この記事では、寮経営を土地活用の方法として検討する際に必要な、「寮のタイプの分類と特徴」「アパート経営との比較」「メリット・デメリット」「建設費」「補助金」といった情報を網羅して解説しています。これを読めば「寮経営」を土地活用方法として選ぶかを決断し、その後の寮建設についてざっくりとイメージする事ができるようになります。

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更新日
2024.05.31
カテゴリ
土地活用, 記事

寮の経営は賃貸ニーズ高め?土地活用で寮建設をする費用と6つのメリット

寮の経営は賃貸ニーズ高め?土地活用で寮建設をする費用と6つのメリット

寮経営を土地活用の方法として検討する際に必要な「アパート経営との比較」「建設費」といった情報を網羅して解説しています。
これを読めば「寮経営」を土地活用方法として選ぶかを決断し、その後の寮建設についてざっくりとイメージする事ができるようになります。

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STEP1
STEP2
この記事のポイント まとめ
寮の種類・タイプは?
  1. 単身赴任タイプ
  2. ファミリーでの転勤寮タイプ
  3. ハイグレード社宅タイプ
  4. 専門施設の職員寮タイプ
  5. 学生寮タイプ

詳しくは「2.寮建設の種類」をご確認ください。

寮建設・経営の土地活用のメリットは?
  1. 家賃滞納リスクが低い
  2. 空室リスクが低い
  3. 収益が長期安定化しやすい
  4. 入居審査がラク
  5. 計画的な経営が可能
  6. エリア条件が悪くてもOK

詳しくは「4.寮建設・経営の土地活用 6つのメリット」をご確認ください。

寮の建設費はいくら?
  • 木造建築2階建ての場合(建坪:100坪):【総計】1億8,870万円
  • 軽量鉄骨造3階建ての場合(建坪:100坪):【総計】2億9,970万円

以上が建設事例で、「6.寮の建設費はいくら?」ではシミュレーション詳細と利用できる補助金についても解説しています。

1. 寮経営には強めの賃貸ニーズがある

もともとの寮とは、会社が自社の資産として保有している敷地に、建物を建てて会社の福利厚生の一つとして、社員に貸し出しているものでした。
「寮」と「社宅」は企業によって呼び名が異なるのみで、福利厚生として、社員に住居を提供するという意味においては、ほぼ同じものです。

しかし2000 年以降、自社で寮を保有していた企業のうち、独身寮で 49.5%、社宅で 58.5%もの寮と社宅が、統合・廃止されています。
また、古くなった寮はそのまま取り壊すなど、年々、減少傾向にあります。
つまり、以前と比べると、自社で寮を持たない企業が増えています。

しかし、会社の経営方法が変わったわけではないため、社員のための住居ニーズ自体は一定存在しています。

寮が必要なのは、転勤が多い企業です。
例えば、金融機関・住宅関連・IT関連・大手飲食・アパレルなどの、全国規模でサービス拠点がある企業には、転勤先に住居が必要になります。

【参考:財団法人労務行政研究所|社宅・独身寮の最新動向

2. 寮建設の種類

寮には以下のようなタイプの種類があり、ご所有の土地の周辺エリアに、どのような企業があるかによっても、建設・経営すべき寮のタイプが違ってきます。

  1. 単身赴任タイプ
  2. ファミリーでの転勤寮タイプ
  3. ハイグレード社宅タイプ
  4. 専門施設の職員寮タイプ
  5. 学生寮タイプ

2-1.単身赴任タイプ

ワンルーム~1LDKほどの、単身者向けの部屋です。
ワンルームとは言っても、学生とは違いますので、仕事を中心とした生活が問題なくできる間取りや設備機能が必要です。

寮は基本的に、風呂・トイレ・ランドリーが共用になります。勤務体制が決まった時間に食事がとれる企業であれば食堂でも問題ありませんが、そうではない場合は、個室には小型のキッチン・電子レンジなどが必要です。

単身と言っても幅広い年齢の方が転勤をしてきますので、学生が使うロフトのような間取りは避けたほうが良いと言えます。

2-2.ファミリーでの転勤寮タイプ

子供が就学していないご家庭では、単身赴任よりもファミリーでの転勤を希望する方が増えているため、ファミリータイプ寮も需要があります。
ファミリータイプの寮は、共用部分は少なく、普通のアパートやマンションを寮(社宅)として提供しています。

