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お悩みQ&A
洗面所の床が腐った。明らかに入居者さんの過失だと思うが…
- 2025.05.15
- Q&A
- 修繕費

ケンさん
アパート大家です。
洗面所やキッチンの床を腐らせた入居者の方がいます。退去時に気づいたのですが、最低でも張り替えるレベルです。
明らかに入居者さんの過失だと思うのですが、かたくなに認めません。
こちらが泣き寝入りするしかないですか?
福岡県/50代
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後藤 謙治さん
賃貸借契約における原状回復義務や過失責任の立証が問題となる場面です。
入居者による「通常使用を超える損耗・毀損」であり、過失や故意による損害と判断できる場合には、原状回復費用を請求可能です。
ただし、入居者が過失を否定している場合、立証責任は大家側にあるため、証拠をどうやって集めるかがポイントになります。
1. 原状回復の基本原則―国交省のガイドラインを参考に
大前提として、賃貸借契約書の記載が問題にはなりますが、一般的には、賃借人は退去時に原状回復しなければならない(「原状回復義務」と呼ばれます。)と定められていることがほとんどですので、以下ではそのような前提でご説明します。
過去の判例で、通常損耗と経年変化(劣化)については、原状回復義務には含まれないと判断されています。つまり、賃借人は「通常使用による損耗・経年劣化」については原則として修繕義務を負いません。
もっとも、故意・過失、善管注意義務違反(善良な管理者としての注意義務)に基づく損耗や損傷については、原状回復費用を負担する義務が生じます。
ここであげたように、通常損耗と経年変化については、賃料に含まれる部分と解されるので、基本的には大家さんの負担ということになります。
どのようなケースで大家さんの負担になり、どのようなケースで賃借人の負担となるかは、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」が参考になります(https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf)。
2. 対応の流れ
(1) 証拠資料の確保と記録
賃借人が修繕費を任意に支払うことを拒む場合、請求の根拠となる資料を確保することが大切です。具体的なには以下のような資料です。
・退去時の損傷状況の写真や動画:複数の位置から残しておくと安心
・入居時の現場状況の写真や動画:入居中の損傷であると特定するために必要
・修理業者の見積書:修理内容と金額の特定に必要
・損傷原因の調査報告書:賃借人の故意・過失の判断に必要(必要に応じて)
(2) 説明と交渉
まずは、上記のような資料を提示しつつ、賃借人が負担すべき費用であることを説明して、修繕費用の負担を求めます。各種資料については、コピーを渡してしまった方が賃借人側の検討材料になるので望ましいケースが多いです(個人情報等には配慮が必要です。)。必要に応じて、国交省のガイドラインの該当箇所も参考資料として送ることも有益です。また、受領を確認する意味でも、配達記録郵便やレターパックを利用することが望ましいです。
電話や対面でやり取りする場合は、交渉経過を残す意味で、できる限り録音・録画を残しておくとよいでしょう(録音・録画にあたって相手方の了解を得る必要はありません。)。
(3) 話合いで解決しない場合は
話合いで解決しない場合、内容証明郵便による請求、調停や訴訟などの法的措置に進む必要があります。いずれかの段階では、弁護士に相談・依頼する必要が出てくると思います。
3. 泣き寝入りしないために
以上のとおり、床の損傷部分の修繕費を賃借人に請求できるかどうかは、損傷の状況や程度と、それに対して有益な証拠資料を確保できるかが重要なポイントになります。
そもそも賃借人に請求できる損傷なのか、できるとしてどのような証拠資料が必要か、など、法的に複雑な問題が含まれるケースも多いです。
弁護士であれば、必要な証拠資料の提案や交渉の進め方の助言も可能です。依頼するか否かにかかわらず、早めにご相談いただくことが望ましいと思います。
入居者による「通常使用を超える損耗・毀損」であり、過失や故意による損害と判断できる場合には、原状回復費用を請求可能です。
