建て替えだけでなく、リノベーション・リフォームでも基本的には効果は大きくありませんが相続税対策ができます。
もともとリノベーション・リフォームをやる予定のある方でしたら、相続前に済ませてしまうことが相続税対策になるのでおすすめです。加えて「小規模住宅等の特例」の対象となれば大きな節税効果が得られるので、相続人と被相続人が同居をすでにしている方か、今後同居を考えている方は検討の余地があります。
リノベーション・リフォームでの相続税対策とは?
リノベーション・リフォームで節税するときのポイントは3つあります。
- 相続前に実施する
- 老朽化した部分を元の状態に戻す「原状復帰」のレベルのものにする
- 大規模にする場合は二世帯住宅や賃貸併用住宅にして実家に同居し、「小規模宅地等の特例」の適用を狙う
節税効果のあるリノベーション・リフォームは?
ポイントは「建物の価値を上げない」こと、または「小規模宅地等の特例」に適用させることになります。
- 破損した部分の修繕
- 経年劣化した「付帯設備」の取り替え
- 二世帯住宅へのリノベーション
- 賃貸併用住宅へのリノベーション
節税対策に繋がらない可能性のあるリノベーション・リフォームは?
床面積を増やしたり、壁や柱などを取り壊したりする際は固定資産税が上がる可能性があり、注意が必要です。
- 床面積の増加につながる「増改築」
- 壁や柱など「主要構造部」の変更
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詳しい解説は以下
目次
1.相続税対策としてのリノベーション・リフォームについて
1-1.リノベーション・リフォームを活用した相続税対策の概要
リノベーション・リフォームはうまくやれば相続税を削減する事ができますが、基本的に少額です。
相続税対策の手法として一般的・効果的とは言えません。
ただ、例外的に「二世帯住宅・賃貸併用住宅への間取り変更」といった大規模リノベーションであれば、一定の相続税対策になる場合もあります。
まとめると、「二世帯住宅・賃貸併用住宅への間取り変更」といった一部の大規模リノベーションを除けば、通常の規模のリノベーションは、少し相続税がお得になる位と言えます。
また、リノベーション・リフォームを活用して相続税対策を行方法は以下の2通りです。
- 相続前に、老朽化した部分を元の状態に戻す「原状復帰」のレベルで行う
- 二世帯住宅や賃貸併用住宅にして実家に同居し、「小規模宅地等の特例」を適用できる様にする
以下それぞれ解説致します。
・相続前に、老朽化した部分を元の状態に戻す「原状復帰」のレベルで行う
財産は現金で受け継ぐより、不動産で受け継いだ方が相続税は安くなります。
従って相続前にリノベーション・リフォームを行い、現金を少しでも「不動産の価値」に転換することで相続税を実質的に節税できます。
相続時に少しでも現金を減らしておくことがポイントであるため、相続が発生する前にリノベーション・リフォームを行っておく必要があるのです。
ただ、相続税対策になるのは、老朽化した部分を元の状態に戻す「原状復帰」のリノベーションです。
「原状復帰」を超えて、元々の建物の価値よりも資産価値が向上する様な大規模なリノベーションを行うと固定資産税評価額が上がってしまい、相続税対策としては逆効果になってしまう可能性があります。
従って小さな規模、額しか節税できません。
・二世帯住宅や賃貸併用住宅にして実家に同居し、「小規模宅地等の特例」を適用できる様にする
上記の「現状復帰」を超えるレベルのリノベーションでも例外的に節税できる場合もあります。
実家を二世帯住宅や賃貸併用住宅にして同居し、「小規模宅地等の特例」が適用できるようになると、土地の評価額が80%下がるので大きな節税効果があります。
参照:国税庁ホームページ『No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
1-2.相続税対策としての「リノベーション」と「建て替え」の比較
ここで、建て替えとは何が違うのか検討します。
相続税節税効果で考えれば「建て替え」の方を選択するのが一般的です。
建て替えはかかる金額が大きく、敢えて大きなローンを組むことで相続資産評価を減らし、大きな節税に繋がります。
一方リノベーションはかかる金額も節税できる金額も小さく、「二世帯住宅・賃貸併用住宅」にするための間取り改修等の大規模なもの以外は、相続税対策としてわざわざ検討するレベルのものではありません。
一般的なリノベーション | 建て替え | |
---|---|---|
相続税節税効果 | 低い(大規模であれば効果がある場合も) | 高い |
メリット | ・少額で実施できる ・部分的な改修ができる |
・相続資産評価を減らすことができる ・新しい建物にできる |
デメリット | 建物の価値を上げてしまうと固定資産税の評価額が上がる可能性がある | 固定資産税の評価額が上がる |
費用 | 約10万円〜 | 約1,500万円〜 |
工期 | 約1週間〜3ヶ月 | 約5〜8ヶ月 |
詳しくはこちら
・【徹底解説・想定事例付】一戸建てのリノベーション費用・相場
