アパートの収益性がわかる指標「NOI利回り」は決して難しいものではありません。アパート経営者のために表面利回りとの違い、計算方法・事例、改善方法をご紹介します。

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更新日
2020.02.20
カテゴリ
記事, 大家さん向け, これから始める人向け, 収益改善

初心者でも簡単!NOI利回りの全知識と今日からできる改善方法

初心者でも簡単!NOI利回りの全知識と今日からできる改善方法

アパートをこれから建てようと計画を進める初期の段階で、ほとんどの方が「安定的に家賃収入が入るかどうか」を気にされることでしょう。

アパート1棟だけで数千万円かかります。自己資金だけで賄う方は限られますので、多くの場合は、ローンを使ってアパートを入手することになります。

そのときに思い悩むのが「借金を返し続けるかどうか」、そして借金の返済原資となる家賃が「安定的に入っているくるかどうか」。アパート経営の心配事のほぼ大部分がこれら「お金まわりの不安」と言っても過言ではありません。

そこで建てる前に、ぜひお試しいただきたいのが「NOI利回り」という指標を活用した収支シミュレーションです。

「NOI利回り」をマスターすれば、アパートの収益性がどの程度備わっているかを見極めることができます。

今回はアパート経営が初めての方でもわかるように、NOI利回りの基礎から正確な算出方法、また数値を伸ばすための物件改善方法など余すところなく解説いたします。

アパート経営を始める多くの方に参考にしていただければ幸いです。

1. NOI利回りとは

ここではNOI利回りの基礎をご説明します。

定義、他の利回りとの違い、計算方法から具体例などを押さえることが、NOI利回りをマスターする第一歩となります。

1-1. 実態に即した収益力を表す

NOI利回りとは、投資の費用対効果を表す指標のひとつです。3000万円のアパートを買ったとしたら、1年間の成果でどの程度回収できるかがわかります。

NOIとは「ネット・オペレーティング・インカム」の頭文字をとった経営用語で、一般的には「営業純利益」を表しています。

アパート経営のNOI利回りでは、空室の家賃損失リスクや諸経費を含んだ利回り計算を行います。「表面利回り」や「実質利回り」よりも実態に即していると言えます。

1-2. 表面利回りとの違い

アパート経営を続けると、空室が発生したり清掃費がかさんだり、または入居募集広告費、固定資産税などさまざまな損失・経費がかかります。これらを織り込んで計算するのが、NOI利回りの特徴です。

計算項目は多岐に渡ります。きちんと情報を揃えて計算すれば、実態に近い利回りを把握することができます。

一方、建築会社から提示される「表面利回り」は、損失リスクや諸経費を織り込んでいない利回りです。

年間家賃収入を物件購入価格で割るシンプルな計算なので、おおよその目安を知るには便利な計算です。
しかし実質的な収益性を知りたいなら、NOI利回りの算出が欠かせなくなります。

1-3. 計算方法

NOI利回りの計算は、やや複雑ですが、表面利回りの計算式から入るとわかりやすいです。表面利回りの計算式は、

表面利回り=年間家賃収入÷物件購入価格×100

このように非常にシンプルです。NOI利回りでは、上の計算式に、

①年間の空室率
②年間の管理運営経費
③購入経費

の3つを加味します。すると計算式は次のようになります。

NOI利回り={年間家賃収入×(1-空室率)-年間管理運営経費}÷(物件購入価格+購入経費)×100

管理運営経費には、主に下の7つが入ります。

また購入経費には下の3つが入ります。

このように諸要素が多岐に渡ります。表面利回りのように気軽に計算できないのが難点ですが、きちんと情報を揃えて計算すれば、実態に即した利回りを知ることができます。

1-4. 計算の具体例

NOI利回りを実際に計算します。
ここでは2種類の物件を比較しながら利回りを求めていきます。

2種類のアパートのNOI利回りを比較すると、表面利回りに偏った購入判断がいかに危険かがわかります
まずは順を追って「Aアパート」「Bアパート」の表面利回りから見ていきます。

Aアパート

年間家賃収入(満室):300万円
年間管理運営経費:40万円
購入価格:3000万円
購入経費:250万円
空室率:30%

まずは上の概要を使って「表面利回り」を求めると、次のようになります。

300万円(年間家賃収入)÷3000万円(購入価格)=10%

Aアパートの表面利回りは「10%」です。

一方、Bアパートではどうでしょうか。

Bアパート

年間家賃収入(満室):330万円
年間管理運営経費:45万円
購入価格:3500万円
購入経費:300万円
空室率:10%

330万円(年間家賃収入)÷3500万円(購入価格)=9.4%

Bアパートの表面利回りは「9.4%」です。

表面利回りで比較すると、BアパートよりAアパートのほうが“お買い得感”があります。

しかし、NOI利回りで比較すると、事情が違ってきます。
まずはAアパートのNOI利回りを計算します。

AアパートのNOI利回り

{300万円(年間家賃収入)×(1-空室率30%)-40万円(年間運用経費)}÷{3000万円(購入価格)+250万円(購入経費)}×100
=170万円÷3250万円×100
=5.2%

