
土地活用や不動産投資としてアパート経営を検討している方の中には、アパート経営は具体的にはどのようなことをして、どのくらい儲かるかなどの情報を集めたい方も多いのではないでしょうか。
本記事では、はじめてのアパート経営をご検討される方に有益な情報を、項目別にやさしくまとめています。
アパート経営に向いている土地の特徴や収入の仕組み、初期費用についてなどが簡潔に分かる内容です。より詳しく知りたい方のための足掛かりとしてもご活用ください。
アパート経営とは?
アパート経営はマンション経営より参入が比較的しやすい、ポピュラーな不動産投資です。向いている土地としては以下の特徴が挙げられます。
- 60坪以上の広さ
- 東西に間口が長い長方形
- 駅徒歩10分圏内
- 住宅街
- 生活利便施設が近い
アパート経営の特徴について詳しくは「アパート経営の特徴」で解説しています。
アパート経営のメリットは?
アパート経営のメリットには以下の6点があります。
- 安定収入が得られる
- 相続対策となる
- 老後の備えとなる
- どこでも建てられる
- コストが安い
- 空室リスクが分散される
それぞれのメリットがどのようなリターンをもたらすかは「アパート経営のメリット・リターン」でご確認ください。
アパート経営のリスクは?
アパート経営において事前にリスクヘッジしておくことは非常に重要です。リスクには以下のような点が挙げられます。
- 空室・滞納リスクがある
- 金利変動の影響がある
- 長期運用が前提である
- 資産価値が落ちる
- 災害リスクがある
詳しくは「アパート経営のリスク」で解説しています。
アパート経営に自己資金はいくら用意する?
アパート経営をする際、ほとんどの場合でアパートローンを利用します。全体費用のうち、自己資金の割合の理想は
- 30%が目安
と言われています。そのほか、初期費用の目安やアパートローンの組み方など資金面について詳しくは「アパート経営を始めるのに必要な資金」でご確認ください。
アパート経営にはどんな税金がかかる?
Contents
1.アパート経営の特徴
アパート経営とは、アパートなどの賃貸住宅を一棟丸ごと建て、それを人に貸し出すことによって家賃収入を得るタイプの不動産経営です。
不動産を使った投資ですのでアパート経営は不動産投資でもあります。一般的には、土地に設備投資をして収益を得る形に整えることを「土地活用」と呼び、ゼロから土地と建物を買ってスタートすることを「不動産投資」という分け方をしています。土地活用でも不動産投資でもメジャーな方法はアパート経営です。
どちらも、金融機関から大きな金額を借り入れて不動産に投資をするところからスタートし、長期にわたって運用を続けて収益を上げていきます。アパート経営の目的は
- 節税対策
- 資産形成
- 副収入を得る
など人それぞれです。
1-1.「アパート経営」と「マンション経営」の違い
アパート経営とマンション経営は、広義の意味では同じ「不動産経営」です。
アパート経営とマンション経営の違いに関して、以下のようなイメージしている方も多いでしょう。実際の建築・経営になっても、だいたい同じような違いがあります。
一般的なアパート経営のイメージ | 一般的なマンション経営のイメージ | |
---|---|---|
木造や軽量鉄骨造 | 構造 | 鉄筋コンクリート造など |
2~3階建てまで | 階数 | 3~4階以上または高層 |
特になしのケースが多い | 設備 | エレベーター、エントランススペース |
木造などの共同住宅 | 外観 | しっかりしたつくり |
比較的リーズナブルな家賃 | 家賃 | アパートよりは高い~高級賃貸 |
大家さんまたは管理会社が不定期に実施 | 管理 | 管理会社主体で、管理人がいる |
上記の表の通り、マンションの方が、構造・設備・規模が大がかりであり、より大きな土地や資金力が必要なことがわかります。また、土地があったとしても、マンションが建てられる用途でないと建てられません。
アパートの場合は、規模や設備はそこまで必要なく、建築自体はほとんどの用途地域で可能なため、マンションよりもアパート経営の方が、汎用性が高く、参入しやすい不動産経営方法と言えます。※実際の土地用途などは、市区町村の名前と用途地域、もしくは都市計画図で確認してください。
1-2.アパート経営に向いている土地
アパート経営に向いている土地とは、以下の要素が揃っている土地です。特にA・B・Cは、アパート経営を長期にわたって順調に行うためには、揃えておきたい条件です。
A 60坪以上の広さ
B 東西に間口が長い長方形
C 駅徒歩10分圏内
D 住宅街
E 生活利便施設が近い
- A 広さは60坪以上(200平米)
-
木造や軽量鉄骨構造のアパートはマンションと違い、上へ上へと面積を増やせません。
ワンルームタイプは平均で25平米ですので、60坪(約200平米)の敷地だと、ワンフロアで6~7部屋分になります。