・【徹底解説・想定事例付】マンションのリノベーション費用・相場
・【基礎から解説】アパートリノベーション大百科 費用・工程・工期も解説
1-3.節税対策になるリノベーションとならないリノベーションについて
これまでにご説明した通り、「原状復帰」を超える範囲のリノベーション・リフォームは相続税節税に繋がらない場合があります。
ここでは節税に繋がるもの、繋がらないものを具体的に例を挙げて説明します。
節税に繋がるリノベーション・リフォーム | 節税に繋がらない可能性があるリノベーション・リフォーム |
---|---|
・破損した部分の修繕 ・経年劣化した「付帯設備」の修繕 ・二世帯住宅へのリノベーション・リフォーム ・賃貸併用住宅へのリノベーション・リフォーム |
・床面積を増やす「増改築」 ・「主要構造部」の変更 |
節税につながる「現状維持」のリノベーション・リフォームがあり、以下の2つはそれに当てはまります。
- 破損した部分の修繕
- 経年劣化した「付帯設備」の修繕
この2つのリノベーション・リフォームは建物の価値を向上させないので、固定資産税が上がらないのがポイントです。
また、例外的に大規模リフォームを通じて「小規模宅地等の特例」にすれば高い節税効果が得られます。
- 二世帯住宅へのリノベーション・リフォーム
- 賃貸併用住宅へのリノベーション・リフォーム
が適用対象となります。
節税につながらない可能性があるので気をつけなくてはいけないものは以下になります。
- 床面積を増やす「増改築」
- 「主要構造部」の変更
リフォーム・リノベーションを節税対策として考えている場合は建物の価値を上げないものにするようにしましょう。
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2.節税に繋がるリノベーションについての解説
以下で、相続税の節税につながる効果的なリノベーションについて、具体例をあげて説明していきます。
- 破損した部分の修繕
- 経年劣化した「付帯設備」の取り替え
- 二世帯住宅へのリノベーション
- 賃貸併用住宅へのリノベーション
2-1.破損した部分の修繕
ひび割れしてしまっている外壁や、雨漏りが生じてしまっている屋根の修理など、破損している部分の修繕は「建物の価値向上につながるリノベーション」とは見なされず、元々の価値を回復させるための修繕」であると見なされます。
したがって、建物の中の壊れた部分に元通りの機能と外観を取り戻しつつ、手元の現預金を減らして相続税の額を減らすことができます。
2-2.経年劣化した「付帯設備」の取り替え
建物自体のリノベーションだけでなく、建物本体以外の水回りの給排水設備や空調設備、ガス設備、照明などといった「付帯設備」の取り替えも、「原状復帰のための工事」と見なされるため、相続税の増加にはつながりません。
例えば、故障したトイレの便器を取り替えるための工事も、こうした「原状復帰のための工事」とされます。
ただし、元々取り付けられていなかったウォシュレット機能を付け加えるなどといった工事をする場合だと、現状復帰の範囲を超えて「建物の価値向上につながるリノベーション」と見なされ、相続税の額が増えてしまう可能性があります。
2-3.二世帯住宅へのリノベーション
少々意外に思われるかもしれませんが、二世帯住宅へのリノベーションは、相続税を大幅に下げられる可能性のある節税手段です。
二世帯住宅にリノベーションし、同じ建物の中で親と子の二世帯が一緒に暮らすと、相続が発生した際に「小規模宅地等の評価減のための特例」が適用されます。
この特例によって「親族間の同居」と見なされることで、自宅の土地の330㎡までなら評価額が80%も減額されることとなり、相続税を節税するうえで絶大な効果を発揮します。
参照:国税庁ホームページ『No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)』
ポイントは、たとえ同じ建物の中で親側の居住部と子側の居住部が互いに行き来できないような造りになっていたとしても、同じ建物の中に暮らしてさえいれば「同居親族」の扱いになるということです。
つまり、玄関を別々にして、お互いのプライバシーを確保しつつ相続税の節税を狙うことも可能です。
2-4.賃貸併用住宅へのリノベーション
親族同士で同じ建物に住む「二世帯住宅」と同じく、自宅の一部を賃貸として貸し出す「賃貸併用住宅」へのリノベーションもまた、「小規模宅地等の評価減のための特例」が適用されます。
こちらも二世帯住宅と同じように、相続人と被相続人が同居していることが条件となります。
特に、賃貸需要が見込める人口密集地であれば、賃貸収入を得つつ、相続税の対策にもなるので一石二鳥です。
賃貸併用住宅の場合、「小規模宅地等の評価減のための特例」で80%の評価減が適用されるのは、自宅として居住している部分です。
一方で、貸家として貸し出している部分についても、「小規模宅地等の評価減のための特例」とは別に、入居者の権利相当分と見なされる借地権割合30%が控除されるので、固定資産税評価額を抑えることにつながり、節税効果を見込めます。
リノベーションの基礎知識についてもっと知りたい方はこちら