AアパートのNOI利回りは「5.2%」となります。

対するBアパートのNOI利回りはどうなるのでしょうか。

BアパートのNOI利回り

{330万円(年間家賃収入)×(1-空室率10%)-45万円(年間運用経費)}÷{3500万円(購入価格)+300万円(購入経費)}×100
=252万円÷3800万円×100
=6.6%

このようにBアパートのNOI利回りは「6.6%」となり、表面利回りでは劣っていたAアパートを1%以上上回ります

BアパートのNOI利回りが勝った理由は、Aアパートよりも空室率が低いためです。Bアパートの空室率は10%。それに対しAアパートは30%も空室がありました。

表面利回りでは見えない物件価値が、NOI利回りではある程度見えてくるのです。

1-5. 相場

NOI利回りそのものの相場は、存在しません。しかし、NOI利回りを構成する材料から、それぞれの相場を感覚的に把握することは可能です。

新築賃料

インターネットで「家賃相場」と検索すると、家賃相場を調べられる不動産情報サイトが表示されます。
自分に当てはまる条件を入力して、建築会社から提示された新築賃料と見比べることをおすすめします。

例えば次の条件で入力したとします。

すると、次のように相場が算出されます。

ワンルーム:7万4800円
1K:7万300円

家賃相場は7万円台前半です。しかし不動産情報サイトの家賃相場は、入居募集中の賃料データをベースにしています。

募集中ということは空室であることを意味しているので、実際の成約賃料は若干低くなる可能性があります。
アパート経営に詳しい専門家に聞いて、確かめることをおすすめします。

アパートの空室率

空室率もエリアによって異なりますが、相場感がわかる一定の指標はないわけではありません。

トヨタグループの調査会社・タスが、全国主要都市の空室率を毎月発表しています。
この指標は毎月メディアにリリース配信されるため、インターネットで検索をかけるといくつかのメディアが内容を取り上げています。

個人で詳しい情報を知りたい方は、タス社のサイトの下記ページからレポートをダウンロードできるようになっています。

トヨタグループ株式会社タス 資料ダウンロード「首都圏版・関西圏・中京圏・福岡県版

リスクヘッジのためにも、空室率の実態はしっかりおさえておくことをおすすめします。

建築費

建築費の相場は国土交通省が毎年開示している「建築着工統計調査」からある程度読み取ることができます。

新築プレハブ住宅(貸家)の1平米あたり工事費予定額
長屋建 共同住宅
総計 21万円 23万円
木造 20万円 20万円
鉄骨造 21万円 23万円
鉄筋コンクリート造 27万円 25万円

出典:国土交通省「建築着工統計調査 / 住宅着工統計(2018年度版)

※新築プレハブ住宅の1平米当たりの工事費単価は20万円〜27万円となります。

2. NOI利回りを正確に算出するために

それではNOI利回りを算出する上で、より精度を上げるための方法を解説します。

見るべきは下の2つ、

です。

3つのパートに分けて説明します。

2-1. 家賃相場と照合する

家賃相場の調べ方は先のパートでご説明した通りですが、問題なのは築何年の家賃相場を参考にするかです。

アパートは老朽化とともに家賃が低減していきます。先の条件と照らし合わせて比較していきましょう。

種類 アパート
最寄り駅 JR恵比寿駅
徒歩 5~10分
専有面積 15~20平米
ワンルーム 1K
新築 7.48万円 7.03万円
築5~10年 6.94万円 6.05万円
築10~15年 6.55万円 6.11万円
築15~20年 6.18万円 5.73万円

参考:不動産・住宅情報サイト LIFULL HOME’S「恵比寿駅の家賃相場」(2019年10月時点)

ワンルーム・1Kともに、新築当初は7万円台前半だった家賃相場は、築15〜20年を迎える頃には6万円前後に減っていきます。

アパート経営はマラソンと同じ長期戦と捉えれば、1室あたりの賃料の減少分を織り込んでNOI利回りを算出し、シミュレーションをかけることをおすすめします。

どの時点の築年数で計算するか、または築年数ごとの家賃相場の平均値で計算するかはその人の考え方次第です。アパート経営に詳しい専門家に相談されることをおすすめします。

