この記事では、アパート経営による相続税対策を検討している方に向けて、相続税の節税額のシミュレーションを紹介しています。
・土地の相続税評価額(貸家建付地評価額)
= 自用地としての価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
・建物の建物評価額
= 建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
詳しくは「1. アパート経営による相続税評価額の計算方法と用語」をご覧ください。
下記の前提条件で相続税のシミュレーションを行った結果、1,300万円以上の減額できることがわかりました。
アパート経営を行った場合 | 何もしなかった場合 | |
---|---|---|
被相続人の資産 | 現金3,000万円を自己資金として使い、借入金7,000万円を用いて1億円のアパートを建築する。
|
下記資産をそのまま相続する。
|
相続人 | 子2人 |
アパート経営を行った場合 | 何もしなかった場合 | |
---|---|---|
相続税額 | 50万円 | 1,360万円 |
計算過程の詳細については「3.いくら節税できる?節税効果シミュレーション」をご覧ください。
1. アパート経営による相続税評価額の計算方法と用語
相続税評価額を求める際は、土地と建物をそれぞれ分けて計算します。
自宅・更地・誰も住んでいない空き家など、賃貸物件以外の土地・建物の計算式は以下のとおりです。
- 土地の相続税評価額=路線価×土地面積
- 建物の相続税評価額=建物の固定資産税評価額
一方、アパートの場合は土地・建物ともに賃貸部分の相続税評価額が下がるため、以下のように計算が行われます。
【貸家建付地(アパートが建っている土地)の評価額 計算式】
自用地としての価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
【収益物件(アパート)の建物評価額 計算式】
= 建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
また、相続税評価額の計算で使用される主な用語は以下のとおりです。
用語 | 意味・計算方法 |
---|---|
相続税評価額 |
|
路線価 |
|
建物の固定資産税評価額 |
|
貸家建付地評価額 |
|
借地権割合 |
|
借家権割合 |
|
賃貸割合 |
|
2.アパート経営による相続税評価額シミュレーション
ここでは前述の計算式を用いて、アパート経営を実施した場合の相続税評価額のシミュレーションを行います。
下記で行う、計算の流れとしては以下の通りです。
- 自家用としての土地と、建物の相続税評価額を求める
- アパートとしての土地・建物の相続税評価額を計算する
- 自家用と、アパート用の評価額を比較する
土地面積 | 300㎡ |
---|---|
路線価 | 220千円/㎡ |
借地権割合 | 60% |
借家権割合 | 30% ※全国一律 |
賃貸割合 | 100% |
建物の固定資産税評価額 | 5,250万円 |
まず、自家用としての土地・建物の相続税評価額を求めます。
計算式:自家用の土地の相続税評価額=路線価×土地面積
・土地:220千円/㎡×300㎡=6,600万円
計算式:建物は固定資産税評価額のまま
・建物:5,250万円
次に、アパートとしての土地・建物の相続税評価額を計算します。
計算式:
自家用地としての価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
6,600万円×(1-60%×30%×100%)=5,412万円
計算式:
建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
5,250万円×(1-30%×100%)=3,675万
自家用とした場合とアパート経営を行った場合の相続税評価額の比較は以下のとおりです。
アパート経営を行った場合 | 自家用とした場合 | |
---|---|---|
土地の相続税評価額 | 5,412万円(△1,188万円) | 6,600万円 |
建物の相続税評価額 | 3,675万(△1,575万円) | 5,250万円 |
総額 | 9,087万円(△2,763万円) | 1億1,850万円 |
このように、アパート経営を行うと相続税評価額を大幅に減額できます。
また、アパートの状況によっては、小規模宅地等の特例やアパートローンの借り入れによる節税効果を付加することも可能です。
3.いくら節税できる?節税効果シミュレーション
ここでは、「アパート経営した場合」と「なにもしなかった場合」の相続税額を比較計算し、いくら節税できるかシミュレーションを行います。
<被相続人の資産>
- 現金:3,000万円
- 土地(更地)の相続税評価額:1億円
<相続人の構成>
- 子2人
3-1.何も対策せず相続した場合の相続税額
まずアパート等にせず、何も対策せず相続した場合の相続税額の計算シミュレーションを行います。
下記で行う、計算の流れとしては以下の通りです。
- 「基礎控除額」と「課税遺産総額」を計算する
- 各相続人の法定相続分に応じた「取得金額」を計算する
- 「取得金額」に応じた税率と控除額を確認する
