご自分ではよくわからない場合は、建築プランをハウスメーカーや建築会社に請求すると、それらの情報も考慮したうえで、建築プランを作ってもらえます。
アパートやマンションでの賃貸経営を希望していても、集合住宅や高さのある建物が建てられない土地だった場合は、戸建の賃貸経営を検討してみてください。
3-5.地型や方角の悪い土地
土地の形や方角があまり良くない土地の場合でも、戸建賃貸なら問題なく土地活用ができます。
真四角や長方形のような形の土地を整形地と呼ぶのに対し、三角形やキレイな四角形ではない土地を、不整形地と呼びます。例えば、三角形や台形のような土地のことです。
ほとんどの建物は四角い形をしているので、不整形地だと、建物として使える部分が限られてしまいます。そのため、アパートやマンションのような、一つの建物にたくさんの同じ形の部屋を作って経営するタイプの土地活用では、建物として使えない部分が出てくるため、土地からの収益を最大化することができません。
しかし、戸建賃貸であれば、家屋の一部を地形に合わせて作ることで、土地を最大限に有効利用することができます。土地の形以外でも、敷地内に傾斜がある、旗竿地である、北向きであるなどの問題も、戸建であれば、それを活かした設計をすればよいだけですので、問題になることがありません。
戸建はマンションやアパートに比べると、間取りなどの配置の自由度が高いため、例えば、道路が北側に面しているような土地であったとしても、玄関を北向きに作り、家のリビングを東や南に作れば、日当たりの良い家を建てることができます。
3-6.アパートやマンションの供給が過剰なエリア
ご所有の土地があるエリアが、マンションやアパートが多く、賃貸の一戸建てがほとんどないエリアの場合は、ライバル物件の少ない賃貸経営が期待できます。
特に、広めのファミリー向け賃貸マンションを探している方にとって、ある程度の広さが確保できる戸建て賃貸は、かなり魅力的に映ります。
戸建てであれば、小さな子供が家の中で走り回っても、階下や両隣の住民への配慮も不要です。交渉をすれば、うさぎや小鳥などのペットを飼える可能性があります。
さらに、車を使う方にとっては、別途駐車場を借りる必要もなく、物件によっては庭や広めのベランダがあるなど、かなりポイントの高い物件になります。
マンション供給が多いエリアであっても、ファミリー向けの広いマンションは分譲賃貸であるケースが多く、借りる側にとっては、築年と設備が古い割に、賃料が安くはないという潜在的な不満があります。
そのため、賃料がそう大きく変わらないのであれば、より生活自由度の高い、戸建賃貸に強い魅力を感じてくれる可能性があります。
戸建賃貸をご検討の方は、周辺エリアのマーケティングをしっかりしておき、戸建賃貸の強みを活かせるかどうかも確認しておくことをおすすめします。
4.土地活用で戸建賃貸経営を成功させる8つのポイント
本章では、土地活用で戸建賃貸の経営を成功させるために、とても大切なポイントを8つにまとめています。
- 面積は80平米台(3LDK)に抑える
- リビングは南向きにする
- シンプルな間取りにする
- 戸建ならではのカスタマイズをする
- スタンダードな設備を入れる
- 定期メンテナンスを入れる
- 収益性を考慮したプランを選ぶ
- 戸建ノウハウのある会社に依頼する
4-1.面積は80平米台(3LDK)に抑える
ご所有の土地の広さとは関係なく、戸建賃貸を建てる場合は、家の延床面積は80平米くらいにまとめるようにしてください。80平米とは、間取りでいえば3LDKくらいの、家族3~4人向けのコンパクトなファミリー物件のことです。
土地が広いからと言って、部屋数を増やし、広いリビングを作るなどをすると、建築費が増大してします。建築費が高くなると、賃料に反映されてしまいますので、結果的に賃料の高い家になります。
周辺エリアのファミリー向けマンションの賃料と比較したときに、あまりにも家賃が高いと入居者が決まりにくくなり、賃貸経営がうまくいかなくなる可能性が高くなります。
特に、戸建賃貸は入居者数が常に「1世帯」ですので、敷地内の他の部屋で収入をカバーすることができません。そのため、長期にわたって空室が続いた場合は、赤字経営となる可能性が高くなります。
80平米くらいの大きさであれば、部屋数は3室でも4室でも問題ありません。周辺エリアのマーケティングをしっかりしたうえで、エリアニーズに合った建築プランを選んでください。
