建物の構造にはいくつか種類があり、中でも軽量鉄骨造はアパート建築でよく用いられる構造です。法定耐用年数が19年と、他の構造より短いのが特徴ですが、実際に法定耐用年数を超えても賃貸アパートとして運用できることがほとんどといえるでしょう。
一般的にアパートは建物の法定耐用年数を超えるころから建て替えを視野に準備を進めていきます。しかし、軽量鉄骨造の場合は他よりも年数が短く、判断しにくいという方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、軽量鉄骨造アパートの建て替えについて、時期の判断の仕方を解説します。年数だけではない判断方法も紹介するため、経営計画の見通しがしやすくなるでしょう。
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軽量鉄骨造アパートの建て替えの最適築年数は?
築年数以外の判断基準は?
軽量鉄骨造アパートの建て替えの判断基準には以下のようなポイントがあります。
- 空室率が5割を超えた
- 維持管理費が高額になってきた
- 税負担に不安がある
具体的な基準は「時期だけじゃない!軽量鉄骨造アパートの建て替え判断基準」でご確認ください。
アパート建て替え準備開始の時期は?
アパートの建て替えは以下のような流れで進めます。
- 建て替え計画を相談
- プランと会社の選定
- 立ち退き交渉~手続き
- 解体工事
- 建築着工
- 竣工~入居開始
それぞれの始める時期について詳しくは、「【建て替えの流れ】建て替え準備はいつから?」をご一読ください。
目次
1.軽量鉄骨造アパートの特徴と建て替え時期
軽量鉄骨構造は、コストパフォーマンスの良い建物構造としてアパート建築ではよく採用されます。所有の物件が軽量鉄骨アパートであるオーナーは少なくありません。
まずは軽量鉄骨アパートの特徴と特徴から見る建て替え時期の目安を解説します。
1-1.アパートではよく採用される構造
軽量鉄骨造アパートは、木造と比較して耐久性・耐震性に優れ、工場などでプレカットされて現場で組み立てることから品質も安定するなどのメリットがあります。
そのため、大手のハウスメーカーの多くは鉄骨構造の規格アパートをもっています。規格化することにより、ローコスト化が図れるためアパート建築には多く採用される仕組みです。
一方、法定耐用年数が短く鉄骨の特性上サビの懸念があることから、躯体を生かして大規模に新しく変身させるリノベーションには注意が必要です。
1-2.法定耐用年数と実際の耐用年数
建物などには法定耐用年数が定められており、住宅用の建物の中で最も法定耐用年数が短いのは3ミリ以下の骨格をもつ軽量鉄骨造の19年です。鉄骨造はミリ単位で法定耐用年数が変わります。他の構造もあわせて法定耐用年数を以下にまとめました。
構造 | 法定耐用年数 | |
---|---|---|
鉄骨造 | 骨格材の肉厚が3ミリ以下(軽量鉄骨) | 19年 |
骨格材の肉厚が3ミリ超4ミリ以下(軽量鉄骨) | 27年 | |
骨格の肉厚が4ミリ超(重量鉄骨) | 34年 | |
木造 | 22年 | |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
法定耐用年数は、建築費を減価償却する期間(価値のある期間)を定めているもので、建物の寿命の目安にはなりません。実際は、法定耐用年数よりも長寿命であることが一般的です。
1-3.「30年」が建て替えの目安
軽量鉄骨造アパートが実質的な寿命を迎えるのは30年前後といわれています。配管なども寿命となる時期が一致するため、建て替えの目安は30年とするとよいでしょう。
建物は性能を維持するために修繕などが必要です。築年数が増えればそれだけ修繕箇所が増加するだけでなく、設備を刷新するためのリフォームも必要になります。
修繕などにかかった費用が取り戻せるか、が建て替えを検討するうえでのカギになります。修繕の費用対効果が見込めなくなったら建て替えのタイミングです。
2.時期だけじゃない!軽量鉄骨造アパートの建て替え判断基準
アパート建て替えの判断は築年数だけが基準となるわけではありません。建て替えの判断基準となりうるポイントが3つあります。
- 空室率
- 維持管理費
- 税負担
それぞれどのような判断基準となるか詳しく解説します。
2-1.空室率が5割を超えた
