土地活用の中で、特に難しいのが建築に関する知識です。
大学にも建築学科という専門の学科があるくらいですので、建築は一般の方がすぐに理解できるボリュームでも内容でもありません。
しかしながら、これからアパートを建築しようと検討している方なら、「建築基準法について少しは学習しておきたい」と思うことがありますよね。
建築基準法は、ある程度の範囲であれば、建築学科出身の方でなくても理解をすることは可能です。
そこでこの記事では、「アパート経営に必要な建築基準法」について解説します。
土地オーナーがアパート建築で知ってきたい建築基準法の規制などを紹介しますので、ぜひ最後までおつきあいいただき、ハウスメーカーと建築プランを練り上げる際などに、この知識を活用していただければ幸いです。
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「うちの土地にアパートが建つの?」「いくら儲かるのか知りたい」という方はご活用ください。
1.アパートの建築基準法上の用途は「共同住宅」
アパートは建築基準法上では、「共同住宅」という用途で扱われます。
アパートという用語は建築基準法上には登場せず、共同住宅に関する規制がアパートの規制となります。
共同住宅とは、廊下や階段を共有する住宅のことです。
アパートの他、賃貸マンションも建築基準法上は共同住宅に分類されます。
建築基準法上はアパートも賃貸マンションも区別はなく、同じ規制や緩和を受けることになります。
また、建築基準法では、「寄宿舎」や「長屋」といった分類もあります。
寄宿舎とは、玄関、キッチン、トイレ、浴室等が共用で、寝室だけ個別に分かれた建物のことです。
シェアハウスや学生寮が寄宿舎に相当します。
長屋とは、廊下や階段を共用しない独立した住戸が集まった住宅のことです。
「タウンハウス」や「テラスハウス」と呼ばれる住宅が長屋に該当します。
寄宿舎や長屋は共同住宅とは異なるため、それぞれ異なる規制を受けます。
そのため、例えばアパート(共同住宅)を建てた後に、そのままシェアハウス(寄宿舎)にすることはできません。
共同住宅を寄宿舎にするには、各部屋の間仕切りを準耐火構造にする等の大掛かりな改修工事が必要となります。
2.アパート建築で知ってきたい建築基準法の規制
ではここから、「アパート建築で知ってきたい建築基準法の規制」について、解説していきます。
この章で紹介するのは、以下の10項目です。
- 確認申請
- 単体規定と集団規定
- 居室の採光
- 耐火建築物
- 接道義務
- 建ぺい率
- 容積率
- 建築可能な用途地域
- 絶対高さ制限
- 防火・準防火地域
それではひとつずつ見ていきましょう。
2-1.確認申請
アパートは、確認申請が必要な建物です。
確認申請とは、着工前に行う設計図面の審査のことを指します。
アパートは、建築基準法上、共同住宅に分類されています。
共同住宅は、建築基準法では確認申請を要する「特殊建築物」に分類されます。
特殊建築物は、床面積の合計が100平米を超えるものに関しては、建築主(発注者のこと)に確認申請が義務付けられています。
特殊建築物には、その他として学校や百貨店、旅館等が該当し、多くの人が利用する建物が特殊建築物に分類されています。
建築主(発注者)には確認申請の義務がありますが、実際には設計者が代理で確認申請業務を行ってくれます。
アパートを着工する前は、設計者に様々な書類に押印を求められますが、これらは基本的には確認申請のための書類です。
建築確認申請の申請先は、建築主事のいる役所または指定確認検査機関になります。
建築主事とは、確認申請業務を行う役人のことです。
指定確認検査機関は、国や都道府県から指定を受けた確認検査業務を行う民間会社になります。
確認申請は、図面上のチェックになります。
図面上、合法的な建物であると判断された場合には、確認済証が下り、建築に着工することができます。
尚、竣工時には本当に確認申請通りの建物が建ったかどうかの竣工検査があります。
竣工検査に合格すると、「検査済証」を受領します。
検査済証は、合法的に建物が建っていることの証となる重要な書類です。
受領した検査済証は、必ず大切に保管するようにしてください。
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2-2.単体規定と集団規定
建築基準法には、「単体規定」と「集団規定」の2種類の規定が存在します。
「単体規定」とは、全国一律に制限される規定のことです。
単体規定は、個々の建築物に着目し、安全性や衛生、防火性能等について一定の水準を確保することを目的に定められた規定になります。
それに対して、「集団規定」とは、原則として「都市計画区域」および「準都市計画区域内」に限り適用される規定のことです。
集団規定は、集団としての建築物に着目し、良好な都市環境を確保することを目的に定められた規定になります。
