土地の売却を考えているけれど、どのように土地の価格が決まるのか分からない方は多いのではないでしょうか。土地の価格は、公示地価や基準地価、相続税路線価を指標として、そこに土地の強み弱みを加味されて決まります。
この記事では土地の売却を検討している方に向けて、土地の売却価格を決めるために必要な判断材料、査定価格を調べる方法などについて解説します。仕組みを理解して、納得できる売却に役立ててください。
目次
1.土地の売却価格はどうやって決まる?
土地の価格も基本的には、ほかの一般的な商品と同じく「需要と供給」で決まります。しかし、ほかの商品が生産者の意向である程度価格を調整できるのに対し、土地の価格はオーナーの意向だけで決まるものではありません。
例えば、人気のある地域、生活インフラがそろっている便利な地域などにある土地は価格が上がる傾向があります。逆に交通の便の悪い土地や、周辺環境が悪い土地は需要が少ないので安くなりがちです。
また、次の章で説明しますが、1年または3年ごとに国や地方自治体によって税金徴収の基準になる土地価格は見直されます。
このように、土地の価格は周辺の環境や社会情勢の変化によって変動します。誰かが決めた確実な金額があるわけではありません。
とはいえ、「決まった金額がないなら売主が勝手な金額をつけてもいい」わけではありません。近隣の似た条件の土地と比較して、売り出した価格が高すぎた場合は買い手が現れないでしょう。逆に安すぎる金額をつけてしまうと、土地はすぐ売れるかもしれませんが、売主は大きな損失を被ることになります。
そのため、土地を売りたい売主は、自分の土地の「相場」を把握して、高すぎたり安すぎたりする価格をつけないように注意する必要があります。
自分の土地の相場を知るには、不動産のプロである不動産仲介会社や鑑定士に依頼するのが最も確実でおすすめですが、基本的な知識として「売却価格が決まるまでにどういう要素がかかわっているのか」、次の章で説明しますので、知っておいていただきたいと思います。
2.土地を売却するときの4つの「価格」
土地を売主が売りに出す際、最初につけた価格で売れるかどうかは、実際に売れてみないと分かりません。ここでは簡単に「売り出すときの価格のつけ方とその一般的な呼び方」を紹介します。
2-1.査定価格
査定価格とは、土地の「相場」(市場の取引状況)や土地の特性などを調査して算出する価格です。「不動産情報として提示したときに、このくらいの額なら売却できるのではないか」という予想額ともいえます。
不動産会社は査定価格のために、簡易査定や訪問査定を行い、周辺の土地価格などを慎重に加味して判断します。土地オーナーは、査定価格を土地の希望売却価格の指標とするのが一般的です。
ただし、不動産会社によって微妙に金額が異なる場合があります。また、不動産会社が得意としない地域の場合などは査定の信用度が低くなることも考えられます。査定は必ず、複数の不動産会社に依頼するようにしましょう。
2-2.希望売却価格
査定で示された土地価格を元に、オーナーの意向も加味して売りたい価格を決めます。これが希望売却価格です。
売主が「査定額よりも高く売りたい」と希望する場合も当然あり得ます。反対に、「早く売りたいから」と査定額よりも低い価格を希望する場合もあります。
売主の都合で査定価格より高めに設定しても問題ありません。ただし、近隣の似た条件の物件と比較してあまりに高い場合は、買い手がまったくつかない場合もあり得ます。
なお、「どのくらいの期間内で売却したいのかと」いう点は、希望売却価格の設定にも影響を及ぼします。
一般的には「できるだけ高値で売りたい」と考える所有者が多いため、当初は査定額を基にして少し高めの価格を設定し、一定期間売れない場合は価格の見直しをする(値下げ)……という流れになります。
最初の価格の設定、価格の見直し時期などについて見極めることは難しいため、信頼できる不動産会社と話し合いながら進めることが大切です。
2-3.売り出し価格
売り出し価格は、広告に掲載される、実際に売り出される価格です。
買主と交渉になった場合に値引きを打診されることもあるため、値引きを念頭に置いたうえで設定する必要があります。不動産会社に相談しながら決めましょう。
2-4.成約価格
買主との値引き交渉などを経て、最終的に売主買主双方が合意し、売買契約が成立した価格が成約価格になります。