アパート経営最大のリスクは空室リスクです。空室率が5割を超える状態になっていたら建て替えを検討すべきでしょう。
空室率が高まると、実は建て替えには有利に働く一面もあります。建て替えのネックとなるのは入居者との立ち退き交渉です。空室が増えれば交渉相手が減り、立ち退き料の負担も軽くなります。
2-2.維持管理費が高額になってきた
築年数がたてばたつほど維持管理費は高額になるのが一般的です。定期的に外壁や屋根のメンテナンスをしなければなりません。退去があれば、居室のクリーニングや修繕も必要です。こうした修繕費用が増えると経営を圧迫し、建て替え費用の自己資金を貯めるのも難しくなります。
維持管理にかかる費用の負担が重くなったと感じるようになったらアパート建て替えを検討する時期といえるでしょう。また、リフォームをした回数も一つの目安です。おおよそ3回目となるリフォームを迎えるころには建て替えを検討すべき時期を迎えています。
2-3.税負担に不安がある
法定耐用年数が過ぎると減価償却期間も終わり所得税計算の際の経費が少なくなるため、所得税負担は増えます。規模があまり大きくないアパートの場合は収入も限られるため、所得税の増加が経営に響くこともあるかもしれません。
減価償却期間が短くなれば、その分1年当たりの減価償却費が多くなります。3ミリ以下の軽量鉄骨造では19年とどの構造よりも短いため、その傾向は顕著です。
そのほか、相続税対策として建て替えを検討すべきケースもあります。相続税は建物も相続財産となりますが、賃貸物件は賃貸割合を評価額にかける計算になるため、空室率が上がれば評価額も上がる仕組みです。
空室率が高く経営が難しい上に評価額も実質より高く感じるアパートを相続するよりも、建て替えて収益性の高いアパートとするほうが相続税対策には有効です。
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3.【建て替えの流れ】建て替え準備はいつから?
アパートの建て替えの準備は立ち退き交渉の期間をしっかり確保しておくことが大切です。
軽量鉄骨アパートの建て替えフェーズをそれぞれ解説します。
マンション建て替えの進め方はこちらの記事もご覧ください。
3-1.建て替え計画を相談
建て替え計画は、ハウスメーカーや工務店に検討の土台となるプランを請求することから始めます。複数のプランをテーブルに並べ、比較検討を重ねて依頼先を絞り込んでいく方法です。
相談先が絞り込めたら、具体的な相談を持ち込みます。2年前をめどに進めるのが理想です。
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3-2.プランと会社の選定
プランを取り寄せて比較検討したうえで依頼先を数社に絞り込んだら、連絡を入れて相談を持ち込みます。
実際に相談をしてみると、プランがブラッシュアップされたり、担当者とのコミュニケーションの取りやすさが分かったりします。要望を受けた最善を導き出せる会社、プランを選定できるよう相談は1社に絞り込まないのが賢明です。
建て替え計画がおおよそ決定する時期としては、2年前をめどにするとよいでしょう。
3-3.立ち退き交渉~手続き
アパートの建て替えで障壁となりがちなのが立ち退き交渉です。できる限り交渉相手を減らすためには、退去後に新たな入居者の受け入れをしないなどの方法があります。2年ほど前からそうした措置をとるとよいでしょう。
立ち退き交渉はどんなに遅くとも立ち退き時期の半年前には始めなければいけません。まずは立ち退きの経緯を書面で伝えることから始めます。その後、口頭で説明と交渉をへて退去手続きを進みます。
交渉の材料としては立ち退き料を用意するのが一般的です。相場は家賃の5、6ヶ月分といわれています。
3-4.解体工事
解体に入る前には近隣へ工事をする旨を伝えます。解体に騒音や振動はつきものです。そうしたことによって懸念が起こった際に事前の対応が役に立つでしょう。
解体工事の期間は、鉄骨造アパートでおおよそ2週間から1ヶ月です。階数が増えればその分工期は伸びます。
3-5.建築着工
アパートの工期は一般的に階数+1ヶ月といわれています。
着工の時点で、建築費の一部支払いが発生します。2階建ての場合、少なく見積もって3ヶ月程度の工期となるため、資金調達については立ち退き交渉と同時進行で進めていく必要があるでしょう。
