
近い将来、不動産の相続をすることになりそうな方、いずれは所有する不動産の相続について考えなくてはならない方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
不動産相続には税金に関わる問題が関わってきますが、資産のある人ほど準備すべきことも多くなります。不動産の相続が起きた際、できるだけ資産を減らさずに相続人の税負担も軽くするため、
- 相続前より豊かになる不動産相続の考え方
- 不動産相続を含む相続の手続きスケジュール
- 不動産相続で不動産を分割する4つの方法
- 土地・建物・マンション別 不動産相続で知っておくべきこと
- 不動産相続でできる4つの節税方法
を説明します。
Contents
1.「相続前より豊かになる」ためには?不動産の相続の考え方
本章では、「不動産相続を行った後に、家族(相続人)が相続前より豊かになる」ことを目的として、今お持ちの不動産の活用方法を説明します。
相続は人が亡くなったところから開始されます。財産の多い少ないに関係なく相続は開始されます。例えば、実家という「家」はほとんどの方にあると思いますので、「家」の相続をするには以下のような考え方があり、どれを選択しても家族がより幸せに豊かにあるのであれば、どれも正解と言えます。
ただ漫然と相続するのではなく、相続した不動産を活用して資産をさらに増やす「活用方法」をここでおさえておきましょう。
1-1.相続人の誰かが住む(そのまま不動産として遺す)
相続人の誰かが不動産(住居として使う建物が建っているもの)にお住まいになり、適切な修繕などをしながら次の世代に連綿と受け継いで行く方法です。
どこかで大きな建て替えやリフォームの必要は出てきますが、ずっと「家」という形のまま子孫に受け継がれていくスタイルです。
1-2.リフォームして賃貸に出す
相続する際に、家を賃貸用にリフォームして入居者から収益を得る方法です。
相続をするご家族がすでに自宅を持っている、海外に住んでいるなどの理由で、その家に住むことが出来ない場合に有効な手段です。
1-3.賃貸アパートやマンションを建築する
ある程度の土地面積などの条件が必要にはなりますが、相続した土地に賃貸アパートやマンションなどを建築して収益を得る方法です。複数戸ある場合は、そのうちの一部を相続するご家族の名義にして住む・貸すなどの選択肢があります。
1-4.売却して現金化する
お持ちの家を土地建物ごと売却して現金化する方法です。
ただし、一度手放した不動産は再び手に入れることはかなり難しいです。土地などの不動産は、持っているだけでは価値を生みませんが、活用することで継続して利益を生み出す資産となります。また後述しますが、現金よりも不動産や、さらに賃貸物件のほうが評価額は低くなるため相続税対策になります。そのため売却は慎重に検討することをおすすめします。
このように、例え家一つでも、様々な方法と相続した不動産の活かし方、使い方が出てきます。不動産相続が始まってしまった後でも、これらの方法を念頭に入れた相続人同士での話は可能です。
2.不動産相続を含む相続の手続きスケジュール
本章では、相続が起きた時、どのようにして不動産相続が進行していくのかを、簡単なスケジュール形式でまとめました。相続がすべて終わるまでに確保された時間は10か月です。相続には納税期限があるのでスケジュール把握はとても大切です。
2-1.死亡届の提出
亡くなってから7日以内に死亡届を提出します。手続き先は亡くなった方の住所がある市町村役場で、死亡診断書としたい検案書と共に提出します。
2-2.相続人の確認
相続人が何人いるかを確認します。亡くなった方の戸籍謄本を、生まれたときから亡くなるまで取得すると、全相続人が明らかになります。亡くなった方が引っ越しを繰り返している場合、戸籍謄本の取得に時間がかかることがありますので、1の死亡届とほぼ同時に始めます。
2-3.遺言の確認
遺言書の有無を確認します。たいていの場合、遺言書は自宅のどこかに保管してあります。