2-2. 管理手数料や固定資産税などを確認する

ここからは建築後の管理運営諸経費について触れていきます。

事前に確実にわかる諸経費が、「管理手数料」「固定資産税」です。

管理手数料

管理手数料とは、アパートの管理運営代行手数料のことです。入居者のクレーム対応、家賃集金の代行、毎月の収支報告など大家さんに代わって諸々の管理運営業務を代行する手数料のことです。

管理運営代行は、アパート建築会社がそのまま管理を請け負うこともあれば、管理が得意な専門会社を紹介してくれるケースがあります。

自分が想定している代行会社に、事前に管理手数料を確認することをおすすめします。

管理手数料の相場は、家賃の5〜8%と言われています。月額の賃料収入が80万円の場合、管理手数料が5%だったら、賃料収入80万円から月4万円を代行会社に支払うことになります。月4万円なら、年間で48万円です。

さらに管理の形態にはもう1種類あります。それが「サブリース」という形態です。新築後、サブリース会社がアパート全室を借り上げ、転貸して入居者を募集する仕組みです。

サブリースの特徴は、入居者がいない状態でも満室分の家賃収入が大家さんの懐に入ってくる点です。業界では「空室保証」と呼び方をされますが、空室リスクを担保する代わりに、先の管理代行より高い手数料を支払うことになります。相場は家賃の10%前後と言われています。

サブリースの手数料も事前確認が可能です。NOI利回りの計算に役立てることができます。

固定資産税

もうひとつ、毎年課税される「固定資産税」の額もあらかじめ調べておくことをおすすめします。

固定資産税とは、土地・家屋を所有している住民に課す税金のことです。
固定資産税の算出方法は、

固定資産税=固定資産税の評価額×標準税率1.4%

が基本になります。

アパート建築会社や税理士事務所などに相談すれば、税額を調査してもらうことが可能です。こちらも、NOI利回りを計算する上で、確実に調べることができる数値になります。

2-3. 修繕費と広告費を予測する

NOI利回りを計算する上で、「修繕費」「広告費」も無視できません。ただしこちらは管理手数料や固定資産税のように、決まった金額を事前に調べることは不可能です。

修繕費

修繕費の考え方は大きく3つあります。

  • 退去の後の原状回復工事
  • アパートの競争力をテコ入れするためのリフォーム工事
  • 老朽化した防水機能、各設備を刷新するための大規模修繕工事

これらはアパートの状況によって工事内容も金額も変わってきます。それぞれの大体の費用感、また実施の頻度をアパート建築会社に相談されることをおすすめします。

広告費

広告費の予測も同様です。広告費とは、空室が発生したときの入居募集に使う宣伝費用のことです。この宣伝費用は大きく2種類、

  • 募集ポータルサイトに支払う広告宣伝費
  • 部屋探しショップで取り扱ってもらう宣伝費

があります。アパート建築会社や近くの不動産会社に依頼すれば、広告費の単価そのものを把握することは難しい話ではありません。問題は、

  • 年間でどの程度空室が発生するか
  • 一度発生した空室が埋まるのに、どのくらいのタイムラグが生じるか

この2つのリスクをどう見積もるかです。こればかりは実際に運営してみないとわかりません。

あえて調べる方法があるとしたら、空室の発生頻度については、入居者の属性ごとの平均居住期間を調べることで大体のイメージを把握することができます

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の「第20回 賃貸住宅市場景況感調査」(PDF資料13ページ)によれば、学生の平均居住期間(入居期間)が「2〜4年」と答えた不動産会社の割合が全体の86.3%を占めています。
逆に65歳以上の高齢者となると、「6年以上」と答えた不動産会社の割合は62.1%と全体の半分を上回ります。