60坪以下の土地でもアパート経営をすることは可能ですが、収益を最大化させるためには60坪くらいあるのが理想だとされています。
- B 東西に間口が長い長方形
-
土地が東西に長いと必然的に南に向く面が広くなり、陽のあたる部屋を作りやすくなります。
また、アパートの部屋は土地面積を有効活用して作る前提のため、居室が縦長であることが多く、正方形よりも長方形の土地のほうが効率的です。
- C 駅から徒歩10分圏内
-
賃貸住宅を選ぶ方は、居住性よりも利便性を優先することが分かっています。そのため、駅歩は10分圏内であることが理想的です。
駅から徒歩10分圏内に土地をご所有の場合は、その便利さから、入居率の良いアパート経営が期待できます。
- D 住宅街の中にある土地
-
アパートを建てる場所が、駅10分圏内ではなかったとしても、住宅街のような静かで暮らしやすい土地であれば、駅前を求める方とは違うタイプの入居者が決まりやすく、アパート経営が安定しやすくなります。
住宅街の中は、防犯面でも優れており、ファミリー層に人気です。
- E 周辺にスーパー等の生活利便施設がある土地
-
アパートの周辺にスーパーマーケットやドラッグストアなどの、生活必需品が揃う店舗がある利便性の高い地域も、入居率の高い経営が期待できます。
特に、コンビニエンスストアは、歩いて行ける範囲に最低でも1店舗はあることが理想です。
1-3.アパート経営に向いている人
アパートオーナーとなっている方の多くは、以下のような動機でアパート経営に着手しています。似たような動機があれば、アパート経営に向いていると言えるでしょう。
- 相続税の節税対策として考えている
-
資産の一部をアパートにしておくことで、相続税の節税効果があります。
また、相続したアパートは収益を上げ続けるため、相続人の資産形成にもつながります。 - 固定資産税の節税をしながら土地からの収益も得たい
-
活用していない土地があり、固定資産税の重さにお困りの方は、アパート経営をすることで固定資産税を減らし、収益を発生させることが可能です。
- 将来の私設年金として考えている
-
退職後の年金だけでは心もとないので、将来の年金の足しとして、賃料収入を得ることができます。年金額プラス、アパート収入があれば、豊かなセカンドライフの実現が可能です。
- 金融商品以外で資産を作っておきたい
-
株式や投資信託などの金融商品で資産形成はしているが、現物資産として不動産による資産形成もしたい方は、アパート経営による収益で効率の良い資産作りができます。
アパート経営を始めた方の多くの動機が「節税」または「資産形成」であり、どちらかというと「人生への守り」を主眼としてスタートされています。
将来に備えた対策であることが多い一方、アパート経営は投資という一面を持っています。特に不動産投資は長期運用が基本です。長期的に投資、経営の意識を持ち続けられる人がアパート経営に向いていると言えるでしょう。
2.アパート経営のメリット・デメリットを表で比較
アパート経営には、長期的な安定収入が得られるなど、経営をスタートするとさまざまな利益を享受できますが、同時にデメリットも発生します。
以下の表は、アパート経営のメリット・デメリットを一覧表で比較をしたものです。それぞれの解説は次章をご確認ください。
アパート経営のメリット | アパート経営のデメリット |
---|---|
|
|
上記のメリット・デメリットを比較して、
- メリットの部分:このメリットを欲しい、または魅力に感じるか
- デメリットの部分:このデメリットに対して対策が打てるかどうか
の視点で見ていくと、アパート経営への理解が深まります。
デメリットについては、先にさまざまな対策を取っておくことで、アパート経営開始後のデメリットを限りなく小さくすることが可能です。
3.アパート経営のメリット・リターン
本章では、アパート経営のメリットと、アパート経営によって、アパートオーナーになる方が得られることをまとめています。
- 安定収入が得られる
- 相続税対策になる
- 老後の蓄えにできる
- どこでも建てられる
- コストが安い
- 空室リスクが分散される
3-1.安定収入が得られる
アパート経営をする最大のメリットともいえるのが、長期的に安定した収入が得られるという点です。アパートは住居用の物件ですので、一度入居者が決まると、更新の時期までは、一定期間決まった収入が見込めます。
例えば、2年更新であれば、次の更新時期までの丸2年間は、基本的に毎月決まった収入が発生します。※更新のシステムは地域によって違いがあります。
アパートは生活の場として借りるため、安定性が高いのが特徴です。例えば、2020年にスタートしたコロナ禍のようなことが起きたとしても、ビジネス利用の場合は経営縮小があるとすぐに退去となりますが、生活の場としての賃貸住宅は、そう簡単には退去とはなりません。
