アパートの建て替えでは、入居者の立ち退きがスムーズに進めるカギとなります。その重要なポイントが立ち退き料です。立ち退き料の相場は以下のようになっています。
- 立ち退き料の相場=家賃の5~6ヶ月分
本記事では、アパートの建て替えを考えている方に向けて、立ち退きの手順や費用を具体的に説明します。
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アパート立ち退き料の相場はいくら?
アパートの立ち退き料は払わずに済むこともあれば数百万以上かかることもあります。一般的には以下のような金額を目安と考えます。
- 家賃の5~6ヶ月相当
- 40万円~80万円
立ち退き料の出費を抑えるにはどうする?
立ち退き料の負担を抑えるには、以下のようなことに気を付けて進めます。
- 空室が増えた段階を見計らう
- 引っ越し先を提供する
- 原状回復を求めない
- 退去までの家賃をもらわない
- 定期借家契約を活用する
アパート立ち退きの流れは?
アパート立ち退きは次の手順で進める必要があります。
- 立ち退きの経緯を書面で伝える
- 口頭で立ち退きの説明をする
- 立ち退き料の交渉
- 退去手続き
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詳しい解説は以下
目次
1.アパート立ち退き料の相場は?
アパートの立ち退きを交渉するにあたり、立ち退き料はひとつの交渉手段となります。
過去立ち退きを求めた判例も多く存在し、それらを鑑みると、アパートの立ち退き料はおおよそ家賃5~6ヶ月分、または40~80万円程度が相場です。
1-1.立ち退き料の内訳と相場
入居者が立ち退きにより負担しなければならない費用を埋め合わせる目的でオーナー・大家さん側が負担するのが立ち退き料です。
立ち退き料の内訳は以下のような費用で構成されます。
- 引っ越し代
- 新居の敷金、礼金
- 不動産会社への仲介手数料
上記に加え、立ち退きにあたっての迷惑料もここに含まれます。
これらの代償として家賃の5~6ヶ月分程度を立ち退き料として支払うことを伝えると交渉しやすくなるでしょう。
なお、店舗やオフィスとして利用している場合には、立ち退きにより生じる営業利益の減少分などを支払わなければならないこともあります。
場合によっては数百万~数千万円の立ち退き料が必要になることもあるため注意が必要です。
1-2.立ち退き事由別にみる立ち退き料への影響
大家さんが入居者に対して立ち退き料を支払うのは、通常は継続を前提とした賃貸借契約に対して、大家さん側の都合で退去の申し入れをするからです。
入居者が家賃を数ヶ月にわたり滞納しているようなケースでは、入居者側の契約違反を理由として契約解除できることもあり、この場合は立ち退き料を支払わずに合意を得られるでしょう。
また、収益物件の建て替えの場合、背景によって立ち退き料の取り扱いが変わってきます。
例えば、老朽化によって倒壊の恐れがあるなど危険があると判断した場合は、立ち退き料が不要な場合もあります。
建て替え後の物件への入居の便宜を図るなども立ち退き料負担を軽減することになるでしょう。
2.立ち退き料が必要な法的根拠
立ち退き料には明確な金額設定があるわけではないものの、法律と判例の中に根拠を見つけられます。ここでは、立ち退き料を必要とする法的な根拠を解説します。
2-1.立ち退き請求には正当事由が必要
入居者と大家さんとの間で締結される賃貸借契約では、大家さんの都合で勝手に解約されてしまい入居者の住居がなくなることを防ぐため、借地借家法において入居者の権利が保護されています。
具体的には、大家さんから入居者に対して退去の申し入れをする場合は、原則として期間満了の6ヶ月前までに借家人に対して解約の申し入れをする必要があり、また申し入れには正当な事由が必要とされています。
正当な事由とは一般社会の常識的な範囲で認められる事由のことで、例えば「建物の耐震基準が現行の新耐震基準を満たしておらず、危険なため建て替えをする」といったものです。
具体的にどのような事由が正当な事由として認められるかについては、最終的には裁判をしてみないと分かりません。しかし、もちろんその前の段階で入居者が納得できるものであれば何ら問題ありません。
参考:借地借家法