ファミリータイプの間取りは、2部屋以上は必要になりますが、間仕切りのある可変性の間取りにしておくことで、子供の成長や家族が増えるのに合わせた部屋にすることができ、腰を落ち着けた赴任ができます。

2-3.ハイグレード社宅タイプ

一般社員だけではなく、役員にも転勤の辞令があります。また、外資系企業の場合は、海外の本社から社員とそのファミリーが日本に転勤してくることもあります。

企業に役員用の社宅規定が特にない場合は、戸建てやハイグレードタイプのマンションを社宅として使うことができます。

基本的に、寮や社宅は、社員の福利厚生として用意されるものですから、設備や性能に関した要望も高めです。
耐震性能はもちろん、知人友人もいない場所で家族の不安を和らげてくれる防犯セキュリティ、使いやすいキッチン設備など、ハイグレードなものから入居者が決まる傾向があります。

2-4.専門施設の職員寮タイプ

病院や研究所などの専門施設は、24時間をシフト交代するタイプの勤務体制が多く、職場の近くに寮がある傾向があります。
敷地内に昔からある宿舎があっても、老朽化によって設備が整っていないケースもあります。

専門施設内には、職員が利用できる食堂や、生活用品が揃う小型のスーパーや売店が併設しているケースが多いため、市街地から遠い場所であっても、あまり生活の不便さが問題になりません。
それよりも、勤務地から徒歩や自転車などで通える「通勤便利」であることが優先します。

2-5.学生寮タイプ

大学生・専門学校生・短大生・浪人生などの学生を入居者の中心としたタイプです。
バス・トイレとキッチンが共同で、入居者は個室で生活をします。寮によっては食堂を設け、食事サービスを付けるケースもあります。2~4年で退去することが前提のため、間取りや設備はとてもシンプルです。

学生寮と学生向けワンルームマンションとの違いは、学生寮はあくまで「寮」という、学生が共同生活をするための場所であるため、寮内に門限などの生活ルールがあります。

学生向けワンルームマンションは、普通の賃貸マンションと同じですので、建物に付属したセキュリティ以外は、自己責任となります。

3. 普通のアパート経営との違いは4つ

本章では、普通のアパート経営と、寮経営との違いを比較しています。同じ賃貸経営でも、以下のような4つの違いがあります。

  1. 法人契約の場合
  2. 個人契約の場合
  3. 建築費
  4. 経営スタートまでの流れ

3-1.法人契約の場合

【アパート経営との違い】

  • (一括借り上げの場合)空室リスクがない
  • 滞納が起きにくい

法人契約とは、オーナーと企業との間で一括借り上げ契約などを取り交わす方法です。借り上げ社宅と呼ばれることもあります。

契約内容は、全室一括借り上げのケースと、50室あるうちの20室のみの部分借り上げなど一棟を企業によって割り振ったタイプの契約もできます。企業の希望によってさまざまです。1室からでも法人契約が可能です。
法人契約は一括借り上げが多いため、基本的に、借り上げてくれている部屋が空室であっても、オーナーには借り上げ分の賃料が、契約期間中は必ず発生します。

一括借り上げで経営する予定の場合は、食堂や大浴場などの良質な共有施設を作ると、福利厚生としてのレベルを高くすることができると同時に、建築コストを抑えることができます。

部分借り上げタイプで経営する場合は、寮契約のない部屋は、シェアハウスとして一般の方と賃貸契約・短期契約などもできるような、設計を工夫しておく必要もあります。

3-2.個人契約の場合

【アパート経営との違い】

  • 法人契約に比べると、アパート経営と違いがない
  • 滞納が起きにくい
  • 入居審査の手間が少ない

寮に個人契約で入るケースもあります。
契約方法は一般の賃貸契約と同じで、不動産会社が仲介をします。
入居者は自分が希望する物件と契約し、その賃料に対して、会社が所定の家賃手当て・住宅手当てなどの名目で給与と一緒に支給します。

この方法は、転勤時期や人数などが一定ではない企業が、一括・部分借り上げによる負担はできないが、福利厚生の一つとして家賃手当て・住宅手当を出すケースで採用しています。