「都市計画区域」とは、都市計画法により定められた一体の都市として総合的に整備し、開発し、および保全する必要がある区域のことです。
主に一定数以上の人口が住んでいるエリアが都市計画区域に該当します。
「準都市計画区域内」とは、都市計画区域に準ずる区域のことであり、乱開発を防止することを目的に定められた区域になります。
集団規定は、以下のような制限が該当します。
- 道路に関する制限
- 用途制限
- 建ぺい率・容積率の制限
- 高さ制限
- 防火・準防火地域内の制限
集団規定は単体規定よりも厳しい内容のものが多くなっています。
アパート経営は、人が比較的多く住む地域で行うことが一般的であるため、集団規定が適用される都市計画区域で行うことが多いです。
2-3.居室の採光
共同住宅のように居室がある住宅では、「居室の採光」の規制があります。
建築基準法では、居室は原則として採光のための窓その他の開口部を設け、採光に有効な部分の面積を床面積の一定割合以上のものとしなければならないとしています。
住宅の場合、採光に有効な面積の割合は床面積の7分の1以上です。
採光が採れない部屋は、入居者の募集広告でも「居室」と謳うことができず、「納戸」と表記されます。
たまに、見た目上は「3LDK」なのに「2LDK+S」と表記されている物件があります。
Sとはサービスルームの略で「納戸」のことを指します。
一般的に、納戸は暗い部屋のイメージを与えてしまうため、納戸部屋を作ってしまうことはアパート経営上好ましくありません。
アパートを計画する上では、採光を取れるように部屋の位置を配置し、全て居室表記ができるような設計プランを描いてもらうことがポイントです。
2-4.耐火建築物
共同住宅は、「特殊建築物」に該当します。
建築基準法では、特殊建築物で一定の要件に該当するものは「耐火建築物」または「準耐火建築物」にしなければならないという規定があります。
「耐火建築物」とは、火災が自然鎮火するまでの間、放置されても倒壊するほどの変形や損傷がなく、延焼もしないで耐えることができる建築物のことです。
「準耐火建築物」とは、耐火建築物ほどの耐火性能はないが、火災時に一定時間、倒壊や延焼を防ぐ耐火性能を持つ建築物のことを指します。
共同住宅の場合、耐火建築物としなければならない一定の要件とは「3階建てで3階が共同住宅」の建物になります。
つまり、3階建てアパートを建てる場合は、耐火建築物としなければならないということです。
ただし、アパートの場合、建築材料に木造を用いることもありますので、「木造3階建てアパート」というのも考えられます。
木造3階建てアパートは、建築基準法では「木造3階建て共同住宅(通称:木3共、モクサンキョウ)」として特別な規定があります。
木3共の主な制限は下表の通りです。
制限項目 | 制限内容 |
---|---|
延床面積 | 防火地域・準防火地域以外では3,000平米以内、準防火地域では1,500平米以内 |
主要構造部 | 耐火性能は1時間準耐火構造とする |
避難上有効なバルコニー | 各住戸に避難上有効なバルコニーを設置する |
3m空地の確保 | 道に接する面および居室の開口部がない面を除き、建物の周囲に3mの空地を確保するか、上階への延焼防止を施した上で避難上有効なバルコニーと解放廊下階段、防火設備を設ける |
準防火地域内の場合 | 3階の各住戸の外壁開口部に防火設備またはスパンドレルを設ける |
木3共を建てる場合、「3m空地の確保」という大きな制限があります。
木3共を上空から見たイメージは以下の通りです。
木造以外の鉄骨造等であれば木3共の制限を回避できるため、敷地を広く使うことができます。
ですので、3階建てアパートを検討する場合には、木造以外の建築材料も検討することがポイントです。
2-5.接道義務
本節からは集団規定の内容になります。
アパート建築に影響を与える規制の一つに、接道義務があります。
接道義務とは、原則として幅員が4m以上の道路に間口が2m以上接していないと建物を建てることができないという規制です。
接道義務は、火災時の消火活動を念頭に置いた規制になります。
前面道路が4m以上あれば、敷地の前に消防車を横付けすることが可能です。
また、間口が2m以上あれば、消防車から消化ホースを敷地内に引き込んで消火活動ができるようになります。
下図のような敷地の場合、A、B、Dの土地は接道義務を満たしているため、建物を建てることができます。
Cに関しては、接道義務を満たしていないため、建物を建てることはできなくなります。
Aのような敷地のことを路地状敷地(旗竿地)と呼びます。
東京都の場合、一定規模以上のアパートは、旗竿地では建築できないという条例があります。
また、前面道路の幅員が4m未満の場合、セットバックを行うことで建築可能な敷地とすることができます。
セットバックとは、原則として道路の中心線から2m後退することです。
セットバックした部分は道路扱いとなり、自由に利用できない土地となります。
2-6.建ぺい率