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3.節税に繋がらない可能性があるリノベーションについての解説
「建物の価値向上につながるリノベーション」はかえって相続税が増える結果につながってしまう可能性があります。
以下、具体的な例をあげて説明していきます。
- 床面積の増加につながる「増改築」
- 壁や柱など「主要構造部」の変更
3-1.床面積の増加につながる「増改築」
増改築とは、「建物の床面積を増やし、家を広くする」工事のことです。
所有する物件の床面積が増えた際には、不動産登記の変更をする必要があります。
相続税を計算する根拠の一つである、建物の「固定資産税評価額」は床面積に左右されます。
したがって、床面積を増やして建物を広くするような大規模なリノベーションを行うと、建物の固定資産税評価額が増えてしまい、結果としてより多くの相続税が課されてしまう可能性があります。
3-2.壁や柱など「主要構造部」の変更
壁、柱、床、屋根、階段などは、建物の「主要構造部」と定義されています。
これらの主要構造部について、ただ単に劣化した部分を「現状復帰」するための補修を行うだけであれば「建物の価値向上」につながるリノベーションとは見なされません。
問題は、これらの部分の部材について、元々よりも価値の高い材料に交換した場合の扱いです。
より良い材料に交換するようなリノベーションは「現状復帰」の程度を超え、「建物の価値自体を向上させる」リノベーションにあたります。
したがって、主要構造部の部材をより高い価値の部材に変更すると「建物の固定資産税評価額」をあげることにつながり、相続税として課される額が増えてしまう可能性があるといえます。
ただし、規模によっては全く節税効果がないというわけではありません。
大掛かりなリノベーションをした場合の相続税評価額の計算の仕方は以下の通りです。
(リノベーション費用-償却費相当額)×70%
一般的な一戸建ての場合、償却費相当額は低いため、リノベーション費用の70%が相続税評価額にプラスされることになります。
4.リノベーションによる相続税節約額のシミュレーション
ここでは、二世帯住宅へのリノベーション実施によって節税できる相続税の額についてシミュレーションします。
以下の条件で親が死亡して、一人の子(相続人)へと土地、建物、現預金を相続するとします。
- 土地の相続税評価額・・・5,000万円
- 建物の相続税評価額・・・3,000万円
- 土地の面積・・・300㎡
- 土地以外で親(被相続人)が保有する財産としての現預金・・・2,000万円
この場合、相続税額は以下になります。
リノベーションなし:1,220万円
二世帯住宅へのリノベーションを1,000万円かけて実施した場合:265万円
このように、二世帯住宅へのリノベーションを行うことにより、相続を受ける子が支払う相続税の金額を1,220万円から265万円へと、実に1,000万円近くも減らすことができることになります。
利用した計算式は以下になります。
- 基礎控除額=3000万円 +(600万円 × 法定相続人の人数)
- 相続税評価額=土地の相続税評価額 + 建物の相続税評価額 + 現預金の額 – 基礎控除額
- 相続税額=相続税評価額 × 相続税率 − 控除額
- 土地の相続税評価額=(元々の)土地の相続税評価額 × 20%
5.「住宅取得等資金贈与の非課税特例」を活用した相続税対策
ここでは、相続税の節税に並んで重要な「贈与税の節税」につながる「住宅取得等資金贈与の非課税特例」についてお話しします。
この特例は、住宅の購入やリノベーションのための資金を子や孫に贈与することで、老朽化した部分などを現状復帰させるための修繕のみならず増改築を伴うリノベーションの場合であっても節税になる、というものです。
通常、110万円を超える額の贈与については、たとえ親子の間であっても「贈与税」課税の対象となってしまいます。
しかし、子や孫に住宅を購入させたり、お家のリノベーションを行わせたりするための譲渡で一定の要件をみたしていれば、110万円を超えて贈与税が非課税となります。
その限度額は、「省エネ等住宅」の場合は1,000万円、省エネ住宅以外の住宅の場合は500万となります。
「住宅取得等資金贈与の非課税特例」の適用されるためには、100万円以上の大規模な工事であるという要件がありますが、この特例を活用すれば、建物の床を増やすような増改築やより高価な部材を使って建物の価値を向上させるようなリノベーションについても非課税でおこなうことができます。
もし、老朽化した箇所の現状復帰のみならず、建物をリニューアルするような大規模なリノベーションを望むのであれば、この特例の枠を活用するとよいでしょう。
参照:国税庁No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
※「住宅取得等資金贈与の非課税特例」は、令和5年12月31日までの期間限定の制度となっています。
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