このケースでは、企業内で「寮」や「社宅」と呼ばれていても、建物は共有部分のないアパートやマンションであることもあります。
ただし、建物のスタイルが共用部分の多い寮の方が、建築コストを抑えることができるため、家賃も安く設定できます。

社員は自分が気に入った物件を選び、個人で入居契約をします。
企業によっては、あらかじめ複数の不動産会社と提携し、寮として使う建物をピックアップしておき、その選択肢の中から、社員が部屋を選ぶという方法をとっていることもあります。
この方法では、オーナーも不動産会社を通じて法人営業をかけてもらい、複数の企業と業務提携をすることができるので、自力で空室リスクを回避できます。

オーナーからすると、個人契約であっても、寮として入居してもらう限り、入居者の支払い原資は企業にあるので安心感があります。また、定期的に複数企業からの入退去があるため、空室と滞納が起きにくい経営が期待できます。

学生寮の場合も個人契約になりますが、学生の場合は契約相手が学生の保護者になりますので、審査と契約は保護者が行います。

3-3.建築費

【アパート経営との違い】

  • 集合住宅のセット商品があるためコストを抑えることができる

寮の建設は、一般のアパートやマンションの建築費と比べるとコストを抑えることが可能です。多くのハウスメーカーや建築会社には、プレキャスト・システムハウスなどと呼ばれる、土地の大きさや高さによって、建材と工法が決まった寮などの集合住宅のセット商品があるため、一般のアパート建築よりも、コストは抑えめ、工期も短めになります。

構造はプランにもよりますが、2階までは木造、3階以上は鉄骨造となるケースが多くなります。構造坪単価の高い、鉄筋コンクリート造のマンション形式の寮は、かなりゴージャスな寮と言えます。

総工費は、構造と設計によって変わります。
例えば、一般のアパートであれば、各部屋に水回りが必要になりますが、寮タイプの建物にすれば、食堂・バス・トイレなどの大型の水回りを共同にすることで、各部屋へのキッチンとバス・トイレは不要になり、建築コストを抑えられます。

ただし、共有部分が多い寮にしてしまうと、後から一般の不動産経営に変更したくても、各部屋に水回りの配管がないためできなくなります。

3-4.寮建設から経営スタートまでの流れ

【アパート経営との違い】

  • アパート経営と違いはなく、重要なのは「寮」としてのエリアニーズの調査

・経営スタートまでの流れ

寮を建設して経営スタートするまでの流れは、一般的なアパート経営と大きくは変わりません

どのような建物を、どのくらいの規模で建てるかなどを建築プランで比較し、契約をしたら工事が始まります。
建物の不動産登記などの各種手続きをして、建物が完成したら経営開始です。経営開始の際には、一括借り上げ以外は、入居者募集をする不動産会社に委託をすることになります。

アパート経営開始までの手順

アパート経営と寮経営の違いは、上記フローのはじめにある「経営プランの選定・見積もりの依頼」の段階で「寮」としてのエリアニーズがあるかどうかを精査する必要があります。

賃貸経営は立地によってターゲットが変わるため、例えば、学生用の寮を建てるのであれば、活用予定地の周辺には、大学や短大、専門学校、予備校などがあり、住居を必要とする学生が一定数いるかどうかが重要になります。

・設計上の工夫

また、設計にも工夫が必要です。
一般的な寮として使う建物は、入居者で共有する部分が多く、普通の賃貸住宅とはつくりが違います。
例えば、食堂・キッチン・風呂トイレ・洗濯室・休憩室など、入居者で共有して使う施設が多く、各部屋にはトイレもキッチンもないことがあります。

その分、建築コストを抑えることができますが、企業との契約が終了してしまうと、この建物を活かした形でしか賃貸経営ができないため、普通の賃貸経営をしたい場合には、建て替えが必要となり大きなコストがかかります。

ご所有の土地で寮経営をする場合、どのような寮を建設すればよいのかは、周辺エリアの寮のニーズと、長期にわたる賃貸経営のプランが必要です。

具体的には、なるべく数多くの建築会社にプランを請求し、比較するのが良いでしょう。
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4.寮建設・経営の土地活用 6つのメリット