弁護士・公証人役などの公的な機関に控えの保管がある場合でも、正本は本人が持っています。だだし、生前に遺言書があることを周囲に伝えないケースもあるので、とりあえず仏壇・銀行通帳などが保管されている場所・金庫・本棚などを確認してみましょう。
遺言書が見つかっても相続人が全員揃うまでは開封しないようにします。遺言書には普通方式と特別方式があり、ほとんどの人は普通方式を選択しますが、普通方式の中にも自筆・公正証書・秘密証書の3種類があり、最も多くの方が採用する自筆の場合、遺言書を書いたときに証人や立会人が不要なため、写しがありません。
そのため、万が一、相続人全員が揃わないうちに開封してしまうと、後々、財産の按分でもめたときに、遺言書の改ざんやすり替えがあったのではないかと嫌疑をかけられる可能性があります。
2-4.財産確認と相続放棄
相続=財産というイメージがありますが、実際には、負債の相続もあります。そのため、まずは相続するものから、プラス財産とマイナス財産とを把握します。相続税の対象となる財産は、亡くなった方が持っていた「お金に換算できるものはすべて」対象になります。
プラスの財産 | マイナスの財産 |
---|---|
・土地家屋などの不動産(借地権含) ・特許権・著作権 ・事業用(農業用)財産 ・有価証券 ・家庭用の財産(家財道具) ・貴金属と宝石 ・書画骨董 ・電話加入権 ・預貯金と現金 ・車や船舶 |
借入金 買掛金 未払い金 損害賠償 連帯保証 |
また、みなし財産として以下のものも課税対象になります。
- 死亡保険金
- 死亡退職金
- 年金などの受給権
- 信託受託権
- 贈与税の納税猶予を受けた非上場株・農地
- 債務免除(遺言にあった場合)
- 相続時精算課税制度を選択した場合の贈与財産
これらすべての財産を確認の上、相続することで相続人に大きなマイナスが発生する場合には相続放棄も選択肢に入れます。相続放棄は3か月以内に行う必要があります。
2-5.所得があった場合は準確定申告をする
生前に所得が発生していた場合は、準確定申告をして納税をする必要があります。これは相続人のどなたかが行います。期限は所得があったことがわかってから4か月以内です。
2-6.財産評価・遺産分割協議・名義変更など
財産評価は原則として相続開始時の時価で決まります。時価とは、多くの方が通常取引をする時、売買が成立すると考えられる価格のことです。
例えば、不動産の場合は、おおむね以下の方式で時価が決まります。
宅地 | 市街地は路線価方式 |
---|---|
郊外は倍率方式 | |
貸地 | 宅地の価格-借地権 |
私道 | 不特定多数の人が通行するところ=0 |
その他私道=通常評価額×0.3 | |
建物 | 貸家 固定資産税評価額×(1-借地権割合) |
その他 固定資産税評価額×1.0 | |
借地権 | 宅地の価格×借地権割合 |
借家権 | 家屋の価格×借家権割合 |
【参照】国税庁「財産の評価」
全ての不動産の財産評価をしたのち、法定相続人で遺産分割を話し合い(遺産分割協議)をしたうえで相続内容を決め、不動産の名義変更手続きをします。
2-7.相続税の申告と納税
相続税の申告書を記入し、相続開始から10か月以内に納付を済ませる必要があります。相続税額は各個人が何を相続したかによって変わりますので、税理士または市区町村の税務無料相談窓口で確認しながら進めてください。
【参照】国税庁 「相続税の計算」
3.不動産相続で不動産を分割する4つの方法
不動産は現金のように1円単位に細かくすることが出来ないため、不動産相続の場合は以下の4つの分割方法から選びます。
これらの話し合いは「遺産分割協議」で行います。相続人全員が納得したのであれば、どの分割方法を選択してもかまいません。
方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
3-1.現物分割 | 不動産が残る | 均等に分割しづらい |
3-2.代償分割 | 不動産が残る 分割しやすい |
代表が多額の代償金の用意をする |
3-3.換価分割 | 固定資産税や管理が不要になる | 不動産が残らない すぐ売れるかはわからない |