このようにアパートの想定入居者を設定すれば、1室あたりの平均居住期間を予測することが可能になります。

例えばそのアパートが学生向けで、平均入居期間を「2年」と想定した場合、単純計算で、1年で10室のうち5室で毎年入れ替わりが発生します。

1年で5室入れ替わると想定すれば、

  • 5室分の空室期間(1〜2カ月と想定)
  • 5室分の原状回復費用
  • 5室分の入居募集費用

の予測が可能になります。賃貸ニーズに詳しい専門会社と相談しながら、予測してみることをおすすめします。

3. NOI利回りの改善方法

ここからは、新築でアパートを建ててすでに賃貸住宅経営をスタートされている大家さんに向けて、NOI利回りの改善方法をお伝えします。

もちろんこれからアパートを建てる大家さんも、建築後の運営リスクに対処する意味では、あらかじめ知っておいて損はありません。

NOI利回りの計算は大きく「収入」「支出」の2つで成り立っています。

ということは、単純に

この2つを意識すればいいのですが、無策のまま自然に改善することはできます。次のパートから、具体的な改善方法をご紹介します。

3-1. NOI利回りの改善方法は2種類

それでは「収入を増やす」「支出を減らす」とは、具体的にどう考えればいいのでしょうか。

もう少し噛み砕いた伝え方をすると、

収入を増やす=家賃収入を増やす
支出を減らす=運営諸経費を圧縮する

という表現になります。

3-2. 毎月の家賃を上げる

家賃収入をあげる方法をご説明します。

方法は大きく2つ、

になります。それぞれ解説します。

家賃そのものを引き上げる

例えば1室あたり5万円の家賃を、5.5万円、6万円と引き上げていくにはどうすればいいのでしょうか。

これはアパートの希少価値を引き上げることで解決します。
入居者にとっての理想の条件を満たし、競合となるアパートと差別化を図っていきます。

不動産情報サイトなどで、自分のアパートと同一条件の募集物件をいくつか眺めてみるといいでしょう。そうすると、

「どの物件にも無料インターネット設備がついている」
「ほとんどの物件に宅配ボックスがついていない」

という特徴がわかります。この場合、ほとんどの物件についていない「宅配ボックス」を自分のアパートに追加設置することで、いくらか家賃を引き上げられるかもしれません。

これは設備にかかわらず、

  • デザイン性の高い部屋が周りに少ない
  • 近くの美大生のために、部屋の一部を土間にしてアトリエにしてあげよう

こういった次のリフォームの発想につなげることも可能です。

ただし入居者の属性によって、ニーズのある設備・ニーズの乏しい設備は異なる上に、リフォームにしても追加コストがかかるため、確実に家賃を引き上げることができるかどうか、慎重な見極めが必要です。

オーバースペックとなってしまっては、高い賃料を設定してもニーズがなければ入居募集は難しくなります。その辺のバランス感を身につけるためにも、不動産会社に相談しながらご検討されることをおすすめします。

入居期間を長くする

もうひとつが、入居期間を長くする、という方法です。各室の入居者の退去の頻度が少なくなれば、退去から次の入居までの空白期間(家賃損失)を減らすことができます。

そのため、1人あたりの入居者にいかに長く住んでもらえるかを考えることは、NOI利回りを改善する上で大変重要なことです。

長くアパートを経営していると、定期的な入退去の発生はどうしても避けて通れません。

退去が発生する理由は、大きく次の2つ、

  • ライフイベントが発生したため(就職、結婚、出産など)
  • 今のアパートに不満があるため

となりますが、下の「アパートの不満」は工夫次第で解消できます。
アパートに対する不満とは、おおよそ次のような理由です。

  • 水回り設備がしょっちゅう故障する
  • 共用部にゴミが散乱している
  • セキュリティがしっかりしたアパートに住み替えたい
  • クレーム後の初動が遅い

大家さん一人では対処が難しい内容もありますが、管理会社と連携して、ひとつひとつの不満を解消すれば平均入居期間が延びやすくなります。

退去者が出たら、アンケートを実施することをおすすめします。まず入居者の不満を把握することが、第一歩と言えます。

3-3. 毎月の支出を減らす

アパート経営の諸経費を減らす方法は多岐に渡ります。主な考え方をご紹介します。
運営にかかる諸経費は、大体以下の内容です。

などです。ひとつずつご説明します。

退去後の原状回復費用

安くやってくれる会社に切り替えることも、ひとつの手です。

知り合いにおすすめのリフォーム会社を紹介してもらったり、いなければインターネットで探して相見積もりをとってみることをおすすめします。

退去後の入居募集費用(広告費)

広告費の単価を下げることは中々難しいですが、入居までの期間を短くして広告費を安く抑える工夫はどなたでも可能です。

空室期間が2カ月続いた場合と1カ月に留まった場合とでは、大家さんが不動産会社に支払う広告費が変わってきます。

部屋探しショップの店長や営業マンと信頼関係を構築し、部屋探しをしにきた学生や社会人に対して、優先的に自分のアパートを紹介してもらえる工夫をすれば、空室期間を短めにおさえることができます。