本章では、寮建設と経営に関した土地活用のメリットを6つにまとめています。

  1. 家賃滞納リスクが低い
  2. 空室リスクが低い
  3. 収益が長期安定化しやすい
  4. 入居審査がラク
  5. 計画的な経営が可能
  6. エリア条件が悪くてもOK

4-1.家賃滞納リスクが低い

寮として部屋を貸し出した場合、家賃の支払い元は、入居者個人ではなく企業です。
借り上げタイプの場合は企業から直接支払いがあり、個人契約タイプの場合は、支払者に家賃支給があります。そのため、入居者がその企業の社員である限り、家賃を滞納されることがありません

企業が自社の寮として使う場合は、10~20年単位での長期契約となることが多く、その期間は契約通りの賃料が振り込まれます。
そのため、入居者が転勤や退職で変わっても、家賃がストップすることも、家賃滞納の心配もする必要がありません。

4-2.空室リスクが低い

一括借り上げの場合は、寮の全室を借りてくれていますので、空室の心配が全くありません
部分借り上げの場合でも、借り上げてくれている部屋数に関しては、空室の心配がありません。

前項でも触れましたが、企業との契約期間は10~20年と長期になることが多いので、寮は長期にわたって空室リスクの低い経営が可能です。
部分借り上げの場合は、複数の企業と契約することで、全室に対して空室リスクを下げることができます。

4-3.収益が長期安定化しやすい

寮は企業の福利厚生の一つですので、基本的に長期間、社員に提供するものになります。
10~20年、またはそれ以上の期間の契約になることもあるため、契約方法によっては、長期間の収入が保証された、安定経営が期待できます。

建物が古くなっても、福利厚生として無料または安価で入居できているため、入居者からの不満も出にくいこともあり、経年劣化していることが空室リスクにつながりにくいと言えます。
また、企業との長期契約によって家賃額が一定に保証されているため、家賃下落の心配もありません。

収益に関しても、寮は一般のアパート建物と比較すると、建設コストを抑えることが可能なため、収益率も高くなります。空室・滞納リスクともに著しく低く、安定した収益となりやすい土地活用です。

4-4.入居審査の手間が少ない

寮の経営は、入居審査も工程が少なく済みます。企業の一括・部分借り上げの場合は、入居者が寮契約をした企業の社員となりますので、企業の経営悪化がない限り、入居者の支払いに問題が出ないことがある程度は保障されています。

その企業に入社できる背景の方が入居者であり、保証人に相当する存在が企業となりますので、保証会社も不要です。
入居審査の際には、入居者の素行などには個別に注意する必要はありますが、支払能力の与信などを審査する手間は必要ありません。
学生寮の場合は、入居審査は保護者に対して行いますので、保護者の年収と職業が重視されます。

4-5.計画的な経営が可能

企業には、定期的に人事配置が替わるタイミングがありますので、寮には定期的に入居者候補が現れて部屋が埋まるというサイクルを繰り返す傾向にあります。
そのため、入退去の事前把握がしやすく、経営計画が立てやすくなります。

例えば、部屋のリフォームを行いたい場合には、このサイクルを利用して、空室が出やすい時期に工事を行うようにするなどができます。

学生寮も年に一度、卒業をする学生が一斉退去するタイミングがありますので、新入生の入居タイミングを見計って工事や入居者募集ができます。
学生寮と比較すると、社員寮の方が、転勤・転職・結婚などによって寮が必要となるタイミングが多いため、より経営計画がしやすくなります。

4-6.エリア条件が悪くてもOK

社員寮は所属企業へ、学生寮は学校へのアクセスさえよければ、都心や駅近でなくても需要が見込めます。
例えば、大規模なアパートやマンションの開発がしにくい立地や住居として人気のある南向きの部屋が取れなくても、寮であれば、普通の賃貸物件ほどは問題になりません。

社会人・学生のどちらでも、実家住まいの方以外は、1人暮らしをして、どこかのワンルームやアパートを借りているケースがほとんどです。
普通の賃貸の部屋は、家賃の問題から、職場や学校から遠くに借りているケースもあり、より近い場所で安価に暮らせるのであれば、寮を選ぶ方も多い傾向にあります。

