斜面に関する専門用語や規制の解説に始まり、おすすめの具体的な土地活用法やメリット・デメリットといった、斜面の活用を検討するのに必要な知識を網羅し、具体的に活用方法について検討を進める事ができるようにしてあります。
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- 都市計画法
- 宅地造成等規制法
- がけ条例等の規制
崖の種類や定義、専門用語解説とあわせて「1.斜面の活用で知っておきたい斜面の定義と規制」にてご確認ください。
- 高基礎型建築物
- ピロティ型建築物
- オーバーハング型建築物
- 地下室設置型建築物
- ガレージ付設型建築物
具体的な建築方法については「3.斜面地における建物の建て方」にてご確認ください。
- 規制を確認する
- 擁壁の維持・管理責任が生まれる
- 損害賠償などに備える
- 複数の建築プランを比較検討する
詳しくは「6.斜面のある土地を活用する際の注意点」をお読みください。
目次
1.斜面の活用で知っておきたい斜面の定義と規制
斜面の定義や、規制について以下の3点を解説します。
- 土地の斜面には種類がある
- 盛り土や切り土の規制
- がけ条例等の規制
1-1.土地の斜面には種類がある
土地の斜面にはいくつかの種類があり、専門用語が多いため、以下にてご説明します。
用語 | 説明 |
---|---|
斜面 | 水平面に対して傾斜している面のことを指します。斜面に沿って建てられている建物を斜面住宅といいます。 斜面の傾きを示す度合いとして勾配(こうばい)という言葉が使われ、斜面の傾斜が緩い場合には「勾配がゆるい」、斜面の傾斜が急な場合には「勾配がきつい」などといいます。 |
傾斜地 | 土地が傾いて斜めに傾いている土地で、そのままの状態では建物を建てることは困難な土地です。 傾斜地の厳密な定義はなく斜めに傾いている土地を一般的に傾斜地と呼びます。 |
崖 |
建築基準法の崖の定義は以下です。
各都道府県によって「がけ条例」として規制されており、制限が課される場合があります。 |
法地(のりち) 法面(のりめん) | 傾斜地で建物を建てられる面積(宅地)として使用できない部分を指します。 |
切土(きりど) | 前述の法地(のりち)、法面(のりめん)に建物が建てられるように、地面を削り取り、地盤面を低くすることを指します。 |
盛度(もりど) | 前述の法地(のりち)、法面(のりめん)に建物が建てられるように、土を盛って地盤面を高くすることを指します。 |
擁壁 | がけや斜面などの崩壊を防ぐため、コンクリートブロックなどを使って作られる「壁状の構造物」を指します。 |
1-2.盛り土や切り土の規制
斜面の土地活用では、盛り土や切り土の規制を受ける可能性があります。盛り土や切り土の規制には、主に以下の2つの法律があります。
- 都市計画法
- 宅地造成等規制法
1-2-1.都市計画法の開発行為
一定の要件以上の盛り土や切り土は、都市計画法により規制され、開発許可を受けなければ実施することができなくなっています。
開発許可とは、主として建築物等を建てる際、切り土や盛土、区画の変更等をする場合に行政から受けなければいけない許可のことです。
例えば東京23区の場合、500平米以上の敷地において、1mを超える高さの盛り土や切り土を行う場合、開発許可が必要となります。
都市計画法は、特に急斜地でなくても、広くて緩い勾配があるような土地でも影響してくる法律です。
1-2-2.宅地造成等規制法
宅地造成等規制法では、災害が生ずるおそれが大きい市街地や市街地になろうとする土地の区域を「宅地造成工事規制区域」と定めています。
宅地造成工事規制区域内で一定規模以上の盛り土や切り土を行う場合は、都道府県知事の許可が必要です。
具体的には高さが2m超の切り土や、1m超の盛り土等を行う場合は宅地造成等規制法の許可を要します。
宅地造成工事規制区域内は、市街地でも指定されている箇所は多いです。
千葉県のような平坦な地域は少ないですが、神奈川県のような斜面が多い地域は宅地造成工事規制区域がよく指定されています。
許可を要する盛り土や切り土を行う場合、擁壁や排水施設等で一定の技術的基準を満たすことが求められます。