3-4.共有する | 不動産が残る | 相続人同士が、管理や売却でもめる可能性あり |
3-1.現物分割(現物のまま遺産を相続人で分ける方法)
不動産を現金には変えず、「そのままの形で分割」する方法を現物分割と言います。
例えば親の残した土地とマンションが一つずつある場合、相続人である兄弟2人でそれぞれを相続するケースがこれにあたります。
ただし、土地の価値には差があるため、不平等になりやすいというデメリットがあります。
また不動産が複数ある場合なら兄が実家、弟は別荘と駐車場などの分け方が考えられますが、不動産が一つしかないのに相続人が複数いる場合、この方法は利用できません。
なお、不動産が「土地のみ」の場合には「分筆」(土地を切り分けて相続させる)という手段があります。
3-2.代償分割(誰かが代表して相続した後に、現金で分配をする方法)
不動産を相続人の一人が代表して相続し、その方が他の相続人に対して、法定相続割合に応じた金額を現金で渡す方法を、代償分割と言います。
この方法は分割しにくい土地や建物でも公平に数字で分けることが出来るため、比較的不公平感の出にくい分割方法です。
ただし、不動産を代表して相続した方が現金を用意する必要があります。
3-3.換価分割(不動産を売却して現金にし、相続人全員で分ける方法)
不動産を売却して現金に換え、相続人で分ける方法です。相続人が不動産管理をしたくない、固定資産税が負担、などのケースで利用されます。
不動産そのものは売却により無くなってしまいますが、現金化したことで正確な分配が出来るようにはなります。
ただし、対象とする不動産が希望額で売れるとは限らないことと、不動産の状態によってはなかなか買い手がつかない可能性があります。
3-4.共有(相続人複数の名義にする方法)
相続する不動産を相続人全員のものにして共同で管理・所有することを、共有といいます。
- 残された不動産をどうしたらいいのかが意見がまとまらず、いったん保留にして相続人でよく話し合ってから解決したい場合
- 思い出深い不動産を手放したくない場合
- 相続した後、相続人みんなで使えるようにしたい場合
などは、この方法が向いています。
ただし、前提条件として相続人同士のコミュニケーションが良好である必要があります。
すでに遺産分割協議でもめている場合は、共有となった不動産に関わる管理・税金の支払い・賃貸などすべてのシーンで意見が対立する可能性も考えられます。
4.【土地・建物・マンション別】不動産相続で知っておくべきこと

本章では、不動産相続における土地・建物・マンション別の相続方法と、知っておくべきことをまとめました。
4-1.土地のみを相続する場合
家屋などがなく、土地だけを相続する場合です。
4-1-1.相続方法
土地だけの不動産相続の場合、3章で紹介した4つの分割方法は全て選択できます(状況により使えない方法もあり)。
現金化して分ける場合なら問題は起きにくいでしょう。
土地は法定相続割合と同じ割合で分ける「分筆」という方法が使えますので、現物での不動産相続も可能です。分筆後の各土地は、別個の不動産として使われます。
4-1-2.土地の相続で気を付けること
分筆により土地面積が小さくなりすぎると、その後の使い道が限定され、売却しにくくなる可能性があります。
さらに、土地の値段は接道面やその他条件によって価値が変わりますので、実際に法定割合通りに分筆するのは、人数が増えるとかなり難しいといえます。
また、分配する土地が複数あった場合、すべての相続手続きが終わって数年経ってから地価が変動する可能性もあり、後々、不公平感から相続人の間でトラブルになる可能性もあるでしょう。
【対策】
分筆の際は、土地面積が広大または相続人が少ない場合ならば、分筆後も土地を有効に活用することが出来るでしょう。あまりに一人当たりの面積が小さくなってしまう場合は、他の方法を考えたほうがよい場合もあります。
相続後の地価上昇などは、土地の住所を管轄する市区町村の開発課などで、将来の土地開発や市街化開発地域であるかなどが確認できます。気になる方は遺産分割協議をする前に確認をしておき、その前提があることを相続人間で共有したうえで、遺産分割方法を協議すれば将来の問題を回避することは可能です。