また、共同部分の多い寮であれば食事や掃除などの家事負担も少なく、さらにエアコンやフリーWIFIなどで機能性が良ければ、入居者にとっては満足度の高い部屋となります。

5.寮建設・経営の土地活用3つのデメリット

本章では、寮建設と経営に関した、土地活用におけるデメリットを3つにまとめています。

  1. 100坪以上の土地が必要
  2. 社会情勢の影響を受けやすい
  3. 一般の賃貸住宅へは転用しにくい

5-1.100坪以上の土地が必要

寮建設をするならば、100坪以上の土地があるほうが望ましいと言えます。
日本の平均的なワンルームの広さは25平米と言われていますが、寮の場合、バストイレ・キッチンなどの共用部分を多くすることで、部屋の大きさを15~20平米ほどのコンパクトさにすることも可能です。

土地の持つ条件から、建てられる建物の規模が決まり、規模が決まるとだいたいの部屋数が決まりますので、その条件の中で、土地から最大の利益を得られる方法を探すことになります。

5-2.社会情勢の影響を受けやすい

寮は企業が自社の社員の福利厚生として提供しているものですので、企業の経営が悪化すると長期の契約途中でも、契約が終了する可能性があります。

契約書には多くの場合、途中解約の規定について「開始から〇年」などの期間が限定されていますので、早期の解約となった場合には、違約金が支払われます。
しかし、その期間が過ぎていた場合には入居者が一斉にいなくなる可能性があります。

5-3.一般賃貸住宅へは転用しにくい

寮は共用部分が多数で、各部屋に水回りの配管がないケースが多いため、一旦作ってしまうと後から普通のアパート経営への転用が難しくなります。
アパート経営をするには、配管からのやり直しが必要となる、かなり大規模な工事が必須となります。

企業との寮契約が終了した後にアパート経営に転向する予定があるのであれば、はじめから一般的なアパート建築をしておき、それを寮として貸し出すほうが、経営の途中で余分なコストをかけずに、長期経営ができます。

6.寮の建設費はいくら?

6-1.寮建設費シミュレーション

多くのハウスメーカーや建築会社には、プレキャスト・システムハウスなどと呼ばれる、土地の大きさや高さによって、建材と工法が決まった寮などの集合住宅のセット商品があるため、一般のアパート建築よりも、コストは抑えめ、工期も短めになります。

以下は「100坪の建坪」の場合の建築費シミュレーションです。

木造建築2階建ての場合(建坪:100坪)

<建築条件>
  • 木造2階建て
  • ワンルームタイプ、共用部分あり
  • 坪単価85万円
  • 大手ハウスメーカーに設計施工一括方式で発注
<建築費シミュレーション>
  • 本体工事費等
    → 100坪×2階×85万円=1億7,000万円
  • 設計費(本体工事費の1%分)
    → 1億7,000万円×0.01=170万円
  • 諸費用(本体工事費の10%分)
    → 1億7,000万円×0.01=1,700万円
  • 【総計】1億8,870万円

軽量鉄骨造3階建ての場合(建坪:100坪)

<建築条件>
  • 軽量鉄骨造3階建て
  • ワンルームタイプ、共用部分あり
  • 坪単価90万円
  • 大手ハウスメーカーに設計施工一括方式で発注
<建築費シミュレーション>
  • 本体工事費等
    →  100坪×3階×90万円=2億7,000万円
  • 設計費(本体工事費の1%分)
    →  2億7,000万円×0.01=270万円
  • 諸費用(本体工事費の10%分)
    →  2億7,000万円×0.01=2,700万円
  • 【総計】2億9,970万円

6-2.寮建設で利用できる補助金

寮を建設する際には、各市区町村と厚生労働省が補助金を交付している場合があり、補助金制度を利用することも検討しましょう。
詳細は各市区町村と厚生労働省の要綱を確認してください。

例:【厚生労働省】人材確保等支援助成金(作業員宿舎等設置助成コース(建設分野))

厚生労働省が人材確保を目的に、建設事業主を対象に支援助成金を交付しています。

<概要>

  1. 被災三県に所在する作業員宿舎、作業員施設、賃貸住宅を賃借した中小建設事業主
  2. 自ら施工管理する建設工事現場に女性専用作業員施設を賃借した中小元方建設事業主
  3. 認定訓練の実施に必要な施設や設備の設置又は整備を行った広域的職業訓練を実施する職業訓練法人に助成するものです。