2-2.賃貸契約解約には立ち退き料が必要
大家さん都合による賃貸契約解約では入居者に納得してもらうため、立ち退き料を用意するのが通例です。
なお、入居者が納得しない場合、立ち退き料を積み増しして納得してもらうといったこともあります。
立ち退き料に明確な規定はありません。入居者一人ひとりとの交渉になるため、立ち退き料にばらつきが出ることもあります。
この場合、1人の入居者に対して立ち退き料を積み増ししたことが他の入居者にばれてしまうと、他の入居者の立ち退き料も積み増さなければならなくなる可能性があるため、秘密にしてもらうといったことにも注意しなければなりません。
・「立ち退き料がなし」のケースについて
大家さん側から立ち退きを求めるケースであっても、立ち退き料なしで進められるケースがあります。以下に立ち退き事由と要不要を表にまとめました。
立ち退きの事由 | 立ち退き料の要不要 |
---|---|
大家さん都合での立ち退き | 必要 |
老朽化したアパート・マンションの建て替え | 老朽化による差し迫った危険がある場合のみ不要 |
入居者が契約違反をしている | 不要 |
定期建物賃貸借契約の期間満了 | 不要 |
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3.立ち退き料の出費を抑えるコツ
立ち退き料の出費を抑えるには第一に誠意ある交渉を心がけることです。
ここを丁寧に対応できなければ、最悪裁判に発展してしまいます。裁判では、貸主は非常に立場が弱くなります。
ここでは立ち退き料の負担をなるべく少なくするコツを紹介します。
3-1.空室が増えた段階を見計らう
立ち退き交渉を始めるには空室が増えてきたタイミングを見計らいます。空室率が7割を超えた頃がよいでしょう。
例えば、家賃10万円で賃貸している3世帯に対して立ち退き料を用意する場合、おおよそ150万~180万円の負担になります。
あまり戸数が多いと、立ち退き料の負担はかなり重くなってしまいます。
また、立ち退きには交渉がつきものです。空室率が上がった状態であれば、交渉の手間も少なく済みます。
3-2.引っ越し先を提供する
立ち退きを求める際、入居者にとって大きな問題となるのは転居先です。その問題を解消することで、立ち退き料を安く済ませることが可能なこともあります。
大家さんで複数の物件を所有している場合は、代替え物件へのあっせんをすることを交渉段階で伝えます。
借地借家法では退去交渉の上では「財産上の給付」も有効と定めています。代替え物件へのあっせんはこの財産上の給付に当たるため、立ち退き料の負担軽減に役立つでしょう。
3-3.原状回復を求めない
賃貸契約上では、多くの場合で退去時の原状回復を求めています。
この原状回復義務を免除することが、立ち退き料の負担を抑えることに有効です。
特に建て替えを前提とした立ち退き交渉では、原状回復は無駄になるだけです。そこで、入居者側の負担も減らせる点を強調することで、立ち退き料削減に大きく働くことになるでしょう。
また、建て替えの場合、新築物件への再入居確約も交渉時の大きなアドバンテージになります。この手法は特にテナントの立ち退き交渉で有効です。
3-4.退去までの家賃をもらわない
立ち退きの交渉は多くの場合で、半年ほど前から動き出さなければなりません。
そのため、退去までの家賃の免除は入居者にとって大きなメリットになります。
家賃の負担が減ることで引っ越し資金もプラスに用意できます。
併せて、敷金の返金を前倒しすることも立ち退き料を安く済ませるポイントです。
敷金は原状回復費用として入居者から預かっているものです。これは先に返金することで、交渉の材料として利用できます。
3-5.定期借家契約を活用する
アパートなどの賃貸借契約では、多くの場合で「普通借家契約」を結んでいます。
これを期限があって更新できない「定期借家契約」に切り替えることで、立ち退き料の負担をなくすことができます。
この手法をとるには、2000年2月末以前に契約した普通借家契約は切り替えができないことに注意が必要です。
なお、テナントや事務所などの借家契約は2000年2月末以前の契約であっても切り替えできます。
・立ち退き料は経費で落とせる
負担した立ち退き料は所得税計算で経費として落とせます。