建ぺい率とは、建築面積の敷地面積に対する割合のことを指します。
建築面積とは、簡単にいうと建物を上から見たときの面積のことです。
建ぺい率は、建築物を上から水平投影したときに、敷地に落ちる陰の部分の敷地面積に対する割合を表しています。
建ぺい率は、敷地内に一定割合以上の空地を確保することで、日照や通風等の環境を良好に保つとともに、防火や避難等の安全性を確保するために設けられている制度です。
2-7.容積率
容積率とは、延床面積の敷地面積に対する割合のことです。
延床面積とは各階の合計床面積のことになります。
建ぺい率が平面的な建物規模を制限しているのに対し、容積率は立体的な建物規模を制限している規定です。
建物の階数は、基本的に建ぺい率と容積率との関係によってほとんど決まります。
例えば「建ぺい率、容積率」が「50%、100%」で指定されているエリアがあるとします。
敷地が300平米あるとしたら、建ぺい率が50%なので建築面積は最大で150平米まで確保できます。
また、容積率は100%なので延床面積は最大で300平米まで建てることができます。
1階あたり150平米とすれば、2階建てにするとちょうど300平米です。
よって、「建ぺい率、容積率」が「50%、100%」と指定されているエリアでは、基本的には2階建てのアパートが建つことになります。
また、「建ぺい率、容積率」は「60%、150%」の組み合わせで指定されているエリアも多いです。
このようなエリアでは、例えば建築面積を敷地面積の50%で抑えると、3階にしても容積率は150%以内で収めることができます。
そのため、「建ぺい率、容積率」が「60%、150%」と指定されているエリアでは、3階建てのアパートを建築することも可能です。
2-8.建築可能な用途地域
用途地域とは、エリアごとに建築可能な用途や規模を制限した規制のことです。
住居系8種類、商業系2種類、工業系3種類の計13種類の用途地域があります。
13三種類の用途地域は、下表の通りです。
分類 | 用途地域 | 内容 |
---|---|---|
住居系 | 第一種低層住居専用地域 | 低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域。 |
第二種低層住居専用地域 | 主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域。 | |
第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域。500平米までの一定の店舗や病院、大学等が建てられる。 | |
第二種中高層住居専用地域 | 主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域。1,500平米までの一定の店舗等が建てられる。 | |
第一種住居地域 | 住居の環境を保護するための地域。3,000平米までの店舗やホテル等も建てられる。 | |
第二種住居地域 | 主として住居の環境を保護するための地域。パチンコ屋やカラオケボックス等も建てられる。 | |
準住居地域 | 道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利用の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するための地域。 | |
田園住居地域 | 農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域。 | |
商業系 | 近隣商業地域 | 近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業等の利便を増進するための地域。 |
商業地域 | 主として商業その他の業務の利便を増進するための地域。 | |
工業系 | 準工業地域 | 主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するための地域。 |
工業地域 | 主として工業の利便を増進するための地域。住宅や店舗は建てられるが、学校やホテルは建てられない。 | |
工業専用地域 | 工業の利便を増進するための地域。住宅は建てられない。 |
用途地域には、建築可能な建物の用途が定められています。
建築可能な建物の用途や床面積の規定は下表の通りです。
アパートは共同住宅ですので、工業専用地域以外であれば建築可能です。
つまりアパートはほとんどの地域で建築できることになります。
用途地域の中で建築規制が厳しいものは、第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域になります。
これらの低層住居専用地域は低層(2~3階)の建物しか建てられないため、例えば5階建て以上の賃貸マンションは建てられないことになります。