4-1-3.税金
土地を相続すると、相続税以外にも今後は毎年、固定資産税と都市計画税(二つを合わせて固都税とも)が発生します(都市計画税は都市計画事業又は土地区画整理事業に該当する地域のみです)。
例えば、土地を相続してもその土地を有効活用しないのであれば、ただ土地を所有しているだけで毎年、固定資産税を支払い続けることになります。
土地を相続する場合は、固定資産税の支払い負担を含めて、相続した土地を活用できるか視野に入れておきましょう。下記は、固定資産税がどのくらいの負担になるかの例です。
(例)平成30年10月に23区内にて土地相続。土地面積は150平米(約45坪)の場合
- 土地 令和2年度価格 45,000,000円
・31年度(令和元年度)度固定資産税課税標準額 6,750,000円
・31年度(令和元年度)都市計画税課税標準額 14,700,000円
・固定資産税額 99,750円
・都市計画税 22,500円
合計で122,500円*となりますので、不動産相続をした場合は今後、毎年この金額を支払っていきます。
本例は土地だけの計算ですので、上物(建物)がある場合はさらに、建物の分も加算されます。
引用:東京都主税局 「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」
4-2.建物(+土地)を相続する場合
戸建てなど、土地と建物を相続する方法です(以下、便宜上「建物」と記載した場合は「土地つきの建物」の意味とします)。
4-2-1.相続方法
建物を相続する場合、土地のみの場合のように分筆することが出来ません。兄は玄関とリビング、弟は駐車場と2階などの分け方は到底現実的ではありません。
そのため、3章で紹介した4つの分割方法のうち以下の3つの方法で相続することになります。
- 代償分割
- 換価分割
- 共有
(例)3人兄弟が一軒家の実家を不動産相続する場合
- ・代償分割
-
例えば長男が一人で実家を相続し、残りの兄弟2人が法定相続分に相当する金額を、長男から現金でもらう方法です。きちんとお金でわかりやすく支払われるため公平であり、トラブルに発展しにくい方法です。
ただし、この場合、長男は弟2人に支払う現金を自分で準備する必要があります。実家の評価額が大きかった場合はかなりの金額が必要になり、負担が大きくなります。
なお、現金の準備方法に特に決まりはありません。
- ・換価分割
-
親が残した実家の土地家屋を売却し、その売却金額を法定相続分通りに3人で分ける方法です。不動産そのものはなくなってしまいますが、数字でハッキリと1円単位で割り切ることができるため、こちらもトラブルになりにくい方法です。
ただし、本来、不動産として相続をしていれば受けられる相続税特例などがなくなるため、相続税の減額率は少なくなります。
また、売却をしているため、3人兄弟のそれぞれに収入が発生していることになるので、相続税以外にも、所得税が課せられる可能性があります。
特に土地家屋の評価額が高かった場合は、高額の所得税が課せられる可能性があります。一度手放した不動産は、簡単には買い戻すことはできません。また将来的な相続を考えると、現金よりも不動産のほうが相続税の節税が可能です。また、不動産は活用次第では長期的に新たな資産を生み出すことが可能であり、売却することでこの可能性を失うという大きなデメリットがあります。
本当に売却してよいのかどうか、相続人同士で話し合うことをおすすめします。
- ・共有
-
この方法では、土地建物の権利者は相続人全員で平等になります。
例えば相続人の誰かがその不動産について、賃貸をしたい・売却したいなどを希望した場合でも、名義を共有しているため、所有者全員が同意しなければ、何もできません。また、相続人のうちの誰かが死亡したことにより相続が発生した場合は、従前の3人で決めた共有は存続できない可能性があります。
4-2-2.気を付けること
- ・相続人間のトラブル