4-2.リビングは南向きにする
戸建てならではの特権ですが、家族が集まるリビングに相当する部屋は、南向きになるように設計をしてください。マンションの場合、土地の位置や配管の関係上、全ての部屋に南向きのリビングを用意できないという欠点があります。
その点、戸建であれば、家の向きを設計の段階から考えることができますので、南向きのリビングが確保できます。日本人は南向きで日当たりの良い家を最上としますので、確実に南向きの日当たりの良い部屋があることは、周辺エリアのマンションやアパートの部屋と比べて、強力な武器になります。
4-3.シンプルな間取りにする
間取りはシンプルなものにします。デザイン性の高い家や、凝った間取りの部屋は、建築費もかさみますので、賃料も高くなり、借り手がつきにくくなる可能性が高まります。
よくあるシンプルな間取りにすれば、建築費を抑えることができますので、借り手にとっても納得感のある賃料で貸し出すことができます。また、シンプルな間取りは借り手を選びませんので、入居者の確保もしやすくなります。
シンプルな間取りは、入居者にとっても、手持ちの家具が家のどこでもピッタリと収まり、インテリアの上でも違和感がない引っ越し先となります。賃貸住宅として気に入ってもらいやすくなり、長期の更新をしてもらえる可能性が高くなります。
エリアの他物件との差別化を図りたい場合は、間取りやデザインではなく、次項で解説するような、生活満足度が高くなるような部分を補完するようにしてください。
4-4.戸建ならではのカスタマイズをする
エリアの他物件との差別化を図る場合は、戸建ならではの部分を強くアピールするようにしてください。例えば、以下のような、一戸建てにあってマンションやアパートにないものを充実させます。
- 車庫
- 自転車置き場
- 物置
- 植栽や美しい外構
- ガーデニングのできる庭
- 大きなベランダや屋上バルコニー
- ペットが飼える
どれも、集合住宅であるマンションでは、購入しても実現できないものもあるため、実現できるのは、戸建賃貸の強力な魅力となります。ただし、予算の問題もありますので、全部を詰め込む必要はなく、ご所有の土地の形や特性を活かした建築プランを採用するようにしてください。
4-5.スタンダードな設備を入れる
家の間取り設計と同じように、設備もシンプルで、万人に使いやすいスタンダードなものを選んでください。最新式の設備や凝ったデザインの外国製品は、見た目は良いのですが、費用が高額なため建設費がかさみ、結果的に、賃料設定を高くすることにつながります。
また、高機能すぎる設備にしても、入居者の多くは限られた機能しか使いこなせないことが多いため、実際にはそこまでの機能は必要ないケースが多い傾向にあります。
設備が海外製品の場合、故障をしてしまうと部品の取り寄せまでに時間がかかる上、メンテナンス費用や修理費用も高額です。これらの余分にかかる費用はすべて、経営開始後のオーナーの管理コストになります。
設備はできるだけスタンダードで汎用性の高いものにし、余計なコストが発生しないようなものを選ぶほうが、長期安定経営をする上でプラスになります。
4-6.定期メンテナンスを入れる
戸建賃貸は、マンションやアパートと比較すると、長期更新をするケースが多いため、家屋のメンテナンスがしにくくなります。
例えば、本来であれば更新のある2~3年に一回、原状回復で取り換える壁紙や床材、水回りのメンテナンスは、かなり長期間点検ができなくなります。また、戸建ならではの植栽や植樹の手入れ、屋根や外壁などのメンテナンスもしにくくなるため、賃貸期間が長くなるにつれ、家が傷む要素が増えていきます。
もちろん、草刈や丁寧な掃除などで入居者がこまめに管理をしてくれることもあるのですが、それも入居者次第です。戸建賃貸はあくまで「賃貸物件」であり、入居者にとっての持ち家ではありませんので、自分の持ち物のようにメンテナンスに気を配ってくれるわけではありません。
そのため、基本的には、戸建賃貸は、普通の家と比べると、家屋が傷む速度が速いと言えます。賃貸契約では、基本的に家屋の外側と躯体・設備に関することはオーナーの管理責任、家屋の中のことに関しては入居者が責任を負うことになっています。