その工夫はさまざまですが、ひとつは営業マンが紹介したくなる仕組みをつくることです。

営業マンの代わりになって紹介用の資料を作ったり、自分のアパートの強みをわかりやすく書き加えれば、内見にきた人に、アパートの強み・魅力がより伝わりやすくなります。

営業マンも特徴をまとめる強みが省けるため、業務が楽になり、ほかの募集物件より優先して紹介したい心理が芽生えてくるのです。

日々の管理委託手数料

管理運営代行会社によって手数料は変わってきます。手数料の相場は5〜8%ですが、最近は3%、中には0%で対応する会社も出てきました。

単純に手数料を抑えたいなら、複数の管理会社に相談し、手数料を比較してみることをおすすめします。
ただし、管理会社によって具体的な代行メニューが若干変わってくるため、詳しい内容には注意が必要です。

3-4. 改善前後の計算を比較

NOI利回りの改善策がまとまったら、実施前と実施後でNOI利回りがどの程度改善されるか、計算して比較してみましょう。
比較すれば、ご自身の努力・工夫が、NOI利回りにどの程度反映されるかがわかります。

NOI利回りは、いくら家賃が入り、いくら出費が生まれるかで数値が変わってきますが、年によってばらつきが出てきます。
毎年シミュレーションをかけ、その年のNOI利回りを都度把握し、改善のための工夫を仕掛けていくことが大変重要です。

4. NOI利回りの注意点

ここまでNOI利回りの基礎・計算方法、そして利回りを改善する具体的な内容をご説明してきました。ここからは、NOI利回りを扱う上での注意点をご紹介します。

4-1. 新築の高賃料は最初だけ

NOI利回りを計算される際、最も気を付けたい点が新築時の家賃設定を鵜呑みにしないことです。

建築時に提示された新築賃料がずっと続く保障はなく、アパートの老朽化に伴い、入居者のニーズを満たす家賃は低減していきます。

おさらいの意味を込めて、先に挙げた家賃相場事例を再度ご紹介します。

種類 アパート
最寄り駅 JR恵比寿駅
徒歩 5~10分
専有面積 15~20平米
ワンルーム 1K
新築 7.48万円 7.03万円
築5~10年 6.94万円 6.05万円
築10~15年 6.55万円 6.11万円
築15~20年 6.18万円 5.73万円

上記の「恵比寿駅」は、東京都内の屈指の人気エリアです。人気エリアでも、同じアパートの条件でも築年数が5年経過するだけで、家賃は5000円以上減っていくのです。

NOI利回りを計算する際は、家賃収入は定期的に減少することを想定することをおすすめします。

4-2. 突然の出費を織り込む

アパート経営はトラブルが付きものですが、NOI利回りはトラブルの出費まで織り込んでいません。信頼できそうなアパート建築会社や不動産会社に相談して、運営トラブルや解決のための出費がどの程度かかるかを把握しておくといいでしょう。

想定できるトラブル事例としては、

  • 水回り設備の故障
  • 家賃滞納に伴う明け渡し訴訟費用
  • 自然災害による建物損傷

などが挙げられます。それらを経験した大家さんと知り合い、経験談を聞いてみることも有効な手段です。

4-3. 空室リスクを織り込む

アパートを経営していると、毎年少なからず退去が発生します。退去から次の入居者が決まるまでに1~2カ月の空白期間が空くと言われますが、NOI利回りの計算の際、この空室リスクも織り込んでおくことをおすすめします。

入居者の平均入居期間は、属性によって異なります。このデータは、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が定期的にレポートを発表しています。

自分のアパートに住む属性を想定し、入居者の平均入居期間を予測してみると、より正確なNOI利回りを算出できるはずです。

まとめ

いかがでしたか?

NOI利回りは、表面利回りよりも実態に即した収益性を表す指標です。

実態に即した計算を行う分、調べるべき情報は多岐に渡しますが、調べたら調べた分だけNOI利回りも正確なものになっていきます。設定賃料、管理手数料、固定資産税、そして広告費・修繕費の予測は、ある程度のレベルなら専門家に相談すれば調べられます。

そして調べるだけでなく、実際にNOI利回りを改善する手法を知ることも、安全にアパート経営を行うために必要なことです。ニーズのある設備を導入して家賃を引き上げたり、入居者の退去リスクをなるべく低くして、広告費・修繕費の出費を抑えるなど工夫の仕方はさまざまです。

一方、NOI利回りには注意点もあります。

計算に使う「家賃収入」は、新築時に設定した賃料を鵜呑みに計算してしまいがちですが、新築時の賃料は老朽化とともに減っていくことも想定する注意深さが必要です。

また、水回り設備の故障や家賃滞納による損失もNOI利回りは含みません。計算外のリスクがあることを知ることそのものが、NOI利回りと向き合う正しい姿勢になります。

NOI利回りの正しい知識が、アパート経営を成功に導いてくれることでしょう。

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