-
最も気を付けるべきは、相続人が複数いる場合のトラブルです。どの方法を選択しても問題が起きる可能性はあります。特に、被相続人が生前に何の気なしに「お前にこの家をあげよう」などの発言をしていた場合、相続人がそれを鵜呑みにしているケースが考えられます。
このような背景で、さらに遺言書もない場合は、法的には法定相続分で切り分けることができたとしても、心情的には納得できず、遺恨となる場合があります。
【対策】
相続について、被相続人・相続人が元気なうちに、可能な限り事前に話し合いをしておくことです。また、将来、相続での家族親族間の余計なもめ事を避けるためには、遺言書を作成しておき、公証人役場などで保管してもらうことをおすすめします。
- ・配偶者居住権
-
2020年4月1日からは配偶者居住権という、配偶者がなくなった場合、残された方が自宅に住み続ける(基本的に終身)ことが出来る権利が使えるようになりました。
この配偶者居住権を使うと、将来どういうことが起きるのか、老夫婦と息子一人の家族を例にして考えてみましょう。
(例)戸建て住む老夫婦と一人息子(独立して家庭がある)の場合
- 老後資金としての預貯金 2,000万円
- 戸建ての価値 2,000万円
- 合計の資産 4,000万円
ご主人がなくなった場合、残された母親(妻)と息子は上記の遺産を法定相続分として各自1/2ずつ2,000万円相当を相続します。しかし、息子は独立をしてすでに自分の家があるため一緒には住まないとなると、
- 母親が実家を相続すると母親は老後資金がなくなる
- 息子が家を相続すると、母親は住むところがなくなる
ということになります。そのため、配偶者居住権を活用して
- 息子が「配偶者居住権」という負担がついた実家の所有権を持ち
- 母親は「配偶者居住権」で、実家に住み続ける権利を得る
ということができます。この居住権は金額に換算することができ、計算方法は建物の耐用年数や厚生労働省が公表している平均余命などをもとに算出します。
居住不動産の現在価値 - 負担付所有権の価値 = 配偶者居住権の価値
先の例の場合だと、仮に配偶者居住権が1,000万円相当の価値であると判断されれば、法定比率で割り戻し請求ができますので、老後の預貯金として夫婦でためていた2,000万円のうち、1,000万円分を「権利」として母親の手元に残すことが出来ます。
代わりに将来、母親が亡くなった場合は、配偶者居住権は消失し、息子が母親から実家を相続するときには相続税がかかりません。
ただし、不動産相続の際にこの権利を設定すると、途中で不動産を売却できなくなるので注意が必要です(家そのものに任意期間の居住権がついているため)。
そのため、高齢になった親が自宅で自立できなくなり、介護付きホームなどに入居させたい場合でも、実家を売却して資金を作ることが出来なくなります。また権利が消滅するまでは売却できない不動産となるため、権利期間中は不動産価値が下がり、不動産担保価値も下がります。
【対策】
配偶者居住権を使う場合は、相続人同士(例題の場合は親子)で将来設計についてよく話し合っておく必要があります。今が元気でも、将来、後期高齢者になった場合はちょっとしたことで体調を崩してしまう可能性があります。
ただし、この配偶者居住権がついた家の所有者は、この例では息子なので、息子が実家を賃貸に出して収益を得ることはできます。
4-2-3.税金
不動産を相続する場合、相続税以外にも、今後は毎年、固定資産税と都市計画税(固定資産税、または固都税)が発生します。(都市計画税は都市計画事業又は土地区画整理事業に該当する地域のみです)
そのため、建物を相続しても有効活用しないのであれば、ただ所有しているだけで毎年、固定資産税を支払い続けることになります。
不動産を相続する場合は、固定資産税の支払い負担を含め、相続した不動産を有効に活用できるかどうか、視野に入れて計画する必要があります。実際の固定資産税などの税負担額はこちらで確認が出来ます。
【参照】 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