建物を賃貸して収入を得ている場合、不動産所得に対して確定申告をします。その際、立ち退き料も不動産経営の必要経費として計上可能です。
土地や建物を譲渡することを目的として立ち退き料を負担した場合は、譲渡に要した費用として譲渡所得から控除できます。
参考:国税庁|No.1382 立退料を支払ったとき
4.アパート立ち退きの流れ
アパート立ち退きの手続きは、立ち退きの日の1年~6ヶ月前から以下のような流れで進めます。建て替え計画をベースにした流れです。
(立ち退きの手続き)
- 立ち退きの経緯を書面で伝える
- 口頭で立ち退きの説明を行う
- 立ち退き料の交渉
- 退去手続き
それぞれの手続きについて、以下で解説します。
4-1.立ち退きの経緯を書面で伝える
まずは立ち退きの経緯を書面で伝えるようにします。
書面の作成については不動産会社や弁護士など専門家に任せてもよいですし、自分で作成したものを投函しても構いません。
遅くとも立ち退きの半年前までに書面で伝えておきます。
4-2.口頭で立ち退きの説明を行う
書面で伝えた後、それぞれの入居者と日程を調整し、口頭で立ち退きの説明を行っていきます。
この段階で入居者側の了承を得られれば問題はありません。
場合によっては立ち退き料を支払わずに済むこともありますが、ほとんどの場合、立ち退き料を支払ったうえで納得してもらうことになります。
なお、あらかじめ近隣の物件で価格帯が近い物件をピックアップしておき、代替物件として提案できるとスムーズです。この辺りは不動産会社に相談しておくとよいでしょう。
時期は書面で通達後、なるべく早い段階で設定します。
4-3.立ち退き料の交渉
入居者との間で立ち退き料の交渉を行います。
引っ越し費用や新居の敷金・礼金などにどのくらいの費用がかかるかを計算し、立ち退き料の額を提示します。
建て替えの正当事由として満足な理由がない場合には、立ち退き料の額を増やすことで納得してもらうといったことも考えられるでしょう。
交渉の完了時期は早いほど、立ち退き料の負担も減ります。
交渉が難航しそうな場合はデッドラインを設けて弁護士立ち合いなども視野に入れるとよいでしょう。
4-4.退去手続き
立ち退き料の交渉が終わったら退去手続きを取ります。
なお、立ち退き料を提示しても退去の交渉が調わない場合、最終的には裁判で争うことになります。
裁判では退去理由の正当性などが争われることになり、オーナー側の申し出が認められれば最終的には退去の強制執行となります。
5.アパート立ち退きでトラブルに発展したらどうする?
アパートの立ち退きの際は、立ち退き料を支払うことを前提に交渉を進めたとしても残念ながら交渉がまとまらずトラブルに発展することがあります。
ここでは、トラブル発生時の心得を確認しておきます。
5-1.入居者が立ち退きに応じないこともある
たとえ順序を追って手続きを進めていっても、入居者の中には立ち退きに応じない方が出てくることもあります。
立ち退き料を多めに支払うといった交渉も可能ですが、それでも納得しない場合は最終的に裁判ということになります。
裁判では主に「立ち退きの正当事由の有無」や「それを補完するための立ち退き料の額」が見られることになります。
これらの内容を裁判官が見たうえで下される判決は、「○○万円と引き換えに当該不動産を引き渡すこと」といったものか、もしくはそもそも明け渡し請求が棄却されるのかのどちらかとなります。
仮に前者の判決が出ても入居者が立ち退かない場合には、強制執行をすることができます。
5-2.最終的には弁護士を頼ろう
立ち退きの交渉は大家さんが自分で手続きを進めることもできますが、入居者の中に立ち退きに応じない方がいるようであれば、早い段階で弁護士に相談しておくとよいでしょう。
裁判までいかずとも弁護士から法的なアドバイスを受けることもできますし、弁護士が間に入ることで意外とすんなり話がまとまることも珍しくありません。
6.立ち退きを含むアパート経営を相談できるハウスメーカーを選ぶポイント
立ち退きを伴うアパート建て替えは、早い段階からプロに頼って計画を進められると安心です。
大手のハウスメーカーであれば、立ち退きについてのノウハウも心得ており、多面的なサポートが期待できるでしょう。
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