そのため、宅地造成工事規制区域内で盛り土等を行うとコストアップ要因に繋がることが多いです。
1-3.がけ条例等の規制
斜面のある土地では、各自治体が定める「がけ条例等の規制」を受ける可能性があります。
がけ条例の「がけ」の定義は自治体によって異なりますが、傾斜角度が30度を超えるようなものだと条例の規制がかかることが多いです。
がけ条例では、例えば崖の上の平坦な土地で建物を建てる場合でも、地盤改良や杭基礎の工事が求められることがあります。
また、敷地内に斜面がなくても、隣地に斜面がある場合には、近接するがけから一定の距離を離さないと建物が建てられないと定める規制も多いです。
がけからの距離が確保できない場合には、構造耐力上安全な擁壁を設置することが求められることもあります。がけ条例の影響を受ける土地においては、杭基礎や地盤改良、擁壁工事等が求められることから、コストアップ要因となります。
2.斜面のある土地のおすすめ活用方法
この章では、具体的な「活用方法」について解説します。
2-1.戸建て賃貸
有効敷地面積が狭い場合は、戸建て賃貸がおススメです。平地部分が30坪以上あれば、戸建て賃貸を建てることができます。
戸建て賃貸は、需要がある割に供給量が少ないため、希少性が高い点が大きなメリットです。それに対して、一棟貸しであるため、空室が発生すると賃料収入がゼロ円になってしまう点がデメリットとなります。
【斜面のある土地の建築例】
- ビルトインガレージ(インナーガレージ)を設置する
- 擁壁をつくる
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2-2.アパート
有効敷地面積が50坪以上あれば、アパートを建てることができます。
アパートは、戸数数が複数戸あるため、1室だけ空室が発生しても賃料がゼロ円にならないため、収益が安定している点がメリットです。
それに対して、平地部分が相応に広くないとできない点がデメリットとなります。
【斜面のある土地の建築例】
- ピロティ構造で設計する
- 階段状にして、デザイン性を高める
初めてのアパート経営
2-3.賃貸マンション
全体敷地が広く、高い容積率(延床面積の敷地面積に対する割合)が指定されている土地であれば、賃貸マンションも考えられます。
傾斜地にそびえたつマンションは、眺望もよくデザイン性も高いものが多い点がメリットです。南斜面なら全戸の日照条件も良くなります。それに対して、斜めに走行するエレベーターを設置するケースがある等、建築費が割高になる点がデメリットです。
【斜面のある土地の建築例】
- ピロティ構造で設計する
- 階段状にして、デザイン性を高める
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2-4.トランクルーム
有効敷地面積が狭い場合、トランクルーム経営も考えられます。
トランクルーム経営とは、コンテナハウスと呼ばれるコンテナに似た建物を建築し、荷物置場用のスペースを貸す事業のことです。
トランクルームのメリットは、狭い土地や駅から離れた土地でもできるという点です。
コンテナハウスの大きさは、1つあたり9坪弱程度となります。
建築費も戸建て賃貸やアパート等を建てるよりは安いですが、デメリットは戸建て賃貸やアパート等よりも収益性が低い点になります。
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2-5.太陽光発電
斜面がある土地というのは、方角によっては、「日当たりが良い」ケースがあります。
したがって、「太陽の当たる量と時間」が勝負の太陽発電に向いており、本来「角度をつける」ための架台を付ける必要がなくなり、より安価に設置できるというメリットがあります。
3. 傾斜地における建物の建て方
戸建て賃貸やアパート等の「傾斜地における比較的小さな建物の建て方」について、5つの方式を解説します。
3-1.高基礎型建築物
高基礎型建築物とは、がけ下から平地部分まで高い基礎を作り、その上に建物を建てる方式です。
高基礎は、基礎で建物をしっかり支えるため、構造的に安定しているというメリットがあります。
一方で、基礎の部分が通常の建物よりも大きくなるため、建築費が割高になるという点がデメリットです。
3-2.ピロティ型建築物