また、相続した不動産が空き家である、または住む人がいなくて空き家になってしまう方で、以下の条件に当てはまる場合は、平成26年に施行された空き家対策特別措置法の「特定空き家」に指定されると、固定資産税が最大6倍になる可能性がありますので注意が必要です。
空き家対策特別措置法の「特定空き家」に指定される条件
- そのまま放置すれば、倒壊の危険性がある空き家
- そのまま放置すれば、衛生上有害となる恐れがある空き家
- 適切な管理がされておらず、周囲の景観を損なう空き家
- その他周囲の生活環境を保つために、不適切な状態である空き家
など、その空き家不動産がある近隣の住人に何らかの迷惑がかかる、犯罪や事故などの原因になる可能性がある、健康被害の原因になる可能性のある家屋
【参照】 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
【参照】 空家等対策の推進に関する特別措置法
【対策】
空き家になっていても特定空き家に指定されないように、定期的に清掃と換気などの見回りをしましょう。不動産を相続された方が忙しく、自分で管理を出来ない場合は、近隣の不動産管理会社にお願いをして、定期点検と見回り監視をお願いするのが良いでしょう。
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4-3.マンションを相続する場合
近年では分譲マンションを実家としている方の割合も増えています。マンションの相続の注意点などを説明します。
4-3-1.相続方法
相続資産のうち不動産がマンションだけで相続人が複数いる場合は、3章で紹介した4つの分割方法のうち、「代償分割」「換価分割」「共有」の3つの方法が可能です。
4-3-2.気を付けること
土地や建物と違い、マンションは築年数が長くなると買い手が付きにくい傾向があります。
土地のみ、または建物付きの土地は、建物が古くなっても土地の地価が大きく下落しない限り一定額が保証されていますが、マンションの場合は区分所有分しか土地の権利がないので、上物査定とほぼ同じ扱いになります。
マンションを賃貸に出す場合、経年により設備が劣化すると借り手が付きにくくなります。スケルトンにしてその部屋だけをリフォームすることはできますが、マンション全体の配管配線などは自力で変更できないため、大規模修繕を期待するしかありません。
しかしながら、分譲マンションは修繕積立費なども高額なところが多く、さらに敷地内に積立費用を長年支払わない人がいた場合、資金不足によって修繕は延期になり、更に設備が劣化します。
このような背景から、相続したマンションに入居する予定がない場合は、資産活用の方法として、まずはその物件を人に貸すことを検討してみても良いでしょう。
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4-3-3.税金
マンションの場合でも、固定資産税と都市計画税は、相続税以外に毎年、支払う義務があります。土地家屋と比べると割安ではありますが、所有しているだけでかかる税金であることは同じです。
マンションを相続する場合は、固定資産税の支払い負担を含め、相続した不動産を将来、有効に活用できるかどうかも視野に入れ、活用方法なども早くから検討しておきましょう。
5.不動産相続でできる4つの節税方法
本章では、相続が開始してからでも使える不動産相続の4つの節税方法をまとめました。
5-1.不動産の評価を下げる
不動産評価を下げて納税額を減らすには、一般的には以下のような方法があります。
5-1-1.人に貸す
不動産を相続した場合は、不動産の「評価額」を計算し、そこから債務等の金額を差し引いて、遺産額を算出します。
一般的に賃貸経営が相続税の節税効果が高いと言われるのは、賃貸住宅が更地などに比べ「評価額」が大幅に下げられるためです。
例えば以下の図のように、家屋は人に貸すことで貸家建付地となり、それだけで不動産の「評価額」が20%近くダウンします。
画像引用:不動産を購入すると相続税が減るのは何故?