賃貸マンションは共同住宅ではありますが、一般的には中高層の共同住宅を指すことが多いため、第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用では賃貸マンションを建てることはできないのです。
アパートは低層住居専用地域でも建てられることから、比較的どこでも建てやすい建物であるといえます。
2-9.絶対高さ制限
用途地域の中で、第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域においては、「絶対高さ制限」が設けられています。
第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域で定められる絶対高さ制限は、「10mまたは12m以下」です。
建ぺい率と容積率は、建築面積と延床面積を制限しているだけであるため、建築面積を広くすれば階数が少なくなり、建築面積を狭くすれば階数が高くなる関係にあります。
そのため、建ぺい率と容積率だけの指定だと、低層住居専用地域においても高層建築物が建ってしまいます。
そこで、高層建築物を建てさせないようにするために、低層住居専用地域では絶対高さ制限が設けられているのです。
一般的に住宅の高さは1階あたり3m程度となります。
3階建てアパートを建てる場合、建物の高さは9mとなることが通常です。
例えば絶対高さが10mと指定されているエリアでは、最大でも3階建てアパートまでなら建てられることになります。
2-10.防火・準防火地域
「防火地域」とは、市街地における火災の危険を防除するため定める地域のことです。
「準防火地域」は、防火地域よりも防火規制がやや緩やかな地域になります。
防火地域は、主に容積率の高い中心市街地や主要幹線道路沿いの地域に指定されることが多いです。
準防火地域は、防火地域の周辺を囲むような形で指定されることがよくあります。
防火地域では、地階を含む階数が3以上であり、または延床面積が100平米を超える建築物は耐火建築物とし、それ以外の建物は耐火建築物または準耐火建築物としなければならないとされています。
準防火地域内においては、地階を除く階数が4以上の建築物または延床面積が1,500平米を超える建築物は準耐火建築物としなければならないという規定があります。
防火地域内でアパートを建てる場合は、鉄骨造または鉄筋コンクリート造の耐火建築物で建てることが一般的です。
準防火地域は防火地域以外の地域に該当するため、木3共でも建てることができます。
ただし、木3共では「3m空地の確保」の制限を受けるため、準防火地域も木3共は選択されないことが多いです。
尚、自治体によっては防火・準防火地域以外の地域について「法22条区域」と呼ばれる火災の延焼防止を目的とした地域が定められていることもあります。
法22条区域では、全ての建築物の屋根の不燃化が義務付けられています。
また、共同住宅のような特殊建築物は、法22条区域においては外壁や軒裏などで延焼の恐れのある部分は防火構造としなければならないという規制もあります。
3.最良のアパートを建てるためにやるべきこと
アパート建築は建築基準法だけではなく、都市計画法や各自治体の条例の影響も受けます。
どのようなアパートが建てられるかを知るには、一級建築士の力が必要不可欠です。
ただ、一級建築士事務所に図面を依頼すると、簡単な基本図面だけでも15~20万円程度の費用がかかってしまいます。
そこでおススメしたいのが、ハウスメーカーへの建築プラン請求です。
ただし、ハウスメーカーといっても、アパートに強い企業もあれば、戸建て住宅を中心としている企業もあり千差万別で、一般の人がどの企業に相談したら良いのか判断に迷うこともよくあります。
そんな時に便利なのが、NTTデータグループが運営する「HOME4U(ホームフォーユー) オーナーズ」です。
土地の所在地や広さなどを入力するだけで、アパート建築に対応できる最大10社のハウスメーカーから無料で建築プラン提案が受けられます。
建築プランには、設計図面だけでなく、「建築費」「将来の収益」「ローンや節税効果のシミュレーション」なども盛り込まれ、どのメーカーのアパートが収益性が高いのか、総合的に判断できます。
各ハウスメーカーの優秀な一級建築士の力を借りて、最適なアパート建築プランが選べるようになっていますので、ぜひご利用になってみてください。
4.まとめ
いかがでしたか。
アパート経営に必要な建築基準法について、解説してきました。
アパート建築には専門的な知識を要しますので、ご自身でざっくりと概要を押さえた後は、遠慮せずに専門家の力を借りてください。
「HOME4U オーナーズ」なら、手間なくアパート建築に強いハウスメーカーを見つけ、各社の建築プランの比較をすることができます。
ぜひこの記事で得た情報を活かして、立地を最大限に活かす高収益のアパート建築を実現させてください。
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