実際にここまでの手順を経ないと、成約価格がいくらになるかはわかりません。ふたを開けてみたら、希望売却価格よりはるかに安くなってしまった、ということもあることは心にとめておきましょう。
3.売却価格の指標となる「土地の価格」
1章で説明したとおり、土地の売買は「その土地の価格」と「相場」に基づき行われます。
この場合の「土地の価格」とは、国や都道府県、市町村、不動産鑑定士などが出している「指標」です。これらをもとにして、実際の「土地の価格」は需要や人気などさまざまな要素も考えられたうえで「相場」が決まります。
売主はそれらの価格を参考に、不動産仲介会社と相談しながら「この価格で売りたい」「この価格なら売ってもいい」と思う売却価格を決めて売り出します。そして、最終的に売主と買主双方の合意のもとに成約となります。
ここでは、売却価格の参考、指標となる「土地の価格」を表す言葉を見ていきましょう。
用途 | 価格目安 | 決定機関(所管) | 評価基準日 | 公表日 | |
---|---|---|---|---|---|
(1)公示地価 | ・公共用地取得価格の算定基準 ・一般の土地の取引価格の指標とされる |
実勢価格の約90% | 国土交通省 | 毎年1月1日 | 3月下旬 |
(2)基準地価 | 公示地価と同じ | 公示地価とほぼ同じ | 都道府県 | 毎年7月1日 | 9月中旬以降 |
(3)相続税評価額(路線価) | 相続税・贈与税の算定基準価格 | 公示地価の約80% | 国税庁 | 毎年1月1日 | 7月1日 |
(4)固定資産税評価額 | 固定資産税・不動産取得税・登録免許税等の算定基準価格 | 公示地価の約70% | 市町村 | 1月1日※3年に一度見直し | 3月~4月頃 |
(5)実勢価格(時価) | 一般の土地の実売価格平均値 | 公示地価の約1.1倍~1.2倍 | 各取引当事者 | 都度 | ― |
(6)鑑定評価額 | 不動産鑑定士による鑑定価格 | 総合的な判定による | 各不動産鑑定士 | 都度 | ― |
3-1.公示地価(公示価格)
公示地価とは、地価公示法に基づき毎年1月1日を基準日として国土交通省が調査、公表している標準地1平米当たりの土地の価格です。毎年3月下旬頃に国土交通省から発表されます。
公示地価は、不動産取引が正常に進められるために指標として活用されるもので、複数の不動産鑑定士が鑑定を行います。公的な機関が土地買収を行う場合は、この公示地価を規準に取引が進められます。
3-2.基準地価(基準値標準価格)
基準地価とは国土利用計画法に基づき、各都道府県が毎年7月1日時点における「基準地」の価格を調査、9月中旬以降に公表される土地の価格です。基準となる地点は、用途地域別に1平米当たりの価格で示されます。
基準地価も公示価格と同じく、不動産取引が正常に進められるための審査基準価格とすることが目的です。公示地価を補完するものとしても使われます。
3-3.相続税評価額(路線価)
相続税評価額は一般的に「路線価」とも呼ばれ、相続税や贈与税を計算する基準として用いられます。公示地価、不動産鑑定士による鑑定評価額、売買の実例価格などを基に毎年1月1日時点の路線価を基準として、8月頃に国税庁から公表されます。公示地価の約80%となっています。
相続税路線価は国税庁の路線価図でエリア別の情報が確認可能です。
国税庁「路線価図・評価倍率表」
3-4.固定資産税評価額
固定資産課税額を計算する基準となる土地や建物の価格です。固定資産税評価額は、あらかじめ決められた評価基準に沿った調査の上、各市町村が決定します。公示地価の約70%となっていることが一般的です。
固定資産税評価額を決定する基準になっている国の固定資産評価基準は3年に1度見直されます。
3-5.実勢価格(時価)
実勢価格とは、実際に過去に行われた不動産の取引価格の平均値になります。「時価」とも呼ばれます。土地によりますが、公示地価の約1.1倍~1.2倍が一般的とされています。
3-6.鑑定評価額
鑑定評価額とは、不動産鑑定士が鑑定した価格です。一般的な市場取引の価格を考慮しながら、公示地価、基準地価、路線価、固定資産税評価額なども参考にして、立地条件や需要、収益性などを総合的に判断し客観的に価格を算定するものです。不動産鑑定士により金額は多少異なります。