家が傷む速度を少しでも遅くするためには、屋根や外壁などの外装や、外付けしてある設備などに対しては、オーナーが定期メンテナンスを入れて、不具合が出ないように管理をしておく必要があります。
例えば、以下のようなものは、入居中でも建物管理としてメンテナンスすることができます。
- 雨漏り点検と修理
- 配線関連の点検修理
- 耐震点検
- 白アリ点検
- 屋根と外壁の雨水・ホコリよけの塗装や塗り替え
- 外付け給湯器などのメンテナンス
- コンクリート部分の劣化点検
ほとんどのハウスメーカーや建築会社には、竣工後、10年前後の無償定期メンテナンスがついています。ハウスメーカーや建築会社の関連会社に賃貸管理を頼むと、これらの無償メンテナンスと一緒に、有償の建物管理もしてくれます。
家屋の内部に関しては、基本的には入居者の責任範囲でメンテナンスをしてもらい、大きく汚れや破損があった場合は、退去するときに原状回復してもらうようにします。
賃貸中にリフォームに近い大きな変更をした場合は、リフォームの見積書コピーなどをもらっておくと、土地建物を売却する時の査定資料として役立ちます。
4-7.収益性を考慮したプランを選ぶ
戸建賃貸を土地活用として成功させるカギは、長い目で見たときの収益性を考慮してある建築プランを選ぶことです。
建築費を抑えれば建築時の収益性は上がりますが、家屋や設備全体のクオリティが下がると、早くから修理修繕コストがかかってしまい、土地活用全体の収益性が下がってしまうこともあります。
複数の建築プランの中から収益性の高いプランを探しだすためには、ハウスメーカーや建築会社の担当者との交渉・相談が不可欠です。
具体的には、建築プランをもらったら、2章で紹介をした、坪単価から総建築費をシミュレーション計算しておき、その金額から削りすぎない程度に、建築プランをシンプル化にする方法がおすすめです。
その際、プランの中の何もかもを一気にコストダウンするのではなく、工事項目を一つずつ確認して建材や部材を選び、少額のコストダウンの積み重ねをしたほうが、家屋の耐久性やクオリティを落とさずに、賃貸経営の収益性を維持することができます。
これは1人でやるよりも、そのハウスメーカーや建築会社のことをよく知っている担当者と一緒に悩むほうが、良い結果が得られます。
よりわかりやすく比較するためには、建てる家を、本章の1で解説した「80平米台の家」と指定しておき、その家の大きさで、各ハウスメーカーや建築会社にプランを練ってもらうようにすると、より収益性の良いプランが見つけやすくなります。
4-8.戸建賃貸建築にノウハウのある会社に依頼する
戸建賃貸で賃貸経営をするなら、戸建建築と、賃貸経営の両方にノウハウがある戸建賃貸メーカーを選ぶようにします。建築後の経営のことまで相談ができ、実際にお任せできるサポート体制の揃っている会社の方が、安心して依頼できると言えます。
大手のハウスメーカーや建築会社は、数多くのマイホームの戸建実績と同時に、戸建賃貸の取り扱い実績もありますので、どのようなエリアでどのような戸建に人気があるなどのリアルなデータを把握しています。
経営管理にも自信のある会社は、建築プランに経営開始後のサポートに関した資料が同梱されていますので、よく目を通しておき、わからないことがあれば担当者に連絡をして確認をしてください。
また各会社のホームページには、経営管理に関したサポート体制のページもありますので、ご自身が希望するサポートがあるかどうかなども一緒に確認するようにしてください。
土地活用として戸建賃貸を経営する場合には、戸建実績が多く、なおかつ、戸建賃貸経営のサポートがある会社の方が、安心して依頼ができます。そのような会社は大手ハウスメーカーに多いので、まずは大手の会社と、プラス、気になる建築会社の建築プランをそろえるようにします。
複数の建築プランを集める際には、一度の入力で最大10社にまでプラン請求ができる、NTTデータグループが運営する「HOME4U オーナーズ」をご活用ください。
日本全国のハウスメーカーや建築会社の中から、戸建建築と戸建賃貸経営に関して信頼と実績のある会社を、ご所有の土地があるエリアと広さなどに合わせた、相性の良い会社を紹介しています。気になるプランが見つかったら、現地調査を依頼すると、より具体的な建築プランがわかります。
5.土地活用における戸建賃貸経営4つの注意点