そのため、住宅系の賃貸経営は、いちど入居者が決まれば、長期で安定的な収入に結びつきやすくなります。また、昨今は、アパート経営の不安を解消するために、家賃保証型サブリースなどの、長期的に経営サポートをするプランも数多くあり、はじめてのアパート経営でも、安心してスタートをしやすい環境にあります。
3-2.相続対策になる
アパート経営は、相続税対策に役立ちます。特に、土地をお持ちの方は、土地活用としてアパート経営をすることで、課税対象額が減額できる特別措置などが適用されるため、相続税負担を軽くすることができます。
例えば、アパートを建てる時に組んだローンの借入金は、相続の際にはマイナスの資産として課税額の減額対象となりますので、大きな節税効果を期待できます。
また、人に貸しているアパート建物には「借家権割合」、人に貸している建物が建っている土地には「貸家建付地」など、不動産評価が減額される評価が適用されます。
そのため、資産を土地や現金のままで相続するよりも、アパート経営を節税対策として取り入れることで、将来、大きな節税が期待できます。
【参照:相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)】
【参照:国税庁 貸家建付地の評価】
3-3.老後の備えとなる
アパート経営は老後の備えとしても役に立ちます。アパートローンを完済してしまえば、家賃から必要経費を差し引いた分が全額、毎月の現金収入になります。
定年のタイミングなどに合わせて完済するように経営計画を立てれば、老後資金や年金代わりとして、セカンドライフの強力なサポートになるでしょう。
また、急にお金が必要になった場合には、土地と建物を売却して、まとまった金額を作ることもできます。
3-4.どこでも建てられる
アパートは、基本的に共同住宅を建てられるエリアであれば、どこにでも建てられます。土地には、そのエリアの環境保全や利便性を守るために、建築をしてもよい建物や建物の使い道について規定している、厳しい法律があります。
アパートやマンションは、「共同住宅」が建てられる場所にのみ建築可能です。しかし、住宅街に建てるとなると、建物の高さや広さなど、周辺の生活者の権利を守るための厳しい要件が付け加えられます。
アパートは1~3階建てくらいまでの低層階が多く、比較的、どこにでも建てられます。しかし、マンションの場合は、4階以上の高層な建物になることが多いため、エリアによっては希望する大きさ・高さの建物を建てられないことがあります。
3-5.コストが安い
アパートは共同住宅の中で、最もコストを抑えて建てられます。アパートの建築費は、建物構造によって、ある程度の坪単価相場があります。
以下の表は、構造別の坪単価目安です。
構造 | 坪単価目安 |
---|---|
木造 | 77~100万円 |
軽量鉄骨造 | 80~100万円 |
重量鉄骨造 | 90~120万円 |
鉄筋コンクリート造 | 90~120万円 |
一般的なアパートは2階建てですが、現在の建築に関する法律では、木造アパートは3階までと決められています。4階以上の建物は、軽量鉄骨以上の構造です。
ただし、軽量鉄骨造以上の建築費は高額になることが多く、階数が増えればその分建築費はかさむことになります。
アパートにはエレベーターやオートロック式のエントランスなどが必要ないため、共用部分に関した維持管理費のコストも抑えられます。
3-6.空室リスクが分散される
アパート経営は、一つの建物の中に複数の個室がありますので、空室リスクを分散しやすい経営方法です。
マンション経営も一棟建て物件を経営するのであれば、同様に空室リスク分散ができますが、マンション一棟は莫大な資金力が必要です。相当の資金力がないと着手しづらいマンション投資は多くの場合、区分マンションを購入するところからスタートします。そのため、複数の区分所有をしていないと空室リスクの高い経営となってしまいます。
もし、空室が出たとしても借入金負担を抑えられていれば、直ちに経営が傾くことはありません。マンション経営より初期費用が少なく済むアパート経営であれば空室が出た時のリスクも少ないと言えます。
4.アパート経営のリスク
本章では、アパート経営のリスク、その対策について解説します。
- 空室・滞納リスクがある
- 金利変動の影響がある
- 長期運用が前提である
- 資産価値が落ちる
- 災害リスクがある
4-1.空室・滞納リスクがある
アパート経営には空室や滞納という「家賃が発生しなくなる」リスクがあります。
とても条件の良いアパートであっても、満室になるという保証はなく、空室が発生してしまうことがあります。毎月の賃料収入がローン返済額に満たない場合は、入居者が決まるまでオーナーが自腹で補填をすることになります。