このため、相続税を節税するために賃貸物件を建てるなどして土地などの不動産を活用することが望ましいでしょう。
【参照】国税庁 「貸家建付地の評価」
土地など不動産の活用方法は、幅広くプロの提案を受けることが大切。複数の土地活用プランの提案を受けるには、「HOME4U(ホームフォーユー)土地活用」が便利です。
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【関連記事】
5-1-2.土地の形などで評価を下げる
不動産会社などに相談し、不動産相続で取り扱う土地に、以下のようなマイナス要因がないかをチェックしてもらいます。
- 袋小路や旗地である
- 土地の形がいびつ
- 私道に面している
土地の評価額は「路線価×面積」ですが、実際の土地面積のうち、すべての部分が利用効率の高い良い土地である可能性は少ないでしょう。例え同じ路線価の土地でも、形などには違いがあり、何らかのマイナス要因があります。そのマイナス要因を使って評価をしてもらい、相続する不動産の価値を下げる方法です。
ただし、実際に不動産そのものの価値を下げてしまうことになるので、売却する場合は価格が下がることになります。
【参照】国税庁 「相続財産や贈与財産の評価」
5-2.等価交換をする
土地と建物では建物のほうが評価額は低くなりますので、持っている土地の不動産価値と同等のものに交換をして評価を下げる方法です。
例えば、持っている土地の大きさや立地が商業に向いている場合は、オフィスビルやマンションなどを建設する企業に土地を提供し、提供したものと等価のものを、企業が建てた建物に取得します。(または企業が提案する等価相当の別の場所の不動産と交換をします)
等価交換は、こちらから提案するケースと企業側から打診があるケースがあり、相続のタイミングなどで声がかかる場合もあります。
ただし、企業側からの打診は、よほど立地が良いなど好条件でなければ難しい場合が多いとされています。
5-3.特例を使う
5-3-1.「小規模住宅等の特例」
小規模宅地等の特例とは、相続で居住用または事業用宅地を引継いだ時に、相続税評価額の80%または50%を減額するという特例です。
適用される宅地と面積には上限がありますが、相続によってこれからの生活に必要な土地を税金の支払いなどで失わないための特例です。小規模宅地等の特例は、
- ・住んでいたところ(居住用宅地)
-
亡くなった人が住んでいた場所で、その人の配偶者や一定条件をクリアしている親族が取得した部分への特例(限度面積:330平米・減額割合:80%)
- ・事業をしていたところ(事業用宅地)
-
亡くなった人やその生計を一つにしている親族が事業をしていた土地で、一定の要件を満たした場合に使える特例(限度面積400平米・減額割合80%)
(例)親と一緒にやっていた八百屋、叔父と父親が一緒に経営していたスーパー
- ・貸していたところ(貸付事業用宅地)
-
亡くなった人と生計を一緒にしていた親族が貸付をしていた土地にも特例が使えます。(限度面積200平米・減額割合50%)
(例)経営している賃貸アパートや駐車場がある土地
また、小規模宅地には宅地だけでなく「借地」も含まれていますので、借地に居住している方、借地で事業を営んでいる方、借地上に借家やアパートを建てている方も、小規模宅地等の特例の対象となる可能性があります。
【参照】国税庁 「小規模宅地の特例」
5-3-2.「配偶者の税減軽減特例」
配偶者だけに使える特例です。
夫婦間の相続には、法定相続分と1億6,000万円を比較したときに、最低でも1億6,000万円までは相続税を課税しないという特例です。少しわかりにくいので、例を作りました。
(例)2億円の財産があるご夫婦の場合
財産総額2億円
配偶者の相続分 1/2=1億円
配偶者への控除額 1億6,000万円
相続分の1億円と控除額の1億6,000万円を比べると、1億6,000万円のほうが多いので、この配偶者の法定相続分には相続税がかかりません。さらに法定相続分の1億円を超えても、1億6,000万円までは、やはり相続税が0円となります。
まとめ
いかがでしたか。
この記事では不動産相続でなるべく資産を減らさずに相続をしていくための考え方、相続が完了するまでの10か月のスケジュール、不動産を相続人で分けるための4つの方法、などを説明しました。
また、すでに相続が始まっている方に対しては、土地・建物・マンションの相続で知っておくべきことと、対策をまとめ、相続税を減らすために今からでも使える節税方法を4つご紹介しました。
これから相続が控えている方も含め、家族にとってベストな選択ができることを応援しています。
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