なお、上記のうち「(1)公示地価」「(3) 相続税評価額(路線価)」「(4) 固定資産税評価額」「(5)実勢価格(時価)」の四つを「一物四価(いちぶつよんか)」と呼びます。
それぞれの指標となるものを調べる方法を知りたい方はこちらもご確認ください。
4. 土地の売却相場を調べる方法
ご自身の土地の「相場」を知るために、ここまでに見てきた「土地の価格」を調べる方法をご紹介します。
4-1.不動産会社等が提供する情報
不動産のポータルサイトなどでは、実際に取引されている不動産売買価格を見ることができます。ご自分が所有する土地の近くにある、似たような条件の土地がどのくらいの価格になっているか、参考にできるでしょう。
ただし価格を調べるときは、似ていても土地の条件はひとつひとつ違うこと、売買価格には売り主の「希望価格」も反映されていることをあらかじめ考慮してください。
4-2.公示地価
公示地価は実勢価格の約90%とされています。国土交通省のサイトに「地価公示」が掲載されており確認が可能です。
ただし、公示は評価する基準点が限られていますので、所有する土地が評価の対象地点になっていないケースもあります。
4-3.固定資産税評価額
毎年、市町村から送付される固定資産税納税通知書には、所有する土地、建物ごとに固定資産税評価額の明細書が添付されます。明細書の「固定資産税評価額」の欄に記載された額を参考にしてください。
固定資産税評価額は一般的に、実勢価格の約70%とされています。
5.土地の価格に影響する要素や条件
土地の価格を決めるときには、個別の土地の特性も大きく影響します。土地の価格に影響する要素や条件を簡単に紹介します。
5-1.立地条件
乗降者数の多い駅が最寄り(徒歩10分圏内)、バス停が近い、スーパーやドラッグストアなど日常生活の買い物に便利であること、学校などの教育機関や病院や役所など公共機関が近いことなどの「立地条件」は土地の価格に影響します。
5-2.面積・地形
極端に狭い土地は一般的な住宅が建てられないこともあり、売りにくくなります。また、あまりに広すぎる土地も活用しきれない面があるため、分割して整地するなどの方法がとられます。
形状も重要なポイントです。三角形など変形的な土地よりは、一般的な四角形の土地のほうが有利とされます。
また、道路との接し方も重要です。建築基準法で定められている道路に接していない場合、建物を建てられないケースもあり、売りにくい土地になります。
5-3.需要
一見して「駅に近い」など立地条件が良いとされる場合でも、土地そのものの需要がない地域であれば売りにくく、価格は下落傾向になります。
6.まずは土地の査定から始めよう!
土地の査定額には会社によって差があります。複数の会社に依頼することが望ましいですが、自分でひとつひとつ依頼するのは手間がかかります。
そこで、価格を設定する準備として、「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」での土地の査定をおすすめします。
「不動産売却 HOME4U」は、全国どこでも対応している一括査定サービスです。優良な大手不動産会社から地元密着不動産まで登録されており、ご自分に合う不動産会社を選ぶことができます。
「不動産売却 HOME4U」の一括査定サービスを利用すれば、1度の申し込みで複数の査定額を比較できます。ぜひご利用ください。
まとめ
土地の価格の指標となるものや、価格に影響する要件、土地相場の調べ方などにについて解説しました。
土地売買を進めるためには、相場をしっかりと把握したり、土地の価格の指標となるものをそれぞれ比較したりと考えることがたくさんあります。ご自分だけで売買を進めるには難しい点もありますので、親身になってくれる不動産会社と話し合い、最適な土地売買へとつなげてください。
この記事のポイント まとめ
さらに詳しい決まり方の解説は「1.土地の売却価格はどうやって決まる?」もご一読ください。
- 公示地価
- 基準地価
- 相続税評価額(路線価)
- 固定資産税評価額
- 実勢価格(時価)
- 鑑定評価額
それぞれの解説は「3.売却価格の指標となる「土地の価格」」でしています。
- 立地条件
- 面積・地形
- 需要
こうした要素が土地の強みになり弱みになります。詳しくは「5.土地の価格に影響する要素や条件」で解説しています。
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