また、入居者がいる場合でも、入居者が家賃の支払いをしてくれない、家賃滞納というリスクもあります。家賃滞納をされると、賃料が入ってこないのに次の入居者を探すことができないという、オーナーにとってはダブルパンチになります。
空室リスクは、アパート建築前にエリアマーケティングをしっかりとする、滞納リスクは入居前の人物審査を厳しくするか、保証会社を入れることで回避できます。
4-2.金利変動の影響がある
アパート経営のためのローンを、変動金利で借りた場合にのみ起きるデメリットです。変動金利で金融機関からお金を借りた場合、ローン返済中に金利が上昇すると、毎月のローン返済額が増えてしまいます。
家賃収入から返済に回している金額よりも金利上昇により支払額が増えてしまった場合は、不足分をオーナーが自腹で補填をする必要があります。
金利上昇リスクを回避するには「元金均等払いの固定金利」を選ぶのが効果的ですが、アパートローンの多くは変動金利の金融商品です。金利が上昇した際でも対応できるだけのシミュレーションをもとにローン設定することが重要です。
4-3.長期経営が前提である
アパート経営は長期の経営をすることが前提ですので、短期経営では利益を得にくいというリスクがあります。
アパートは、不動産という現物資産のため、同じ「投資」であっても、株やFXなどといった金融商品のように、短期間で売買をして現金化をするのには向いていません。
バブル期のような不動産価格が急激な右肩上がりになる時代には、短期の不動産売買を繰り返して差額を得て、大きな利益を獲得できていました。しかし、現在のような、緩やかな上昇トレンドの時代には適した投資方法ではありません。
そのため、現代のアパート経営の基本は、10~20年くらいの中長期スパンで健全経営をして、ゆっくりと資産形成をするのが主流です。
4-4.資産価値が落ちる
アパートの資産価値が落ちる主な理由は2つです。
- 地価下落によって土地の資産価値が下がる
- 経年によって建物の資産価値が下がる
地価下落によるリスクは、売却したいときに地価が下降トレンドにあると、本来の物件価値よりも低い金額でしか売買できないことです。建物が劣化したことによって起きるリスクは、見た目や設備の古さから入居者が付きにくくなり、空室リスク・家賃下落リスクが起きやすくなることが挙げられます。
地価下落に対しての対処方法は個人の力では対応しきれませんが、経年劣化は、適宜なメンテナンスをすることで築年よりも状態の良い建物を維持することができます。
4-5.災害リスクがある
アパートは不動産であり住居ですので、災害の中でも特に、火事と地震に弱いというデメリットがあります。
地震・台風・大雨・大雪などにより、建物が大きなダメージを受ける可能性があります。ダメージを受けた建物には多額の修繕費用がかかり、住めないほどの状態になってしまうような最悪のケースでは、アパート経営が続けられなくなることもあります。
地震には耐震免振のしっかりした建物を建てることと、地盤が弱い場合は地盤強化を施すか、土地の買い替えも検討します。水害に関してはハザードマップなどで浸水区域に入っていないかを確認の上、風雨に強い外壁材などを使い、適切なメンテナンスをすることで回避できます。
5.アパート経営で失敗しないために
うまくいっているアパート経営の基本は、家賃収入から経費を賄った上で手残りのお金を大きくできるようにすることです。つまり、アパート経営における失敗とは、家賃収入が減って収支が赤字になってしまうことから始まります。
収支が赤字になってしまう理由には、大きく分けると以下の5つがあります。
- 1.空室
-
空室が発生すると空室分の家賃が入りません。家賃が入らなくても、維持管理費・ローン支払い・税金などの経費が発生し続けます。
- 2.家賃滞納
-
前項の空室と同じく、家賃が入らない状態。退去をしてもらうには交渉が必要で、場合によっては訴訟になることも。
- 3.入居者トラブル
-
騒音やゴミなどの問題で入居者間トラブルが起きると、退去が増え、家賃が入らなくなる期間が長期化することも。
- 4.環境変化
-
日照、風通し、騒音、駅の廃止、近隣施設の移転など、周辺の環境変化によって、退去を引き起こし空室率が上がり、家賃が入らなくなる可能性が高まります。
- 5.老朽化
-
建物が老朽化するとメンテナンスのための費用が掛かるようになります。特に大規模修繕には大金が必要。修繕をしないと建物がさらに劣化し、賃貸物件として適さない建物になることがあります。
アパート経営がうまくいかない理由のほとんどは、アパート経営のデメリットと同じですので、デメリット同様、事前対策をしっかりしておくことで、失敗を回避することができます。
6.アパート経営を始める前に!知っておきたい検討事項
本章では、アパート経営を始める前の段階で、知っておいたほうがよいアパートに関する検討事項をまとめています。
- アパートは何坪から建てられる?