- 「相続人1人あたりの算出税額」と「相続税の総額」を計算する
前提条件によると、被相続人の資産は合計で1.3億円(現金3,000万円・土地1億円)です。
相続税の計算においては、基礎控除額を超えた財産が課税遺産総額となります。
被相続人(他界した人)の財産は、現金3,000万円、土地1億円(相続税評価額)であるため、合計で1.3億円です。
相続税では、基礎控除額を超えた財産が課税遺産総額となります。
基礎控除額と課税遺産総額の計算式は以下のとおりです。
=3,000万円+600万円×2
=4,200万円
課税遺産総額:遺産総額-基礎控除額
=1.3億円-4,200万円
=8,800万円
次に、各相続人の法定相続分に応じた取得金額を算出します。
- 法定相続分に応じた取得金額:課税遺産総額×法定相続分(子2人のため50%)
=8,800万円×50%
=4,400万円
取得金額を計算したら、以下の表を参考に該当の税率を乗じて計算します。
法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
今回の法定相続分に応じた取得金額は4,400万円でしたので、税率は20%が該当します。
下記の計算式に当てはめると、相続人1人あたりの算出税額は以下のとおりになります。
- 算出税額=法定相続分に応じた取得金額×税率-控除額
=4,400万円×20%-200万円
=680万円
最後にそれぞれの相続人の算出税額を合計して、相続税の総額を求めてください。
- 相続税の総額=各相続人の算出税額の合計
=680万円+680万円
=1,360万円
計算の結果、アパート経営せずそのまま相続した場合の相続税額は1,360万円となりました。
3-2.アパート経営を行って相続した場合の相続税額
次に、前提条件で持っていた資産を活用してアパート経営を行い、その後相続した場合の相続税額を計算します。
なお、現金3,000万円を自己資金として使い、借入金7,000万円を用いて1億円のアパートを建てることを想定しています。
アパート経営を行って相続した場合の相続税額を算出する流れは、以下です。
- 「遺産総額」を計算する
- 「課税遺産総額」を計算する
- 「基礎控除額」と「課税遺産総額」を計算する
- 各相続人の法定相続分に応じた「取得金額」を計算する
- 「取得金額」に応じた税率と控除額を確認する
- 「相続人1人あたりの算出税額」と「相続税の総額」を計算する
アパート建築後の資産の条件は以下のとおりです。
<被相続人の資産>
- 土地(更地)の相続税評価額:1億円
- 建物の請負工事金額:1億円(自己資金3,000万円+借入金7,000万円)
- 借入金:7,000万円
- 建物の固定資産税評価額:5,000万円
- 借地権割合:60%
- 借家権割合:30%
- 賃貸割合:100%
※小規模宅地等の特例は適用しない
はじめに、遺産総額を計算します。
- 土地の評価額=自用地としての価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
=1億円×(1-60%×30%×100%)
=8,200万円 - 建物の評価額=建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
=5,000万円×(1-30%×100%)
=3,500万円 - アパート全体の評価額=土地+建物評価額
=8,200万円+3,500万円
=1億1,700万円 - 遺産総額=収益物件の評価額-借入金
=1億1,700万円-7,000万円
=4,700万円
よって、課税遺産総額は以下のとおりになります。
- 課税遺産総額=遺産総額-基礎控除額
=4,700万円-4,200万円
=500万円
最後に、先ほどと同様の手順で相続税総額を求めます。
- 法定相続分に応じた取得金額=課税遺産総額×法定相続分(子2人のため50%)
=500万円×50%
=250万円 - 算出税額=法定相続分に応じた取得金額×税率-控除額
=250万円×10%-0円
=25万円 - 相続税の総額=各相続人の算出税額の合計
=25万円+25万円
=50万円
計算の結果、アパート経営を行って相続した場合の相続税額は50万円となりました。
3-3.相続税額の比較
ここまでのシミュレーションの結果、アパート経営を実施して相続した場合とそうでない場合の相続税額は以下のとおりになりました。
アパート経営を行った場合 | 何もしなかった場合 | |
---|---|---|
相続税額 | 50万円 | 1,360万円 |
今回のシミュレーションでも、アパート経営を行って相続することで、相続税を大幅に減らすことができました。
ここまで大幅に相続税を減らすことができた要因としては、「借入金」があったことです。「借入金」はそのままマイナス分の財産として、差し引くことができるためあえてローンをして、相続税の節税をする方もいます。
しかし、許容範囲を超えたローンを組んでいる状態で相続をすると、むしろ負担が大きくなってしまう可能性も高いため、事前に被相続人としっかり相談しておくことがおすすめです。
アパート経営を活用した「投資」「相続税対策」プラン
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