本章では、戸建賃貸をする上で、気をつけておくべき注意点を4つにまとめています。
- 空室になると収入がなくなる
- 家賃が高くなるのでターゲットが限定される
- リフォームやメンテナンスの費用がかかる
- 複数の建築プランを比較してから決める
5-1.空室になると収入がなくなる
本記事で何度も触れていますが、戸建賃貸は何人家族であっても、入居者が常に「1世帯」ですので、更新されずに退去があると、収入が0になり、次の入居者が決まるまでは、空室リスクが発生します。
土地活用で戸建経営をはじめる際には、この前提を常に頭に入れて建築プランを選ぶようにしてください。戸建賃貸の土地活用がうまくいくためには、収益性の高さと、余裕のある返済プランの両方が必要です。
収益性の問題のほとんどは、家をあまり大きくしすぎない、シンプルな間取りと設備にすることで、クリアできます。返済プランに関しては、予期せぬ空室の発生や、コストの増大などをあらかじめ想定しておき、長期にわたる経営期間に万が一のことが起きた場合でも、柔軟な対応ができる様な、余裕のある返済プランを考えておく必要があります。
5-2.家賃が高くなるのでターゲットが限定される
一般的なマンションやアパートと比較すると、戸建賃貸の賃料は、少し高くなる傾向があります。そのため、戸建賃貸を借りる方は、基本的には、収入に余裕のあるファミリー層ということになります。
戸建賃貸の建築プランを選ぶ際には、このようなファミリーにとって魅力的だと感じられるような設備や外観を選ぶようにします。各ハウスメーカーや建築会社のエリアマーケティングも非常に大切になりますので、活用予定地周辺の特徴・学区・周辺の学校などの、綿密なマーケティングをしてくれているかも、比較検討の際には重要視してください。
ターゲット層としての分母が小さいことはデメリットですが、代わりに、長期の入居が期待できる・家賃滞納の心配がないなどのメリットもあります。
5-3.リフォームやメンテナンスの費用がかかる
新築時以外は、中古の戸建賃貸となりますので、家屋の状況に応じて、必要なメンテナンスやリフォームが必要になります。
何もしなければコストもかかりませんが、外観の劣化や家屋の劣化によって空室リスクが上がった場合は、賃料を下げて対応することになりますので、長い目で見たときに、収益性が下がることがあります。
そのため、外観の経年劣化を食い止めつつ、周辺環境や時代の変化に合わせて、必要な設備を加えるなどをしながら、入居者にとっての生活利便性を保持する努力をすることで、長期更新による長期安定収入が得られるようになります。
例えば、宅配ボックス・録画機能付きインターフォンなどは、一昔はなかったかもしれませんが、今ならあったほうが良い設備と言えます。
戸建ての場合、家屋の内外の普段の清掃は入居者がすることが基本ですが、例えば、雨どいに詰まった枯れ葉の除去、アプローチや門のペンキの塗り替え、植栽の刈込などは、オーナーが負担すべきメンテンナンス費用です。
戸建賃貸の場合、アパートやマンションのように、多くの入居者から少しずつ修繕費を集めておくなどができないため、オーナーはメンテナンスなどの費用を収入から計画的に準備しておく必要があります。
5-4.複数の建築プランを比較してから決める
戸建賃貸の建築費を比較し、さらに、客付きのよい戸建を建てるためには、複数の建築プランを比較しながら、納得のいく一社を選び出す必要があります。
どのハウスメーカーや建築会社のプランも、各社が最も得意とする構造や間取りでのプラン設計をしてきますので、どれを見ても魅力的に映ります。
複数のプランを同時に比較することで、各社の強みや構造の違いなどが理解でき、そのうえで、戸建賃貸として土地活用に成功しやすい方法が見つけやすくなります。
複数のプランを集めるためには、NTTデータグループが運営する「HOME4U オーナーズ」で土地活用プランの一括請求をご活用ください。
ご所有の土地の広さやエリアなど、カンタンな質問に答えていくだけで、日本全国から戸建賃貸と経営に強い会社を、最大10社までに絞り込んでご案内しています。
その後、いくつかの会社のプランで気になるものがあれば、現地調査に来てもらうことで、各社ともより具体的な戸建ての建築プランが出来上がってきます。
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