- アパート経営は実際どれくらい儲かる?
- アパートは木造と鉄骨、どちらがいい?
- アパート経営はなぜ「地獄」と言われる?
- アパート経営は「土地なし」でもできる?
- アパート経営は法人化したほうがよい?
6-1.アパートは何坪から建てられる?
法的な基準や自治体のルールをクリアできていれば、何坪からでもアパートは建てられます。例えば、狭小地と呼ばれるような小さな土地でも、賃貸をするための居室を作れば、アパート経営は可能です。
ただし、アパート経営で小さな土地から収益を最大化させるためには、階数を高くするなどで部屋数を確保する必要がありますので、ご所有の土地の建ぺい率や容積率などから、採算に合う様な建物が建てられるかどうかを、よく確認しておく必要があります。
6-2.アパート経営は実際どれくらい儲かる?
アパート経営をして実際に手に入る金額とは、家賃収入から、ローン返済額や経費、税金を引いた手残りの金額のことです。
一般的には、アパート経営の必要経費は20%前後、不動産にかかる税金は住民税と都市計画税を合わせて10.3%※、不動産から得る収入の3割程度が、必要経費として出ていくめやすになります。
※個人経営の場合
ざっくりとした計算ですが、例えば、年間1,000万円の家賃収入があるアパートの場合は、3割の300万前後が経費と税金にかかりますので、手残りの金額は700万円前後ということになります。ここからさらに所得税や住民税を納付した後に残った額が資産として残せる金額です。
経費の内容や税金の詳細に関しては関連記事をご確認下さい。
6-3.アパートは木造と鉄骨、どちらがいい?
木造、鉄骨造にはそれぞれの長所短所がありますが、木造アパートと鉄骨アパートの一番の違いは、建てられる高さの差です。木造は3階建てまで、鉄骨だと軽量鉄骨で4階建て、重量鉄骨ではそれ以上の高さも可能です。
ただし、アパートの場合、エレベーター設置がないことが前提ですので、入居者の利便性の面から、軽量鉄骨4階建てまでが適切と言えます。
坪単価は、木造<軽量鉄骨<重量鉄骨の順番に高くなりますので、コストを抑えたいのであれば木造を選びます。また、建てたい建物が決まったとしても、ご所有の土地にその建物が建築できるかは別の話です。
まずはアパート建築予定地の法的な条件をもとに、どのくらいの大きさ・高さの建物なら建てられるのかを、ハウスメーカーなどから建築プランを取り寄せて検討してみる必要があります。
6-4.アパート経営はなぜ「地獄」と言われる?
アパート経営に関して検索をしていると、「アパート経営は地獄だ」というタイトルの記事がいくつかあります。なぜ、地獄になってしまっているのでしょうか。
アパート経営がうまくいくためには、アパート経営に適した土地、適切な資金計画、入居者の確保、適切な管理が必要です。
逆に言えば、これらの要素が過剰または不足していると、健全な経営計画から外れ、赤字運営アパートになり、文字通り「地獄」になってしまう可能性があります。
アパート経営を検討し始めたら、まずはハウスメーカーや工務店などの建築プランを複数用意して、ご所有の土地、自己資金、今後の運営や管理に対して、どのような事前準備や対策が必要なのかを、比較してみることからスタートしてください。
無理のない資金計画で、入居者ニーズの高いエリアに、リーズナブルで品質の良いアパートを建て、適宜な管理をしてくれる管理会社に管理をしてもらえば、よほどのことがない限り、アパート経営で地獄を見るようなことにはなりません。
6-5.アパート経営は「土地なし」でもできる?
