「将来相続トラブルにならないよう、あらかじめ両親に相続対策をしてもらいたい」と考える方は多いはずです。しかし、両親に相続の話を持ちかけるというのは、現実にはなかなか難しいのではないでしょうか?
本記事では両親に相続対策を始めてもらう3つの方法を、解説動画に沿う形でご紹介します。ぜひこれから家族会議をするきっかけ作りにしていただければ幸いです。
目次
1.なかなか難しい相続対策のきっかけ。どうやって作る?
将来、両親が亡くなったときの相続は、子供にとっては悩みの種です。親の方で相続に備えて積極的に準備をしてくれればいいですが、なかなかその気になってくれないこともあります。
いずれ親の財産を受け取る子供達は、「相続の際にトラブルにならないようにしたい」「相続税をできるだけ少なくしたい」と思っています。しかし、親にその話を持ちかけると、「縁起でもないことを言うんじゃない!」「相続させるほどの資産は無い」などと言われてしまい、話が進まないこともあると思います。
両親が相続対策をしてくれない場合、「この方法だったら絶対確実!」という解決策があるわけではありません。しかし、切り出し方を工夫することで、相続対策してもらえる可能性は高くなります。
以下、実際に成功している人が多い、家族会議開催のための3つの切り出し方を動画に沿ってご紹介します。
2.【相続対策のきっかけ1】誠心誠意、気持ちを伝えてみよう!
両親に相続の話を持ちかけると、どうしても誤解されやすくなります。誤解を招くことのないよう、なぜ相続対策をしてほしいのか、自分の気持ちを両親に説明してみてください。
2-1. 財産を多く欲しいわけではないことを説明
子供の立場で親に相続の話をするというのは、気が進まないのが普通です。本人の前で死ぬときのことを口にするのも憚られますし、親の財産を狙っているとも思われたくないでしょう。けれど、「相続の話をする」イコール「親の財産が欲しい」ということではないはずです。
「親にきちんと相続対策をしてほしい」と考える方のほとんどは、財産を多く欲しいのではなく、「家族仲良く円満に相続したい」という気持ちからです。まずは、ご両親にその気持ちを率直に伝えてみてください。
2-2.相続争いは財産の大きさとは関係ない
「円満に相続をしたい」「できるだけトラブルに巻き込まれたくない」という話を両親にすると、「うちには揉める程の財産なんてない!」といわれてしまう方も多いでしょう。相続争いはお金持ちだけの話と思われがちですが、実は相続にまつわる揉めごとは、財産の大きさには関係ありません。
動画でご紹介しているのは、家庭裁判所の遺産分割事件について、遺産の金額別に件数の割合を示したものです(動画4:00~)。
揉めごとが発生しているのは、財産が1,000万円以下のケースが全体の33%、1,000万円超5,000万円以下のケースが全体の42%となっています。つまり、日本国内で起こっている相続の揉めごとというのは、遺産の額が5,000万円以下のケースが全体の4分の3を占めているのです。
2-3.金融資産の割合が大きければトラブルが避けられる
相続で争いが発生するかどうかは、財産の大小ではなく金融資産の大小に関係すると言えます。金融資産とは、預金のほか、投資信託などです。遺産の分け方はお金で調整できるので、預金などの金融資産が潤沢にあれば、分けやすいのでトラブルを避けられます。
一方、資産のほとんどが不動産であるケースや、経営していた会社の株式があるというケースでは、分けるのが難しいので、揉める原因になりがちです。トータルでの財産の大きさよりも、分けやすい資産がどれくらいあるかの方が、揉めやすさにかかわってくるのです。
両親にトラブルを避けたい旨を説明するときには、相続争いは規模には関係なく発生するということも伝えた方が良いかもしれません。
3.【相続対策のきっかけ2】2020年民法改正「これを機に相続対策を!」
2020年に民法が大きく変わったことをご存じの方も多いと思います。相続にまつわる部分(相続法)も、2020年に大きく変更された箇所があります。
3-1.親子で新しい相続法を勉強してみる
相続法改正を機に、親子で新しい法律を勉強しようというアプローチも効果的です。新しい相続法に沿って一緒に相続対策を考えるというのは、家族会議のきっかけになります。
相続法改正については、法務省からわかりやすいパンフレットが出ています。インターネット上でダウンロード可能ですので、ぜひ活用してください。
法務省:「相続に関するルールが大きく変わります」
3-2.既に相続対策している人も見直しを!
将来の相続に備えて、既に万全の準備をしているという方もいらっしゃると思います。そういった方でも、今回の相続法改正により、考え直した方がいい論点がたくさん出てきています。
例えば、「配偶者居住権」という制度が2020年4月から始まります。また、「遺留分」という遺言書に関係する制度も、2019年7月から変更されています。新しい制度を採用すると、より万全な相続対策ができるケースもあります。相続対策が終わって一安心していた方も、この機会に見直しをしてみてください。
4.【相続対策のきっかけ3】「賢者は相続対策をしっかりしている」ことを知ってもらう
賢い人は相続対策で家族円満を維持し、相続税を節税していることをご両親に伝えてみるのも有効な方法です。
4-1.有名人も相続対策をしている!
樹木希林さん、内田裕也さんご夫婦はたくさんの資産をお持ちでしたが、万全の相続・相続税対策をしていたそうです。そのおかげで、トラブルもなく、家族円満に相続が済まされました。
賢明な人は相続対策をしています。相続対策に成功している有名人の例を挙げることも、両親への切り出し方として効果があります。
4-2.揉めなければ相続税対策でも一致団結できる
相続対策では、揉めない相続にすることが一番大切になります。財産の分け方で揉めないことを重視しているご家族は、相続税対策でも一致団結できます。
また、相続税の対策は意外な効果もあります。相続税というのは分け方によって大きく金額が変わるので、相続税が最も安くなる財産の分け方をしたい、と相続人となる家族全員の利害関係が一致します。すると、例え少し仲の悪い家族でも、相続税対策を機に協力し合おうと思うのです。このように相続税対策というのは、家族が同じ方向を向くきっかけになるといえます。
相続税対策ができるのは仲の良い家族だけです。相続税を安くするために、家族間でコミュニケーションをしっかりとって、円満な相続を実現してください。
5.相続対策をしないとどうなる?
相続対策には、遺言書を書いたり、生前贈与を行ったりするなどがあります。ですが、もし認知症になってしまったら、遺言書の作成や生前贈与は基本的にできません。認知症の人は意思能力が十分でないと医学的に判断されてしまっているので、契約などの法律行為はできないのです。
上記の、相続対策のきっかけを伝えるとともに、元気なうちでないと相続対策はできないということも、ご両親にあわせて伝えてみてください。
6.家族会議開催への良い切り出し方
相続に関して、両親に自分の口から伝えるのは難しいと思います。自分からは話しにくい、法律のことも税金のことも詳しくないという方は、こちらの動画をぜひご両親と一緒に見ていただきたいと思います。
ご両親に相続対策をしてほしいという方は、財産が欲しくて言っているのではないという方がほとんどです。「トラブルに巻き込まれたくない」「せっかく家族仲がうまくいっているのに、財産のことで仲が悪くなりたくない」という気持ちがご両親に届くように、ぜひ動画を活用してください。
7.まとめ
両親に相続対策をしてもらうために、トラブルを防ぎたいという気持ちを伝えてみてください。新しい相続法のことや有名人の相続対策の例を挙げるとより効果的かもしれません。ご両親と一緒に動画をご覧いただき、相続について考えるきっかけにしていただければ幸いです。
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