【参考:建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)

例:【長崎県平戸市】社宅・社員寮等整備緊急対策支援事業補助金

長崎県平戸市が就労環境の改善や幅広い人材確保を推進するため、中小企業者が自ら雇用する労働者を居住させることを目的に交付しています。

<概要>

市内に事務所又は事業所を有する中小企業者(法人)向けに、新たに市内に設置する社宅又は社員寮等の整備を支援するため、平戸市社宅・社員寮等整備緊急対策支援事業補助金を交付。

【参考:平戸市社宅・社員寮等整備緊急対策支援事業補助金交付要綱

例:【茨城県八千代町】社宅・社員寮整備支援事業

町内立地企業等の雇用促進及び市街化区域内の定住人口の増加を図るため、町内に社宅や社員寮を整備し社員が入居した場合に、整備した事業者に対し、助成金を交付しています。

<概要>

八千代町内の事業者で社宅や社員寮を建設又は建設して賃貸借する個人又は団体を対象に、上限金額400万円の助成金を交付

以上は一部の例ですので、建設エリアの市区町村のホームページなどを確認し、利用を検討してみてはいかがでしょうか。

7.土地活用で良質な寮経営をするための4つのアイデア

本章では、寮を建設して、良質な土地活用をするためのアイデアをまとめています。これらのアイデアは、企業が「この建物を選ぼう」という時の決め手になる部分で、各アイデアはそのまま、企業の福利厚生の特徴になります。

  1. 「食」設備の充実
  2. 大浴場やサウナの設置
  3. シェアハウスタイプ
  4. 保育園併設

7-1.「食」設備の充実

寮と言っても入居者にとっては自宅ですので、食の充実は生活満足度に影響します。寮に食堂をつけ、栄養管理の万全な食事が朝夕取れるのは、入居者にとっては大きな魅力です。

また、食事提供をする場合、食品衛生法に基づいて以下の申請や資格取得者の設置等が必要です。

  • 飲食店営業許可申請
  • 保健所の許可
  • 食品衛生責任者の設置

広さの関係で食堂設置ができない場合には敷地内にコンビニや食事のできるカフェを併設できるようにしておくなど、入居者の食の充実につながるアイデアを盛り込んでおきます。

これらは、ご所有の土地にゼロから寮を建設するからこそ実現可能な設備です。
カフェなどはオーナーが経営しても、借り上げをした企業が誘致して運営するのでも問題ありません。

7-2.大浴場やサウナの設置

大浴場やサウナの併設で、入居者の健康サポートをするアイデアです。このような施設があると、個室にバスやシャワーをつける必要がなくなる分、部屋数を増やすことができ、さらに建設費を大幅にカットできます。

入居者にとってはワンルームなどにある小さなバスよりも、足を延ばしてのんびりできる広いお風呂や、仕事の疲れを開放できるサウナがあることでコミュニケーションも良好になり、楽しい寮生活となります。

7-3.シェアハウスタイプ

一般的な寮は個室に水回りがないのですが、簡素なキッチンとトイレをつけ、それ以外のものを共同で使えるようにしておくことで、シェアハウスにもできる寮ができます。

シェアハウスタイプにする場合には、各部屋に小さな水回りを置く代わりに、共用部分はランドリーとシャワールームのみにします。
こうすることで寮として機能しながらも、入居者は完全個室で生活ができるようになります。

この方法であれば、企業が部分借り上げをしている部屋以外はシェアハウスとして賃貸運用するなど、フレキシブルな経営が可能です。
また、シンプルな暮らしを求めるタイプの若い世代はモノを数多く持たない方が多いので、ミニマルなライフスタイルとして印象が良いと言えます。

7-4.保育園併設

現在の20~30代は共働きの夫婦が多く、家事・育児は夫婦で協力して進めていくのがスタンダードとなっています。
しかし、親が働いている時間に、子供を預ける保育園の数は、社会問題になるほど不足しています。