現在、土地をお持ちでなくても、アパート経営をスタートさせることはできます。
「土地なし」でスタートする場合は、まずはアパート経営にかけられる総予算を決めてしまいます。
総予算は準備できる自己資金額を基準にし、最低でも自己資金と借入金の割合が2:8~3:7の間に収まるようにします。理想は3:7ですので、5,000万円の総予算であれば、自己資金は1,500万円、借入が3,500万円です。
この総予算の範囲内で、先に、エリア条件の良い土地を探します。土地は条件が良くなるほど高額になりますが、土地とアパートの費用比率は3:7~4:6に収まるように、バランスをとります。
これ以下の比率になると、アパートが安普請になってしまい品質上の問題から、家賃設定を低くするか、空室リスクの高いアパートになってしまう可能性があります。
6-6.アパート経営は法人化したほうがよい?
アパート経営を始めたら、すぐに法人化しなければならないわけではありません。
収入に応じて、アパート経営を法人化するタイミングを検討します。
事業の法人化は、業種を問わず、収入が1,000万円を超えたあたりで検討する傾向があります。1,000万円がボーダーラインになっている理由は、収入が増えると所得税負担が重くなるので節税の必要が出てくるため、最も簡単に節税できる方法が法人化だからです。
しかし、法人化をして会社経営になると、会社を維持するためのランニングコストが別途発生するようになりますので、収入と支出のバランスをよく考えた上で、法人化に踏み切るようにします。これらはご自身で検討したうえで、お金と税の専門家である税理士にも相談してみることをおすすめします。
7.アパート経営を始めるのに必要な資金
本章では、アパート経営をスタートさせるためにかかる、比較的大きなお金の話をまとめました。多くの不動産投資はレバレッジ効果を期待してアパートローンを活用します。初期費用の調達についても紹介します。
7-1.初期費用・建築費
アパートを建てるための建築費と、建築費以外でかかる諸費用を合わせて、総工費と言います。初期費用とは、着工から完成までの間に必要な、さまざまな費用や税金のことで、金額目安は総工費の5%程度です。
アパートの初期費用は、建築費が決まらないと正確な金額がわからない部分が多いため、建築プランを見て、その金額の5%程度と見積もっておきます。例えば、5,000万円の建築プランなら、5%の250万円前後の金額を用意しておけば安心です。
建築費は、建築プランに詳細が記載されていますので、予算に応じたプランを選ぶことになります。建築費は、ハウスメーカーや工務店によって提案してくる内容と金額が違いますので、複数の建築プランを比較検討してください。
7-2.アパート経営で自己資金はどれくらい必要?
アパート建築で必要となる自己資金は、一般的には総工費の30%以上と言われていますが、できれば30~50%くらいあることが理想です。例えば、5,000万円の借り入れをするプランであれば、1,000~1,500万円くらいは自己資金の準備をしておくほうがよいということになります。
アパートローンを借り入れする際、多くの金融機関では、アパート建築費の80%程度までしか貸付をしません。そのことを前提に、総工費の20~30%程度の自己資金を用意しておく方が、審査がスムースに進行します。
7-3.アパートローンの賢い活用法
賢くアパートローンを活用するのであれば、以下の2点に注意をして借入れ計画を立てるようにします。どちらも税務上の資産価値を表す、法定耐用年数と関係しています。
A 返済額を減価償却費以内に設定する
B 返済期間は耐用年数以内に設定する
減価償却とは、買ったものの金額を法定耐用年数で分割して経費計上する方法です。木造アパートは22年、軽量鉄骨構造は27年と、構造によって、税務上の資産価値があるとされる年数が決まっており、木造なら建築費を22年で割ったものが、年間の減価償却費になります。
Aは、アパートの建築費はすでに支払い済ですので、実際には出ていかないのに、税務上で費用として計上できる仕組みを使った節税法です。年間の返済額を減価償却費以内に設定すれば、返済額と減価償却費が相殺され、手残りを増やすことができます。
減価償却が終わった建物は、税務上は資産価値がゼロになり、節税できなくなります。そのため、返済期間を建物の法定耐用年数と同期間にすることで、逆レバレッジを引き起こすリスクを減らすことができます。
また、金融機関では基本的に法定耐用年数以上のローン期間を設定しません。
8.アパート経営で発生する費用
本章では、アパート経営の費用には、どのようなものがあり、どのくらいかかるかを確認します。
8-1.建設費以外の初期費用