ピロティ型建築物は、がけ下にピロティを作って建物を支える建築方式です。
ピロティとは壁がなく柱だけで構成される空間を指す建築用語になります。
ピロティ型建築物は、がけの上に浮遊した雰囲気の建物を建てることができるため、外観のデザイン性が高くなる点がメリットです。
一方で、デメリットは耐震性が弱く、自治体によってはがけ上のピロティ建築を禁止している地域もあります。
3-3.オーバーハング型建築物
オーバーハング型建築物は、2階部分をオーバーハングさせて建てる建築方式です。
オーバーハングとは、下の階よりも上の階が張り出した建物形状のことを指します。
オーバーハングのメリットは、2階部分を張り出して作るため、特に2階部分からの眺望が良くなる という点です。
一方で、デメリットはオーバーハング部分の強度を保つために重量鉄骨造等を採用しなければならす、コストが割高になる という点になります。
3-4.地下室設置型建築物
地下室設置型建築物は、切り土により平地を作り地下室を設ける建築方式です。
斜面の上が公道の場合に有効に建物と建てることができます。
地下室設置型建築物のメリットは、地下室を作ることで床面積を増やせる点です。
一方で、デメリットは地下躯体が一般的に鉄筋コンクリート造で作ることが多く、切り土費用も重なり、建築コストが割高になる点になります。
3-5.ガレージ付設型建築物
ガレージ付設型建築物は、斜面の部分をガレージ(駐車場)にする建築方式です。
斜面の下が公道の場合に斜面部分を有効に利用することができます。
ガレージ付設型建築物は、屋根付きのガレージができることで物件に付加価値を与える ことができるという点です。
一方で、デメリットはガレージの建築費用がコストアップ要因 になるという点になります。
4. 斜面で行う土地活用のメリット
斜面で行う土地活用のメリットは以下3つです。
- 個性的な建物で差別化しやすい
- デッドスペースで付加価値を生みやすい
- 面積を増やせる場合がある
4-1.個性的な建物で差別化しやすい
斜面で行う土地活用は、個性的な建物で差別化しやすいという点がメリットとなります。
高基礎やオーバーハング等のあまり見ないタイプの個性的な建物が多くなり、デザイン性が高い物件が多いです。
また、斜面を行かすことで作られる地下室やガレージや差別化ポイントとなります。
例えば、地下室は防音性を高めることで楽器演奏やカラオケが可能な部屋やシアタールームとすることもできます。
ガレージも車好きの人にとっては、価値ある施設です。
差別化されている物件は、周辺に一般的なアパートが供給過剰になっても賃料を維持しやすい という特徴があります。
斜面に建つ建物は、自然と差別化できていることが多いので、空室対策にもなるのです。
4-2.デッドスペースで付加価値を生みやすい
斜面で行う土地活用は、デッドスペースで付加価値を生みやすい点もメリットです。
斜面のある土地は、有効スペースが少ないため、敷地内に利用できないデッドスペースが多く発生します。
デッドスペースは、駐車場やバイク置場、物置スペース、家庭菜園等の入居者向けのスペースにすることもできます。
平坦な土地にアパート等を建てると、効率的に建物が配置されるため、物置スペースや家庭菜園等のスペースは生み出しにくいです。
斜面の土地活用は、良い意味での無駄なスペースが多く生まれるため、そのスペースも上手く利用すると物件の価値を上げることができます。
4-3.面積を増やせる場合がある
斜面の土地活用は、面積を増やせる場合があることもメリットです。
土地の利用制限の中には、「絶対高さ制限」や「日影規制」といった規制が定められている地域があります。
斜面がある土地では「半地下」を作ることで、絶対高さ制限の基準となる地盤面や日影規制の基準となる平均地盤面を有利に調整することもできます。
立体的な建築制限を斜面によって上手く回避できることもあり、規制内容や敷地の状況によっては平地で建てるよりも床面積を多くすることができるのです。
床面積を多くすれば賃貸面積も増やすことができますので、収入の向上に繋がります。
5.斜面で行う土地活用のデメリットとリスク
斜面で行う土地活用は、メリットだけではなく、デメリットもあります。
本章では、以下の3つのデメリットを解説します。