会社のファミリー向けの寮(社宅)の敷地内に保育園が併設されていれば、親は安心して働きに出られます。
送り迎えに時間がかからず、急な熱や病気の時でも社宅に保育園がある前提の企業であれば、周囲に気兼ねをすることなくお迎えに行けます。

保育園併設はゼロから寮建設を考えられるからこそ、そのエリアで付加価値の高い土地になります。
保育園施設だけを建物内または敷地内作っておき、保育園経営の専門会社に運営してもらうのが一般的ですが、寮を借りてくれる企業が保育園経営に乗り出すパターンでも問題ありません。

8.寮建設・経営の土地活用で気をつけるべき4ポイント

本章では、これから寮建設・寮経営で土地活用をする際に、気をつけるべきポイントを4つにまとめています。

  1. 住宅の性能や設備にこだわる
  2. 個別の契約が主流になる
  3. 社宅管理会社の質が重要
  4. 複数のハウスメーカーを比較する

8-1.住宅の性能や設備にこだわる

一般的に寮に入る方は、20~30代で、個別の部屋でプライバシーが重視され、なおかつ、不要なものを自室に置かなくても良い間取りが好まれます。

各個室にミニキッチン・冷蔵庫・電子レンジの設置は必要ですが、トイレ・シャワー・ランドリーなどは、共用でも良い場合もあります。
食堂はあれば便利ですが、出来れば自室にテイクアウトしても食事ができる、一般の方も使えるオープンカフェ形式の方が、よりプライベートを重視した寮生活ができます。

また、必ず複数の寮建築プランを比較し、希望している特徴付けができるプラン提案ができるハウスメーカーや建築会社を探す必要があります。

8-2.個別の契約が主流になる

時代の流れからいくと、これからの寮の契約形態は、部分借り上げ、または個人契約という形に移行していく可能性が高いと言えます。

部分借り上げとは、全50室のうち30室をA社、残り20室をB社が借り上げる方法です。
個人契約は、企業が社員に家賃手当て・住宅手当を支給し、社員は自分の好きな物件と契約して賃料を支払うという方法です。

企業が寮の一括借り上げをしなくなっていく最大の理由には、日本の景気悪化以外にも就業形態の変化があります。コロナ禍でテレワークが一般化しましたが、再度オフィス出社の頻度も増やす「出社回帰」の傾向もでてきました。

このように、時代の急激な変化によって、必要とされる寮のスタイルにも変化が起きています。活用予定地周辺の企業のマーケティングは、綿密に行ったほうが良いと言えます。

8-3.管理会社の質が重要

寮経営が普通の賃貸経営と違うのは、法人による借り上げがある点です。そのため、できれば、法人営業に強い不動産会社に管理をしてもらうことをおすすめします。

寮の借り上げは1社からでもできますので、一括借り上げ以外は、寮の中に複数の企業の社員が混在していることもあります。
また、企業によっては借り上げスタイルではなく、個人契約に対して住宅手当を支給していることもあります。

寮は、仕事場でも顔を合わせることがある者同士が、一つ屋根の下に暮らす、特殊な環境です。
そのため、例えば気の合わない方がいれば、あらかじめ違う階に住むようにしてもらうなど、普通の賃貸住宅とは違った気遣いも必要になります。

契約が終わると、寮から一斉に入居者がいなくなりますので、解約が決まったらすぐに、次の入居者探しが必要です。法人営業に強い会社であれば、一括・部分とも契約を取ってきてもらえる可能性も高くなります。

【参照:賃貸経営HOME4U

8-4.複数のハウスメーカーを比較する

寮の建築プランは、なるべく数多くの候補から比較して、慎重に選ぶようにしてください。設備や見た目も大切ですが、経営プランも考慮に入れたうえで、各社のセットプランや工法などを比べていきます。プラン作成の際には、各社、周辺エリアにある企業の調査もしてくれますので、どの会社でも入ってくる寮のスタイルは、そのエリアでのスタンダードな可能性があります。

プラン請求には、NTTデータグループが運営する日本で最老舗の不動産情報の比較サイト「HOME4U オーナーズ」の一括プラン請求をご活用ください。
最終的に、どのようなスタイルの寮にするのかはオーナーが決定することですが、数多くの選択肢の中から選ぶことが、より成功率の高い土地活用へとつながります。

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