アパート建築費以外でかかる初期費用には、登記費用・印紙代などの税金、金融機関に支払う費用、保険料や司法書士報酬などがあります。これらは総工費の5%くらいが目安ですので、建築プランが決定すると初期費用総額のめどが立ちます。
これ以外にも、ケースによっては取り壊し費用・片付け費用・地域への負担金・式典費用・近隣挨拶用の菓子折りなど、都度、必要に応じて発生していきます。
建築費以外の費用は、工事が着工してから新規に発生することもあり、当初、建築プランに記載されていた金額よりも、費用が多くかかることもあります。このようなケースも想定して、自己資金は多めに用意をしておくようにします。
8-2.維持費
アパート経営をスタートしてからかかる、アパートのランニングコストのことです。これらのアパート経営維持のためにかかる費用は、全て必要経費となります。
維持費の目安は、不動産収入の20%程度までです。
- 管理費
-
アパート管理には賃料管理や共用部分の清掃、備品手配、入居者対応などがあります。専門の管理会社へ業務委託し、委託料を支払う形が一般的です。共用部分で使用する光熱費は、共益費から支払います。管理費は1物件の賃料に対して5%程度です。
- 修繕費
-
経年劣化による修繕は修繕計画に基づいて行います。その他、補修が必要になった個所は、適宜直します。
- アパートローン返済額
-
アパートローン返済額のうち、金利と払い込み手数料に関しては経費になります。
- 税金
-
アパート収入から必要経費を引いた利益が年間20万円以上ある場合は、所得税と住民税がかかります。また土地と建物に対し、固定資産税が毎年発生します。
8-3.経費で落とせる費用について
アパート経営の経費はさまざまですが、経費として使えるのは「アパート経営を開始し、収益を生み出すために必要な費用」のみです。経費にできる項目は意外と多く、細かに積み上げていくことでしっかりと節税できます。
個人事業主でも、アパート経営者として自宅の一部を事務作業などに使っている場合は、使用割合に応じて、部屋・PC・携帯電話代なども経費に計上することができます。また、アパート経営の勉強のためのセミナーや書籍代、懇親会費なども経費として認められます。
ただし、会社員とは違い、誰かから経費をもらうのではく、「自分で払ったもので節税をする」というスタンスに変わります。
9.アパート経営にかかる税金
アパート経営にかかる税金を簡単に説明します。
9-1.固定資産税・都市計画税
固定資産税と都市計画税は、不動産を持っている方に毎年課税される税金で、1月1日時点の土地・建物の所有者に対して課税されます。不動産のある市区町村から毎年4~6月頃に納付書が郵送されてきます。
地方税ですので、税額は市区町村が所定の方法で評価して決めます。都市部には都市計画税も加算されます。
税率は、固定資産税が課税標準額×1.4%、都市計画税が課税標準額×0.3%であることが多いのですが、他の地域よりも低い税率の自治体もあります。
9-2.所得税・住民税
アパート経営をしていて年間20万円を超える家賃収入がある場合、確定申告が必要です。確定申告は所得税と住民税の申告に使われるもので、経費などを差し引いた後の収益によって課税額が決まります。
所得に対して課税される所得税と住民税は損益通算ができる税金です。アパート経営以外にも所得が発生している場合、どちらかのマイナス分を利用することで所得税の節税効果が期待できます。
9-3.事業税
アパート経営における事業税とは、アパート経営を事業規模でやっているかどうかで判断されます。個人事業主の場合、おおむねマンションで10室以上、または5棟以上のアパート経営をしているところから、個人事業所得と見なされます。
※自治体によって違いがあります。
事業税の事業主控除額は一律290万円ですので、アパート収入から経費を差し引いた「不動産所得」が290万円を超えると、個人事業税がかかります。
【参照:個人事業税】
9-4.消費税
アパートオーナーが課税事業者の場合は、消費税の納税義務があります。 一般的に、住宅のための家賃には消費税はかかりませんので、一般的なアパート経営をしているのであれば、消費税の納税義務は生じません。
しかし、アパートの中に住宅以外の賃貸物件(店舗・事務所・駐車場)が複数ある場合と、不動産収入から必要経費を引いた不動産所得が1,000万円以上ある場合には、翌々年から消費税の課税事業者になります。
アパート経営以外に事業をしており、その事業が消費税課税対象の事業の場合も、消費税納税の義務が生じます。個人事業主の場合は、翌年の1月1日~3月末日までに消費税の確定申告が必要です。
【参照:消費税及び地方消費税の申告等】
9-5.アパート経営の確定申告について
アパート経営による収入から、必要経費を差し引いた分が、年間20万円以上ある場合は不動産所得の確定申告が必要です。年間20万円未満や、赤字の場合は不動産からの所得がありませんので、確定申告は不要です。