ハウスメーカーの中には金融機関と提携し、独自のアパートローンを用意している会社もあります。資金調達についても建築計画と併せて相談しておくと安心です。
3-6.竣工~入居開始
竣工後、建築確認などの検査を受けます。問題がなければ引き渡し、入居開始です。
入居者募集は、竣工前に始めます。時期的には着工と同時に始めるのが目安です。建て替えの期間は収入がなくなるにもかかわらず、アパートローンの返済は待ったなしに始まります。無収入の期間をできる限り短くするためにも竣工後すぐに入居が始まるよう準備しておくことが大切です。
4.【軽量鉄骨造アパート】建て替えとリノベーションの費用比較
軽量鉄骨造アパートの建て替え時期に悩む一つの原因となるのがリノベーションか建て替えかの選択ではないでしょうか。本章では、建て替えとリノベーションにかかるそれぞれの費用とその後の収入状況についてシミュレーションしてみます。
4-1.建て替え費用とその後の収支
アパートの建て替えには以下の3つの費用がかかります。
- 解体費用
- 立ち退き費用
- 建築費用
<設定条件>
- 軽量鉄骨造2階建て
- 延床面積:100坪(建て替え前・建て替え後同じ)
- 入居世帯:2世帯
<解体費用・立ち退き費用シミュレーション>
解体費用坪単価:6万円
解体費用:600万円=6万円×100坪
建て替え前の家賃:6万円
立ち退き料:60万円=6万円×5ヶ月×2世帯
<建築費用シミュレーション>
建築費坪単価:85万円
本体工事費用:8,500万円=85万円×100坪
付帯工事費用:1,700万円=8,500万円×20%
諸費用:850万円=8,500万円×10%
合計:1億1,710万円
<収支シミュレーション>
- 1LDKタイプが8部屋のアパート
- 家賃:10万円
家賃収入:960万円=10万円×8部屋×12ヶ月
経費:96万円=960万円×10%
収支:864万円
<利回りシミュレーション>
利回り:約7.4%=864万円÷1億1,710万円
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4-2.リノベーション費用とその後の収支
リノベーションとは、構造を生かして付加価値をつけたリニューアル工事をする、大規模リフォームの一種です。費用は建て替えより少なく済みますが、築年数はゼロにならないため、その後の収益の面では劣ります。
<設定条件>
- 軽量鉄骨造2階建て
- 延床面積:100坪
- 入居世帯:2世帯
- スケルトンリノベーション(全面改修)
<立ち退き費用シミュレーション>
建て替え前の家賃:6万円
立ち退き料:60万円=6万円×5ヶ月×2世帯
<リノベーション費用シミュレーション>
リノベーション費用坪単価:60万円
リノベーション費用:6,000万円=60万円×100坪
合計:6,060万円
<収支シミュレーション>
- 1LDKタイプが8部屋のアパート
- 家賃:8万円
家賃収入:768万円=8万円×8部屋×12ヶ月
経費:76万8,000円=768万円×10%
収支:691万2,000円
<利回りシミュレーション>
利回り:約11.4%=691万2,000円÷6,060万円
リノベーション費用のほうが建築費は安く済む分、当初の利回りは高くなります。ただし、この利回りには減価償却を含んでいません。税負担などをもろもろ考慮すると建て替えのほうが長期的な経営に向いているといえるでしょう。
5.軽量鉄骨造アパート建て替えを相談できるハウスメーカーを選ぶポイント
軽量鉄骨造アパートは法定耐用年数が短いため、建て替えの時期の判断が難しいといえます。資金の調達ができるか、修繕費が経営を圧迫しているかなどを踏まえて検討するとよいでしょう。
検討の際は、プロの視点を取り入れることが有効です。予測が難しい収支計画もハウスメーカー複数社から取り寄せて比較することで、自分に合った対応がしやすくなります。
建て替えを含むアパート経営の今後に悩む方はぜひ「HOME4U オーナーズ」をご活用ください。アパート建て替え、経営サポートの実績をもつ大手企業から無料で一括プラン請求できます。
比較検討の際、
- アパート建て替えの実績が豊富
- 経営サポートに対応している
といったポイントを見極め、長期的な安定経営への道筋を作ってください。
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