ただし、入居者が過失を否定している場合、立証責任は大家側にあるため、証拠をどうやって集めるかがポイントになります。
1. 原状回復の基本原則―国交省のガイドラインを参考に
大前提として、賃貸借契約書の記載が問題にはなりますが、一般的には、賃借人は退去時に原状回復しなければならない(「原状回復義務」と呼ばれます。)と定められていることがほとんどですので、以下ではそのような前提でご説明します。
過去の判例で、通常損耗と経年変化(劣化)については、原状回復義務には含まれないと判断されています。つまり、賃借人は「通常使用による損耗・経年劣化」については原則として修繕義務を負いません。
もっとも、故意・過失、善管注意義務違反(善良な管理者としての注意義務)に基づく損耗や損傷については、原状回復費用を負担する義務が生じます。
ここであげたように、通常損耗と経年変化については、賃料に含まれる部分と解されるので、基本的には大家さんの負担ということになります。
どのようなケースで大家さんの負担になり、どのようなケースで賃借人の負担となるかは、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」が参考になります(https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf)。
2. 対応の流れ
(1) 証拠資料の確保と記録
賃借人が修繕費を任意に支払うことを拒む場合、請求の根拠となる資料を確保することが大切です。具体的なには以下のような資料です。
・退去時の損傷状況の写真や動画:複数の位置から残しておくと安心
・入居時の現場状況の写真や動画:入居中の損傷であると特定するために必要
・修理業者の見積書:修理内容と金額の特定に必要
・損傷原因の調査報告書:賃借人の故意・過失の判断に必要(必要に応じて)
(2) 説明と交渉
まずは、上記のような資料を提示しつつ、賃借人が負担すべき費用であることを説明して、修繕費用の負担を求めます。各種資料については、コピーを渡してしまった方が賃借人側の検討材料になるので望ましいケースが多いです(個人情報等には配慮が必要です。)。必要に応じて、国交省のガイドラインの該当箇所も参考資料として送ることも有益です。また、受領を確認する意味でも、配達記録郵便やレターパックを利用することが望ましいです。
電話や対面でやり取りする場合は、交渉経過を残す意味で、できる限り録音・録画を残しておくとよいでしょう(録音・録画にあたって相手方の了解を得る必要はありません。)。
(3) 話合いで解決しない場合は
話合いで解決しない場合、内容証明郵便による請求、調停や訴訟などの法的措置に進む必要があります。いずれかの段階では、弁護士に相談・依頼する必要が出てくると思います。
3. 泣き寝入りしないために
以上のとおり、床の損傷部分の修繕費を賃借人に請求できるかどうかは、損傷の状況や程度と、それに対して有益な証拠資料を確保できるかが重要なポイントになります。
そもそも賃借人に請求できる損傷なのか、できるとしてどのような証拠資料が必要か、など、法的に複雑な問題が含まれるケースも多いです。
弁護士であれば、必要な証拠資料の提案や交渉の進め方の助言も可能です。依頼するか否かにかかわらず、早めにご相談いただくことが望ましいと思います。
回答者
後藤 謙治さんプロフィール
数万件規模の物件を管理する賃貸管理会社を顧問先として複数有する事務所にて執務。退去・隣地・承継問題など大家さんに関わる様々な法律問題に対応した実績がある。
中小企業から上場企業まで、多数の企業事案を経験しており、クレーム対応にも豊富な実績がある。
相続や離婚・交通事故など一般民事にも幅広く対応可能。
弁護士向けの研修や市民向けセミナー、経営者向けの勉強会などの講師実績あり。
お問合せは下記より。
中小企業から上場企業まで、多数の企業事案を経験しており、クレーム対応にも豊富な実績がある。
相続や離婚・交通事故など一般民事にも幅広く対応可能。
弁護士向けの研修や市民向けセミナー、経営者向けの勉強会などの講師実績あり。
お問合せは下記より。
※回答内容は、すべてのケースに該当するものではありません。
より詳細な回答を求められる場合は、個別で専門家に相談することをお勧めいたします。
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