ただし、アパート経営が赤字の場合でも、確定申告をしたほうがお得なケースもあります。アパート経営以外に、会社員や事業をしている方は、不動産所得の赤字分を、その他の給与所得や事業所得にぶつけて、納税額を減らすことができます。
このような場合は、アパート経営が赤字でも、確定申告をすると、支払い済み源泉徴収分から還付金が発生することがあります。
10.アパート経営を始めるまでの流れ
アパート経営を始めるまでの流れを6つに分けて解説します。経営が整うまでのフローは以下のとおりです。

10-1.経営プランの選定・見積もりの依頼
どのようなアパートを建てるかは、複数のハウスメーカーに建築プランを依頼して、内容をよく比較します。各社から、自社建材や工法などを駆使した独自の建築プランと、返済計画・賃料収入めやすなどを含めた、経営プランを同時に入手できます。
建築・経営プランとも、入手した時点では簡易的なものが多いので、訪問査定をしてもらい、オーナーの意向なども含めて相談すると、より具体的なプランを作ってもらえます。
契約をしたらアパート建築がスタートしてしまいますので、納得のいくプランになるまで、じっくりと時間をかけてもかまいません。
10-2.契約・着工
気に入った建築・経営プランが決まったら、ハウスメーカーと請負工事契約(工事をお願いする契約)をして、工事着工になります。
工期目安は、2階建で3ヶ月ほど、3階建てで4ヶ月ほどです。ただし、凝ったプランにすると、工期が長くなる可能性があります。
契約時に、今後のアパート管理や入居者募集などをお願いする不動産会社を、ハウスメーカーから紹介されることがあります。関連企業の管理会社の場合、着工と同時に入居者募集をスタートすることがあります。
10-3.建物・土地の登記
アパートの建築が進み、行政機関の審査を通過したら、建物の登記をします。土地活用の方は建物のみ、土地を購入して始めた方は土地と建物の両方を登記します。
登記には費用がかかります。間違いがあってはならない書類ですので、司法書士に手続きをしてもらうのが一般的です。
10-4.開業届など各種書類の準備・提出
アパート経営をスタートさせるまでの間に、納税者の住所地を所轄する税務署へ「個人事業の開廃業等届出書」を提出しておきます。
すぐ必要な書類ではありませんが、確定申告時に必要な書類なども、国税庁ホームページなどからダウンロードしておき、目を通しておきます。
確定申告は、最初から青色申告にする必要はなく、はじめは白色でスタートし、アパート経営の様子を見てから判断するのでも問題ありません。
10-5.入居者の募集
入居者の募集を開始します。ハウスメーカーから紹介された関連企業の場合は、着工と同時に入居者募集をしていますので、完成と同時に入居者が引っ越してくることもあります。
一般の不動産管理会社にお願いしている場合は、工事着工時から逆算して、入居者募集の計画を練っておきます。入居者は内覧を希望しますので、建物が完成、または内覧ができる状態になったらすぐに案内ができるように、募集のタイミングをはかります。
できれば、入居者がくる前までの段階で、近隣の方と自治会に、アパート経営がスタートすることへの挨拶を終えておいたほうがよいでしょう。
10-6.竣工
アパートが竣工し、建物の細かな点検などを済ませ、検査済証が発行されたらアパートの完成です。竣工のタイミングはとても大事で、可能であれば、引っ越しシーズンなどの移動マーケットが拡大する2~3月頃までに竣工がぴったり合うようにするよいでしょう。
移動マーケットは2~3月のほかにも、ゴールデンウイークから夏休み前の5~7月、秋口の転勤シーズン10~11月など、複数回あります。
11.アパート経営を始めるなら、まずはプランの選定から
これからアパート経営をスタートする方が「最初にするべきこと」とは、複数のアパートプランを入手し、
- 出来上がる建物イメージ
- 設定された家賃と返済計画
などをしっかりと比較して、納得のいく建築プランが出せるハウスメーカーを選び出すことです。
各社、外観・構造・経営プランに独自の建築プラン・経営プランを持っていますので、オーナーの意向と、土地との相性の両面から、慎重に選ぶようにしてください。
アパート経営をする最大の目的は、土地から最大の収益を得ることですので、建築プランを比較する時には、必ずアパートの建築予定地に現地訪問をしてもらい、土地に対して最適なプランを出してもらうようにします。
比較をするには最低でも3社以上の見積もりが必要ですので「HOME4U オーナーズ」の一括プラン請求などを活用し、複数の建築プランを入手するようにしてください。
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