- 盛り土や切り土が発生する場合が多い
- 有効敷地面積が狭い
- 建築費が割高になる
5-1.盛り土や切り土が発生する場合が多い
斜面の土地活用では、盛り土や切り土が発生する場合が多い点がデメリットです。
都市計画法や宅地造成等規制法等の規制に該当するような盛り土や切り土では、技術的な基準を満たすために余計な費用が発生します。
許可を得るために行政手続きが長くなり、全体スケジュールも長期化します。
また、盛り土を行う場合は、不同沈下に注意をする必要があります。不同沈下とは、建物に不均一な沈下が生じる現象のことです。
不同沈下は盛り土と切り土がまたがる部分で生じやすいという特徴があります。
不同沈下を避けるためには、「盛り土をしない」もしくは「信頼できる会社に盛り土を依頼する」といった対策が必要です。
5-2.有効敷地面積が狭い
斜面のある土地は、平らな部分である有効敷地面積が狭いという点がデメリットです。
下りや上り傾斜の部分は利用しにくく、平らな部分を中心に建物を計画するため、設計上の制限がとても大きくなります。
有効活用できないスペースは、駐車場や物置スペース、家庭菜園等にすることによって付加価値を上げる企画を盛り込むことがポイントです。
5-3.建築費が割高になる
斜面の土地活用は、建築費が割高になる点がデメリットです。
高基礎やピロティ、オーバーハングを行う場合、通常の建物よりも建築費が高くなります。地下室やガレージを作ることもコストアップの要因です。
また、排水管の本管が傾斜地の上にある場合、排水を敷地の上にポンプアップすることが必要となります。
排水管の本管が傾斜地の下にある場合は逆に有利ですが、傾斜地の上にある場合は大きなコストアップ要因となってしまいます。
このようなデメリットを踏まえながら、検討を進めるようにしてください。
6.斜面のある土地を活用する際の注意点
6-1.規制を確認する
斜面の多いエリアは自治体によって「急傾斜地崩壊危険区域」に指定されている土地もあります。
急傾斜地崩壊危険区域の指定を要する土地は、以下のいずれかに相当する土地を指します。
【急傾斜地崩壊危険区域】
- 崩壊するおそれのある急傾斜地(傾斜度が30度以上の土地をいう。以下同じ。)で、その崩壊により相当数の居住者その他の者に被害のおそれのあるもの
- 1に隣接する土地のうち、急傾斜地の崩壊が助長・誘発されるおそれがないようにするため、一定の行為制限の必要がある土地の区域
斜面の多い土地で土地活用を検討する場合は、各都道府県の「砂防主管課」に問い合わせをし、確認することからはじめましょう。
6-2.擁壁の維持・管理責任が生まれる
斜面のある土地に建築物を建てる場合、「擁壁(ようへき)」という、斜面を安定させるための造成工事が必要になります。
擁壁の維持管理は、所有者が自ら行う必要があり、もし擁壁が崩壊し、何らかの被害が生じた場合は、その責任を所有者等が負うことになる場合もあります。造成工事後も、擁壁の安全性を定期的に確認し、再築造や補強工事が必要になる可能性がある点を理解しておきましょう。
6-3.損害賠償などに備える
「6-2.擁壁の維持・管理責任が生まれる」でご説明した擁壁をふくめ、斜面に建てた建物によって何らかの被害が生じた場合は、その損害について責任を負う可能性があります。
日々の安全確認はもちろん、事前の対策として以下の保険加入を検討しましょう。
- 火災保険
- 地震保険
- 個人賠償責任保険
6-4.複数の建築プランを比較検討する
斜面がある土地で土地活用を検討する際には、はじめから一つの会社に決めてしまうのではなく、複数のハウスメーカーや建築会社の建築プランをできるだけ数多く入手し、内容を比較してから、納得いく会社を探し出すようにします。
複数プランを比較・検討するには、日本全国のハウスメーカーや建築会社の中から、一度の入力で最大10社まで絞り込んで相性の良い会社を提案してくれる「HOME4U(ホームフォーユー) オーナーズ」の一括プラン請求をご利用ください!
土地活用に関する実績と経験が豊富なハウスメーカーや専門企業などから提案を受けることで、思いもよらなかった活用方法が見つかる場合もあります。
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